2016年1月19日

時下 zika ジカ熱に注意

ブラジルでは黄熱(febre amarela)やデング熱(dengue ポルトガル語読みでデンギ)だけでなく、新顔が加わった。
ジカ熱(zika)である。



ネッタイシマカ(学名 Aedes aegypti)がウィルスを媒介する。
外見は黒に白縞のやぶ蚊である。
この蚊はデング熱、チクングニア熱(chikungunya ポルトガル語読みでシクングニャ)も伝搬する。
メスのネッタイシマカがウィルス保持者から吸血して、蚊の体内でウィルスが増殖した後に別の人を刺すことによってウィルスが伝搬する。

ジカ熱の一般的症状は、眼の奥あたりの頭痛、発熱、結膜炎、四肢のむくみや腫れ、発赤、掻痒、手足の関節痛、嘔吐、下痢、腹痛、食欲不振などである。
発熱は37,8°Cから38,5°Cとあるのでそれほど高くない。
蚊に刺され感染してから10日で発病、症状は4~7日で治まる。

いろいろな報道を見ていると、症状はデング熱より軽く、感染しても発病しない人の率がかなり高いようである。
感染しても発病しないということは、ウィルス保持者が元気に歩きまわるということであるから、蚊の移動だけでなく人の移動によっても感染が拡大しやすいということでないか。
しかしデング熱より症状が軽いといっても、注意しなければならない症状が2つある。

まず第一に、米国が妊婦のブラジル旅行に注意を呼びかけているように、胎児に小頭症(po. microcefalia, en. microcephaly)を起こす可能性がある。
妊娠している女性は、とにかく蚊に刺されないことを第一としなければならない。

第二の重症例は、筋肉を動かす神経を冒すギラン・バレー(Guillain-Barré)症候群を引き起こすと言われている。
これに至る可能性はデング熱などよりも低いようであるが、当然妊婦以外でも罹患するし、重症の場合は命にかかわるので注意が必要である。

ワクチンは無く、治療は対症療法だけである。
安静、水分補給、医師の処方による鎮痛薬paracetamolやdipironaの服用である。

アセチルサリチル酸(ácido acetilsalicílico)つまりアスピリン系薬剤を服用してはいけない。
デング熱同様に出血を招くことがある。

ジカ熱対策はデング熱対策と同一である。
蚊を防除あるいは忌避することだ。
  • ボウフラのわく水たまりをなくす。
  • 虫除け剤(スプレー)を肌につける。
  • 蚊の多い環境の住まいには網戸を付ける。
芸能記事では妊娠したタレントが、「毎日防虫スプレーのシャワーを浴びているよ」なんて物騒で大げさな発言をしている。
薬剤服用にいろいろ制限の課される妊娠中のことである。
防虫剤の副作用などを心配せず、やたら大量に使うのも危険だ。

8月にリオでオリンピック・パラリンピックが開かれるので、その時には選手団だけでなく応援団・観光客が大勢ブラジル旅行にやって来る。
海外からの旅行者たちがブラジルでデング熱やジカ熱などの脅威に晒されたとき、「5日間ばかりブラジルに滞在するだけなのに、ブラジル住民がずさんに放置して増殖した蚊に何で俺らが刺されて病気を貰うはめになるのか!」と憤るかもしれない。
そういう声が出ても当然だろう。

デング熱の流行状況を毎年観察していると、南半球の冬になって蚊の増殖はある程度沈静化すると思われるが、そうならなくても世界が注目する手前、なんとか取り繕わなければならない。
そこで今から予想する。
7月になったら全ブラジルで、というか特にリオで保健当局と警察と、必要なら軍隊まで動員して、「ネッタイシマカと街頭の強盗ひったくり撲滅作戦」といった大キャンペーンをやることになるだろう。
武器装備は噴霧器と軽銃器と搭載車両で、込めるのは殺虫剤と実弾か。
噴霧器を載せた軽トラックや噴霧器を背負った保健所員や衛生兵と、トラックや装甲車から繰り出す武装警官や兵隊が街中を走り回って、物騒なリオもしばらくの間、安全で平和になるだろう。

