2020年12月29日

コロナ・サバイバルゲーム -2-

 買い物へ行くのは、大きなスーパーマーケットが安全だと思う。
コロナウィルス予防のための衛生対策を小売店が実施しているかどうか、保健当局による監視の目が行き届きやすく、多数の従業員が働く大店舗であるから、検温、手指消毒、買い物カート取っ手消毒など要員が多くて、店内各所に消毒用アルコールが備えてあり、指定された人数以上店内に入れないなど、距離確保と消毒剤が行き渡っているからである。

もう一つ割合安全だと思われるのが、土曜日午前中に、すぐ前のブログ記事で触れた、近所のバス大通りで開かれる露天市場での買い物である。
もちろん人の多い時間帯はなるべく避けるようにする。

人が歩く通路スペースの両側に野菜・果物、乾物その他商品の陳列台が並ぶ、ごく普通の露天市場である。
ここではサバイバルゲーム-1-と比べたら、車両の往来はないが、縦横斜めに移動したり、品定めのために陳列台の前に止まったりと、不規則な運動をする買い物客が危険要素になる。

市条例は、露天市場では買い物客も店員もマスク着用、各露店は手指消毒アルコールを買い物客のために備えなければならないことを定めている。

この露天市場ではサバイバルゲーム-1-の宇宙モデルは通用しないので、別のモデルを使ったミニ・サバイバルゲームが考えられた。

買い物客が行き来するのは、海中の直線水路である。
買い物はそこを自力で無規則に前後左右に移動するクラゲである。
マスクを着用している普通のクラゲは、高さ(人の身長)と同じ半径の傘を持っている。
つまり、身長1m70cmのクラゲの傘は半径1.7メートルの円形で、もちろん有毒クラゲだから、刺さるとコロナを媒介する触手を、傘の周りにつけて、触れてくる獲物を待っている。
人間は顔の後ろや横で呼吸することはないから、本当は傘は楕円形で、後ろ側は50cm位で良いかもしれないが、細かいことは言わない。

どこにでも規則が守れない人はいるもので、マスク無しのクラゲの傘は倍の3m位になる。
そんなクラゲが喋りだしたときには、口の前方6mまで一気に触手が伸びるから油断できない。

陳列台の前で横向きのクラゲと並ぶことになったら、安全距離であっても時間が経つと毒がじわじわと染み出してくるから、買い物が終わったらすぐに遠ざからないと体が痺れてくる。

ゲームの目的はクラゲの触手を避けながら、水路を泳ぎながら買い物を済ませることだ。常に海流、つまり風の向きを観察して、なるべくクラゲ群より風上を泳ぐようにすることも大切だ。

現金のやり取りは避けて、カードの暗証番号をテンキー入力して買い物が済んだら、店先のアルコールで手指を消毒する。
陳列されていた商品はクラゲ毒が降りかかっている可能性があるので、包装をアルコールで拭いたり、野菜を塩素消毒剤に漬けたりする手間を掛けて、ようやく安心できるのである。

誰かAR 、つまり拡張現実(Augmented Reality)の技術を使って、クラゲの傘と触手を可視化してくれたら面白いと思う。

2020年12月28日

コロナ・サバイバルゲーム -1-

 新型コロナウィルスの脅威のもとでの生活は、それ自体サバイバルゲームである。
何しろ2020年12月28日の時点で、10万人あたりCovid-19累積死亡数は、
 ブラジル 90.1
 日本 2.6
なので、ブラジルは日本の35倍コロナが流布しているとみなそう。
実際はそうでないかもしれないが、ブラジルは日本の35倍Covid-19に罹って死亡する確率が高いものとすれば、サバイバルゲームの熾烈さが想像できるかもしれない。
アルコール消毒剤で手がぬるぬるになったのか、石鹸で洗いすぎてかさかさになったのかわけがわからなくなるのも、そのゲームの中の生きるための連続攻撃の結果なのである。

そして日常の生活の各場面は、サバイバルゲームの中のミニゲームである。

家のそばに路線バスの通る大通りがある。
片側2車線で両側に駐車帯もあるから、日本の住宅街区内ではまず見られない、幹線道路とも名乗ることのできるような広い通りである。
しかしバスは30分に1本だし、そのような広い通りは並行して何本も通っているから、普通車両の交通量も人の往来も少ない。
そのため、車が通らず人が歩いていないときは、マスクを着用しなくても安全に車道の真ん中を歩きながら道路を独占することが可能だ。

コロナ以前の頃であっても、ブラジルの通りを歩くときには、前方からこちらに向かって歩いてくる人の体つき・身なり・持ち物や、多人数だったらどのような構成のグループかを観察して、3秒でどのように行動するかを決定しなければならない。
行動とは、そのまま進んで行き違う、道の反対側に避けて逃げる、手前で横に曲がって逃げる、引き返して走って逃げるなどの反応である。

体つきといえば、体躯の大きさ、推定年齢、走るのが早そうか、喧嘩が強そうか、そんな点である。
特に顔つきというと、性格が荒っぽそうか優しそうか、おおよその年齢という要素の他に、文字に書いてはいけないような微妙な要素がある。
差別ではなく、単に統計の問題である。

着けている衣服や履物の様相からも、危なそうな人か安全な人かを判定しなければならない。
グループの場合にはその構成員に注意する。
女性・子供やお年寄がグループにいたら、安全ポイントは高い。
通常私が出歩くあたりには、ギャングとかはいないが、これについては日本でもヤクザや半グレらしいのを、態度や服装で判断するのと一緒だからわかってもらえるだろう。
自転車やオートバイ、特にオートバイ二人乗りは赤信号がつく。
外から見てわかるものではないが、腰回り・ポケットや持ち物を見て、武器を隠していないか想像しなければならない。

コロナが跋扈する日々になったら、もう一つ注意する点が増えた。
マスクをしっかり着用しているかである。
顔の色とマスクの色のコントラストがあれば遠くからもすぐ判定できる。
最近のマスクの色は様々なので一番困るのは、遠くから見てしっかり黒いマスクを着けていると思ったら、近寄ったら実はひげだったという事態である。

この「接近前通行人判定法」については、ブラジルに暮らす人はだれでも持っていると思うのだが、どうだろうか。

その判定法を習得した上で、件の大通りを歩くときは、自分が宇宙船になったつもりでミニ・サバイバルゲームに挑戦する。
前後から来る自動車、オートバイや自転車は高速で移動する隕石で、破壊力が大きくぶつかると自分が大破するから、無条件に反対側車線か歩道へ退避行動を取らなければ命を失う。
車道を歩いているのだから、後方からやってくる自動車は視力と聴力を最大限に働かせて安全距離で感知して逃避しなければ轢かれてしまう。
至極当然である。

すれ違ったり追い越したりする歩行者は、破壊力は隕石より小さいものの当たると小破する、つまりコロナをうつされる有害な宇宙塵である。
安全にやり過ごすためには、隕石と同じように反対側車線か反対側歩道へ退避する。
マスクをしている宇宙塵とは2メートル、マスク無しの有害度が大きな宇宙塵とは5メートルの距離を空けて側を通過するようにすればコロナ感染の危険から免れることができる。

まあこの想像のミニゲームは、この過疎った大通りだからできることであって、車が行き交い、歩道でもっとすれ違う人が多いような通りでは、最初からマスクを着用して臨まなければならないのは当然のことである。

2020年12月27日

貧者の復讐、のち膨れる雪玉

毎日ブラジル連邦政府保健省が発表するデータのうちCovid-19死亡数を使って、死亡数過去直近7日移動平均を14日前の7日移動平均と比較した増減グラフを描いて観察しているのだが、11月中に明らかな転換点を通過したことがわかる。

1日あたり死亡数7日移動平均が1千を前後していた、6月上旬から8月下旬あたりの高原期から抜けて、死亡数は順調に減少してきていた。
10月から、死亡数7日移動平均が300台まで落ちてきた11月上旬頃まで、社会全体に楽観が行き渡ってきて、病人数が減って余裕ができてきたコロナ専用病床を一般病床に転換したり、コロナに対応するために建設された臨時野外病院の撤収などの明るいニュースが聞かれたものだった。

11月中旬に、14日前の7日移動平均との比較パーセントがマイナスからプラスへ転じて、第二波が始まったものと、グラフを見ながら私は判断した。
11月2日月曜日は死者の日(万霊節)の祝日で、お墓を訪れた人がたくさんいて、密な状態ができたと思われている。

その頃のニュースでは言っていた。
9月10月とコロナ死亡数が順調に減ってきたのを見て、これまでテレワークとデリバリーに守られてきた、公務員その他の安定した職業につく中間層や、そもそも金を払えば何でも人にやってもらえる富裕層が、基幹産業従事者―これは実業者や労働者階級と言い換えてもいいだろうが―この層の人達がコロナ以前と同じような活動に戻っているのを見て、これは外へ出て昔通りにしてよいのだ、かなり安全になっているではないか、と勘違いして無防備に元の生活に戻したところ、てきめんにコロナにかかったのだ、と説明していた。
その根拠として、第二波の初めの頃は国民皆保険の公立病院でなく、任意加入である民間医療保険の私立病院のコロナ病床から埋まっていったからとしていた。

ブラジルでのコロナ流行初期、欧州旅行帰りのパトロンからコロナをもらって自分たちの家族やコミュニティーへもたらすこととなった、家政婦やお抱え運転手のような労働者階級が今度は富裕層へお返しをした形になったわけだ。

まあそこまでは良い。
以前貸したものを、利息をつけて返してもらったと考えれば、許せるものだ。
そこで流行が下火になったら良かったものであろうが、現実は悪い方に進んだ。

その後は富者も貧者も関係なく一緒くたになって、確認感染者数と死亡数は、湿雪の坂を転げ落ちながらみるみる大きくなる雪玉のように、残念ながら堅調に伸びている。
2020/12/22の死亡数直近過去7日移動平均 = 780
14日前の数字との比較増減 = +25.7%

2020年11月18日

BRICSでの新型コロナと環境問題の不和

 あまりよそでは報道されていないようだが、昨日2020/11/17に、BRICS首脳のオンライン会議があった。
最近はあまり注目されることが少なくなっているが、当初はBRICsであって、ブラジル、ロシア、インド、中国であったと思う。
現在は南アフリカ共和国が加わって5カ国となってBRICSとなったと認識している。
今回の議長はプーチン大統領、来期の議長国はインドである。

簡単な報道をさらに簡潔にして書いておく。
新型コロナウィルスについて、中国習主席はWHOを中心に各国は取り組むべきだと述べた。

インドと南アフリカは、国連安全保障理事会の改革を唱えた。
何気にBRICSには、国連安全保障理事会で拒否権を持つ5カ国のうち2カ国が入っている。
それも面倒くさい向きの2カ国である。
インド・ブラジル・ドイツ・日本が共同で常任理事国に向けて行っていた運動についても最近あまり聞かなくなった。
他の件が忙しくそれどころでないのだろうか。

4番目に発言したブラジルのボルソナロ大統領は、最初にブラジルはワクチンの速やかな開発を希望するというようなコロナ関係について述べたが、すぐに話題を変えた。

ブラジル国土のアマゾンその他の地域に蔓延した野焼きについて批判する国々は、一方でブラジルで不法伐採された木材を大量に購入していると述べた。
これを聞いて、南米のコカイン生産国が米国などから麻薬取締のゆるさを指摘されたときに、そんなことを言っても米国や欧州の需要が大きく、貧しい地方の現金収入となるから撲滅は無理だと反論することを連想した。

よく考えると麻薬と木材のケースは全く異なる。
麻薬の場合は売る方買う方両方が違法なことをしている意識があるはずだ。
木材の場合は売る方は違法であることを承知しているが、買う方は輸出入書類が偽装されているかどうかわからないのではないだろうか。
だからこれは無茶な言いがかりであると思う。

米国でもブラジルでもマスコミは右翼を目の敵にするが、今回の報道でも、全く証拠を示さずに環境破壊を人のせいにしていると、米国のトランプ大統領へ向けられたのと同じ論調(全く証拠を示さずに人のせいにする)であった。
全く証拠を示さずに人のせいにする強引さは、多分右翼の常套手段なのだろう。

最後にボルソナロ大統領は、WTOや中国が擁護するWHOを含む国連とその各組織は機能不全であり改革されるべきだと、安全保障理事会についてはインド・南アフリカに賛同、WHOについては中国に反対する立場をとった。

中国本体への直接の批判はさすがに避けたが、新型コロナウィルスについてトランプ大統領と同じ意見を持つボルソナロ大統領は、間接的に中国を批判する形になった。
中国は今やブラジルの輸出の最大顧客であって、精一杯の批判と言えるかも知れない。

ボルソナロ大統領は、サンパウロ州立大学ブタンタン研究所と共同して行われている中国シノヴァッキ(Sinovac)社の新型コロナウィルスワクチンの第3フェーズ試験に横槍を入れた。
ここでサンパウロ州のドリア知事は、2022年の大統領再選で対決する可能性のある、ボルソナロ大統領の政敵であることを忘れてはいけない。

報道の最後に、宣言か決議か忘れたが会議の共同書類の発表では、パリ会議の遵守などが唱えられて、環境対策についてはボルソナロ大統領の立場は受け入れられなかったようであった。
トランプ大統領の再選可能性が限りなく小さくなった今、環境問題でブラジル大統領の味方になってくれる仲間を見つけるのは不可能に近くなってきた。

2020年10月28日

人心荒廃ウィルス

歩道を歩いていたところ、道の真ん中を横切ってきた自転車の若者がスクイズボトルを落としてしまい、ころころとこちらに向かって転がってきた。

とっさに拾って「これ落ちたよ、気をつけて」とでも一言かけながら手渡すはずだった。
コロナ以前だったならば。。。

今はマスクを付けていない、どこの者ともわからない他人の持ち物に手を付けて、手渡す近距離に接近するような迂闊はできない。
気まずい思いをしながら、うろうろと去るしかなかった。

拾って手渡す小さい親切ができなかったので、自転車の青年は自転車から降りてかがんで自分でボトルを拾って、どこかへ走り去ったのだった。

別の日のことだった。
田舎道を車で走っていて、アスファルト道路へ合流する地点にさしかかった。
右側、つまり追い越し側の反対側を無造作に走り抜けたオートバイが、アスファルトとの段差に斜めに突っ込んでいってスローモーションで転倒した。

車から降りて「あんた大丈夫かい?けがはないか?」とか言って、オートバイを起こす手伝いくらいしたのだった。
コロナ以前だったならば。。。

今は全く知らない人の腕を引っ張ったり、肩を貸したりするのはいささか躊躇する。
それによく見るとこのオートバイの男、単車を起こすときにふらふらしていて、どうも酔っ払っているようである。
今日は日曜日の午後だしなあ、と思い少し罪悪感が減ったところだった。

ほどなくして、このオートバイの男の知り合いが何人か乗った車が広い路肩に停まって、2人ほど降りてきたのを見て、安心してその場を離れることができた。
どうせ車から降りてオートバイ男を助けていた連中も、田舎の空気の良いところで肉でも焼いたりしながら、一緒に飲んでいたのだろう。

酔っぱらい同士で仲良く助け合ってくださいな。
コロナ時代は不自由で不親切だけど、許してください。

2020年10月12日

ブラジルの困った種まく人たち

謎の種子、地球の反対側にも ブラジルでは約200件
2020年10月05日07時09分

日本でもかなり話題になった、中国からの謎の種子はブラジルまで達している。
この新聞記事の他に、やはり一週間くらい前の地元テレビのルポルタージュ番組で取り上げていた。

