現代ポルトガル語辞典(白水社)から:
a intervenção 連邦政府の州政への干渉
o interventor [非常事態に大統領が州に派遣する]執政官、臨時行政官
1年半前の2016年8月に、美しい、魅惑の、すばらしいその他ありとあらゆる形容詞で賞賛される、この有名な観光地でオリンピックが開かれたことが、奇跡としか思えない。
先月(2月)カーニバルが暴力にまみれて終わった直後に、リオデジャネイロの治安が急激に悪化したことを理由に、連邦政府がリオデジャネイロ州政府の治安に介入を決定した。
"O interventor federal na segurança do Rio, general Walter Souza Braga Netto"
と新聞の記事に書かれるように、連邦政府が州政に介入するのは保安部門だけであるが、執政官の肩書名称からわかるように、ブラジル陸軍東部方面司令官を兼任する将官であり、インタビューには迷彩服で出てくるから異様ではある。
この介入決定は戒厳令などには至らないがその一歩手前であって、これが発効している間は、改憲は不可能であると憲法に定められる。
そこで4年に1度の大統領・上下院議員・州知事・州議員の選挙が今年後半と近づいてきて、改憲を必要とする不人気な社会保障改革を無理と見た連邦政府が、断念する言い訳にリオの治安悪化を、人気回復を兼ねて一石二鳥を見込んで当てつけたもので、十分に政治目的と言えるのだが、ここでは問題にしないでおこう。
表題の話である。
2018年3月からブラジル郵便(Correios)は、リオデジャネイロ市をあて先とする小包に3レアルの特別割増料金をかけることにした。
理由として小包、郵便配達人、配達車それから郵便局自体を強盗や略奪から守るコストが大きいという。
今までも危険地区に住んでいると、配達人の身の危険から郵便物を配達してくれず遠くの局留めになっているが、これからはカリオカ(リオ住人)にとっては、インターネットでの買い物が高くなって余計に不便になる。
しかしリオデジャネイロ市の治安が改善したら、この「暴力非常割増料金」は廃止されるだろうと郵便局はこのページで説明している。
郵便局自体は、「暴力非常割増料金」とは言わないで、「非常時の取立て」という表現を使っている。
昨日のニュースで、リオで一か所での歴代最大?のコカイン発見が報道された。
重量は1.2トンという報道もあるが1.5トンで、いくつもの旅行バッグに入れられてコンテナ内の建材の奥に隠されていた。
真空パックされていて、二重包装の間には正確にどれか忘れたけれどオレガノのような香辛料を入れて、麻薬探知犬の嗅覚をごまかそうとしていた。
コカインのルートは、生産地コロンビアやボリビアから、長大な国境を越えてブラジルに陸路で入り、リオデジャネイロまで運ばれてからは海路か空路で欧州に運ばれるのだという。
くだんのコカイン入りコンテナはベルギー・アントワープへ運ばれる予定だった。
この1.5トンのコカインは濃縮されているのだろうか、消費者向け製品にすると10トンになって、2億レアルの価値を持つそうである。
一方でこんなニュースもあった。
路上で検問を行っていたリオデジャネイロ州警察の警官二人が、不審な運転手の不審な車を調べたら現金180万レアルが積まれていた。
不動産を売った代金だと言うのだが、どこのどんな不動産か説明できなかった運転手は、見逃してもらうために80万レアルを差し出したが、二人の警官は贈賄その他の容疑で早速逮捕した。
見逃し料としては桁違いであると思うが、こういう人達がいるからこそブラジルが住むところとして魅力を失わない支えになっているのだろう。
連邦政府のリオデジャネイロ州治安介入は今年いっぱい継続するそうだが、リオ宛て小包の暴力割増料金が廃止されるのはいつのことになるだろうか。
なお日本郵便のページによると国際小包(ブラジル全国が第4地帯)、EMS(ブラジル全国が第3地帯)には、この暴力割増料金の適用はない。
2018年5月5日追加
郵便局のリンクが切れているが、調べてみたら「暴力割増料金」は、実施したその週に裁判所が差し止めて、結局今は実施されていない。以下の数字を実際生活の中で参考にすることはまずないと思うし、あったら人生終了に向けてまっしぐらだろうが、単なる参考として計算してみた。
上の記事では、1.5トンがヨーロッパで小売製品化すると10トンにまでなって、それが2億レアルとなっているから、1レアル=30円として計算すると60億円、つまり1グラムは20レアルで600円である。
別の記事のうろ覚えで数字が合っている確信はないが、別地域のデータがある。
中国で過去最大のコカイン摘発があって、そのときの重量と価格は、1.3トンが170億円となっていたとメモに書いてある。
つまり、1グラムは13,077円である。
欧州と中国のコカインの小売値段に20倍以上もの差がありすぎるのだが、大中継地かつ大消費地であるブラジルの実勢価格は、死を覚悟で持ち込まなければならない中国よりもヨーロッパのものに近いのだろう。
traficanteと呼ばれる密売人に聞けば解決するのだが、知り合いにはいないし、密売組織と警察両方から潜在的使用者とみなされても困るので止めておく。
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