不詳だがブラジル4G各社比較

2016年1月11日こんな記事が出た。

ブラジルmsnがビジネス雑誌Exameから引用した記事で、ブラジルの4Gの各社比較である。

As operadoras de telefonia com maior cobertura no Brasil
Exame.com
http://www.msn.com/pt-br/dinheiro/economiaenegocios/as-operadoras-de-telefonia-com-maior-cobertura-no-brasil/ss-BBnEs2i?ocid=mailsignout#image=6
Operadora
携帯会社
Mun.cobertos
エリア市数
Vel.méd.4G
平均速度
TIM26510Mbps
Claro18620Mbps
vivo16918Mbps
oi4514Mbps
nextel103Mbps

記事の表題が「ブラジルのカバーエリアが大きな電話会社」とあるが、この5社の他にも地域携帯会社はいくつかある。
調べるほど元データとか計算法とかがはっきりせず、他のサイトを見ても時期が異なったりして記事の正誤検証ができないのでやる気がなくなってくるが、作ったので載せておく。

日本でのLTEやWiMAXは3.9Gとされ、LTE-AdvancedやWiMAX 2.1でないと厳密な4Gとは呼べないようなのだが、これらも合わせて4Gと呼んで良いと決定したというので全部4Gとしておく。
nttdocomo.co.jpは、国内最速となる受信時最大225Mbpsの次世代ネットワーク「LTE-Advanced」を提供、という記事を、2015年2月25日に発表しているので、日本で4Gといっても、実際は3.9Gが大半なのだろう。

ブラジルはどうか。
どの携帯電話会社もLTEを使っている。
だから厳密に言ったら3.9Gとなる。

ANATELつまり国立テレコミュニケーション庁は2012年に4G用に2.5GHz帯の競売を行い、現在の4G(LTE)サービスに供されている。
ANATELは2014年9月に同じく4G用に700MHz帯の競売を行ったが、これは2018年のアナログテレビの終了をもって空きができるので、4G使用に供されるのはそれまで待たなければならない。
つまり現在ブラジルの4G信号は2.5GHz帯のみである。
たとえばApple製品では、 iPad 3, iPad 4, iPad mini, iPhone 5などは700MHzでしか受信できない。
iPhone 6, iPhone 6 Plus, iPhone 5S (modelo A1457), 5C (A1507)はブラジル4G(バンド7)と互換性がある。

ついでに3Gについても書いておこう。
ブラジルの3Gの形式はUMTS (W-CDMA/HSDPA)、周波数は1900MHz、2100MHz、及び850MHzである。

書いている本人は何のことか皆目わからないのだが、ブラジル旅行に自分の携帯を持ってきて使いたいという人は、この辺の技術的な互換性に気をつける必要があるだろう。

Como saber se minha região tem cobertura 4G?

各社のサービスエリアを調べるwebページ
調べたい場所の郵便番号(CEP)を入力すると地図が出て受信条件がわかる。

2016年7月30日追加

こういうのを見つけた。
TIM Brasil and Claro launch LTE-A using new 700MHz frequencies
17 Jun 2016
https://www.telegeography.com/products/commsupdate/articles/2016/06/17/tim-brasil-and-claro-launch-lte-a-using-new-700mhz-frequencies/
ブラジルの携帯会社TIMとClaroが、3.9Gではなくて本当の4G、LTE-Advanced (LTE-A) を、ブラジルで一番最初にアナログテレビ放送が終了した地域、ゴイアス州リオ・クラロで、空きになった700MHz帯を使って供用開始したというニュースである。

次にアナログテレビ放送が終了するのは首都ブラジリアで、10月26日ということである。
どうやらアナログテレビ放送が終了した地域から順次700MHz帯の4Gが供用されるようである。

2016年1月4日

2016年のキリスト教移動祝日

キリスト教行事の中には、毎年、天体の月の動きに応じて移動するものがある。

年の後半にある、だれでも知っているクリスマスは12月25日、ブラジルでは死者の日(Finados)と呼ばれる万霊節は11月2日-これは日本ではハロウィン(10/31)-万聖節(11/1)-万霊節(11/2)の一連としたほうがわかりやすいだろう-と、毎年同じ日付に決まっているが、年の前半にある宗教祝日は移動するものが多い。

2016年の移動宗教祝日を下に一覧表にしてみた。
復活祭の日、2016年ならば3月27日日曜日が、すべての移動祝日の基準になっていると言ってよい。
2016年の3月分点、つまりUTCの春分の日は3月20日、その次の満月の日は3月23日だ。

