タイトルは何かというと、「プーチン大統領のマネをするトランプ大統領」なのである。
プーチン大統領(繰り返されるので以降職名を略す)は、虐待されているロシア系住民を保護しなければならないと、ウクライナへ戦車を連ねて侵攻した。
実際のところは、ウクライナは元々ソ連の一部であったから、現在はロシアに属して当然と考えているからだろう。
4年前のことであった。
トランプは、ベネズエラの麻薬密売組織が米国国民に危害を加えているという理由で、ベネズエラを攻撃した。
実際のところは、麻薬がどうかというより、チャベス政権に没収国有化された、かっての米国石油企業の資産であった採掘精製施設を奪還したいことのようだ。
昨日のことだった。
プーチンは一週間で終わるはずだったから、特別軍事作戦と呼ばせて、これは戦争だと非難する反対者の声を黙殺した。
結局4年経っても決着がつかない。
トランプは、今回の作戦は一度限りで二度目がないことを望むが、ベネズエラの態度次第では二度目も辞さないと言った。
本当にこの一回で終われば御の字だろう。
プーチンの手際の悪さと比べて、お前さんとは違って俺はうまくやったぜと、鼻を明かすことができるだろう。
今回一回の攻撃が完全な成果を上げてこれきりなら、議会の承認の前に独立国の国土内で作戦実行したことは、これだけならと大目に見てもらえると思っているだろう。
もちろん8月頃から、なぜか太平洋を爆速で疾速する高速艇を、麻薬の運び屋と見て何隻も攻撃沈没させて、議会や国民対策としてベネズエラの脅威を印象付けてきた。
ブラジリア時間で1月3日午後2時ころ米国トランプの声明があったので、ブラジル視線から見たことを特に書く。
問題にするものが麻薬より原油であることが途中で明らかになってくる。
麻薬は金にならないが、原油は金になるから当然だろう。
簡単にベネズエラの原油について
世界最大の原油埋蔵量を持つ国であり、全世界埋蔵量の17%であると推定されている。
ウーゴ・チャベスが政権を手にしたのが今から27年前の1998年のこと、ボリバル革命社会主義を唱えてきた。
途中でチャベスは死去、ニコラス・マドゥロが引き継いだ。
彼は元トラック運転手だったとか。
金属労組幹部だったブラジルのルラと来歴が似ている。
いくらベネズエラ難民が地続きの国境からブラジルに入ってこようと、ルラ労働者党は都合の悪い事実は無視して、親ベネスエラを続けるのは当然なのだろう。
チャベス大統領時代に米国と決別して、米国資本の採油施設を接収して国営化してしまった。
技術スタッフがベネズエラ国営会社から逃げ出し、利権を吸い尽くそうとする政権の息が掛かった連中が、ずさんな操業をしてきたのだろう。
最盛期の日産330万バレルから、2025年には110万バレルまで、生産量は三分の一に激減した。
原油価格は以前の高水準を維持することができない上に、西側の経済制裁のためにベネズエラ石油は好条件で販売することはできなくなった。
ベネズエラの原油は重質油のため、精製のためにナフサを必要とするのだが、米国を追放したあとで仲良くなったロシアがその供給元となり、石油製品の大口購入は中国となった。
中国は世界の他の誰も買おうとしないベネズエラ産石油の値段を、相当叩いて安く買っているのではないか。
トランプは米国民間企業の資金と人材を使って、衰退したベネズエラ石油産業を復興すると言っているから、製品を売った儲けはいくらかはベネズエラに残るだろうが、投資した分以上は米国へ持っていくことになるのだろう。
現在中国くらいしか大口買い手がいないベネズエラ石油製品の生産量を上げれば、中国へ有利に売ることができるし、ロシアの天然ガスを買えなくなって困っているヨーロッパへ製品を売ることも考えられる。
どれだけ重質油のベネズエラ原油が天然ガスを代替できるかはわからないが。
ベネズエラに親米政権を確立することができれば、一石三鳥位の効果を上げることができる。
国際社会は一昨年のベネズエラ大統領選挙では、マドゥロが不正によって大統領の座についたことは、ブラジルのルラような親ベネスエラ左派政権さえも認めざるを得ない。
マドゥロを力ずくで引退させても非難するのは、ロシア、イラン、キューバ、中国、北朝鮮くらいだろう。
今回米国の作戦によってこのマドゥロだけをレーザー手術的に摘出したことでベネズエラ政権が屈服して、ベネズエラへの被害を最小に抑えながら石油産業を奪還したら、トランプの好きなビッグ・ディールなのだろう。
昨日のトランプ声明で何回か繰り返された単語が、「西半球」であった。
米国が中央アメリカや南アメリカを「裏庭」とするという表現はかなり言い古されている。
実際のところトランプがプーチンのマネをしたというのは正確でないだろう。
米国が中米に手を突っ込んだのは36年ぶり、1989年にパナマのノリエガ将軍を米軍が捕獲した作戦は今回のマドゥロ拘束とそっくりであった。
要するにトランプだけではなく以前の米国政権も似たりよったりなのだ。
西半球の反応である。
今回は米国が中央アメリカを超えて南アメリカの独立国を攻撃した点が、南米諸国にショックを与えている。
トランプによるマドゥロ捕獲に拍手を送っているのが、アルゼンチン、パラグアイ、チリであり、主権の侵害と非難するのがコロンビア、ウルグアイなど、ブラジルは名指しは避けたものの、非難した側に入っている。
簡単に言えば、南米大陸の南の方にある国々は右派政権が多く、ベネズエラと国境を接していないため米国の肩を持ち、北の方にあって実際に国境を接している国は、左派政権が多く米国を非難している。
昨日のニュースでで見たブラジル・ベネズエラ国境は大して人気(ひとけ)もなかった。
一時はベネズエラ側の国境が閉鎖されたようだが、午前中明るくなった時間には再開されていて、ブラジル人観光客はベネズエラから帰ってきたり、ブラジルへ移民したベネズエラ人の中には、実家へ帰っていたのだが、首都カラカスで事変があって家族が心配になったから再びカラカスへ向かうという人もいた。
これまでと反対に政権派のベネズエラ人が亡命しようとか、とりあえず避難しようとか、そんなに大きな動きは起こっていないようである。
年始の連休明けに何らかの動きはあると思われる。
トランプは西半球の安全は守ると言った。
ニュースで評者はモンロー主義の復活と言っている。
トランプ就任の頃のインタビューでは、これからの重点地域はアメリカ大陸とアジアである、と言っていたはずだ。
西半球という単語は何回か発したが、全世界の話はしなかった。
東半球ではヨーロッパは勝手に解決しろ、アフリカは知らない、という態度が見え隠れするのだが、アジアはどうなのか。
①日本・オーストラリア・インド・韓国と中国包囲網
②同盟国とは付かず離れずしながら、関税などを材料にして中国と交渉してできるだけ有利な貿易をめざす
今回トランプは②を行う有力な材料を手にしたといえる。
テレビで見た論者で最も悲観的な意見は、ベネズエラは俺のもの、ウクライナはプーチンへ、台湾は習へというのだが、これは条件が違いすぎてよほどのことがないとこうはならないとは思うが、そこはトランプのことであるから全く予想がつかない。