2024年6月17日

世界の後塵を拝する日本

商業ドル為替は上昇へ反転し、2023年1月4日以来の高値に達する
Dólar comercial volta a subir e atinge maior valor desde 4 de janeiro de 2023
11/06/2024 21h18

ブラジルの通貨レアルの対ドル安値を嘆く記事であって、詳しい中身は知らなくてもよいが、途中に出てくるグラフが衝撃的だった。

プリントスクリーンした問題のグラフ


よーく見ると国・通貨の数が32なのに、データ数が33あるという不思議な表なのである。
どの数字が余っているのかはもちろんわからないので、ロシアルーブルの上の数字をを外す。
そのためそれだけ国なしの数字のみとなっている。
今回強調したい部分はグラフの一番下にあるからだ。

グラフの最下位付近の拡大


日本円はグラフに登場する32カ国中で、2024年のドル建て価値の最大下落通貨となっている。

現在アルゼンチンの大統領は前職ペロニスタのフェルナンデスから急転回しており、右派ハビエル・ミレイ Javier Milei 大統領である。
大統領選挙中にコスプレで登場したり、模型だろうがチェーンソーを振り回したりする、一見狂人である。
しかし前任の左派政府がコントロールできなかった超インフレを、放漫財政を引き締めて抑え込もうとしている点は真面目に評価できると思う。
2023年のインフレ率が211.4%であったアルゼンチンペソにすら、時期が異なるとはいえ、日本円が及ばないとは一体どうしたものだろうか。
この手の経済関係のランキングで、日本円が世界最後尾だった例が過去にあっただろうか。
円の弱さが情けない。
日本大丈夫か?
下に32カ国比較グラフから転記した表を載せよう。

ドルに対する通貨の価値-2024年
6月10日までの変動%

Moeda/País通貨・国0.48
Rublo russoロシアルーブル0.02
Libra Esterlinaスターリングポンド-0.26
Yuan Renminbi chinês中国人民元-0.36
Rupia indianoインドルピー-1.35
Sol peruanoペルーソル-1.99
Zloty polonêsポーランドズウォティ(ズロチ)-2.02
Coroa tchecaチェココルナ-2.10
Rand sul-africana南アフリカランド-2.42
Dólar de Cingapuraシンガポールドル-2.49
Euroユーロ-2.50
Peso colombianoコロンビアペソ-2.52
Coroa dinamarquesaデンマーククローネ-2.67
Ringgit malaioマレーシアリンギット-2.87
Dólar australianoオーストラリアドル-3.03
Dólar neozelandêsニュージーランドドル-3.54
Peso chilenoチリペソ-3.55
Coroa suecaスウェーデンクローナ-3.61
Shekel israelenseイスラエルシェケル-3.64
Dólar canadenseカナダドル-4.37
Florim da Hungriaハンガリーフォリント-4.65
Dólar taiwanês台湾ドル-5.15
Peso filipinoフィリピンペソ-5.58
Rupia indonésiaインドネシアルピア-5.62
Won sul-coreano韓国ウォン-5.74
Leu romenoルーマニアレウ-5.86
Franco suíçoスイスフラン-6.10
Baht tailandêsタイバーツ-6.33
Peso mexicanoメキシコペソ-7.01
Lira turcaトルコリラ-8.16
Real(ブラジル)レアル-9.41
Peso argentinoアルゼンチンペソ-10.08
Iene japonês日本円-10.16

この表を見れば、日本語・ポルトガルで32カ国の通貨の名前がわかる。
さらにポルトガル語の国名のgentílico、これは日本語で「デモニム」と、聞き慣れない言葉で呼ばれるそうだが、要するにその国の国民を指す単語で、国名の形容詞形といって良いと思うが、それを確認することができるという副産物がある。

2024年6月2日

パトス湖にまつわる数字の謎

Laboratório de Oceanografia Costeira e Estuarina da Universidade Federal do Rio Grande (FURG)
リオ・グランデ連邦大学沿岸河口海洋学研究室

グアイバ湖の水はパトス湖に達して、被災地に再び洪水の恐れが増す
Águas do Guaíba chegam à Lagoa dos Patos e aumentam chance de novas enchentes em região já destruída
Por Jornal Nacional
23/05/2024
という記事に、洪水水の大西洋への排水について説明がある。