そこでは3、4人くらい種を受け取った人がインタビューを受けていた。
中国のECサイトに美容製品などを注文したら、ビニール小袋の種が一緒に付いてきたという。
全員が全員とも、幼植物が植えられた植木鉢の前で経緯を話してくれる。
得体の知れない種を受け取ったら、やはり普通の人は興味に駆られて、一体何に育つかどうしても見てみたい誘惑に負けられず、それがもたらすかも知れない害悪など思慮に及ばないのだろう。
記事の表題の200件のうちの、どれだけの件数にて受取人が種を蒔いてしまったかは、報道では明らかにしていない。
しかしこの様子を見ると、報道が得体の知れない植物の種や、それに付着しているかもしれない病原体や害虫についての危険を喚起して、決して蒔いたりせずに当局へ届けろと指示する前に、種を受け取った人はほとんど実際に蒔いてしまっただろうと想像できる。

インタビューをされた人の中には、ご丁寧にも近所の人に発芽してきた苗を見せたら、きれいな珍しい植物だと興味を持った人々が口々に欲しがったために、喜んでみんなに苗を分けて疑惑植物の増殖を手助けした人までいる。

相当昔に起きた事件を思い出した。
Wikipediaにも見出しとなっているゴイアニア被曝事故である。
1987年に起きたこの事件を簡単に説明すると、廃棄された放射線医療機器を廃材回収屋が持ち帰り分解して、中に怪しく光る粉を見つけた事件である。
きれいだろうと近所の人に自慢気に見せたら皆が欲しがったので分けてやり、結局被爆者を増やすことになったものだ。
この粉末はセシウムであり、2011年の東日本大震災に続く福島原発事故に絡んで、ゴイアニア被曝事故も思い出されたものだった。

2020年9月27日

チーズと味噌醤油の東西対決

モッツァレラ = it. mozzarella = po. mozarela / muçarela / mussarela もちろん原語はイタリア語であり、ポルトガルでは一番目の綴りが使われるようだが、ブラジルでは表記のゆらぎが多い。 ボッコンチーニ = it. bocconcini この単語を今まで知らなかった。 ブラジルではあまり使われないような気がする。 それとも私がイタリアの食物に疎いのか。 インターネットラジオOTTAVAのプレゼンター島田優理子(Yuriko Shimada)さんはチーズが大好きということである。 一体どのくらい好きなのか。 歌の勉強のためイタリアに滞在したときの、ホテルの朝食について話してくれた。 テーブルに「水槽みたいなの」が置いてあって、「白い濁った水」で「なにこれ」と最初は気味悪かった。 中に丸い小粒のモッツァレラ(ボッコンチーニ)が沈んでいることがすぐに判明してからは、穴の空いたお玉一杯にすくって、イタリア人も呆れるほど大量を大皿に入れて毎日食べまくったそうである。 確かにブラジルの店やスーパーでも、高級品である水牛の乳から作ったモッツァレラが、白っぽい液体に漬かった瓶入りやパック詰めで売られている。 最近行ってないがクラブの食堂では、液体漬けではなく、生やドライトマトと一緒にバジルとオリーブオイルで和えた一品がよく出ていた。 日本だったら星の数ほどもあるスナック菓子やせんべい・あられ類、水気が多い塩味ならば塩辛とか色々種類が多いが、こちらで手軽な酒のつまみといったら、というか、いつも家の冷蔵庫に入っているものといえば、チーズとオリーブの実がすぐに思い浮かぶ。 最近うちでは、買い物時にかさばるだけでなく、指に付く油のためPCやスマホと非常に相性が悪いポテトチップスのような塩味揚げ物は一切なくしてしまい、地元産のナチュラルチーズ、ケイジョ・ミナス(queijo minas)をまな板に置いて、ナイフで削ってつまみ食い風に食べることが多い。 オリーブも良いのだが、塩が効きすぎているように思う。 最近はサラミも家の冷蔵庫からは消えている。 ケイジョ・ミナスは土曜の市に行って、毎週1個の半分ごと買っている。 ナチュラルだけあって、一つ一つ大きさが微妙に違うから、量り売りである。 買うたびに塩加減や硬さ、つまり熟成加減も微妙に違うので、極端ではないが時々当たり外れがあったりするのも面白いところではある。 だから2人家族で1月で2個、1人1月(4週間)あたりならば、ちょうど1個を食べることになる。 ケイジョ・ミナスを作るためには直径約20cmの平たい円柱形、いわゆるチーズ形の型枠があって、1個はだいたい1.3kgである。 つまり私達の1年1人あたりチーズ消費量は15.6kgである。 1kgのチーズを作るのにおおよそ10リットルの生乳を必要とするそうだ。 だからこれだけのチーズを食べると、牛乳量で一日443mlつまりコップ2杯を飲むことに相当するだろう。 この量は世界的にみて、どのくらいの位置にあるのだろうか。 少し古いが2011年の国際酪農連合などのデータからトリップ・アドバイザーが作成したグラフで見ると、世界上位20位は、15位イスラエルと19位アメリカ合衆国を除いた残りは、すべてヨーロッパの国々である。 わが家の15.6kgは、17位リトアニア16.1kgと18位ベルギー15.3kgの間になる。 ちなみに日本は同資料によると2.2kgとなっている。 塩味のチーズをたくさん食べるとなると、気になるのは何といっても食塩摂取量である。 チーズの種類によって食塩含有量に差はあるが、ここでは3%とすると、1ヶ月あたり39g、1日あたりでは1.3gの食塩をチーズから摂取している計算になる。 他の食べ物の食塩量を減らせば良いか。。。 塩味の発酵食品の東西対決をしたくなった。 以下味噌と醤油の話は日本のものである。 味噌消費量の全国2014年~2018年の平均値は、5,339グラム。 味噌100g中食塩相当量は12.4gであるから、一日あたり食塩摂取量は1.8グラムとなる。 もう一つの液体塩味調味料である醤油はもっとすごい。 ある醸造所のサイトによると、年間一人あたり醤油消費量は7リットルである。 醤油100gの食塩相当量は14.5gであるから、醤油による一日あたり食塩摂取量は2.8グラムとなる。 さて味噌と醤油はおかずを作るときの調味料であり、それだけを食べたり飲んだりするわけではないが、チーズとなると調味料として使うこともあるが、それ単体を食べることが多いわけで、おかずの調理時には塩や塩ベースの調味料を別途使うことになる。 わが家では味噌も醤油も一回買うと、何年も冷蔵庫に埋もれている。 結局チーズと味噌醤油の対決は、どちらが勝つのかはよくわからなかった。 よく聞く話であるが、食塩摂取量を減らすためには、塩分たっぷりの加工食品を避けた上で、普段の調味になるべく塩を使わないようにすることだろう。 自分で塩分を調整することが難しい外食は、とっくの昔から縁がない。 後にオリーブの実について調べた。 通常よく食べるのはグリーンオリーブの塩漬けである。 廃棄率が25%、これはもちろん種である。 食塩相当量は可食部の3.6%というから、思ったより高くない。 脂質が15%というのは、アボカドの18.7%には及ばないが、やはり高いだろう。

2020年9月20日

ボルソナロ大統領は馬鹿振り賢者か

先にルイス・エンリケ・マンデッタが2020年4月半ばに保健相を罷免されたことを書いた。
後任の保健相はネルソン・テイチ(Nelson Teich)で、4月17日に就任した。
この人も前任者と同様、医師である。
そして1ヶ月に満たない5月15日に辞任した。
辞任の理由はマンデッタと同じく大統領との意見相違である。

ネルソン・テイチの後任は、エドゥアルド・パズエロ(Eduardo Pazuello)暫定大臣である。
前任2人が医師だったが、彼は全く異なるキャリアの持ち主である。
ブラジル陸軍大将で、リオデジャネイロオリンピックのときにはサポートする陸軍部隊を率いたり、ベネズエラと国境を接するロライマ州で難民受け入れのサポート部隊の指揮をとったりの公務活動歴がある。

正式大臣であった前任者の任期が1ヶ月足らずだったのに、暫定であるくせに、はや3ヶ月を超えている。
これだけ時間がたっても、ボルソナロ大統領は後任を探している様子が全く見えない。
候補者の名前が全く上がってこないのだ。
そんなことを思っていたら、この9月16日に、暫定任期4ヶ月の後に正式な保健大臣となった。

もしも保健省の長に前任2人と同様、専門家である医師のようなプロフェッショナルを据えていたら、どうなっていたか想像してみた。

有名無名に関わらず良心的な医師は、職業倫理に忠実に従って、患者を放っておけないものらしい。
マンデッタは毎日記者会見を行って、国民へ呼びかけることを忘れなかった。
ブラジル国民の間に、この大臣の言うことを聞いていれば病気を防げる、命を守ってくれるだろうという安心感を与えてくれていた。

ボルソナロ大統領の頭越しに直接国民に話しかけて、大統領を上回る人気と信頼を得ていたので、ボルソナロにとっては面白くなかったという一面があったのは否定できないと思う。

国民の信頼の厚い保健相が、これからもまだまだ社会的隔離が必要なので継続したいのだが、経済相が反対していると少しでも愚痴を言ったら、国民の非難の矛先が政府の経済チームへ向かう。
同じ目的を持って行動すべき連邦政府内の、保健相と経済相が対立してしまう。

経済活動を減速して社会的隔離を継続していくことになると、政府は国民に休業支援金を支払わないとならないだろうが、無い袖は振れないので支援を中止すると、飯が食えない金が無いという国民から悲鳴が上がり、心理的にも鬱屈する隔離はいい加減止めて働かせろ、経済を回せと、今度は不満をぶつける対象は、終点が見えない隔離をやみくもに強制する保健相へ向かうことになる。

厳格な防疫隔離を数週間かせいぜい2,3ヶ月行えば病気流行が完全に解決すると前もってわかっているのならばよいのだが、どれだけ隔離を続けていけばよいのか見当をつけようとしたら、最低半年、悪くすれば数年にわたるかもしれないというのだったら、施政者はどこかで見切りをつけなければならないときが来る。
ここでボルソナロ大統領の手本となりそうなのは、政治的姿勢が似通ったトランプ大統領であるが悲しいかな、国の財政力が異なるから、耐久力勝負に持っていくことができない。
見切りをつける、つまり政策転換をするのだが、国民の直接選挙で選ばれた行政の最高責任者である大統領としては、経済相も保健相も顔を立ててやり、統制の取れた政府を率いなければならない。

ここは聞き分けのない馬鹿になったつもりで一徹に、「コロナなんて風邪の一種だ」「人はいつか死ぬものである」のような、報道がブラジル国外へも知らしめた非情暴言的発言にふさわしい態度を取る。
コロナについてはブラジルが頑張らなくても、世界中で研究が進んでいる。
その知見を導入すればよいではないか。
だからワクチン開発については、コロナ大流行のわが国で第3フェーズ試験を大いにやってもらって協力しよう。

一方保健省には、政策の音頭を取るより、国内病院で消費するコロナ対策資材が不足しないように、リソース補給に徹してもらうことにしよう。
そのためにはなまじ一徹な医学の専門家より、軍隊で補給の仕事に長けている、聞き分けの良い将官を当てておこう。

こう考えて医師であるこれまでの保健相には、無知な大統領と意見相違で袂を分かったということにして彼らの名誉を守る。
このようにして保健省と経済省の対立を招くことなく、結果として両方の顔を立てることができたような気がする。

偶然そうなったのであったら、いささか買いかぶり過ぎとなってしまうし、ボルソナロ政府の施政には環境問題を始め問題が山積しているが、ボルソナロ大統領はコロナ禍長期化に対して、ブラジルの実情に即してかなりうまく政府の統一を保つことができていると評しても褒め過ぎではないと思う。
「ブラジルの実情に即して」先進国と同じような金をかけた政策を取れない条件では大切なことだろう。

2020年8月29日

コロナ感染速度減少局面入りか

集団免疫 = (po.) Imunidade de grupo/rebanho

マラニョン州の住民の10人に4人がCovid-19に罹っただろう
Quatro em cada dez moradores do Maranhão tiverem Covid-19
2020/8/25

今日と14日前それぞれの過去7日移動平均を比較したとき、15%以上減少した場合に、Covid-19流行速度が減少局面に入ったと判断されている。
2020年8月末の時点でそのような州は増加しているが、マラニョン州はその一つである。

マラニョン連邦大学とマラニョン州保健局が、マラニョン州で住民の血清調査を行った。
調査のサンプルは7/27から8/8の期間に、全州217のうち69の自治体で行われた。

その結果はかなり驚くべきことだと思われるが、住民の40%が抗体を保有していることがわかった。
マラニョン州の人口は約7百万人であり、その40%に当たる280万人がウィルスに感染して抗体を得たということである。
今まで報告された確認感染者は州全体で14万4千人であるから、その約20倍の感染者が存在する計算になる。

罹病者には通常3つほどの症状が現れ、代表的なのは嗅覚喪失と味覚喪失である。
そして感染者の26%に当たる人は無症状であった。

州で最初のCovid-19患者は3/19に発見されたので、4ヶ月半で住民の40%に感染するのは確かに驚くべき感染力といえる。
そして現在は住民全体に対する感染者の割合が増えて、ウィルスはかなり「感染する相手を見つけるのが困難になって」いるのだろう。

ウィルスとそれが引き起こす病気について、人間の知識と経験が増えて、当初より死亡率が下がっているのかもしれない。
ウィルスに知能はないだろうが、エボラウィルスのように馬鹿力で押して宿主を殺してしまうよりも、適当にぬるくやって永続する方法に淘汰圧が働いているのかもしれない。

この感染速度減少期を経た後、感染増加がゼロになったとき、集団免疫が得られたということになるのだろうが、マラニョン州全体でその日はそれほど遠くないのではないかと思う。

2020年8月14日

コロナを利用する悪人ども

少し日は経つが、こんなニュースがあった。

ゴイアス州で薬物取引と戦う街道作戦
Operações nas estradas combatem tráfico de drogas em Goiás

本編の前に宣伝あり、pularでスキップ
0'28" 棺桶の中は麻薬のペーストブロック
1'38" 働く麻薬探知犬

葬儀屋の車に積んだ2体の棺桶の中は300kgの麻薬ペーストブロックが詰まっていた。
検問する警察へ答えた運転手の言葉は、
「Covid-19の死者の棺桶を運んでいるところだ」
というものだった。
そう言えば警官も恐れて、敢えて開けて中身を確認しようと思わないだろうから、かんたんに逃れられる、と考えたのであったが、思惑が外れた。

1'38"では、トラックの荷台下を嗅ぎ回る麻薬探知犬の活躍が見られる。
仕組んだ偽装底に隠した薬物も感知できる。
このような働き者の動物の力を借りて、薬物不法取引との戦いはコロナの大流行の中であっても、ひとときも休むことはないようである。

このビデオには登場しないが、コロナがらみの犯罪には、入院したいコロナ患者の家族に近づき、病院のスタッフに知人がいるから、金を払えば早く呼吸器の便宜を図ってやるとの言葉で金を騙し取る、というのがあった。
病床や呼吸器の不足と言う情報を利用して、古典的な犯罪が新しい衣をかぶっている。

ブラジル連邦政府は、コロナのために収入が減った自営業者や生活保護受給者を対象とした緊急援助金を設立してほぼ月1回ペースで支給している。
最初の支給は4月半ばから始まったから、即座とは言えなくても、日本の10万円支給と比較するとかなり早かった。

現役の公務員や犯罪者が不正申請をして金を手にしたのが摘発されているから、これもコロナ利用の犯罪と言える。
不正の疑いがある口座が約130万あるというが、大方の摘発が1回目の支払い後であったので、以降の支払いは停止されているという。
もっともこの数には、正当な受給者に相当するのだが書類不備のため保留されたといったケースも含まれていて、全部が不正ではない。
実際にそれだけの数の口座に1回の支給が行われたとしたら、7億8千万レアルの国庫損害である。
どうして初回支給にチェックが間に合わなかったのか、きっと迅速な支給を第一として、厳密な審査を後回しにしてしまったのだろう。

せっかく連邦歳入庁(税務署)が徴税目的のため管理するCPFという、日本のマイナンバーのずっと先輩の個人識別手段があるのに、どうして公務員や正規の被雇用者のCPFのリストと照合するという手数を踏まなかったのか、そんなに時間とコンピューターパワーを必要とする大仕事であったのか疑問である。

