2015年7月27日

ブラジルのブラックバード

http://www.jjazz.net/
を聞いていたら、Sara Gazarek / Josh Nelson の Blackbird / Bye Bye Blackbird という曲がかかった。
最初はビートルズのブラックバードから始まり、途中バイバイブラックバードに変わって、最後またビートルズのブラックバードに戻る構成である。

バイバイブラックバードは、マイルス・デイビスがミュートトランペットで端正にテーマを吹いてから、クインテットの面々の奔放な展開で、ジャズを聴き始めた頃から、誰もが虜にされそうなすばらしい演奏であると確信した曲である。
Wikipediaに"Bye, Bye, Blackbird" is a song published in 1926 by the American composer Ray Henderson and lyricist Mort Dixon.
と書いてあるから、米国の曲である。

Wikipediaには次の気になる記述がある。
「英語でこの鳥のことを Blackbird と呼ぶが、米語で Blackbird といえばムクドリモドキのことになってしまうので注意。
ビートルズの楽曲「Blackbird」や、マザー・グースの6ペンスの唄に歌われている「blackbirds」は、この(前者の)鳥のこと。」

ということは、ビートルズのブラックバードとバイバイブラックバードは似ているが別の鳥である可能性が高いということだ。
英語では、ビートルズブラックバードの方、つまりユーラシアのを common blackbird と言い、バイバイブラックバードの方、つまりアメリカのを new world blackbird と呼んで区別している。

コモンブラックバードの和名がクロウタドリ、漢字で書けば黒歌鳥と、誰が見ても「この鳥の鳴き声は美しい」と予想するだろうに、ニューワールドブラックバードの和名がムクドリモドキ、モドキというのは本物でない似た物ということだから、偽物呼ばわりではないにしろ胡散臭い名前である。
コモンブラックバードとニューワールドブラックバードは、別々の土地で別々に進化してきた別の科の鳥であり、どちらが偉いとかどちらが起源とかいう問題ではないのだが、和名から受ける印象には天と地の差がある。
バイバイムクドリモドキとはひどい、鳥に罪はない、かわいそうだ。

実はブラジルにもブラックバードはいる。
ポルトガル語で pássaro-preto 文字通り黒い鳥という意味である。
野生のが人里にかなりたくさんいる。
近所の公園のそばの電線に100羽位が賑やかに群れているのをときどき見る。
ブラジルのブラックバードも鳴き声がきれいだ。
ブラジルの自然の鳥だからその飼育には多分許可が必要なのだろうが、美しい声でしかも規則性のない複雑なさえずりをするので、この鳥を飼っている人は多い。

ここで問題だ。
バイバイブラックバードつまりニューワールドブラックバードとパサロ・プレトは同じか異なるか?
ブラジルも南アメリカも米国も北アメリカもすべて新世界である。

Common blackbird の項をみると種(しゅ)は一つで写真は嘴の黄色い鳥である。
New world blackbird の項には26の種があり、写真の2種は羽や体の一部が赤かったり黄色だったりする。

ブラジルのパサロ・プレトは全身、つまり羽だけでなく嘴も脚もカラスのように真っ黒である。
気の毒な名を持つムクドリモドキ科の項に、わがブラジルのパサロ・プレトの和名が載っていた。
ミゾハシクロムクドリモドキという大層な和名が付いている。
黒い下嘴に溝がついているところからきた名前のようである。
学名は Gnorimopsar chopi となっているが、ショパン Chopin とは関係ないと思う。

ここでまとめておく。
ビートルズのブラックバード = en. Common blackbird = クロウタドリ(黒歌鳥)
バイバイブラックバード = en. New world blackbird = ムクドリモドキ(椋鳥擬)どの種かは特定せず
ブラジルのパサロ・プレト = po. pássaro-preto = ミゾハシクロムクドリモドキ(溝嘴黒椋鳥擬)

2015年7月13日

みんな大好きドローン

公園の駐車場でドローンを上げている人がいた。
夕暮れから夜に入る時間だったので、飛行機のように両翼に、と言ってもドローンは4つローターがあるので、どこが両端かは判然としないのだが、緑色と赤色の照明を点灯して空中でホバリングしていた。

ごく最近見たドローン関連の記事見出しを2つ載せる。

スイス国営郵便、ドローン郵便配達の飛行試験を開始
http://japan.cnet.com/news/service/35067164/?tag=nl

Líder do grupo Estado Islâmico é morto em ataque de drone americano
イスラム国のリーダー、米国のドローン攻撃で死亡
http://www.msn.com/pt-br/noticias/mundo/l%C3%ADder-do-grupo-estado-isl%C3%A2mico-%C3%A9-morto-em-ataque-de-drone-americano/ar-AAcRzdw?ocid=mailsignoutmd

災害救助にも戦争にも使える道具なのだ。

ドローンというとラジコンヘリコプターと似ているがどこか違う。
ラジコンヘリ=メカ好き、操縦好きの立派なホビー、金がかかりそう、
ドローン=胡散臭いオタクが何か良からぬことを企んでいる、
全く偏見だろうがそんな気がするのだ。
ドローンの正当な愛好者よ、ごめんなさい。