まず当地のことを知ろう。
Google Mapsを使い、地図と航空写真で現地の様子を見る。
パトス湖の大西洋への開口部はのっぺりしているのではなく、煙突を横に倒したような形状の、細長い水路を形作るように、2本の突堤が海岸線とほぼ直角に、大洋の方角に伸びている。
測ってみると、その水路の長さは約3.5km、水路の先端が外洋に接する部分の幅が580mという大きな建造物である。
それ自体はコンクリートではなく、写真からうかがえる限り、1~3メートルくらいの形の不定形な巨石を積んである。
テトラポットと比べて、不揃いな石積は趣がある。
西側突堤 Molhes da Barra do Rio Grande の真ん中にはコンクリート床があり、その上に2本のレールが敷かれていて、それが突堤の途中、海岸から2.8km地点まで続いている。

上はウィンドサーフィンのような三角帆、下はトロッコ台車のような風力で動く乗り物 vagoneta があって、多分観光トロッコになっているものと思われ、突堤の上を往復することができる。
コンクリート床のトロッコの線路横は、自動車は進入禁止だが、自転車で行くことができるだけの幅がある。
乗り物を使わなくても、往復5.6km、ウォーキングで行っても、気持ちよさそうな場所である。

そして最近の話である。
ブラジル最南端の町は、1.5mを超える洪水に覆われて、記事の時点で16日になる。

今回の大洪水時のパトス湖の大西洋への開口部での流出速度は、秒速3.5m、時速10kmである。
記事にはそう書いてあるが計算すると12.6km/hとなるのだが。
人の早足の速度の二倍くらいである。
これは通常の流出量の10倍くらいになるという。

通常時にはパトス湖の水量が全部交換するのに8日、つまり192時間かかるのであるが、今回の大洪水時には湖全量交換が15時間で起きているらしい。
5月23日時点で、海への1秒あたり流出量が1500万リットルだった。

とても興味深いことがある。
「琵琶故知新」というサイトで見つけた琵琶湖の水はどれぐらいの期間で入れ替わるの?に、「琵琶湖の水循環」という図がある。

まず最初に湖からの流出量を比較してみる。
「琵琶湖の水循環」によると、琵琶湖から瀬田川への流出量と琵琶湖疏水への流出量の合計は、年間53.3億トンと計算されている。
比較のために統一する単位を秒あたりトンあるいは立方メートルと決める。
1年は60x60x24x365=31,536,000秒である。
年間流出量をこの秒数で割ると、秒あたり169.0m3となる。
パトス湖の秒あたり流出量は上の数字を立方メートルに換算してやると、15,000m3である。
倍率は89倍の差がついている。
大水害時には90倍だが、通常時は9倍ということになる。
琵琶湖にこの流量だったら大阪は確実に水没するのだろう。
知らんけど。

暫定結論:大水害時のパトス湖の流出量は通常の琵琶湖の90倍

2つの湖の貯水量の差はどうか。
パトス湖 10,140km2、琵琶湖 669km2なので、前者は後者の15倍である。
琵琶湖の貯水量は27.5km3とあるが、パトス湖は水路によって海とつながっているため、世界湖の広さ順位には番外となっていて、貯水量の記載もない。
それでも面積が確定されている湖の中に当てはめると、世界15位と16位の間に入るからなかなか大きい。
最大水深は12mとあるので、平均水深を4mだと見当をつけて貯水量を計算すると、面積×深さ=10,140x0.004=40.56km3となる。
あれ?面積は琵琶湖の15倍もあるのに、貯水量は2倍にも達しないのか。

事実:パトス湖の面積は琵琶湖の15倍
暫定結論:しかしパトス湖の貯水量は琵琶湖の2倍以下

最後に湖全水量交換時間あるいは滞留時間である。
単純に貯水量を流出水量で割ったものと考える。
先のサイトによると琵琶湖の水が交換するのには4.7年かかる。
大水害時パトス湖の全水量交換は15時間という最近の報道による数字を信じよう。
4.7年は24x365x4.7=41,172時間であるから、両者の比率は2,745倍となり、非常に大きな差がついた。