現役の公務員や会社員が緊急援助金の申請手続き方法を見て、軽い気持ちでダメもとで試してみたら本当に金がもらえたからそのままもらっておくか、といったケースもあるだろうし、不正に入手した他人のCPFとデータを使用して本人より先に手続きをしてしまい横取りをする、といったケースもある。
後者に関しては、パソコンやスマホを多数備えた事務所を構えて、大人数で他人のCPFを使って詐取する犯罪組織まで摘発されている。

性善説が通用しない輩が、かなりいることは予想できたはずである。

2020年8月13日

当たる予測外れる予言

ルイス・エンリケ・マンデッタ(Luiz Henrique Mandetta)は、2019年1月から2020年4月までブラジルの保健相であった。
国民の隔離政策とクロロキン使用について、ボルソナロ大統領との意見の相違が大きく、4月半ばに罷免された。

この人は元々医師であり、Covid-19の流行の予測を行ったことを2020年3月29日の当ブログ記事に書いた。
思い出してみよう。

「患者の増加期は4,5,6⽉、平坦期が7,8⽉、下降期は9⽉からで、⼈⼝の50%が感染するまで続くだろう、と予想していると発言した。
しかしこれは政府と国民が全く対策を取らなかった場合であり、医療崩壊に至ると付け加えた。」
ということだった。

最近のテレビニュースでは、ブラジルのCovid-19動向を説明するのに、感染確認数増加や死亡数増加について、今日と14日前それぞれの日から7日前までの移動平均をとって、その間の比率を計算している。
14日前と比較してプラスマイナス15%以内に収まっていたら、増減なしと判断する。

それに準じて、7日間移動平均のグラフを作ってみた。
死亡数増加について見てみる。
初期に当たる4月中旬に200%程度から始まった死亡数増加数の14日間増減曲線は上下しながらも急速に低下して、6月中旬ころからグラフ横軸を中心として上下する増加数平坦期(つまり、おおよそ一日1000から1050)に入っていて、現在も続いている。
マンデッタ元保健相の予測にほぼ沿っているといえる。

ということは、マンデッタ予測がこれからも当たるのならば、いま8月中旬に入っているから、あと3週間もすれば増加数が減少していく時期を迎えることになるだろう。
あるいは平坦期入りが半月早まったことから、減少期も早まってすぐにこれから減少が始まる(常にグラフの横軸の下に位置する)かもしれない。

さて、ボルソナロ大統領の問題発言にこういうのがあった。
ブラジルのCovid患者急増に関してどういった政策を取ろうとしているのか記者に問われて、
「どうしろって言うんだ?私は救世主だが奇跡は起こせない」
と答えたものだった。

種を明かせば大統領のフルネームは"Jair Messias Bolsonaro"で、メシアスがミドルネームであるから、それにかけているのであって、何も自分が救世主であると自任しているわけではない。

名前が救世主であるのはまあ良いとして、予言者であるかどうかが問題だが、別の機会にこう発言した。
「コロナは国民の"60%"が罹るまで続く」
"60%"と言う数字は50から60だったか、それとも60から70だったかよく覚えていないが、とにかく半分以上ということだ。

この発言は明言しないまでも、スウェーデンが拠りどころとする、国民が集団免疫に達するのを目標とするということと、実質的に同じではないか。

マンデッタ元保健相はボルソナロ政府発足当時からの保健相であるから、両者が決別するまでのボルソナロ大統領の医学・疫学的な発言内容は、マンデッタがボルソナロに指南したことに違いないと思われる。

さて、当たるか当たらないか?

2020年8月4日

コロナ誰が先に抜け出せるカナ

Covid-19による死亡数が最も多い7月:32,912の生命が失われたと各州保健局は指摘
32.912 vidas perdidas: julho foi o mês com mais mortes por Covid-19 no Brasil, apontam secretarias de Saúde

前回引用したページにはもう一つ興味深いデータがあったからここにのせる。
Covid-19が流行している国々の比較である。
どの国が一番「うまくやって」いるのだろうか?
答えはすぐに出ない。
有効なワクチンが出回って、十分にCovid-19の制御ができるようになったときに、ようやく判定が出るだろう。

月別死亡数の変移
2020推計人口(千)死亡数/10万人7/31合計2月3月4月5月6月7月
ブラジル212,55943.5592,56802025,80423,33530,31532,912
米国331,00345.33150,05402,39850,03049,13924,63623,851
イタリア60,46258.1135,1322111,57016,0915,6581,404388
連合王国67,88667.7645,9992221,40824,68912,2795,1992,424
フランス65,27446.1730,13623,01521,0374,6631,013406
インド1,380,0042.5935,7470291,0454,09011,72918,854
メキシコ128,93335.1845,3610201,5497,84617,23318,713
データ元:ブラジル各州の保健局および世界保健機関(WHO-ポルトガル語ではOMS = Organização Mundial de Saúde)

元報道の月ごと死亡数の表に、2020年推計人口(単位:千人)と、計算された各国人口10万人あたり2020/7/31までの累計死亡数を一緒に載せた。
これをみると、ブラジルは米国のまだまだ後ろにいると思っていたのだが、単位人口あたり死亡数で追いつき追い越す勢いである。

いわゆる「先進国」のピークが4月であるのに対して、「発展途上国」のピークが7月であるのはたまたま偶然であろうが、先進国対発展途上国という図式になった。

先進国グループの特徴として、みんな金を持っているから国内・海外を旅行する人が多くて、ウィルスを急速に蔓延したので、感染が3月、4月の初期に急増した。
もともと欧州自体国境がないようなものだったし、米国人は世界中どこでも観光していた。
その結果、「冷や水を浴びせる」効果にあたって、政府は厳しい隔離政策を執る判断に容易に踏み込めた。

発展途上国グループは金持ちもいるが、自分の生まれ育った町から出たことのない人も多く、初期の感染は緩慢だった。
その証拠に、ブラジルの初期の感染者はヨーロッパ旅行帰りの富裕層から始まった。
職場を共にする、例えば富裕層の家庭で働く家政婦とか運転手とかの人たちが、富裕層からウィルスを庶民層の家庭へもたらす役割を果たした。
そのように、初期においてじりじりと緩慢な拡大であった途上国グループは、残念ながら「茹でガエル現象」であり、感染が激増した時期には「隔離疲れ」も加わり、強力な社会隔離を継続する条件になかった。

ブラジル、インド、メキシコでピークが7月にあるということは、8月も現状維持、下手するとさらに増加するのではないかという恐れはある。
変な言い方になってしまうが、インドは「伸びしろ」が大きい。

2020年8月3日

誰もが罹ることになるのかコロナ

Covid-19による死亡数が最も多い7月:32,912の生命が失われたと各州保健局は指摘
32.912 vidas perdidas: julho foi o mês com mais mortes por Covid-19 no Brasil, apontam secretarias de Saúde

COVID-19による1日当たり死亡数の2020/8/1の過去7日移動平均1,017は、14日前の過去7日移動平均と比較して-4%であり、統計的には変化なし。
COVID-19の1日当たり確定感染者数の2020/8/1の過去7日移動平均44,635は、14日前の過去7日移動平均と比較して+34%であり、統計的に増加した。
これから1,2週間後の死亡数が増加するかどうか懸念される。

月別死亡数
死亡数
2月0
3月202
4月5,804
5月23,335
6月30,315
7月32,912
合計92,568
出典:ブラジル有力報道機関のコンソーシアムが各州の保健局による数字を集計したもの

2020年5月8日に州ごとの10万人あたり死亡数の比較表を作ったのであるが、約3ヶ月たった今、同じ表を作成した。

表の色は次の意味がある。

8月1日の1日10万人あたり死亡数の過去7日移動平均が、14日前の1日10万人あたり死亡数の過去7日移動平均と比較して:

赤 増加中:14日前より15%以上増えた
黄 変化なし:14日前よりプラスマイナス15%に収まっている
青 減少中:14日前より15%以上減少した

順位地方人口COVID-19死亡数死亡数/10万人5/6の順位
1NRR ロライマ605,76151384.6913
2NECE セアラ9,132,0787,69884.302
3NAM アマゾナス4,144,5973,27879.091
4SERJ リオデジャネイロ17,264,94313,55678.524
5NEPE ペルナンブコ9,557,0716,59769.033
6NAP アマパ845,73156867.165
7NPA パラ8,602,8655,75066.847
8SEES エスピリトサント4,018,6502,56663.8510
9NESE セルジペ2,298,6961,44862.9918
10NAC アクレ881,93553560.669
11NERN リオグランデドノルテ3,506,8531,87953.5814
12CWMT マトグロッソ3,484,4661,84953.0626
13SESP サンパウロ45,919,04923,23650.606
14NRO ロンドニア1,777,22588149.5715
15CWDF 連邦区3,015,2681,49049.4216
16NEAL アラゴアス3,337,3571,58147.3711
17NEPB パライバ4,018,1271,83345.6212
(ブラジル全国)212,559,00093,56344.02
18NEMA マラニョン7,075,1813,03242.858
19NEPI ピアウイ3,273,2271,35441.3719
20NTO トカンチンス1,572,86639024.8024
21CWGO ゴイアス7,018,3541,68624.0223
22NEBA バイア14,873,0643,51723.6517
23SPR パラナ11,433,9571,97517.2720
24SRS リオグランデドスル11,377,2391,94717.1122
25SSC サンタカタリナ7,164,7881,15416.1121
26CWMS マトグロッソドスル2,778,98638914.0027
27SEMG ミナスジェライス21,168,7912,86113.5225
出典:表の死亡数はブラジル連邦政府保健省、色付けの根拠はブラジル有力報道機関のコンソーシアムが各州の保健局による数字を集計したもの
人口データは5月作成と同じIBGEのもの

さて、この色付けから何が読み取れるか。
最初に注意しておくと、ニュースで発表されるこの色付けは、毎日くるくる入れ替わる性質のものなので、あまり真剣に気にするものではない。

大雑把な傾向であるが、10万人あたり死亡数上位の州は、青い色が多い。
つまり、多くの人が罹患してしまった後で速度が落ちてきたのかもしれない。
現在死亡数増大の速度が落ちた青色の州が、そうでない州と比較して社会隔離を熱心に行った結果であると、多少はその傾向はあるだろうが、完全には肯定することはできない。

7月終わりのブラジルの社会状況は、なんとかロックダウンを避けて、できるだけ通常営業へ持っていきたい州ばかりである。
もちろん、各州は科学的見地に則って数段階の基準を作って、隔離緩和を段階的に行う手順を備えているから、社会隔離がいっときに元の木阿弥になるわけではない。

そして10万人あたり死亡数下位の州は、死亡数が2週間前より増加している赤色の州が多くなっている。
これは最初増加がゆっくりで、防疫コントロールが成功して一見このまま収まってしまうのではないか、と思えた州であっても、社会隔離が何ヶ月も継続させられる経済的条件をブラジルのどの州も持っていない状況で、結局いつかは死亡数の増加を抑えることが不可能になるときがやって来ることを意味しているのではないだろうか。

つまり、いまは平穏無事であっても、いつかはきっとコロナと対面すべき時が、誰にもどうしても避けられないのではないか。

2020年8月2日

外国人から治療費を取りっぱぐれない方法

日本に入国した外国人海外旅行客や、不法入国外国人が病気にかかって治療を受けたのは良いが、支払えない治療費をどうするかが問題になることがあったと思う。
もっとも最近はコロナの恐れのためそもそも入国が認められないので、ニュースで聞くことはなくなったようではある。

日本がコロナ回復期になって外国人に国境を開放することになったら、問題になりがちな医療のただ乗りや踏み倒しを防ぐためには、次に書くブラジルの施策を取ると良いのではないか。

ブラジルは飛行機で到着する外国人に国境を再開
Brasil reabre fronteiras para estrangeiros que chegam de avião
2020/7/30

この記事によると、ブラジルはこのほど空路で到着する外国人に国境を再開することを決定した。

やみくもに再開したのではない。
条件付きである。
ブラジル滞在期間中ブラジルで有効な健康保険、つまり疾病をカバーする海外旅行保険のことだと思うが、これに加入していることを、出発地で航空会社によるチェックを通った、ブラジル滞在90日までの外国人に入国許可が出ることとなった。

マトグロッソドスル、パライバ、ロンドニア、リオグランデドスル及びトカンチンスの5州の空港については当入国許可規則は適用されない。
以上の措置は8月末日まで有効であるが、陸路または水路による外国人の入国は今まで通り認められない。

コロナ大爆発で現在のところ、どこへ行っても鼻つまみされるブラジル人(もちろんブラジル居住外国人も含む)である。
ブラジル居住者が外国へ旅行するのは、非常に困難な時期である。
夏のバカンスシーズンに海外観光客を大いに呼び込んで経済を復興させたいEUも、ブラジル人や米国人はお断りである。

伝染病流行国では黄熱のように、入国するために予防接種証明書を必要とする病気・国がある。
現在のブラジルは米国と並ぶ世界一、二のコロナ流行地である。
ブラジル観光旅行をしたいという外国人がどれだけいるかわからないが、ワクチンのない今はブラジル旅行中にコロナにかかって入院するような事態になったとしても、旅行者本人も安心して治療を受けられるし、ブラジル保健システムも本来の対象外である非居住者の治療代がかさむようなことがないようにというのが目的であろう。

日本では3ヶ月以上滞在の外国人は国保加入義務があるので、普通の考えの善意の人にはそうしてもらえばよいが、そうでなく最初から3ヶ月滞在込みで高額治療を目的とするような外国人に対しては、既往症免責など別の方策が必要になるだろう。

2020年8月1日

苦労して見たネオワイズ彗星

ネオワイズ彗星は、まず北半球で見えるようになり、近日点通過前には夜明け時に東の空にかなり明るく(1等星)輝いたそうである。
しかし梅雨の長雨が時期外れまで続く日本では、実際に見ることができた場所はそう多くないようである。

南半球で見られる位置までやってきたので、彗星観察に挑戦した。

第1回試行 2020/7/22
日が経つほど彗星は太陽から離れて暗くなっていくので、なるべく早いうちの観察が良いのだが、早いうちは地平線に近すぎるという欠点もある。
私が住む場所の緯度で観察できる2日目に当たる日であった。

太陽に近いので、当然日没時には既に地平線間際で沈む寸前まで低い位置であるため、遠くに見える地平線際の街灯に光が消され気味な条件のもと、予習不足で正確な位置がわからないうちに時間切れとなってしまった。

第2回試行 2020/7/24
天頂の周囲の上空はきれいに晴れているのだが、北西の地平線際にはいわし雲があって、彗星自体も、彗星の位置の参照にする恒星の並びも確認できないうちに時間切れとなってしまった。

第3回試行 2020/7/26
地平線際の照明がない、観測に最適な場所へ行くことはできなかったが、前回の失敗から学んで、手前にある木々が灯りを隠すことのできる場所を選んでおいた。
電灯の直接光が双眼鏡に入らなくてもその近辺に視線を向けると、鏡筒かレンズの表面から、変な反射が起きて、星の光と区別しにくくなることがわかったからである。

第1回試行日には三日月であったものが、この日には上弦の月になっていて、しし座とおおぐま座にある、彗星の位置の参照に使う恒星がなかなか見えてこない条件であった。

あらかじめ確認した2つの恒星(おおぐま座ξとν)が作る線を延長した先が彗星の想定位置であったから、双眼鏡で丹念に光を探した。
多分これだと思われた、右上方向に薄く刷毛を引いたようなぼやけた光の点は、本当にこれかなと多少疑問が残った。