ブラジルで国定祝日(feriado nacional - 下表ではFN)、任意休日(ponto facultativo - 下表ではPF)になっている日と、特に休日になっていない日がある。
任意休日というのは、職種組合や職場によって、休日とするか勤労日とするか異なるのだが、大部分の勤め人にとっては、普通の休日と変わらない。

行事日の決まり方2016年休日種類
カーニバルCarnaval週末から灰の水曜日前日4日間2月8-9日月火曜日PF
灰の水曜日Quarta-feira de Cinzas復活祭46日前の水曜日2月10日水曜日14時までPF
四旬節Quaresma灰の水曜日から復活祭前日
枝の主日Domingo de Ramos復活祭7日前の日曜日3月20日日曜日
聖週間Semana Santa枝の主日から復活祭前日
キリスト受難日Paixão de Cristo復活祭の2日前の金曜日3月25日金曜日FN
復活祭Páscoa北半球春分の次の満月の次の日曜日3月27日日曜日
ペンテコステPentecostes復活祭の49日後の日曜日5月15日日曜日
キリスト聖体の日Corpus Christi復活祭の60日後の木曜日5月26日木曜日PF

2016年のブラジルの祝祭日

2016年のブラジルの国定祝祭日及び任意休日がブラジル連邦政府の広報ページに発表されたので紹介する。

一応このリンク先は公務員向けに書かれたものなのだろう。
「休業日は基幹業務の提供に影響を与えてはならない」と書いてある。
何かというと休みたがる、ストやり放題・馘首無しのブラジルの労働貴族である公務員には、この言葉をしっかり守ってほしいものである。

連邦政府の官報の当該ページはここにある。

一連のキリスト教関連の移動休日は、2015年より8日早くなる。
ただし2016年はうるう年のため、2月は29日まであり、そのためその後の日数計算は8ではなく9を引くことになる。
たとえば2015年の灰の水曜日は2月18日、2016年は2月10日であるので8を引いた日になる。
2015年の受難金曜日は4月3日だったが、2016年は2月29日後の3月25日であるので、9を引いた日になる。

1 1月1日 Confraternização Universal 世界友好の日 FN
2,3 2月8-9日 月火 Carnaval カーニバル PF
4 2月10日 Quarta-feira de Cinzas 灰の水曜日 14時までPF
5 3月25日 Paixão de Cristo キリスト受難の日 FN
6 4月21日 Tiradentes チラデンチス FN
7 5月1日 Dia Mundial do Trabalho 世界労働の日 FN
8 5月26日 Corpus Christi キリスト聖体の日 PF
9 9月7日 Independência do Brasil ブラジル独立の日 FN
10 10月12日 Nossa Senhora Aparecida アパレシーダ聖母の日 FN
12 11月2日 Finados 死者の日 FN
13 11月15日 Proclamação da República 共和制宣言の日 FN
14 12月25日 Natal クリスマス FN

注:FN = feriado nacional 国定祝日、PF = ponto facultativo 任意出勤

毎年必ず日曜日に重なる復活祭は、日曜日であるがために連邦政府の祝日リストにはのっていないので、この表にものせない。
復活祭を含むキリスト教の一連の移動祝日はここにのせる。

上の連番で11が欠けているが、10月28日が公務員の日というのになっていて官報にはのっているのだが、民間は休日でもなんでもないので、この表からは外してある。
役所に用事のある人は注意、この日は閉まる。

feriado nacionalは国定休日であるが、ponto facultativoは任意出勤で、休日になったり勤務日になったりは職種・職場によって異なる任意休日のことだ。
任意だからといって、勤め人が職場の決まりを無視して勝手に休んで出勤扱いになることはない。

灰の水曜日の14時まで任意休日というのは、午前中は前夜火曜日のカーニバル大騒ぎの疲れを癒す時間となっており?、銀行・官公庁や商店などは午後2時から開店する習慣があるからである。

同様の習慣により、12月24日と31日は、それぞれクリスマスと新年のイブという理由で、半日で就業終了という職種が多い。
昨年の祝日リストには12月24日や31日を載せたのだが、官報に載っていないので今年は外しておく。
銀行は、24日は開店時間短縮、31日は年末決算のために就業するものの店舗は開かないので支払い・送金などに注意が必要である。