暫定結論:パトス湖の水の滞留時間は琵琶湖の2,745分の1に過ぎない

パトス湖についての数字に辻褄が合っているのか確かめる時が来た。
パトス湖の貯水量であるが、海への1秒あたり流出量と滞留時間から計算できるはずである。
すると15時間=60x60x15=54,000秒だから、この秒数に15,000m3を掛けてやると、810,000,000m3つまり0.81km3である。
もう一回あれ?である。
さっき適当にパトス湖の平均水深を4mとして計算した貯水量の50分の1にしかならない。
4mの50分の1は8cm、平均水深がたった8cmなんてありえない。
どこが怪しい数字かといえば、パトス湖の滞留時間がたった15時間ということはありえないと思える。
データが不足していて確認することはできない。
大体パトス湖上流のグアイバ湖の大水がこの湖下流地域に達するのに9日かかると記事内の別の箇所で書いてあるのに、たった15時間で湖の全水量が放出されるというのは、なんとも理解できないのである。
水そのものが15時間で入れ替わるのに、波つまり水位差が到達するのに9日かかるということがあるのだろうか。

2024年6月1日時点で、パトス湖上流のポルト・アレグレがようやく氾濫水位を下回ったが、下流のペロタスはまだ1.5m位水没している。
抜けるような晴天でありながら、上流の洪水が到達して、街を覆う水が徐々に増えていくのを見るのは、全く奇妙な感覚だと思う。

結局何が正しいのかはわからないが、それがわかっただけで徒労ではなかったとしよう

2024年5月20日

2024年リオ・グランデ・ド・スル州大洪水のメカニズム

2024年5月初めあるいは4月末からか、ブラジル南端の州、リオ・グランデ・ド・スル州は大雨洪水に見舞われている。
この州はどんなところか。
面積 281,707.151 km2、ざっと日本の国土面積の四分の三である。
そこに 1088万2965人(2022年)の人が住んでいる。
まあ日本の人口の十分の一である。

州都ポルト・アレグレは、ブラジルの首都ブラジリアから約2千キロメートル南にある、面積約500km2、人口149万人(2020年)の大都市である。
今のところ、都心の低地部が冠水して2週間を超えた。
空港もバスターミナルも水没しているため、空路陸路の旅客交通は停止している。
州内の山地ではがけ崩れ、川沿いでは橋の流失によって、道路が各地で分断している。
救援物資のみがかろうじて通過できるような半孤立した場所もある。

どのような天候と地形のメカニズムで、この地方が洪水になるのか知りたいと思った。

Porto Alegre という名前が示すように、この町は港町なのであるが、外海に面してはいない。
グアイバ川 Rio Guaíba と呼ばれることもあれば、グアイバ湖 Lago Guaíba と呼ばれることもある水域がある。
水の流れがあれば川、流れがなく溜まっていれば湖ということになるようである。
グアイバ湖の上流側は、タクアリ川 Rio Taquari、カイ川 Rio Caí、パルド川 Rio Pardo、グラヴァタイ川 Rio Gravataí、シノス川 Rio dos Sinos と、多数の支流が流れ込み三角州を形成している。
なおこれらはみな支流で、川の太さから見ると、ポルト・アレグレの西方つまりリオ・グランデ・ド・スル州の中心部から流れてくるジャクイ川 Rio Jacuí がこの水系の本流のようである。
ポルト・アレグレの町は、この三角州の下端、グアイバ湖の北東端岸に面している。
グアイバ湖の南側の下流部には、さらに大きなパトス湖 Lagoa dos Patos がつながり、その一番南端でようやく外海、大西洋へ水が放たれる。

パトス湖がどれだけ大きいかというと、面積10,140km2、比較のため日本最大の琵琶湖は669km2だから、その大きさがわかる。
面積の割には水深は浅く、最大水深は12mということである。
それでも霞ヶ浦の7mよりは深い。
海と標高差の極めて小さい水路でつながっているために、海水が入り込む汽水湖である。