観察を終えて部屋に入り、彗星の位置を推定するのに使った、日本出版の星図を開いて、さっき彗星が見えた場所に何の恒星も存在しないことを確認した。
しいて言葉で書くと、おおぐま座の2つの4等星ξ(クシー)星とν(ニュー)星を結ぶ線を右方へ延長したところにある2つの5等星55星と57星を一辺とした上側へいびつな三角形を作る場所である。
場所を忘れないうちに鉛筆で星図上に年月日時刻と地平線を書き込んで、その写真を撮って彗星観察の記録とする。


サンパウロ市(南緯23º)の2020/7/24 18:30を基準としたネオワイズ彗星推定位置と等級である。
これを見ると、7/26の推定光度は5.39等である。
見つけるのが困難なはずだ。


舞台から一番遠い席から観劇したオペラのような感じではあるが、これを見逃すと6800年待たないと戻ってこない貴重なものを見ることができて、刈り取りの終わった畑の地際から這い上がるダニに噛まれながらも苦労した甲斐があったというものだ。

2020年7月14日

貧乏人に辛く当たるコロナ

2週間ほど前に書きかけで放っておいたので多少古くなったけれど、社会階層とCovid-19感染の関係に関する報道があったので書いておく。

調査が明らかにしたCovid-19に罹りやすい社会グループ
Levantamento identifica quais grupos sociais estão mais propensos à Covid-19

去る2020年7月1日にサンパウロ州のCovid-19による死者数が1万5千を超えた。
そして調査は、どの社会グループ(階層といってもよい)がこの病気に罹りやすいのかを明らかにした。

2020年6月15日から24日の期間にサンパウロ市内各地区で住人の感染(抗体保持)調査が行われた。
分析によると95万8千人の18歳以上の市民が、既に新コロナ病に感染したことがわかった。
人口の11.4%にあたる。
しかしCovid-19への感染リスクが他の者より非常に大きい住人グループがある。

セントロ(中央)地区人口の6.5%が感染者であるが、周辺部のより貧しい地区の住民ではその割合は16%である。

コロナは大卒の住民の5%に達したのだが、基礎課程未了者では23%が感染した。
白人は感染者が少なく7.9%であったのだが、黒人では19.7%に跳ね上がる。

より罹りやすい人たちは、混雑する公共交通機関を利用して職場に通い、直接対人の機会が多い職業についていることが多い。
安全な家の中に隔離されてテレワークしながら、給料を満額もらえるような職種の人は少ない。

そして住む家は人口が密集するファヴェラ(favela スラム)の中で、高いところは水道事情が悪くて十分に手洗いできなかったり、狭い家に大勢が住んでいて家族員間の感染を防ぐことが困難なので、遊び好きの若者がウィルスを家に持ち込むと、同居する高齢者や持病リスク者が感染罹病しやすい条件にある。

5月の調査ではサンパウロ市住民の4.7%が感染者(抗体陽性者)であったが、今回の6月調査では11.4%まで上昇している。

2020年6月3日

隠れ感染者推定と集団免疫までの道

日本もそうだといわれるが、ブラジルもCOVID-19検査件数は少ない。
そのため隠れ感染者が多いのは想像できるが。どのくらいだろうか。
その疑問に多少答えてくれる記事があったので書いておこう。

ブラジルのコロナウイルス感染者は、公式統計の確認感染者数の7倍だろう
Brasil teria sete vezes mais infectados pelo coronavírus do que mostram dados oficiais
25/05/2020 21h34

各市で少なくとも200人の調査ができた全国90の市で、既に感染して抗体を持っているかどうか調査が行われた。
調査された市の人口を合計すると、ブラジル総人口の25.6%に相当する。
リオグランデドスル州のほぼ南端の都市にある、ペロタス連邦大学が全国で実施した調査である。
Proporção da população com anticorpos
fonte: Universidade Federal de Pelotas

数字は推定される各市の抗体保持者割合である。

まず抗体保持者が多い地方、いずれもブラジル北部の町から―
  • パラ州ブレヴェス Breves - PA 24.8%
  • アマゾナス州テフェ Tefé - AM 19.6%

このような感染進行地で住民全体として集団免疫を得るのは、数字では道半ばではあるが、ここまで来たらそう遠くないことに思える。
両市の人口はそれぞれ10万人と6万人である。

ここからは州都の数値である―
  • パラ州ベレン Belém - PA 15.1%
  • アマゾナス州マナウス Manaus - AM 12.5%
  • アマパ州マカパ Macapá - AP 9.7%
  • セアラ州フォルタレザ Fortaleza - CE 8.7%
  • ペルナンブコ州レシフェ Recife - PE 3.2%
  • サンパウロ州サンパウロ São Paulo - SP 3.1%
  • リオデジャネイロ州リオデジャネイロ Rio de Janeiro - RJ 2.2%
  • サンタカタリナ州フロリアノポリス Florianópolis - SC 0.5%

  • 調査が行われた90市 1.4%

記事では隠れ感染者は確認感染者数の7倍というのだが、20倍に達するという別記事もあり、中を取って計算しやすいように、確認感染者が一人いたら隠れ感染者が9人いるということにしておこう。
任意の市の確認感染者数が発表されたら、それを10倍した数が実際の感染者となり、その市の人口がわかれば、人口に対する感染者割合が計算できる。
それによって、どこまで達したら流行が止まるかの推定ができることになる。

2020/6/2のわが町の推定感染者数の人口割合は1.9%であった。
同日のブラジル全体の推定感染者数の人口割合は2.8%であった。

2020年5月18日

今「田舎でのんびり」できないアマゾン的理由

ブラジル・アマゾナス州は、最近はECサイトの名前のほうが有名になっているかもしれないアマゾン川の中流域である。
ここがブラジルで一番COVID-19が流行している州である。

報道によると、州内のCOVID-19の47%が州都マナウス以外で起きている。
この47%は多いのか少ないのか?
ブラジルの人口最大都市・最小都市ランキング2019年版を見ると、マナウス市の人口(ブラジル全国第7位)はアマゾナス州全体の53%であり、つまり州都以外は47%であるから、人口分布と全く一致している。
州都マナウス市でもアマゾナス州の地方都市でも、偏りを無視すれば単位人口当たりCOVID-19分布は一様であることがわかる。

そして、ブラジル全国の(ブラジルでは人口の大小に関わらずムニシピオmunicípioだが、日本感覚で大から小まで全部というニュアンスで)市町村の、人口10万人当たりCOVID-19死亡数のワースト20の中で、12がアマゾナス州の市町村なのである。
ちなみにブラジルワーストワンはタバチンガ Tabatinga-AM 68.3、2位はマナカプル Manacapuru-AM 57.5で、ワースト6は全部アマゾナス州の町であり、州都マナウスはワースト13位である。

このマナカプルの街路の様子が後に載せるビデオで紹介されているが、信じられないほど住民に緊張・恐怖感が感じられない。
病魔のことなどほとんど心配している様子が見られず、コロナ以前、もうこれは2019年で終わった「前コロナ時代」と別の時代に区分したくなるのだが、昔の日常風景がここでは今でも続いているようだ。

調べたらアマゾナス州の面積は1,571,000 km²とある。
日本全土の4倍以上である。
人口をそれで割った人口密度は2.64人/km²と、日本の346.9人/km²と比較すればその過疎さがわかる。

ウィルスは人から人への伝染によってしかうつらず、どうして広大なアマゾナス州の隅々、交通網から孤立しているような先住民集落までコロナウイルスが移動するのか、日本の常識からは全く想像できないだろう。

最近のニュースで見たが、感染経路は主にモグリの河川客船であると言われている。
ときどきアマゾン河面で船の遭難事故のニュースがあるが、まともに営業している客船が遭難することもあるけれど、もっと儲けようと乗客定員を大幅に超過して、乗客名簿と実数が食い違うような、悪徳な不法船業者の乗客すし詰め船であることが多い。

ルポルタージュ映像を見ると、不法合法に関わらず安い運賃で船室に入れない等級では(そもそも乗ったことがないので客室などあるのか、あったとしても甲板より快適なのか不明であるが)、乗客はハンモック持参で、覆い付き甲板に数多く立つ柱や梁にハンモックを結びつけて張って、隣のハンモックとの間隔は人がかろうじて通れるくらいしかないようである。
そうして何日もかかる河の遡行をするのだ。

隣の人との距離が小さくしかも何日も一緒に過ごすため、壁のないオープンスペースとはいえ、口を閉じておくことのできないブラジル人にとっては、「密」が2要因は重なっている環境だ。
そうして州都マナウスで感染した地方人は、同船の健康人を道連れにして船中で病気を増殖させてから、地方の町へ持ち込む。
まあやっていることは、外洋クルーズ船と同じではある。

孤立した先住民集落へどうして病気が達するかというと、不法金採鉱者や不法伐採業者による接触と言われているが、フナイ(Fundação Nacional do Índio - FUNAI 国立インジオ財団)の職員から感染する例もあると思う。
町に暮らす若いインジオが帰省したり、集落住民が大きな町へ買い出しに行くこともありそうではあるが、それだったら完全な孤立ではないか。

病人の分布は州都・地方で偏りを考慮しなければ同一であるのだが、困ったことに病院の分布はそうではない。
地方で入院が必要になる場合には、地方の中核病院がそれに当たるのであるが、よほど重症になってより集中治療が必要になる場合には、救急飛行機でマナウスへ空輸されることになる。
多分私的医療保険でないと利用できないと思う。
そのような「公共保険で面倒見るのは地方病院まで」ということはなくて、スス(SUS 保健単一システム)でも行っていると、後から報道を聞いてわかったが、それでも空路輸送にかかるのは、相当重症になってからであることに変わりはない。
マナウスへ着いたといっても安心はできず、州全体が医療崩壊を起こしているから、運良く集中治療病床や呼吸器の空きがないと治療を待たなければならない。
現在マナウスの墓地埋葬数(ペース)は、「前コロナ時代」の3倍に達しているという。

寒さの及ばないアマゾンの田舎町で、野菜や果物を植えて小動物を飼い、野生フルーツやナッツを採集したり川で釣りをして暮らしたいと思っても、COVIDのようにおかしな病気に罹ったら大変であることを痛感する。

墓地の無数の墓穴を鳥瞰したシーンから始まる報道ビデオ(16 Mai 2020)を参考にした。

2020年5月7日

COVID-19ブラジルの危険な州と安全な州

ブラジルは十分に広いから、COVID-19の流行状況も場所によって大きな違いがある。
岩手県のように全く感染者が確認されない場所や、大都市のように感染拡大が避けられない場所がある点は、日本でも全く同じである。

日々増加していく数字なので、あくまでも2020年5月7日時点に過ぎず、これから将来の予測をすることは全く不可能である。
特に最近ブラジルは、商店閉店や自主的隔離(Fique em casa つまり Stay home)の緩みが著しく見られるので、1、2週間先の見込みは暗い。

COVID-19による10万人あたりブラジルの州ごと死亡数(2020/5/7)
地方人口COVID-19死亡数10万人あたり死亡数
(参考 スペイン全国)46,755,00017,26336.92
NAM アマゾナス4,144,59780619.45
NECE セアラ9,132,0789039.89
NEPE ペルナンブコ9,557,0718458.84
SERJ リオデジャネイロ17,264,9431,3948.07
NAP アマパ845,731617.21
SESP サンパウロ45,919,0493,2066.98
NPA パラ8,602,8654104.77
NEMA マラニョン7,075,1813054.31
(ブラジル全国)212,559,0009,1464.30
NAC アクレ881,935364.08
SEES エスピリトサント4,018,6501553.86
NEAL アラゴアス3,337,357982.94
NEPB パライバ4,018,1271012.51
NRR ロライマ605,761142.31
NERN リオグランデドノルテ3,506,853762.17
NRO ロンドニア1,777,225372.08
CWDF 連邦区3,015,268351.16
NEBA バイア14,873,0641651.11
NESE セルジペ2,298,696251.09
NEPI ピアウイ3,273,227351.07
SPR パラナ11,433,9571040.91
SSC サンタカタリナ7,164,788630.88
SRS リオグランデドスル11,377,239900.79
CWGO ゴイアス7,018,354440.63
NTO トカンチンス1,572,86690.57
SEMG ミナスジェライス21,168,7911060.50
(参考 日本全国)126,476,0005510.44
CWMT マットグロッソ3,484,466130.37
CWMS マットグロッソドスル2,778,986100.36

死亡数は全て2020年5月7日発表された、ブラジル保健省のページ、及びスペイン、日本の政府機関による
人口は2019年のIBGE(ブラジル地理統計院)のサイトから入手できるファイルより

2020年5月5日

ブラジルの人口最大都市・最小都市ランキング2019年版

最近のニュースは新型コロナウィルスについての記事がほとんどだが、ブラジルの州や大都市の人口を知りたくなる場合が多い。
そこで、ブラジル地理統計院のサイトからダウンロードできるファイルをもとに表を作成した。

2年前の時点のブラジルの人口最大都市・最小都市ランキング2017年版と同様に作った。
今回のは2019年7月1日時点の推計値である。

ムニシピオ município とは、簡単に言うと日本の市町村レベルの地方自治体のことである。

ブラジルの人口の多いムニシピオ
都市推定人口備考
1SPSão Paulo12,252,023サンパウロ州都
2RJRio de Janeiro6,718,903リオデジャネイロ州都
3DFBrasília3,015,268連邦共和国首都
4BASalvador2,872,347バイア州都
5CEFortaleza2,669,342セアラ州都
6MGBelo Horizonte2,512,070ミナスジェライス州都
7AMManaus2,182,763アマゾナス州都
8PRCuritiba1,933,105パラナ州都
9PERecife1,645,727ペルナンブコ州都
10GOGoiânia1,516,113ゴイアス州都
11PABelém1,492,745パラ州都
12RSPorto Alegre1,483,771リオグランデドスル州都
13SPGuarulhos1,379,182サンパウロ大都市圏
14SPCampinas1,204,073サンパウロ州地方
15MASão Luís1,101,884マラニョン州都
16RJSão Gonçalo1,084,839リオデジャネイロ大都市圏
17ALMaceió1,018,948アラゴアス州都
18RJDuque de Caxias919,596リオデジャネイロ大都市圏
19MSCampo Grande895,982マトグロッソドスル州都
20RNNatal884,122リオグランデドノルテ州都
21PITeresina864,845ピアウイ州都
22SPSão Bernardo do Campo838,936サンパウロ大都市圏
23RJNova Iguaçu821,128リオデジャネイロ大都市圏
24PBJoão Pessoa809,015パライバ州都
25SPSão José dos Campos721,944サンパウロ州地方
26SPSanto André718,773サンパウロ大都市圏
27SPRibeirão Preto703,293サンパウロ州地方
28PEJaboatão dos Guararapes702,298レシフェ大都市圏
29SPOsasco698,418サンパウロ大都市圏
30MGUberlândia691,305ミナスジェライス州地方
注:ここで"地方"は、州都が属する大都市圏以外の場所を意味する

ブラジルの人口の少ないムニシピオ
都市推定人口
1MGSerra da Saudade781
2SPBorá837
3MTAraguainha935
4RSEngenho Velho1,034
5TOOliveira de Fátima1,112
6GOAnhanguera1,149
7RSUnião da Serra1,154
8MGCedro do Abaeté1,164
9SPUru1,165
10PIMiguel Leão1,246
11SCSantiago do Sul1,260
12SPNova Castilho1,267
13PRJardim Olinda1,331
14RSAndré da Rocha1,333
15GOCachoeira de Goiás1,351
16RSPorto Vera Cruz1,360
17RSCarlos Gomes1,377
18GOSão João da Paraúna1,381
19MGGrupiara1,388
20TOChapada de Areia1,406

