2018年2月2日

黄熱ワクチン、日伯91倍価格疑惑

以前このブログで、日本とブラジルではどうして黄熱ワクチンの価格に大差があるのか疑問をあげた。
東京検疫所によると黄熱ワクチン接種は国際接種証明書発行込みで11,180円、一方ブラジルでは公的機関で行えば全て無料である。
そのため日本とブラジルでは同じ黄熱ワクチンと言っても品質や効果が異なるのではないかと疑ったりした。
その疑問に少し答えてくれる情報を見つけたのでここに書いておこう。

安いため黄熱ワクチンの在庫はぎりぎり
Barata, vacina de febre amarela tem estoques no limite


昨今の人気商品、品薄商品と言っても良いかもしれない。
黄熱ワクチンである。

しかしこの生産は儲かる事業ではない。
主な需要地は、あまり金がありそうもないアフリカと南アメリカの国々であり、最終製品価格は低価格である。
金のある先進国では、黄熱の危険国へ旅行する人しかこのワクチンを必要とせず、数量が捌けない。
一方生産には、近代的施設と複雑な過程を必要とする、つまりたやすくできる活動ではない。

そのような理由で、世界保健機関(WHO)が認証するワクチン生産者は、全世界で4つしかない。

最大のものがリオデジャネイロにあり、1937年から活動している。
今年の予定生産量は4830万人分であり、単価はR$3.50、3レアル50センターボである。

その他の3つの生産者とは、フランスのSanofi Pasteur、セネガルのInstitut Pasteur、ロシアのChumakov連邦センターである。

生産技術というか原理は新しくない。
1930年に完成して、1951年南アフリカのMax Theiler氏にノーベル賞をもたらした。

原材料は鶏卵であるが、そのあたりのスーパーでパック入り卵を買ってきてもだめのようだ。
黄熱ウィルスだけを増殖させてその他の微生物が混じってはならないから、最高の衛生状態の養鶏場で、無菌状態を保つよう念入りに生産された卵が使用される。
そして1個の鶏卵から200人分の黄熱ワクチンが作られる。

ワクチン製造の簡単なプロセスは理解できた。
そしてブラジルは無料だから、有効期限が切れそうになったり効果が弱くなったような二級品ワクチンを使わされている疑惑も解けて、逆にブラジルでは世界で一番流通量の多い銘柄のワクチンを使っていることに安心した。

価格差であるが、ブラジルでは無料で黄熱の予防注射を受けることができるけれど、ゼロは何倍してもゼロだから比較にならない。
だから記事にあったブラジルのワクチン原価を持ってくる。
ブラジルでR$3.50といったら、1レアル35円として123円となるが、どうやって日本で11,180円と、倍率を計算すると91倍の価格になるのだろうか。

死んだら損だから、国民は自費で接種しろなどと人任せなことを言っていたら、金のない連中が軒並み黄熱にやられてしまうだろうから、政府の率先で国民に行き渡らせるために、大量にワクチンが必要な黄熱蔓延国では、政策的に安く入手する必要がある。
多分、多大な需要がそれを可能にするだろう。

反対に、海外旅行者のごく一部にしか需要のない先進国では受益者負担の考え方で、先進国特別小口割増しワクチン価格の上に、さらに検疫所の人件費や維持費などをごっそりのせて、ついでに高率の税金をかけると、これだけの価格差になるのだろうと勝手に推測するしかない。