パトス湖の形は細長い紡錘形に近いのだが、面白いことに海岸から直角に内陸の方に伸びているのではなく、海岸線と平行になる方向で、幅約8kmの大きな砂州で外海と仕切られている形なのである。
パトス湖の北と南の両端、つまりグアイバ湖との接続部から外海へ通ずる水路までは280kmもある。
ちなみに東京駅と名古屋駅間の直線距離が約270kmである。
ポルト・アレグレ市の標高は10mなので、ポルト・アレグレに溜まった雨水が外海に排出されるためには、たった10mの標高差で280km遠くまで水を押し出さなければならないわけである。
水が極めてゆっくりとしか流れないことが想像できる。実際ポルト・アレグレ付近の水がパトス湖南端の大西洋流出水路付近に達するまで数日かかるので、そうするとペロタス市やリオ・グランデ市のようなパトス湖南部の湖岸の都市が洪水になる。
当面の天気予報によると、大西洋からの強い海風がパトス湖の南東へ向かい、海への流出方向に逆らうように吹き付ける形になり、パトス湖の洪水水の流出を遅らせることになるだろう。

ポルト・アレグレ地方のこれまでの最大の洪水は、1941年のものであった。
グアイバ湖の氾濫水位が3mであるところ、その年は4.76mに達して、氾濫水位まで下がるのに32日を要した。

その後1960年代末にポルト・アレグレの護岸工事が始まった。
それは市街地とグアイバ湖を区切る延長68kmの堤防、14の水門及び23箇所の排水ポンプ場を持つ。

しかしながら、2024年の大洪水では、流入する川すべての流域が大雨になったために予想を上回る速さで水位が上がり、グアイバ湖の水位は1941年を上回る5m超えとなり、最大5.35mに達した。
困ったことに水門が完全に閉まらないで隙間から水が侵入したり、排水ポンプ場が水没したり、感電防止のために電気供給が止められてポンプに通電できなくなったりして、当初は4箇所のポンプしか運転できなかったという。
普段から水門やポンプ場の定期的な点検ができていなかったことは、洪水が一部人災と考えられることにつながっている。

今回のリオ・グランデ・ド・スル州の水害では、洪水による死者約160名、行方不明者約90名、浸水のため避難者数が約66万人を数えている。(2024/5/20現在)

2024年3月26日

誇っていいデングワクチンは日本製

ブラジル中で大流行中のデング熱は、確認患者数が百万人を超えた。
この病気には特効薬はなく、かかってしまったら対症療法しかないのだが、ワクチンが存在する。

日本の武田薬品 (Takeda Pharmaceutical Company Limited) の製品で、商品名は"QDENGA"、多分ケデンガあるいはキデンガと呼ぶのだろう。
90日間隔で2回接種する。
効果はデング熱の4つのタイプ全部に対して、恒久的な免疫を作るもののようだ。
インフルエンザワクチンのように毎年とか、コロナワクチンのようにそれより短期間に接種を繰り返さなければならないような面倒なワクチンではない。
でも武田薬品は、熱帯地方でしか需要のないだろうこの病気のワクチンを、よく開発してくれたものである。

公共保険外でならば、ある診療所の宣伝をみるとR$ 390,00(390レアル)で処方してもらえる。
現在の為替レートは1レアル=30円であるから、計算すると11,700円となる。かなり高価なものだ。

適用年齢は4歳から60歳であり、この年齢帯なら処方箋を必要としないが、それ以外の年齢の場合は医師に受診して処方箋が必要である。
対象年齢で医師の受診を必要としないので、多分禁止事項や副反応の心配は少ないのだろう。

公共保険の場合現在、ワクチン供給量の関係から、デング熱が大流行中の五百あまりの地方自治体(市)において、児童からローティーンにあたる10歳から14歳に限って接種してもらえる。
この年齢帯が、デング熱に罹って入院が必要になる可能性が高いと言われているからである。
幼児とか老人が重症化することが多い普通の病気と比べると、対象年齢を見て奇異な感じを受ける。

これまで私的保険あるいは自由診療でのみしか手に入らなかったワクチンであるが、未曾有の大流行のために保健省が扱うようになった経緯がある。
しかしワクチンの分配に問題がないわけではない。
まず、製造供給が一社だけであり供給量に限りがあるため、公共保険が割り込んで分捕るような形になって、自由診療の病院でワクチン不足ぎみになった。
一番困るのは、90日後の第2回接種のときにワクチン在庫がなく入荷を待たされる事態が起きる。

一方で、公共保険が確保したのは大体120万回分であるが、ワクチンを求める人が少なく、こちらではワクチンが余り気味になっていて、約三分の一の40万くらいしか使用されていない。