次は州と地方ごとの統計である。

2019年7月1日現在ブラジル総人口及び地方と州ごとの人口推計値
地方・州州略号推定人口
Brasil 全ブラジル210,147,125
Região Norte 北地方18,430,980
Rondônia ロンドニアRO1,777,225
Acre アクレAC881,935
Amazonas アマゾナスAM4,144,597
Roraima ロライマRR605,761
Pará パラPA8,602,865
Amapá アマパAP845,731
Tocantins トカンチンスTO1,572,866
Região Nordeste 北東地方57,071,654
Maranhão マラニョンMA7,075,181
Piauí ピアウイPI3,273,227
Ceará セアラCE9,132,078
Rio Grande do Norte リオグランデドノルテRN3,506,853
Paraíba パライバPB4,018,127
Pernambuco ペルナンブコPE9,557,071
Alagoas アラゴアスAL3,337,357
Sergipe セルジペSE2,298,696
Bahia バイアBA14,873,064
Região Sudeste 南東地方88,371,433
Minas Gerais ミナスジェライスMG21,168,791
Espírito Santo エスピリトサントES4,018,650
Rio de Janeiro リオデジャネイロRJ17,264,943
São Paulo サンパウロSP45,919,049
Região Sul 南地方29,975,984
Paraná パラナPR11,433,957
Santa Catarina サンタカタリナSC7,164,788
Rio Grande do Sul リオグランデドスルRS11,377,239
Região Centro-Oeste 中西地方16,297,074
Mato Grosso do Sul マトグロッソドスルMS2,778,986
Mato Grosso マトグロッソMT3,484,466
Goiás ゴイアスGO7,018,354
Distrito Federal 連邦区DF3,015,268

2020年5月3日

日本もブラジルも9本針の効果か

前回の表をもう一度載せる。

スペインブラジル日本
死者初出日2020/3/132020/3/172020/2/14
10万人あたり死亡数33.952.780.33
死亡数15,1754,543351
人口(千人)46,755212,559126,476
人口密度(人/平方km)93.725.4346.9
65歳以上割合(%)20.09.628.4
3・4月平均気温(℃)11.5520.7511.30
3・4月合計雨量(mm)73240242

死亡数はスペインブラジル日本のデータは2020/4/30発表のもの
人口関係3指標は2019年の国連ファイルより
気候関連2指標は、マドリード、サンパウロ、東京、Wikipediaより

スペインとポルトガルからなるイベリア半島の国々は、南アメリカの国々の旧宗主国である。
だから言語だけでなくその習慣も引き継いでいるのは当然である。
欧州全体的にそうであろうが、キスやハグや握手の習慣である。

スペインとブラジルは肉体接触的習慣の多くが共通しているのだが、コロナ感染拡大の速度は両国で全く異なる理由は何だろうか。
今回コロナ感染が広まるまでは、普通の人がマスクを使うことはまったくなかった。
それはスペインも同じである。
スペイン人の生活の詳細はわからないが、ブラジル人は清潔好きで、よく言われるフランス人とは全く異なり、1日1回以上はシャワーを浴びる。
だからといってよく手を洗う国民かというと、そうでもないと思う。

前回で人口密度や年齢構成や気温や降水量やら何らかの関係があるのかと思ったが、データを眺めるだけではよくわからない。

高齢者人口の割合がスペインより相対的に低いブラジルは、そのために死亡率が低いとは言えるだろう。
でもそれだけでは、10万人あたりコロナ死亡率が1桁単位で違う説明を十分にできたと言えない。

感染と死亡が急速に増大して全く他に取る方策がなくなったスペインは、イタリアや英国と同様に罰則を伴う厳しい隔離、いわゆるロックダウンを行うことになり、その苦労の結果、ようやく隔離緩和へ向かえるようになった。

感染と死亡が急速に増大せず、しかもかなり局地的なブラジルは、最初3月下旬には住民の自主隔離実行率が高かったものの、4月末にかけて家篭りがだんだんゆるんできていた。
日米欧ほど財政状態が強くない国は、いや強い国であっても生産が止まる隔離状態を続けたくない政府の意向が反映する。
スペインほど死亡数増加が急速ではないものの、全く死亡増加率低下、検査の拡大や病床空き率の改善が認められないのに、5月に入ったら隔離緩和に向かっている。
そのためこれから1週間、2週間先に、ブラジルのコロナ死亡数が爆発的に増加しないか非常に心配である。

北半球と南半球の違いをして、これから北半球は下火になり南半球は酷くなるような予想があるが、これはどうだろうか。
ブラジル北部地方のアマゾナス州の州都マナウス、ブラジル北東部地方のセアラ州のフォルタレザやペルナンブコ州のレシフェなどの、いずれも熱帯地方の都市で、5月2日現在いずれも死亡数500以上にまで感染が拡大しているから、高温多湿だけでは病気の減少は望めない。

しかし、ブラジルで人口が一番多いがコロナ患者も一番多い、南回帰線が通るサンパウロ市では、最寒月7月でも平均気温は15.8℃であるから、マドリードや東京の3・4月平均気温より温和である。
だから天候のせいでそれほど悪くなることはないだろう。
インフルエンザの予防注射により側面擁護する必要はあると思うし、実際それは今ブラジルで行われている。

そこでBCG説である。
日本のコロナ死亡率が低い理由を説明する一つの仮説である。

もう腕を見ても痕跡を見つけることはできないが、3×3=9つの点があったことは確実に記憶にある。
ブラジル育ちの妻に、「9本針のはんこ」の記憶があるか聞いたら、覚えていると言った。
息子の予防接種カードを見たら、0歳時にBCG接種の記録がある。
日本もブラジルもBCG接種国であることがわかった。

同じイベリア半島でも、ポルトガルは接種国であるが、スペインはそうではない。
BCG接種のコロナ抵抗力増強仮説では、それがポルトガルのコロナ死亡率がスペインより低い理由を説明しているという。

現在のところこの仮説は実証されていないし、ブラジルのマスコミでこの話を聞いたことは一度もない。
でも十分ありそうな気がしている。
だからといって、残っているかわからないBCG接種の残存効果に期待するわけにはいかない。

全世界の最新のコロナ状況がここ"COVID-19"で見られるのだが、これを一日中見て恐れ嘆くのもどうかと思う。

2020年4月30日

コロナでスペインと同じにならないブラジルの謎

ブラジルでCOVID-19の初めての死者が出たのは2020年3月17日であり、インターネットラジオOTTAVA(オッターヴァ)の番組、本田聖嗣さんのOttava Frescaの「世界のニュース」関連の投稿を2020/3/24にしたときは、スペインの13日遅れと誤認してしまったが、実際は4日遅れであった。

その時添えた言葉は、「国民の性格や習慣と国のゆるさがそっくりなため、ブラジルは間違いなくイタリアやスペインの後を追っています」であったのだが、現実にそれは起きていない。
スペインの大感染をブラジルが4日遅れでたどっているわけではない。

死亡の実数で比較すると、同じ5千人であっても、人口5千万人の国と2億人の国では4倍の重みの差があるわけだから、指標としてよく使われる10万人当たり死亡数で比較する。

スペインブラジル日本
死者初出日2020/3/132020/3/172020/2/14
10万人あたり死亡数32.462.140.28
死亡数15,1754,543351
人口(千人)46,755212,559126,476
人口密度(人/平方km)93.725.4346.9
65歳以上割合(%)20.09.628.4
3・4月平均気温(℃)11.5520.7511.30
3・4月合計雨量(mm)73240242

死亡数は2020/4/27発表のもの
人口関係3指標は2019年の国連ファイルより
気候関連2指標は、マドリード、サンパウロ、東京、Wikipediaより

これを見るとすぐに気づくのが、死亡数が大まかに見て、
スペイン >(10倍)> ブラジル >(10倍)> 日本
である。

日本の死亡数がごく少ないのは特筆ものだが、今回は「国民の性格や習慣と国のゆるさがそっくり」な、スペインとブラジルの比較に注目する。

人口密度を見ると当然予想されるように、広大な国土のブラジルが低く、日本が非常に高い。
しかし、人間が密接に集中する都市部で比較すると、ミクロな差異が大きい。
ブラジルのスラム街は、小さな建物がぎっしり詰まっている上に、一部屋に住む人数が多く、距離を取ることが極めて難しい問題がある。
ここにコロナウィルスが入ると、急速に感染拡大する可能性が大きい。

国の全人口に占める高齢者の割合をみると、スペインはブラジルより多数の死者が出る要因が明らかにある。
しかし超高齢な国の一つである日本の死者数が少ない説明はつかない。
日本の老人はスペインの老人と比較して、数世代の大家族ではなく、子供や若者がいない、独居や老人夫婦のみの家庭が多いのではないだろうか。

3月と4月の平均気温の平均は、スペインと日本がほぼ同じで、温度の高い場所でウィルスの働きが鈍るという仮定に立つと、これもどうして日本の死者数が少ないのか説明できない。

3月と4月の降水量が他の2つよりかなり少く、乾燥しているスペインで死者が多いのは、低温と乾燥が合わさると死者が多くなるのではないかという仮定はできる。

昨日のニュースでは看過できない推定があったので書いておく。

リオデジャネイロの登記所で死因不定の死亡記録が急増
専門家は疑いのある患者のコロナウィルス検査不足が原因と見る。
Notificações de mortes por causa indeterminada disparam em cartórios do Rio
Especialistas culpam a falta de testes para coronavírus em pacientes com suspeita da doença.
Por Jornal Nacional 28/04/2020 21h03 Atualizado há uma hora

つまり、COVID-19と思われる病気で死亡した人がいても、必ずしも検査が行われないので、COVID-19と断定できずにより一般的な重症急性呼吸器症候群 (síndrome respiratória aguda grave, Severe acute respiratory syndrome = SARS)や、不特定呼吸器疾病 doença respiratória indeterminadaとかで記録されていることがある。
”残念なことに記録されているCOVID-19による死者数より約50%多いのではないかと思われる、とFiocruzの研究者は言った。”

そこで表のブラジルの死亡数を50%よりもっと潜在していると仮定して倍にしてみたのが、
スペインブラジル日本
10万人あたり死亡数32.464.280.28
である。
これでわかるように、それでもスペインには届かない。

このデータと比較できるように、さらに7日遡る2020年4月20日のものだが、ヨーロッパの3つの国の人口10万人あたりのCOVID-19死亡数を書き写しておく。

人口1023万人のスウェーデンでは4月20日現在、新型コロナウイルスの感染者数が1万4000人を超え、1580人が死亡している。
4月20日現在、人口536万人のノルウェーでは、新型コロナウイルスの感染者数は7100人を超え、181人が死亡。
人口550万人のフィンランドでは感染者数が3800人を超え、94人が死亡している。

10万人あたり死亡数
スペイン32.46
スウェーデン15.44
ブラジル(2倍)4.28
ノルウェー3.38
フィンランド1.71
日本0.28

スペインブラジル日本は2020/4/27のデータ
スウェーデン、ノルウェー、フィンランドは2020/4/20のデータ
ブラジルのみ故意に2倍にしてある

スウェーデン政府は国民に速やかに集団免疫をつけさせる政策をとっているそうで、一方スペインは政策を議論する以前に感染が爆発して、否応なく集団免疫をつける方向になってしまったといって良いだろう。

2020年4月28日

口座のない人に入金する技ブラジル編

前回、ブラジル連邦政府のコロナウィルス対策低所得者救済プログラムは、Auxílio Emergencial(緊急援助)と呼ばれ、特に政府のデータベースに名前が載ったことのない非正規労働者がどのように申請して登録されるのか書いた。

今回は、銀行口座を持たない多数の人々にどうやって現金を支給するかの問題である。
現在日本に全く銀行や郵便局に口座を持たない人がいるのかどうかは知らない。
しかし今回ブラジル連邦政府は、銀行口座を持たない数千万人に援助金を渡さなければならない。

既に政府の福祉関係データベースに登録されていて、援助金受給資格のあることが証明されて、しかも2つの政府系金融機関、つまりBanco do Brasil(BB ブラジル銀行)とCaixa Econômica Federal(CEF 連邦貯蓄銀行)に既に口座がある個人には、確か4月10日までに振り込みが行われた。
そして既に連邦政府の福祉プログラムBolsa Famíliaを受け取っている人は、そのカードを使って従来の受取日にこの緊急援助金の受け取りができる。
だから以上のグループは支給に問題はない。

既存データベース及び今回のスマホやPCによる申請登録によって援助金受給資格のあることが証明されたが、上記2つの銀行に口座がなかったり、申請登録時に他銀行を指定しなかった人にどうやって援助金を配るか?
連邦貯蓄銀行は、そのような人のために、Poupança Social Digital(社会デジタル貯金)口座を強制的に作り各個人に割り当てた。

デジタル口座へのアクセスは、CEFのスマホアプリ"Caixa Tem"を使わないとできない。
スマホアプリがCEFのサーバーと通信確立できれば、バーコードのある請求書の支払いや、無料回数に制限はあるが他銀行の口座へ振り込み、そして下に説明するカードなしでATMから現金引き出しをするときに必要なコードの入手ができる…、はずである。

しかしアクセス数が半端でないため、通信確立ができない。
何日もトライし続けて、早朝の過疎時間にようやく通信できたという報告が多い。
通信に成功しても、対話式の操作全部が終わって、振り込みや支払いの証明書や引き出しコードを受け取らないうちに切れたらやり直しである。
地方によってつながりやすさが違うらしいが、何日もつぶすことのある苦行である。

そして銀行口座など一切持っていないから、とにかく現金をおろしたい人は、多分もう一つの苦行が待っている。

CEFは、デジタル貯金口座からの現金引き下ろしスケジュールを次のように発表した。
4/27 誕生日1月2月、4/28 誕生日3月4月、4/29 誕生日5月6月、…
その日だけ引き出せるのではでなく、その日から引き出せるものと思われる。

銀行カードも生体認証もなしでどうやって現金を引き出すかというと、件のアプリで現金引き出しを選択すると表示されるコードをATMへ打ち込むという方法が使われる。
数千万の受給者の複数回の取引を区別しなければならないから、コードは10桁以上であろう。

ざっと計算したところ、デジタル貯金口座を持つ個人の半数が現金引き下ろしを選択した場合に1千万人、その12分の2が一日に集中すると仮定すると、ブラジル人口2億1千万人の0.8%にあたる167万人が全国のCEF支店のATMやCEF業務を一部代行している宝くじ売り場へ集中することになる。
人口百万人の都市で8千人である。
ATMや宝くじ売り場窓口が150あるとして、8時間で払い出すとなると1台1時間で6.7人が計4000レアルを引き出す勘定になる。
60分割る6.7は9分である。
援助金引き出し目的でなく、他の一般業務のためにATMを使う人も多いから一人に割ける時間はその半分として4, 5分であろう。
全員が機械操作に迷わなければ可能な気はする。
でもそれは全員があらかじめアプリでコードを手にしていてATMに打ち込むだけという状態であったらの話である。

第一関門は他銀行振替を選択した人と同様、スマホアプリCaixa TemでCEFのサーバーへ接続して引き出しコードを入手することであるが、インターネットにあふれる苦情をみると、朝5時から7時位までが一番つながりやすいが、それでも皆さん何日もかかったようである。

どうも雰囲気では、何時間も何日もアプリがつながらなくて頭に血が昇っている受給者が、大勢で銀行支店に押しかけて大行列を作って社会的距離など全く無視して、窓口で受け取ろうと押し問答になる予感が強い。

既に年金を受給している人はこの援助金を受け取る資格はないから、明日からの支払日に機械操作に全く疎い老年者はいないはずであるが、銀行の機械など一度も触ったことのない人も多いだろうし、読み書きができない人もある程度(2018年15歳以上人口の6.8%)いて、そのような場合には助けてもらうために家族同伴で行くことになり、行列人数は1人でなく2人が並ぶことになるから、密集をどれだけ避けることができるか疑問である。

もう一つの心配はデジタル詐欺である。
打ち込むだけでお金がおろせるコードをなんとかして盗もうとする悪意を隠した、例えば「列に並ばなくても引き出し時刻の予約ができる登録をするからここへコードを入力せよ」とかいった、一見お助けのメッセージなどが氾濫して、騙される人が続出するような危険は一杯である。