当表の連邦政府が定める全国一円の休日のほかに、各地で市と地方の記念日が数日定められていることが多い。

下のリンクで、月齢付き2016年(及び任意の将来年)カレンダーを閲覧・印刷できる(英語・ポルトガル語)。
本年のリオデジャネイロ・オリンピック及びパラリンピックの開始・終了日も記されている。
http://www.timeanddate.com/calendar/?year=2016&country=33

2016年1月2日

ブラジルに航ちゃんはいる

わが家に来た客と、とりとめもなく飛行機の話になった。
食堂の窓から、空港へ着陸する寸前の降下してくる旅客機が見えるので、遠くの街から飛行機でやって来る客があるとき、時間通りに降りてこないと遅れている事がわかると言ったら、来客はiPadを引っ張りだして見せてくれたアプリがあった。
Flight Radarである。

あと15分でこの街の空港に着陸予定の便があるから見てみることにした。
90kmほど離れた隣町上空で一回輪を描いた。
来客は、「きっとなにか小さな問題が空港で起きたので、時間調整のために旋回をしたのだろう」と解説する。
旋回したために予定着陸時間が2分延びた、と思ったら一気に5分延びた。
滑走路進入路左側90度から進んでくる航跡と飛行高度を見て、「これはこのまま着陸態勢に入るな」と彼は分析をする。
するとこれから着陸をする空港に突然別の機影が現れ、滑走路を縦断してそのまま上昇していく。
この出発便のために、旋回をして時間調整を行ったのだろうか。

「もう少しすると機影が家の前の延長線を通るから、そろそろだぞ」と彼が言った瞬間、ジェットの排気音が聞こえてすぐにGol航空のボーイング機が着陸直前の降下滑空で横切っていった。

彼はこのソフトが気に入って、月額3ドルを払ってプレミアムにしている。
彼はリオ・デ・ジャネイロとグアナバラ湾を挟み、リオ・ニテロイ橋で渡るニテロイに住んでいるので、リオデジャネイロの2つの空港、サントス・ドゥモン空港と、アントニオ・カルロス・ジョビン・ガレオン国際空港を発着する飛行機を見渡せるようだ。
勘違いする人もいるだろうから少し注釈しておくと、アントニオ・カルロス・ジョビンはボサノヴァのミュージシャン名、ガレオンは地名である。
彼の奥さんは、「これを見ながら窓から機影を探して、あれはどの都市から飛んできたとか、何分遅れているとか言って、暇だと一日中そうやって過ごしている」と半ばあきれたように言う。

こういうのは何という趣味なのだろうか。
飛行機ファン、航空ファンというのか。
鉄道ファンが「鉄」ちゃんなら、航空ファンは「航」ちゃんなのか。
「ブラジルに鉄ちゃんはいない」と以前書いたが、航ちゃんはいるようである。
便数があるものでないから多数いるとは思えないが、船舶ファンだったら船(せん)ちゃんか。
くどいが、自動車ファンならカーちゃんだぞ。
とにかく彼のように、乗り物を趣味にしているのは男に多いようである。

手元に本はないから正確に思い出せないが、遠藤周作が友人の阿川弘之について、一緒に旅に出た時のことを綴ったものがあったと思う。
ホームに出入りする列車をみて、「あのXXXX列車の到着は2分遅れだ」とか全部説明してくれるというのだ。
時刻表を暗記していたらしい。

世界的に有名な音楽家「鉄」といえばドヴォルザークあるいはドヴォルジャーク(Antonín Leopold Dvořák)だと、彼のエピソードはしばしば
OTTAVA(オッターヴァ)
で取り上げられる。
Wikipediaをみると、プラハ駅の列車の時刻表やシリーズ番号、さらには運転士の名前までも暗記していたというから、「またこの運転士はエンジン吹かし過ぎで30センチオーバーして停車が下手くそだ」なんて批判して楽しんでいたのかもしれない。
米国でも、教鞭をとるニューヨーク音楽院への行き来にわざわざ遠回りしてグランド・セントラルへ寄り、列車の発着を飽きずに見ていたとかいった話である。
プラハと違いニューヨークにはフェリーもあるし外航船もあっただろうから、鉄ちゃんだけでなく船ちゃんにもなったという記録がある。

私達のお客の職業を知ったら、なぜ航空に詳しいのか納得できた。
陸軍の落下傘部隊所属というから、航空機の速度とか高度とか航路とかが気になるのは当然だろう。