ポルトガル語でanta、読みは「アンタ」、もちろんこれはあなたという意味ではない。
動物のバク(獏)である。
日本では獏は夢を食べる動物、なんか神秘的な風格を持つ、謎めいた動物ととらえられている。
しかしブラジルで「アンタはアンタ」といったら、話し相手を馬鹿にしていることになる。
どういうわけか、antaは間抜けの代名詞なのである。
http://g1.globo.com/jornal-hoje/videos/t/edicoes/v/zoologicos-de-seis-estados-brasileiros-lancam-campanha-para-resgatar-a-dignidade-das-antas/2824421/
ブラジルの6つの州の動物園が共同で、アンタの名誉回復キャンペーンを始めた。
研究者はどうして気の毒なアンタが「知能が足りない」代名詞になったのか、未だに解明していない。
一説には、ブラジルにやって来たポルトガル人が、アンタの家畜化を試みたが成功しなかったからだという。
別説では、アンタは驚くと頭を下げて走り、前の障害物などに注意しない習性からきたと説く。
ダチョウが馬鹿(それとも臆病?)と言われるのと似た理由だ。
アンタは、中南米に3種、Anta Centro-Americana(中米アンタ), Anta da Montanha(山アンタ), Anta Brasileira(ブラジルアンタ)、アジアに一種、Anta Asiática(アジアアンタ)の4種が存在するのだが、ブラジル以外で「アンタは馬鹿」という不名誉を被るところはない。
動物学者によると、アンタは、「(知能は)ほかの動物以上でも以下でもない」。
馬鹿ではないが、とりわけ賢いわけでもないのか。
研究者はこの被差別動物の生態学上の地位を説明する。
アンタは果実を主に食べ、(その外見に似ず)数キロメートルの移動をする。
ここで食べた果実の種をずっと遠くへ蒔く、「森林の庭師」なのだ。
アマゾナス 略称AM、パラ PA、バイア BA、サンパウロ SP、パラナ PR、サンタ・カタリーナ SCの6州にある20の動物園は共同で、Minha Amiga Uma Anta「私の友達アンタ」という児童用小冊子をつくり、アンタの名誉回復のキャンペーンを企画した。
インタビューが傑作だ。
レポーター:A anta é uma anta, não? 「アンタはアンタですか?」
(質問が誘導っぽいぞ)
10歳の女の子:Não não, ela é uma anta, né? mas ela não é burra assim. Ela é inteligente, né? A gente pensava errado.「いいえ、アンタはアンタだけどブッハではないよ。頭がいいんだよ。私たち考え違いしていたのよ。」
アンタと並ぶもう一つの間抜け動物の代表、ロバ(burra)ではないと答えているが、そうなるとロバは馬鹿なんだ。
笑ってしまった。
そのうちにどこかで、ロバの名誉回復キャンペーンが始まりそうだ。
土曜日の昼のニュースがアンタとブッハということは、まあ平穏な週末ということだ。
アンタにはテーマ曲もあるではないか。
「あんたのバラード」という歌があったことを思い出し、久しぶりに聞いた。
日本ではよく言ったものだ。
「アンタはエライ」
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