ここから4月27日夜に書いている。
新たにわかった新事実は、現金引き出しコードの有効期限はスマホアプリCaixa Temで取得してから2時間きりということなので、安全性はより高いものの、早朝家で取ってから昼食後にゆっくりATMへ向かうというような融通はきかない。

なお協定によって、スマホにクレジット残高がなくてもどの携帯会社も無料で接続できることになっている。
しかし、スマホに送られる確認コードの関係で、1台のスマホでは一人分のデジタル口座しか取り扱うことができないという不便がある。
後からCEFのドキュメントによってわかったのだが、セキュリティの理由で1台のスマホには2つのCPF、つまり2つの口座まで登録できる。
緊急援助は1世帯に2人まで受け取ることが認められているので、家にスマホが1台しかない場合でも大丈夫で、一応整合性は取れている。

予想した通り、ブラジルじゅう各地のCEFの支店には、アプリでは全くアクセスできないから現金引き出しコードを取れないとか、申請したがいつまで待っても「調査中」で許可不許可の返事が出ないとか、そもそもガラケーしか持っていないとか、スマホアプリに不満たらたらの人々が、支店でなんとか引き出しをしようと長い行列を作っていた。
ペルナンブコ州の州都レシフェでは大雨が降って道路が水浸しになったので、傘を差して、くるぶしまで水に浸かりながら行列する人々が気の毒であった。

一方人々の苦労の張本人のCEFは、スマホアプリのアップグレードはときどき行っているようだが、アクセス数に対して明らかに非力なサーバーやアクセス容量の増強とか、受給者向けの親切な説明とかの努力をしているようにはとても思えない。
誰もクビにならない国営企業の、非効率の極みである。

2020年4月19日

ブラジル版マイナンバーはCPF

ブラジル連邦政府のコロナウィルス対策低所得者救済プログラムは、Auxílio Emergencial(緊急援助)という。

  • 連邦政府の社会単一登録―つまり社会福祉を受けるための基本的登録を済ませている
  • 非正規労働者や失業者
  • 個人極小事業主(Microempreendedor individual)や社会保障個人負担者
以上の中で、個人や家族所得がある基準に達せず、既に年金や失業保険のような連邦政府の他の恩典を受けていない18歳以上の者に最低給料の約1.7ヶ月分を支給するというものである。
4千万人とか5千万人とか言われている受給資格者をどのように把握して、同一人二重支払いや支払い漏れが起きないように、しかも申請や受け取りのための密集が起きないようにするかが運用の課題である。

社会単一登録や個人極小事業主の登録が済んでいる者は、この時点で識別と所得の捕捉ができているから良い。
問題は非正規労働者である。
ブラジルの非正規労働者とは、社会保障に登録がなく当然負担もしない自営者や、正式な労働契約のない従業員、つまり社会保障にも労働省にも無縁であり、社会福祉も受けていない、連邦政府とギブもテイクもない労働者のことである。
この範疇の人たちの登録は何と、インターネットサイトやスマートフォンアプリで自己申告をするという。
一人がいくつもの偽名を使って、援助金を多重に受け取ろうとする悪だくみをどうやって排除するのか?
どうやって調査したのかは不明だが、既に犯罪者が塀の中から数万件の申請を行ったとかの話がある。

ブラジルで個人を登録する手段はいくつかある。
  • RG 一般登録(Registro Geral)内務省・州政府が管理する身分証明書番号、日本の戸籍に近いもの
  • CPF 自然人登録(Cadastro de Pessoa Física)日本の国税庁にあたる経済省連邦歳入庁が管理する、マイナンバーに近いもの
  • 選挙人登録 選挙管理委員会にあたる選挙裁判所が管理する
  • 軍務証明書(男子のみ)防衛省が管理する兵役義務履行証明

この中で特に近年最も一般的になり多用されているのはCPFである。
CPFはxxx.xxx.xxx-xxフォーマットの11桁の数字である。
日本のマイナンバーに近いものと書いたが、それほど極秘のものではない。
契約書などには必ずこの番号が記載されるし、買い物をした商店などの顧客名簿には、一意な個人識別符号として気軽にオープンに使用されているから、全く秘密ではない。

だから悪用されることもよく起きた。
顔見知りでもなく、どこに住んでいるかもわからない同姓同名の不届き者が、金を借りて踏み倒すためにCPFを借用してなりすまされて、そのため警察に被害届を出してCPFを抹消・新規入手したのだが、ときどき悪事を繰り返されるのでそのたびに警察に呼ばれていた知人がいる。
でも近年はすべて照会がオンラインになっているから、そのような抹消されたCPFでなりすましされるような件は少なくなっているはずだ。

昔のブラジル人は旅行や一人歩きをするような年齢になると、身分証明書つまりRGを取得して、さらに年齢が進んで銀行口座開設や労働のような経済活動のために必要になってから、CPFを取る形が多かったと思う。
現在は出生届を行うと出生証明書にすでにCPFが割り振られて印刷されているらしい。
そしてこの番号は一生使用されることになるのである。

今回の援助金支給では、CPFが有効であることが必須となっている。
所得税申告義務がある者がそれを怠ると、CPFは効力停止(サスペンド)になる。
このため申告者の最新の所得を調査できる。
投票が義務であるブラジルでは、投票を行わなかった者のCPFが罰金を支払うまで効力停止となる。
これを正常化するまで援助金を受け取ることができない。

CPFが有効でないと、パスポートを取れない、公務員試験や統一入試などを受けることができない、連邦政府の住宅融資などを利用できないなど様々な不便が起きるのだが、もともと非正規労働者であるくらいだから、そもそもそのようなものを必要とせず困ることがなかったから、CPFが停止されていても全く平気であったのだ、、、今までは。
こういった人々が全国で1千万人、実に人口の5%くらいはいるということで、この連中が一気に税務署に押しかけるような密集密接大混乱を避けるために、連邦歳入庁は、無投票によるCPF効力停止の縛りを撤廃して、これが原因の停止CPFをすべて有効と処理した。

日本でもこれと似たような状況がある。
住民台帳に登録されている市民に10万円を支給するようだが、マイナンバーを使えば難なく解決するはずだと思うが、違うのか。
マイナンバー・カードの普及率が15%位しかないと聞いたが、カードを所有する利点が全く無い、つまりマイナンバーのシステムを有効に利用できていないのではないか。
宝の持ち腐れではないか。

2020年3月29日

新コロナの憂鬱な試算

今週月曜日にニュースで気がついて、記録した数字を使って雑な計算をしてみた。

イタリア人口6048万人2018年
推計感染者60万人ニュースで言われた数字
確定感染者6万3927人2020/03/23
死者6077人2020/03/23

ということで、全部数字が6から始まるところでわかりやすくなっている。
イタリア総人口60,000,000上欄の割合全人口の割合
推定総感染者600,0001.0%1.00%
確定感染者60,00010.0%0.10%
死者6,00010.0%0.01%
10万人当たり死者数10

上の表と全く同じ割合で、ブラジル人口約2億人に当てはめてみた計算である。

ブラジル総人口200,000,000上欄の割合全人口の割合
推定総感染者2,000,0001.0%1.00%
確定感染者200,00010.0%0.10%
死者20,00010.0%0.01%
10万人当たり死者数10

ブラジルで感染者の増大が始まった頃に、ブラジル保健相が何気なく行った発言は、その後続報も訂正もないし、マスコミなどの追求もないので消えたと考えてもよいのだろうが、衝撃であった。
患者の増加期は4,5,6⽉、平坦期が7,8⽉、下降期は9⽉からで、⼈⼝の50%が感染するまで続くだろう、と予想していると発言した。
しかしこれは政府と国民が全く対策を取らなかった場合であり、医療崩壊に至ると付け加えた。
この発言は伏線を張ったようなものだろうか。

これに準じて、感染者を人口の50%に達するとして、その上でイタリアの死亡率は高齢者の割合が高いことと、病床と機器の不足と医療従事者の過労、いわゆる医療崩壊が起きていることを考慮して、確定感染者の10%ではなく3%に落として計算するとこうなる。

ブラジル総人口200,000,000上欄の割合全人口の割合
推定総感染者100,000,00050.0%50.00%
確定感染者10,000,00010.0%5.00%
死者300,0003.0%0.15%
10万人当たり死者数150

現在効果を示しつつある社会的隔離(isolamento/distanciamento social)あるいはより強制力のあるニュアンスの検疫隔離(quarentena)のため、流行が一旦収まっても、またウィルスの攻撃が戻って、仮にピークが3つあったとして、その分分散するとしても、一回の波だけで10万人の死亡が予想される。

他の死因と比較してみる。
大雑把であるが、暴力にまみれたブラジル社会の残念な数字である。
殺人事件で年間4万人(人口10万人当たり20人)、交通事故で同じく年間4万人(人口10万人当たり20人)が命を落とすことを考えると、その合計に匹敵する人が一回のピークで命を落とすという異常さである。

ここまでやったのだから、全世界の予想もついでに。

世界総人口7,700,000,000上欄の割合全人口の割合
推定総感染者3,850,000,00050.0%50.00%
確定感染者385,000,00010.0%5.00%
死者11,550,0003.0%0.15%
10万人当たり死者数150

もちろんそれだけの時間が経つ前に、ワクチンが開発されることもあれば、ウィルスが突然変異で弱くなることもあるだろうが、逆に変異のためより凶暴になる可能性もある。

どうも増加期が3ヶ月も続くことはなく、まだ全面的に隔離を緩めたわけではないがWuhan(武漢)も2ヶ月位しか経っていない。

とにかく、後出しジャンケンでない予言者は、現在のところ存在しないようである。

2020年3月14日

雲の中の中国新コロナ急速回復

中国の様子がよくわからずもやもやするのには次の理由があるのだが、どの記事も教えてくれない。

武漢を除いた他の大都市では、いや武漢までも、感染は下火になっているというのだが、それは医学的にどういうメカニズムなのだろうか。

中国の武漢以外の都市で起きた喜ぶべきできごとが、単に厳しい隔離のためによそからウィルスが持ち込まれなくなって新たな発病が止まったのであったら、その都市の住民の殆どに免疫はないはずだから、隔離を解いたとき、他の国の感染者が旅行してくれば再び流行が始まる恐れはないのか?
そして武漢の住民は、ウィルスを抑え込むだけの免疫を集団全体として得たのか?

そしてなにより中国がウィルス抑え込みに成功したというのなら、政治を絡めないで学術界でその知識経験を共有して、中国ほど強権的隔離でなくても、ほかの流行中の国でも応用できる対策を取ることができるのではないか?
いや一般の人がわざわざ心配するまでもなく、実際は医学界では意見のやり取りが活発に行われているというのなら、誠に心強いことであり、そうあってほしいものだ。。

そう思っていたら昨日のニュースで、中国の医師団がイタリアの空港でタラップを降りてきているシーンを見た。
さてイタリアも中国の資金が豊富に入っている国だと言うが、中国医学の秘訣を実践してもらい、知見を公にしてくれるだろうか。
中国の息のかかったWHOのような恥知らずで役たたずのように、言いくるめられなければよいが、その点は「自由な」イタリア国民に期待したい。

中国が急速にウィルスを抑え込んで、生活が日常に戻ってきているというニュースは、本来なら無条件に喜べる性質のニュースであるはずなのだが、本当に手放しで喜んでよいのか。
中国、欧州ときた感染中心点が、これから秋を迎える南半球で、ゆるさがイタリア並みのラテンアメリカに移動する可能性はあるし、二度目のところも含めて中心点が世界中でぐるぐる移り変わる、気の滅入るような循環が起こらないとも限らない。

だから、故意でも事故でも、中国がウィルスを流出させたことを利用して、自分たちだけが知っているアンチドートをこっそり使ったり、あるいは発見した科学的知見を黙って独り占めして、病禍から回復したらさっそく工業生産を全開して、一方でCOVID-19を世界中にはびこらせて、中国への反抗力を十分に弱めてから、今ウィルスに手こずっている自由主義経済諸国に、政治的・経済的に優位に立とうとしているのだと、誰もが考えても全く不自然ではない。
何しろ未知のウィルス病を検知した崇高な中国人医師たちの発信を押しつぶして、逆に犯罪人扱いをして、世界への重大事実発表を渋って、中国以外の国のウィルス病対策を遅らせたことは明らかで、中国共産党政府の重大事件隠蔽体質を全世界に知らしめることとなったからだ。

隔離対策を続けて、発症のピークをできるだけ先に延ばして、ピークの高さをできるだけ低くして、医療リソースが不足する事態を遠ざけるという方法はもどかしいが、今できることはこれしか無いのかもしれない。

ワクチンや治療薬を開発した科学者がノーベル生理学・医学賞をもらうのは間違いなし、と素人は考える。
従来のワクチン作成の方法を使って、試行錯誤の時間をかけたら、普通の研究所で作れるものなのだろうか。
どちらにしろ、開発費と生産費の大部分を中国政府に肩代わりしてもらいたい、と思う人は世界に大勢いいると思う。
しかし世界の国々の声をまとめるべきWHOが、中国の資金なしに社会投資が進まないエチオピア出身で、中国政府に何も異論を言えないあの男、テドロス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)であるうちはその望みはないだろう。

会合で同席して、後にCOVID-19陽性が判明したブラジル大統領府広報秘書官を通じて、米国トランプ大統領が発病するようなことになったら、中国共産党政府が試みている、米国陰謀説でっち上げによる責任のすり替えや、プレゼンを兼ねた医療援助による恩の押し売りなど吹っ飛ぶくらいの反撃を受けるのではないか。

2020年3月12日

漂流教室と兵役で新コロナ退散

ブラジルでインフルエンザ予防接種のキャンペーンは、例年5月から始まっていたそうなのだが(時期まで詳しく思い出せない)、新型コロナウィルスの心配から、できる限り前倒しして3月23日から開始すると「コロナとハグ」の記事に書いた。

新型コロナウィルスが引き起こすCOVID-19は、子供や若者にはほとんど症状が出ないか軽い風邪で済むのだが、高齢者や基礎疾患保有者には肺炎を起こして重大な結果になることがあり、年齢層が上がるほど致死率が高いという見地から、ブラジルのインフルエンザ予防接種スキームが変更された。

昨年までは確か妊婦、幼児が第一優先順位で一番先に接種が始まったのであるが、今年は高齢者が第一優先順位になり、キャンペーン期間の最初は高齢者から始められることになっている。
もちろんこれは従来型インフルエンザであり、新型コロナウィルスではないが、何らかの側面補助にはなるのではないだろうか。
心配の種の数は少ないほうが良い。
しかしブラジルでも感染者数は急に増大しているので、コロナ到来の前に従来インフルの接種が間に合うかという懸念は残る。

イタリア全土の隔離措置はかなり大変そうである。
イタリアからの移民がブラジルに多数入っていることから想像できるように、挨拶などに見られる両国の習慣はかなり似ている。
ブラジルの交易国第1位である中国からそれなりの訪問があるにせよ、ただその距離のため、ブラジルへの中国人の訪問者数は、北イタリアへの比ではないと思う。

勝手な意見を言おう。
未だワクチンがないのに、社会全体に安全に速やかに免疫を持たせるにはどうするか?
最初の感染者が見つかってから2週間目くらいのブラジルではなく、学校閉鎖が進行中の日本を想像してみる。

現在の学校閉鎖とは反対に、しばらくの間、多分14日間、児童生徒を学校に集めて共同生活をして、COVID-19を全生徒に行き渡させる。
ダイヤモンド・プリンセス状態を、学校で子どもたちだけで起こすのである。
楳図かずおの「漂流教室」状態と言っても良い。
かなり手荒だが、目的は集団にウィルスを接種して免疫を獲得してもらうことである。