広い公共の場所で飛んでいるのなら良いのだが、住宅地の上空をこういったものがたくさん飛び交うようになったらどうなるのだろうか。
不謹慎で人間性を疑われるのを承知で言うが、盗撮、つまり覗き撮影に最適なのではないかと思ったのが、ドローンが身近に飛んでいるのを見た第一印象である。
多分私の手元にドローンがあったならばこれをしてみたい、という願望かもしれない。
何のことはない、胡散臭いオタクとは私のことだったのか。

ブラジルの住宅地は一般的には日本よりは広く、防犯のためだろうか、塀がかなり高い。
塀の上に鉄条網とか電気ショックワイヤーなど張ってあるのは、醜いブラジルの風景である。
そして夏が長いブラジルである。
高級住宅街はもちろん、かなり大衆的な住宅地でも、高めの塀に囲まれた敷地にプール付きの庭がよく見られる。

わが家の庭を覗き込める隣家はない。
塀の上に見えるのは隣の軒と隣の敷地のマンゴーの木だけである。
屋根の上で工事などしていなければ、覗きこむのは翼のある鳥と軒を歩く猫だけである。
話をややこしくしないために、飛行機やはるか高高度の人工衛星などは一応除いておく。

ブールがなくても、庭にチェアをおいたりタオルを敷いた上で日光浴などする人は多いだろう。
ただでさえ肉体のフォームを非常に気にするブラジル女性である。
他人の視線が全くない、完全なプライバシーが保てる、ということで、女性だけでないだろうがビキニラインをつけたくない人などフィオ・デンタルどころか全裸で寝そべっているかもしれない。
プール完備必須の高級住宅街で夏の暑い季節に、自動撮影カメラを搭載したドローンを100軒くらいの上空を飛ばせば、1軒くらいそういった場面を撮影できるのではないか。

覗き撮影が趣味の一つなら、射撃が趣味だという人もいるだろう。
合法銃器も非合法銃器もあふれているブラジルのことだ。
庭に歓迎しない盗撮物体が現れたらためらいもなく撃ち落としてやるぞと、いつ現るとも知らぬドローンを待ち受けて銃に弾を込めて手ぐすね引いて息巻くガンマニアもいるのではないか。
リオデジャネイロのファベラ(スラム街)で警察と犯罪組織の銃撃戦があったとき、上空を飛ぶ警察のヘリコプターを地上から狙撃する事件が起きたから、そのミニチュア版だ。
先住民(インジオ)だったら弓矢で射落とすだろう。
銃や弓矢がなくても、不埒な侵入飛行物体にパチンコやダーツや投網や投槍や石ころや水鉄砲など何でも手元のものを投げつけたくなるかもしれない。
手頃な標的、といった感じなのだ。

"殺人凧 vs ドローン" 安っぽい映画のタイトルのようであるが、ブラジルの冬の風物詩というか、困りものの、ガラス粉を糸に着けて武装した凧とドローンの手に汗握る空中戦もきっと楽しめることだろう。

塀の中にいる連中が禁止されている物を持ち込むのに伝書鳩とかとかいろいろ悪知恵を働かせるのだが、ドローンは便利な運び屋になりそうである。
ドローンを使って爆薬を運ぶ銀行強盗なんかも誰かが考えつくかもしれない。

いろいろな趣味や犯罪の対象になりそうなブラジルのドローンである。

2015年7月7日

ギリシャ人の巨大な贈り物

今ギリシャが大変である。

威勢よく OXI これはどうしても 0x1 に見えてしまうので、ゼロかける1はゼロでないか、それとも酸素(オキシ)なのか、と言いたくなるのだが、ノーと叫んで大丈夫なのだろうか。
かの国の人々は将来のことをあれこれ心配しないのだろうか。
極めて楽天的なのか、行き当たりばったりなのか。

かなりブラジル人の性格と似ているような気がするのだが、ブラジルが今のギリシャのような境遇に落ちて同様の国民投票があったら、ブラジルも反対が賛成を圧倒するのだろうか。
それともよほど今まで緊縮に痛めつけられて、もう耐えられなくなった沈痛の叫びなのか。
お祭り騒ぎのようであり、とてもそうとは見えないが。

ポルトガル語でギリシャ国は Grécia、形容詞ギリシャの、名詞ギリシャ人、ギリシャ語は grego である。

なんかとりとめのない話をしていて、「それはギリシャ語か」と言われたら、意味がわからないと言われるのと同じだ。
意味がわからないと言いたいのなら、ロシア語でも中国語でも、もちろん日本語でも良いのだが、なぜかいつもギリシャ語に例えられるのだ。

「ギリシャ人のプレゼント」という表現があることはこのブログに書いたことがある、
ギリシャ人のプレゼントというと、トロイの木馬を指すのだろう。
何でも、もらって嬉しくないプレゼントのことらしい。

「ギリシャ風キス」という奇妙なフレーズがある。
アヌスへのキスという性愛のバリエーションを意味する。

ギリシャのつく成句はどうも普通でないものが多いようだ。
そしてギリシャは今、とてつもなく巨大なプレゼントを抱えてやって来たところだ。