どんな病気にも絶対罹りたくないから、できることは金がかかっても構わないから何でもするという人がいる一方で、罹ったときの症状が多少辛くても、死亡率が低い病気なら何もしないほうが得策と思う人や、根っからのワクチン忌避者に生まれついた人など、様々な考えがあるからこんなことになっても仕方ない。

2024年3月12日

デング熱の経験

ここのところデング熱関係のエントリーが続いたのにはわけがある。
2024年にはいってブラジルはデング熱の大流行に見舞われている。
それだけでなく私自身がデング熱に罹ったからだ。
ごく簡単に経過を書いておこう。

  • 第1日 早朝寝ている間に悪寒を感ずる。体温38度台、食欲減退
  • 第2日 体温38度台、頭痛、食欲減退
  • 第3日 体温37度台、頭痛、食欲減退
  • 第4日 体温37度台、頭痛、食欲減退
  • 第5日 体温37度台、頭痛、食欲減退
  • 第6日 体温36度台、食欲減退
  • 第7日 体温平熱、食欲回復、手のかゆみ
  • 第8日 体温平熱、食欲回復、手足のかゆみ
  • 第9日 体温平熱、食欲回復、手のかゆみ
  • 第10日 記録終了

体温に関しては、家に2つの体温計があるのだが、最初の数日使っていた電子式がどうも温度が低めに出るような気がして、途中から水銀体温計に変えたので、結局のところ水銀体温計のほうが正しい体温を示すと思われるが、正確な体温はよく分からなかった。

第2日に公共の総合診療所 (Unidade de Atendimento Integral)へ行った。
普通なら熱止めの薬を適当に選んで薬局で買って服用して様子を見るのだろうが、デング熱の場合には、普通よく使われるアスピリン系解熱剤は、効果がなかったり逆に悪化の原因となったりするという知識があったので、自己診断はせずに、2日めに診療所へ行ったのであった。
採血、血液検査となり、結果を待つ前に点滴となった。
前日からあまり食べてないから、栄養補給にはなっただろう。

新型コロナのばあいはパンデミア pandemia だったが、このデング熱の場合はエピデミア epidemia(汎ではない)流行と言われているので、診療所の中に点滴コーナーができていて、後ろに番号が書かれた廊下のベンチに患者は並んで点滴を受けていた。

一度家に帰ったが、指示されたようにその日の夜に診療所へ戻ると、血液検査の結果が出ていた。
疫学的検査をしたようには見えなかったが、血球などの通常の血液検査はしたのだろう、血小板が減っているからデング熱だという診断が出され、処方箋をもらった。
デング熱には4つの型があり、そのうちの一つに罹るとその型には終生免疫ができるが、その後に他の型に感染すると、2回目の発症時には症状が強く出るから注意が必要だ、といわれている。

  • 経口補水塩類 SRO (Sais de Reidrataçãp Oral)1袋を1リットルの水に溶かした溶液を用意する
  • 経口補水塩類溶液を1280ml、水、ココナッツ水、茶類、ジュース類、牛乳のようなその他の水分を2560ml、合計3840mlの水分を1日に摂取する
    ただしアルコール飲料、炭酸飲料は飲用しない。
    午前、午後、夜の時間帯に三分の一ずつ摂取する
  • 解熱のためにはパラセタモール Paracetamol 別名アセトアミノフェン Acetaminophen 750mg を6時間毎に服用する

前にこのブログに書いたように、出血性デング熱へ重症化するのを防ぐために、大量の水分を取らなければならない。
確かに処方箋はそういう指示をしている。
1日に3.8リットルの水分を摂取というのは、午前中にコップ7杯、午後にコップ7杯、夜間にコップ7杯ということである。
なかなかの大量なのであるが、幸い知人が言っていたような、「水を大量に飲めというのだが、飲むと口の中が金属の味がして非常に不味く、とても大量に飲めるものではない」症状が出なくてとても助かった。

2024年3月10日

デング蚊と戦う小魚

デング蚊の繁殖と戦う魚種
Espécie de peixe ajuda no combate à proliferação do mosquito da dengue
Jornal Nacional
06/03/2024