食事は給食を校門に置いてやって、自分たちで給仕をして、掃除も自分たちで行う。
隔離時間の利用法は、パソコン・タブレット・スマホなどをつかって遠隔授業をするといえば、学習への影響は少なく、無難だろう。
30歳までの健康で若い先生が監督を兼ねて学校に寝泊まりして授業をしてもよいし、年配の先生の代わりに教師志望の大学生を入れて、教育実習を兼ねて教習授業でもよい。
自由時間には、普段のように補習でもクラブ活動でもしたらよいだろう。

COVID-19は、子どもたちには軽い風邪で済んでしまうというのなら、大半が無症状か軽い風邪を引き終わって他人へ伝染する危険がなくなって免疫を得たら、家庭でもどこでも歩いてもらって構わない。

大学生から30歳くらいまでの青年層には、2週間の自衛隊入隊を行って、子どもたちと同様に、他の年齢帯集団から隔離して、免疫を得てもらう。
サバイバルや救命・救助訓練をすれば、その他の災害時に大きな救助戦力になる利点がついてくる。
でも自衛隊基地にはそれだけのキャパシティがないだろうから、やはりどこの町にもある小中学校のスペースを使うことになるだろう。
若い自衛隊・警察・消防隊員を派遣して、監督兼指導教官となってもらう。

これくらいの人口が免疫を得たら、高齢者や基礎疾患保有者に自宅自己隔離をしてもらう一方で、その他の人々は速やかに普通の生活に戻ってもらう。
重症化して入院や人工呼吸器などが必要になってもすぐに空きがあるくらい、伝染のスピードが緩慢になってくるだろう。

ここまで妄想してみたが、実際のところ今現在どれだけの人口が既に感染して、無発症で過ごして完治してしまっているかが不明である。
思い切り楽観的にみたら、動き回っている若年から壮年層を中心にすでにかなりの人が免疫を持っていて、ウィルスにとってみて例えば日本人の集団が、感染する相手を探すのに苦労するような状態になっていれば、遠からず伝染は下火になってくるだろう。
そうだったら将来の時点で、あのときは深刻に心配したが今思い出せば大したことはなかったなどと笑える日が来ているのかもしれない。

2020年3月6日

新型コロナウィルスと病気の名前

coronaという単語は、英語では太陽のコロナとか、光環という意味と辞書に書いてあるが、王冠という意味ではcrownが使われる。
coronaの語源としてラテン語でcrownを意味すると書いてある。

スペイン語やイタリア語のcoronaは、ラテン語を引き継いで王冠とか王位の意味を持っている。
そして、ポルトガル語ではnが欠落してcoroaとなった。
でも、coroavírusとは言わず、coronavírusである。

一方で、スペイン語で肺炎はneumoníaである。
しかし、ポルトガル語ではpが添加されてpneumoniaとなる。

こちらのニュースで初め分かりにくかったのが、中国の地名である。
Wuhan = 武漢
Fubei = 湖北

そして、新型コロナウィルス病を呼ぶのに、COVID-19 というのが正式とされた。
2015年WHO策定の「名称決定についてのガイドライン」によると、「ヒト感染症・ウイルスの名称に地理的な位置、人名、動物や食品に関する名前、特定の文化や産業に関する名前を含むべきでない」というのだ。
そのため、新型コロナウィルス病については、Wuhanという地名は入れられなかった。
スペイン風邪や香港風邪とか、豚インフルとかの名前は、現在だったらつけられなかったはずである。

そんなことがわかっているのに、メキシコの有名なビール、王冠マークの付いたコロナビールの売れ行きが落ちていると聞いた。
とんでもない風評被害だ。
現在トヨタは、コロナという名の車を製造していない。
1996年まで生産・販売していたそうだ。

以前流行したコロナウィルスとそれに関連する病気については、次のようになる。

2003年 ウィルス名 SARS-CoV、病名 重症急性呼吸器症候群 (Severe acute respiratory syndrome = SARS)
2013年 ウィルス名 MERS-CoV、病名 中東呼吸器症候群 (Middle East respiratory syndrome = MERS)
2019年 ウィルス名 SARS-CoV-2 または 2019-nCoV、病名 2019年型コロナウイルス疾患 (Coronavirus disease 2019 = COVID-19)

ブラジルのテレビニュースでは、novo coronavírus(新型コロナウィルス)、または単にcoronavírusと呼ばれることが多いようだ。

さて2020年3月5日現在ブラジルでは8名の感染者が確認されている。
サンパウロ州6名、リオデジャネイロ州1名、エスピリトサント州1名がその内訳である。
そのうち2名は、ブラジル最初の感染者の家族と友人であり、国内感染であるため、感染の条件などが気になる。

2020年3月5日

新型コロナウィルスと安全な花見

日本では学校休校、人が集まるイベントの中止・延期、在宅勤務の勧めなどが出された。

とにかく、かなりの時間閉じた空間で一緒に集まり、緊密な距離で会話をするような環境が一番感染しやすいと言われている。

日本では3月も下旬になると、桜の開花で花見シーズンとなる。
花見の場合、もちろん屋外という条件はクリアするが、酒が入ることもあり静かにしていられるわけもなく、黙って飲んでいるだけではすまない。

安全な花見とはどういうものか。

  1. 必要な感染予防策をせずに手で触れる(接触感染)
  2. 咳やくしゃみを浴びる(飛沫感染)
  3. 対面で人と人との距離が近い接触(互いに手を伸ばしたら届く距離)が、会話などで一定時間以上続く(濃厚接触)

一定時間とは3分か30分か3時間なのか、一体どのくらいの時間かは不明である。
とにかく、以上の箇条書きを避ければウィルス保菌者からの感染はしないことになる。

これから導き出される方法がないわけではない。
  • 花見だから屋外であることは当然だろうが、中でも通風の良い場所を選ぶ
  • 会場への移動には、自家用車でも良いだろうが、駐車と環境負荷を考えたら徒歩か自転車が勧められる
  • お互いに触れない。握手やハグの習慣のない日本人同士なら簡単だろう
  • 隣の人とは3メートルの距離を置く
  • 食物と飲物は円の中央に置いて、必要な人が一人ずつ取りに行く。取りに行っている間は口を開かない。70%エタノールを用意して、取り分ける前に手を消毒すればさらに万全

10人で花見で車座になるとき、お互いが3メートル離れるとなると円周は30メートル、半径は5メートルだから、真ん中に食べ物・飲み物を安全に置くことができるだろう。
人数がもっと多い場合には円を大きくするか、外側に半径8メートルの2つ目の円を作ることが考えられる。

一番遠いところにいる人まで、一重円の場合10メートル、二重円にすると16メートルにまでなる。
叫ばなければ聞こえない。
場所を取るだけでなく、非常にやかましい宴会になるのが欠点だろう。

ブラジルのシュラスコにもこれは応用できる。
しかしレストランではない、家族や友人の集まりのシュラスコではみんな歩き回るのが普通だから、3メートルの距離を保ちながら移動するという、花見とは異なったダイナミックなテクニックが必要となる。

シュラスケイロ(肉焼き人)のところへ肉を取りに行き、切り分けた一片を手にしたらすぐにそこを立ち去る「キャッチアンドゴーアウェイ」を華麗に決めないと、円滑なシュラスコ運営の邪魔者と名指しされて責められることになる。

野球とサッカーの違いはここにある。

2020年3月2日

Vale社関連韓国鉱石船の座礁

過去の記事「韓国製新鋭巨大鉱石船は鉄くずになるか」では、別の船会社の持ち船に、鉱石輸送の最初の航海に出たばかりで亀裂が入った事件について記した。

No Maranhão, Marinha planeja esvaziar tanques de navio encalhado
29/02/2020 22h33
Ibama encontra óleo ao redor de navio encalhado na costa do Maranhão
28/02/2020 14h53
2つ目のリンクに写真多数

マラニョン州沖約100キロあたりで、2020年の灰の水曜日である2月26日から、Vale社の29万5千トンの鉄鉱石を積んだ韓国船会社所有の鉱石運搬船が座礁している。
20名の乗組員は当初船内にいたが、船がだんだん傾いてきたため、タグボートに避難した。

鉱石運搬船Stellar Bannerは全長340メートルで、積荷は中国向けの鉄鉱石29万5千トンである。
ブラジル海軍、イバマ(IBAMA-ブラジル環境資源院)、荷主のブラジルVale社、船主の韓国Polaris Shipping社は、座礁して横に傾いている巨大な船から、4千トンの燃料の大部分を、より小型の船に積み替えて撤去しようと計画している。
燃料を抜いてから、船を軽くして砂州から浮上して曳航可能になるまで鉄鉱石の一部を抜き取る試みに移る。
もちろん海洋汚染を防ぎ、同時に船体を保全するためである。

現在のところ、甲板に置いてあったと見られる、比較的少量のグリースやオイル類が海面に漏れ出しただけで、燃料及び鉄鉱石は漏れていないので、大規模な汚染には至っていない。
オイルフェンスを施設する作業船は現場で監視中、燃料抜き取り作業船4隻が現場に向かっている。

Stellar Banner丸の船長は、「船が未だ正体不明の何かにぶつかり、船殻に2つひびが入ったので、難破を避けるために海岸から100キロにある砂の浅瀬に座礁させた」と語った。
「未だ正体不明の何か」とは、一体どんな物体なのだろうか。
340メートルの船体に損傷を与えるような鯨がいるのだろうか?
それとも以前問題を起こしたのと同様な欠陥船であり、航行中に突然ひびが入ったのか?
単に操船の誤りで座礁したのを言い繕うつもりではないのか?
超大型船ではあるが100キロの沖合で座礁するというのは、沖合だから水深は深いだろうと安心できず、自動にしろ手動にしろ操船は大変だろう。

この韓国の船会社には不名誉な事故の前歴がある。

船主Polaris Shipping社が所有するStellar Daisy丸が2017年に大西洋に沈没したことは、「船の改造は危険か?」に書いた。
乗組員24人が26万トンの鉄鉱石を、やはり中国へ運搬する途中であった。
フィリピン人船員が2名助かったのみで、残りの22人は発見されていない。

後日譚である。
2019年に韓国政府が契約した米国の海洋探査会社Ocean Infinity社は、南アフリカのケープタウン西1300キロの大西洋海底にStellar Daisy丸の残骸を発見した。
引き上げることもできず、難破原因は未だに明らかになっていない。

さてStellar Daisy丸難破の翌2018年、中国Rizhao (Chinese: 日照)港で、同社の所有船マーシャル諸島船籍Stellar Eagle丸の改造を行っていたのであるが、安全査察をした韓国海事省により、22箇所の非認可の変造が発見されて勧告を受けた。
Stellar Eagle丸は、安全基準に達するまで出港を禁止された。

というわけで、この韓国の海運会社Polaris Shipping社の評判はあまり芳しくない。

続報 Vale社から中国へ鉄鉱石を運ぶ途中で座礁した船はマラニョン州沖で沈められる
Navio que levava minério da Vale para China e encalhou é afundado na costa do MA
12/06/2020 23h02

上の2020年6月12日付けリンク記事によると、この船は鉄鉱石と燃料の大部分を抜き取ってから浮上したので点検が行われたが、座礁地点に沈没させる決定がなされた。
報道は詳細を述べていないが、きっと点検の結果船体は曳航に耐えないという結論になったのであろう。

2020年3月1日

コロナとハグ

新型コロナウィルス(COVID-19)が世界中に拡散している。
ブラジルで最初の感染者が確認されたのは、2020年の灰の水曜日である2月26日であった。
イタリア北部を出張訪問して来た、サンパウロ市在住の企業オーナーである。

前日火曜日までのカーニバルは、その悪いニュースを聞く前でみんな気楽だったから、病気もブラジルに来てカーニバルを楽しんでいたとか、戯言が言われていた。

2月29日には2人目の感染者が、やはりイタリアを訪問したサンパウロ市住民に見つかったという発表があったばかりである。

コロナウィルスとブラジルに関していくつか書いてみる。

テレビニュースで早速説明しているのが、手の洗い方とアルコール・ジェルの使い方である。
日本の手洗いは30秒とか、ハッピーバースデーを2回歌えとか言われているが、こちらでは1分間洗えと言っている。
1分はかなり長い。
できない気がする。
スーパーの棚には、アルコールはまだ残っている。

ブラジルでマスクを着用して街を歩く人はいない。
2009年新型インフルエンザのときにわかったのだが、コンビニとかスーパーといったところではマスクは扱わず、薬局にしても全部の店で売っているわけではなく、苦労してやっと見つけたものだった。
さて今回の新型コロナでは、マスクを予防的に着用する習慣がブラジルに広まるのだろうか。
咳やくしゃみをする人が他人にうつさないようにするためにだけ、マスク着用を勧めている。

手の洗い方と一緒にニュースで説明してくれたのが、マスクをしていないときに咳やくしゃみをする場合に、決して手のひらで覆わないで、肘の内側でガードするようにという飛沫拡散防止方法である。
今日通りを歩いていたら、手鼻をかんだ男が、手に鼻水がついてしまったので、仕方なくシャツの裾でぬぐったという、なんとも見たくない風景を見てしまったばかりであるから、正しい防ぎ方が広まってほしいものである。

日本の人もきっと知りたいのは、現在夏であるブラジルや南半球で国内感染がどうなるかだろう。
最初の感染者との接触者については追跡されているから、これから数日から2週間目くらいの期間にブラジル国内で感染がどれだけ起こるか、また現在夏のブラジルの気候のもとで、どれだけの感染者が重症化まで至るのか注目される。

現在感染が広がっている北半球はこれから春が来て暖かくなるから、新型コロナウィルスがインフルエンザのような性質のものだったら、自然に収まってくるはずである。
これから秋を迎える南半球はそれと反対の、先行きの暗い懸念がある。

ブラジル保健省は本来5月に開始する予定であった従来型インフルエンザ予防接種を前倒しして、3月23日から開始すると発表した。
これは今年の冬に流行しそうだと予想されるいくつかの型に対応するインフルエンザワクチンであり、子供、妊婦、高齢者、医療・公安関係者を対象とする無料接種プログラムである。
もちろん直接コロナウィルスに効くわけではないが、コロナウィルスと戦わなければならない体力・免疫力が別の病気に分散することが避けられるだろうし、診断する医療側から見れば、接種者については従来型インフルをスクリーニングできて手間が省けるのだという。
側面からのサポートと言える。

信心や信仰の問題もある。
わが町を管轄するカトリック教会の司教が、当分はミサで、和平の抱擁つまりハグと握手はしないよう、司教区の司祭に指導していると、ニュースで言っていた。
ミサの中で隣人とハグする打ち解けた瞬間を楽しみにする信者は、ふれあいが無接触となって味気ないと感じるであろう。

2020年2月4日

45日季節先取り東洋人

1年に4つの季節があるのは、少なくとも言語の世界ではどこも共通であると思われる。
日本語でも、英語でも、ポルトガル語でも、春夏秋冬にあたる単語が存在する。
赤道直下であって実際の季節変化が従わなくても、言語上は1年は4つの季節があり4分割される。
アマゾン地方では雨の少ない乾季を冬と呼ぶので、実は冬は夏より暑い、と聞いている。

そして北半球では、というより東洋では、2月4日は立春である。
しかしブラジルでは何のこともない普通の日である。
南半球に投影すると立春は立秋に対応するのであるが、この日に秋が立つ(始まる)などど誰も言わない。
「夏の真ん中の日」とか言われたり、ましてや祝ったりなどされない。

ブラジルの季節の始まりと終わりは、暦から極めて明確に決められる。
秋が始まるのは立秋ではなく、秋分点、つまり2020年なら3月20日0時49分である。
春は(南半球の)春分(Vernal Equinox)から始まる約90日
夏は(南半球の)夏至(Summer Solstice)から始まる約90日
秋は(南半球の)秋分(Autumnal Equinox)から始まる約90日
冬は(南半球の)冬至(Winter Solstice)から始まる約90日
各季節の一日目は、東洋ではその季節の真ん中の日に当たる。
「東洋(あるいは東方)」とは漠然としているが、下の参照リンクで中国語名、朝鮮語名、ベトナム語名、日本語名があるのでこう呼んでおく。

面倒なので1年を、商が整数となるように360日とする。
そうすると太陽が天球をめぐる黄道の1度が1日に対応する。

東洋の暦で節分をもって季節を区切る考え方は、1年を8分割する。
春 立春から45日、春分から45日
夏 立夏から45日、夏至から45日
秋 立秋から45日、秋分から45日
冬 立冬から45日、冬至から45日

そして
分点 = equinox (en.) = equinócio (po.)
至点 = solstice (en.) = solstício (po.)