蚊の幼虫つまりボウフラを食べるため、池やプールのような大量の静水がある場所に放される魚がいる。
うちにもこれがいる。
学名 Poecilia reticulata、つまりグッピー"guppy"である。
しかし水槽で飼育される観賞用品種のような、美しい色や模様を持ってはいない。
グッピーのページにある上の写真のような野生型である。
ポルトガル語では通称名 barrigudinho というが、形容詞かつ名詞である barrigudo, barriguda が「太鼓腹の〔人〕」という意味なので、それに指小辞がついているから、強いて訳すと「腹ぷっくり小魚」とでも呼べるだろう。
この他にも gúpi(これは英語名発音をポルトガル語表記にしたものだと思う)、lebiste、guaru と、様々な名前で呼ばれていることがわかった。

この魚種の衛生目的利用は、1930年代にサンパウロやリオデジャネイロのような大都市で、マラリア対策として行われてきた。
デング蚊とマラリア蚊は異なるが、現在はデング蚊 Aedes aegypti 繁殖抑制に使われるように、手法が改良された。
研究によると魚一匹は、1日に70から80のボウフラを捕食する。
体の大きさの割によく食べるものだ

最近のデング蚊撲滅キャンペーンでは次のように言っている。
「一週間にたった10分だけ、家の周りや庭を観察してボウフラを退治しよう」
容器に溜まった水だったらひっくり返すだけで良いが、ひっくり返せないならば、排水するか殺虫剤を撒くかとなる。
根拠は、産卵された蚊の卵が幼虫、蛹への変態を経て成虫となって飛び立つまでが1週間なので、そのどこかで生活環を断ち切るということである。

グッピーは幼虫や蛹だけでなく、水辺に成虫の蚊が産んだ卵も食べるそうである。
ボウフラが湧いたバケツにグッピーを入れると、ボウフラを見つけるまでは当て所(あてど)なく泳いでいるが、見つけると水ごと一気に吸い込んでくれてなかなか面白い。
面白いだけでなくデング蚊対策の頼もしい味方である。

その後詳しく調べていたら、グッピーはカダヤシ目カダヤシ科に属すると書いてある。
カダヤシとはあまり聞いたことのない名前だ。
ココヤシとかパームヤシとか、ブラジルにはヤシ類は多いがその一つの名前なのかと勘違いしそうだ。
なんとカダヤシとは当然ながら「カダ椰子」ではなく「蚊絶やし」なんだという。
英名も Mosquitofish または Topminnow ということで、ボウフラを捕食するその食性がそのまま名前になっている。
道理でボウフラ退治が得意なわけだ、と納得した。

それならば、ポルトガル語で「腹ぷっくり」なんて名前ではなく、mata-mosquito「蚊殺し」とか come-mosquito「蚊食い」とか、日本語や英語に倣った、強面する名前にしてやっても良いのではないかと思う。
そんなことを思っていたら、既に peixe-mosquito 英語名そのままの魚がいるではないか。
これはグッピーと同じカダヤシ科ではあるが、別属の Gambusia affinis につけられた名前だ。
写真を見るだけでは peixe-mosquito = Gambusia affinis と barrigudinho = Poecilia reticulata の野生型の区別がつかない。
この件から外れるが、似ているが異なるメダカとカダヤシの違いが図解されていたのが興味深い。

2024年3月9日

デング蚊の見分け方

デング蚊と普通の蚊の違いはこうだ
Especialista explica diferenças entre mosquito da dengue e pernilongos
Jornal Nacional
02/03/2024

デング蚊 mosquito de dengue

黒に白の斑があり、日本の藪蚊と似ている
デング熱だけでなくジカ熱 (Zica)、チクングニア熱 (Chicungunha) も媒介する
昼間、特に早朝、午後遅くに吸血活動
低空飛行のため、人の脚を刺すことが多い
きれいな静水で繁殖
正式に区別したいときは種名 Aedes aegypti(和名ネッタイシマカ)で呼ばれる
日本のヤブカ (Aedes albopictus) と同属

(普通の)蚊 pernilongo / muriçoca

茶色く、脚が長く、日本のアカイエカに似ている
フィラリア症 Filaríase / 象皮病 Elefantíase を媒介、最終記録は2017年、レシフェ市
西ナイル熱 Febre do Nilo Ocidental を媒介、最近5年で7件、ピアウイ州、トカンチンス州
夜行性であり夜に吸血活動
きたない水で繁殖
属名は Culex、和名ではイエカ属