については英語もポルトガル語も対応する単語があるのだが、節分、立春、立夏、立秋、立冬に対応する単語はみつからない。
ましてやより細かい二十四節気に対応するような単語は存在しない。
"Solar term"をみると英語訳と言うか、意味の説明がある。

そんなわけで、南北半球の180日の反対の季節を調整しても、東洋人は45日先取りして次の季節を待ちわびるような、繊細な気候の捉え方を持ち合わせる。

もちろん実際の気温と合わないので、例えば立春は「暦の上では今日から春」というような決まり文句がつくのであるが、区別がつきにくくはっきりしないブラジルの四季推移と比べると、日本は自然現象に変化が多くて美しく趣があるものだ。
代償として夏暑く冬寒いのは仕方がない。
日本に住む人よ、90日経てば次の季節が巡ってくるのだから、感謝しながら我慢しよう。

2020年1月12日

2020年のキリスト教移動祝日

2020年のカーニバルは何月何日か。
米国のカーニバルで有名なニューオーリンズのサイトがあって、2056年までのMardi Gras(マルディ・グラ)の日付がここでわかる。
Mardi Grasとはフランス語で確か「肥えた火曜日」と言う意味だったと思うが、ブラジルでは普通にTerça-feira de Carnaval「カーニバルの火曜日」と呼ぶ日である。

カーニバルがキリスト教行事かというと巨大な疑問であるが、少なくとも日付の決め方だけは教会に従っている。
このようにキリスト教行事の中には、毎年、天体の月の動きに応じて日付が移動するものがある。

年の後半にある、知らない人はいないクリスマスは12月25日(ブラジルの祝日)、ブラジルでは死者の日(Finados)と呼ばれる万霊節は11月2日(ブラジルの祝日)―これはハロウィン(10/31)-万聖節(11/1)-万霊節(11/2)と続く―と、毎年同じ日付に決まっているが、年の前半にある宗教祝日は移動するものが多い。

2020年の移動宗教祝日を下に一覧表にした。
復活祭の日、2020年ならば4月12日日曜日が、一連の移動祝日の基準になっていると言ってよい。
2019年より9日早い。

復活祭の日付の決定方法について過去の記事に説明した。

待降節(Advento)は、クリスマスに備える期間であるが、その第一日は日曜日に決まっていて、11月30日の「聖アンデレ(Santo André)の日」に最も近い日曜日からクリスマスイブまでの約4週間で、最も早い年で11月27日、遅い年でも12月3日に始まる。
アドベント期間には必ず4つの日曜日が含まれる。
つまり年の前半の移動祝日とは、その決め方が全く異なる。

行事日の決まり方2020年休日種類
カーニバル
Carnaval
週末から灰の
水曜日前日4日間
2月24-25日
月火曜日
PF
灰の水曜日
Quarta-feira de Cinzas
復活祭46日前の水曜日2月26日水曜日14時までPF
四旬節Quaresma灰の水曜日から復活祭前日
枝の主日
Domingo de Ramos
復活祭7日前の日曜日4月5日日曜日
聖週間Semana Santa枝の主日から復活祭前日
キリスト受難日
Paixão de Cristo
復活祭の2日前の金曜日4月10日金曜日FN
復活祭Páscoa北半球春分の次の
満月の次の日曜日
4月12日日曜日
ペンテコステPentecostes復活祭の49日後の日曜日5月31日日曜日
キリスト聖体の日
Corpus Christi
復活祭の60日後の木曜日6月11日木曜日PF
今年から次も入れよう
待降節初日
Início do Advento
11月30日に最も近い日曜日11月29日日曜日

ブラジルで国定祝日(feriado nacional - 上表ではFN)、任意出勤(ponto facultativo - 下表ではPF)になっている日と、特に休日になっていない日がある。
任意出勤というのは、条例や労使協定によって、地方自治体、職種組合や職場ごとに、休日とするか勤労日とするか決められる。
大部分の勤め人にとっては、普通の休日となることが多いが、商店は営業するところと休むところがある。

2020年1月11日

2020年のブラジルの祝祭日

連邦政府の経済省は、2020年の祝日と任意出勤についての通達PORTARIA Nº 679, DE 30 DE DEZEMBRO DE 2019を2019年12月31日付官報に掲載した。
下の表はこれに準ずる。
2018年の管轄省は企画開発管理省であったが、2019年1月に就任したボルソナロ大統領の省庁統合のため、今回は経済省の部門となっている。
そして条文に断っているように、本来の目的は連邦行政官庁の休日を定めたものである。

一連のキリスト教関連の移動休日は、2019年より9日早くなる。
たとえば2019年の灰の水曜日は3月6日、2020年は2月26日であるので6+3(2020年はうるう年)=9を引いた日になる。

暦のために年々移動する固定祝日の曜日が週末(土日)と隣接する連休日は、2019年では3日しかなかったが、2020年は7日あることが話題になっている。
ブラジルの暦には振替祝日はないので、年間実質休日数は毎年増減する。
給料をもらう労働者は休みが多くて喜ぶが、雇用主は休業するか休日出勤手当を払うかしなければならず、良いことがない。

1 1月1日 Confraternização Universal 世界友好の日 FN
2,3 2月24-25日 月火 Carnaval カーニバル PF
4 2月26日 quarta-feira de cinzas 灰の水曜日 14時までPF
5 4月10日 Paixão de Cristo キリスト受難の日 FN
6 4月21日 Tiradentes チラデンチス FN
7 5月1日 Dia Mundial do Trabalho 世界労働の日 FN
8 6月11日 Corpus Christi キリスト聖体の日 PF
9 9月7日 Independência do Brasil ブラジル独立の日 FN
10 10月12日 Nossa Senhora Aparecida アパレシーダ聖母の日 FN
11 10月28日 Dia do Servidor Público 公務員の日 PF
12 11月2日 Finados 死者の日 FN
13 11月15日 Proclamação da República 共和制宣言の日 FN
14 12月24日 véspera de natal クリスマスイブ 14時以降PF
15 12月25日 Natal クリスマス FN
16 12月31日 véspera de ano novo 大晦日 14時以降PF

注:FN = Feriado Nacional 国定祝日、PF = Ponto Facultativo 任意出勤


Feriado Nacionalは国定祝日であるが、もう一つのPonto Facultativoは任意出勤という意味である。
職種や企業や自治体によって働くか休むかが決められる日である。
各人が勝手に自分の都合で出勤したり欠勤したりして良いという意味ではない。

10月28日(水)の「公務員の日」(Dia do Servidor Público)は、民間は通常日であるが、(連邦の)官庁は任意出勤となる。
2019年のこの日には、市の消費者保護機関は通常通りに仕事をしていたが、州の裁判所は閉まっていた。
国営銀行とみなされるブラジル銀行(Banco do Brasil)と連邦貯蓄銀行(Caixa Econônica Federal)について、この日に営業するかは確実でなく、注意する必要がある。

当表の連邦政府が定める全国一円の休日のほかに、各地で市、地方あるいは州の記念日が数日定められていることが多い。

次のサイトで、任意の過去・将来年の、任意の国の休日が入った月齢付きカレンダーを閲覧・印刷できる(英語・ドイツ語・当国語-ブラジルならポルトガル語)。
このリンクはブラジルの2020年

2020年1月3日

風のようにゴーン

2019年から2020年の年末年始の大ニュースは、カルロス・ゴーン(Carlos Ghosn)大逃走であった。

見張られている建物に人が入って、そこから人が消えてしまうケースで思い出すのは、サウジアラビアのジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏の殺害事件である。
この事件は2018年10月2日、舞台はトルコ、イスタンブールのサウジアラビア公館であった。
つまりサウジアラビア政府公認に近い殺害である。

現在でも「サウジアラビア総領事館内で殺害されたとみられる」という書き方しかできないのは、トルコの警察権が及ばない外国公館敷地で溶解されたとか、灰になったとか、分断されて運び出されたかわからないからであろう。
何よりもサウジアラビア政権そのものであろうムハンマド王子が黒幕となっていると推定されたが、確たる証拠がないということだ。

これら事件から類推できるのは、次のことである。
  • 貨物を搬送する業者がグルだったり、買収されている可能性が高い
  • 見張る建物には、人間の出入りだけでなく、生きている人間が入れる大きさの貨物の出入りも注意しなければならない
  • しかし死んだ人間の場合はもっと小さな荷物に小分けされることも想定しなければならない
  • 容疑者が権力者の場合、捜査結果は真実とは限らない可能性がある
  • そしてこの世の沙汰は金次第-裁判官を買収しなくても、高額保釈金支払いも、大掛かりな逃走でもなんでもできる
一番最近のニュースによると、カルロス・ゴーンはフランスのパスポートを2通持っていて、一通は弁護士のもとにあったが、もう一通はゴーンの手元のケースにあって、弁護士は鍵だけを保管していたのを今になって思い出したというから、全くこれは出来レースであることがわかった。

現在所持しているパスポートを紛失とか盗難とかの虚偽の理由で、回数が多いと怪しまれるだろうが、1回くらいは再発行してもらうことは可能であろう。
最近のパスポートは万国共通のフォーマットで、表紙裏(1ページ目)に英数字2行記載で、内部に非接触ICカードが埋め込まれている。
出入国時に物理スタンプを押さない場合でも、ICカード情報には出入国来歴が電子的に記録されるのだろうか?
再発行に関しては次の2つの疑問がある。
  • 再発行のタイミングで最初のパスポートの無効手続きが行われて、任意の国の入出国管理で最初のパスポートを読み取り機に通したときに、オンラインで発行国データベースにアクセスして、即座に無効パスポートであることがわかるか
  • 新しいパスポートを機械読み取りして発行国データベースに照会をしたときに、元のパスポートが行方不明になっている、少し怪しい再発行パスポートであることがすぐにわかるか
具体的にはこうするのだろう。
  1. 将来没収されることを予期して、現行パスポートを隠しながら紛失したと言って再発行してもらう
  2. 裁判所よりパスポートを提出するよう命令が出たら、隠しておいた古いパスポートを裁判所に渡す
  3. 新しいパスポートを使って逃亡する
ゴーンは三重(あるいは四重)国籍なので、フランス、レバノン、ブラジル(とナイジェリア)それぞれに再発行してもらい、理論的には6通以上を所持することが可能である。

だいたい抜け目なく頭の切れると評判の辣腕弁護士が、パスポートが2通あるという最重要なことを忘れるわけがない。
そして、弁護士や裁判官は、フランス発行で有効なゴーンのパスポートが2通出てきたとき、不審に思わなかっただろうか?
仕組まれた茶番劇であることが推察されるのである。

これから想定されたシナリオに従って、各参加者は予想される行動をして予想される反応をしていくだけである。

警察・検察は「逃げたということはクロ、だから裁判所にあれだけ言ったのに、我々の捜査は正しかった」
裁判所は「法律の要件に従って妥当な保釈金であったし、法律が許す範囲のことは不公平なく行ったから保釈に落ち度はなく、裁判続行できないのは残念である」
法務省入国管理局は「パスポートの照合による出国管理は万全であるのに、我ら税関ではないから荷物の中まで点検する権限はない」
弁護士「依頼人の裏切りだ、パスポートに関しては人間誰も忘れることがある」

一応どの参加者も自分が責任者でないと、他人に責任押し付けが可能だ。

カルロス・ゴーンを受け入れる側の国の事情はどうだろうか。

カルロス・ゴーンが四重国籍(ポルトガル語Wikipediaによる)をもつようになった理由は、
  • レバノンは1920年-1943年に大レバノン État du Grand Liban と呼ばれるフランスの委任統治領であった
  • 祖父がレバノンからブラジルへ移住した
  • その息子(カルロスの父)はレバノン系ブラジル人になるが、ナイジェリア生まれのレバノン人である女性(カルロスの母)と結婚した
  • カルロスは生地主義であるブラジルで誕生した
ということだろう。

まずフランスは、3カ国の中で一番日本と価値観が共通している。
共和国制度の雄であり、成功した立憲君主制民主主義国家と自認する日本とはG7仲間でもあるから、ゴーンが入国したら、日本からの要請を外交的に対応する必要がある。
富裕層寄りとみられているマクロン政権は、富裕層と労働階級に国内を分断している、黄色ベスト運動や年金改革反対スト・デモという国内問題に苦しんでいる。
マクロンがゴーンの強い味方と自認することは、反対勢力の反発を呼ぶ可能性がある。
英国が抜けるのでEUの大国として事後のEU引き締め対策も大変である。

フランス側でもルノー経営に関わるゴーン捜査が行われているため、ゴーンがフランスにいるなら本格捜査が行われるだろうから、ゴーンは日本に引き渡しはされないとしても、フランスを避けたい理由がある。

ブラジルはどうか。
日本からは投資を呼び込んで経済的結びつきを強固にしたいブラジル政府は、日本政府との間に障害を生ずることは避けたい。

ブラジルでは、カルロス・ゴーンはブラジル人であることをニュースでは必ず言うが、「困っているならブラジルに来るべきだ」という意見は、少なくとも表立っては全く聞いたことがない。
ボルソナロ大統領はイスラエルを盟友と考え、他のイスラム・アラブ世界とは少し距離を置く。

以上のような理由で、フランス政府もブラジル政府も内心は、ゴーンには来てほしくないと思っているだろうと私は想像する。
日本との要らぬ対立は避けたいので、来られると面倒なのだ。

ゴーンが国籍を持つ3つの国のどこが受け入れることになったとしても、引き渡し協定のない日本に自国民を引き渡すことは、自国民保護の原則から絶対に実現しない。
ペルーのフジモリ元大統領が日本に亡命したことを見れば、それは当然な反応だ。
そのため日本との間に外交交渉が行われるはずだが、ゴーンを守りながら日本の言い分をうまくさばかなければならない。
特にフランスはルノー日産事情があるから、日本政府とのいざこざは避けたいはずだ。

その意味で日本政府にとって、一番外交的親密性が薄いと思われるレバノンに逃亡してくれたのは一番好都合だったと思う。
日本政府・司法にとってゴーン奪還は無理であっても、面子がつぶれる度合いが一番少ない。

さてカルロス・ゴーンである。
インターポールで指名手配の身では、少なくとも日本と取引がある国際的大企業の経営者に就任することは無理である。
国籍を持つ国以外へ旅行したら、逮捕されて日本へ引き渡されることを心配しなければならない。
事実上レバノン軟禁に近い状態であるから、これまでに貯めた財産は十分あるのだから引退するか、どうしても仕事をしたいのならレバノン国内で日本とは全く縁のない事業に携わるしか道はない。

著名企業の経営者となる可能性がないのだったら、当初は記者がちやほやして、日本司法批判や自伝の著作の依頼などがあるかもしれないが、公演やセミナー活動がレバノン国内でしかできないのだから、いずれは割と短時間に国際的に忘れられる運命ではないか。

ゴーンの復讐とか鳴り物入りで当初騒がれるかもしれないが、日本司法はそのときだけ丁寧に、人質司法に関して反論すれば良いのである。
ゴーンが逃亡した状態で日本司法を批判して得られるメリットが考えられない。
レバノンで論争に勝ったからと言っても指名手配状態が消滅するわけではなく、法廷で決着がつかなければ全世界を胸を張って歩ける身分には戻らない。

レバノンに落ち着くカルロス・ゴーンも、日産が日本の会社であって、中国の会社でなかった運命に十分感謝しているはずである。