本題と全く関係ないが、2018年ミナス・ジェライス州チャンピオンはアトレチコ・ミネイロを2戦目で逆転したクルゼイロであった。
3日前思いがけない時間に花火が上がったことを思い出す。
2018年4月5日木曜日未明0時30分ころ、突然遠くで花火が上がった。
思い出してテレビをつけてみたら、ブラジルのルラ元大統領が「二審で有罪確定判決が出ても最終審で確定判決が出るまで逮捕されないよう」連邦最高裁判所に請求した人身保護請求について大法廷での審判が決着したのだ。
連邦最高裁判所大法廷は御老体の判事達には堪えるだろう、延々と11時間(もちろん何回か休憩はあったが)審理されて、といっても各判事は既に意見を固めていたようであるから各自の論旨を主張して、5対5だった票決は裁判長の決定票によって6対5でルラ元大統領の人身保護請求を認めなかった。
数的には危ない票決だった。
同日木曜日夕方、逮捕命令を出す担当である一審のSérgio Moro判事が早速逮捕命令を出した。
元大統領は「名誉ある役職にあった」ので、連邦警察に「自発的出頭」をするように24時間の猶予を与えた。
自発的出頭期限の金曜日夕方になっても、元大統領は現れなかった。
自分の古巣、サンパウロ大都市圏のABC地区金属労働者労働組合に籠城したとか報道したメディアもあった。
連邦警察と「出頭の方法について交渉中」とメディアは伝えた。
翌土曜日19時ころには、娑婆の最後の演説を終えた元大統領をのせた車が連邦警察に向かっている映像をテレビ中継していた。
時間の遅れはあったにせよ、元大統領は自発的に連邦警察に赴いた。
気になった点を忘れないように書き留めておく。
上がりの遠いブラジルの司法
誰かが逮捕されそうになると、特にそれが権力や金を持った人である場合に、"habeas corpus"というものが請求される。普通ポルトガル語風にh無音のローマ字読みして、アベアス・コルプスと言われて、「人身保護令状」と訳されている。
HCと略されたりもする。
不当逮捕に対抗する正当な手段である。
これだけなら別に問題はなさそうであるが、そうではない事情がある。
貧乏人相手の仕事は門前払い、金を積まなければ仕事をしないような、いわゆる有能な弁護士が、依頼人が罪を犯したことがほぼ濃厚であっても、「依頼人の身体に危険が及びそう」とか、「依頼人は社会に害を与えないから逮捕に及ばない」とか、理由をつけて被告を逮捕させないために持ち出す武器である。
裁判所の系統が大きく分けて、司法裁判所と連邦裁判所と分かれていて、それぞれが三審となっている上に、両方が場合によって交差することがあって、「裁判を遅らせるのが得意な」弁護士にかかると訴訟は縦線で上がったり下がったり横線で隣のラインに移ったり、変幻自在である。
その他に、多分ブラジル特有の労働裁判所とか選挙裁判所(選挙管理委員会の役割)という別系統があって、これはこれで摩訶不思議な世界であるが、ここでは触れない。
上訴だけではなく、同じ段階の裁判所の判決に異議申し立てをすることが可能で、異議申し立てを意味する司法用語を見ると、異議申し立てにも種類があっていくつもの用語があるようなのだが、こんなことは我々一般の市民には複雑過ぎて理解できない。
ニュースを見ていたら、その一つである、embargo de embargos、異議申し立ての異議申し立て、名前からおかしいのであるが、これが制度上何回もできるようなのだ。
通常は理由をつけて3回位までだと言っていたが、それぞれに数ヶ月から数年かかったら、いつ終わるのか見当がつかなくなる。
次の一手が一つだけでなく、裁判の道筋の可能性が無数にあるようで、見通しがきかないのである。
見方を変えると「疑わしきは罰せず」精神を実践して、慎重な審理を行っていると言えるのだろうが、この複雑な上訴・異議申し立て制度を人身保護請求と組み合わせると、あら不思議、裁判で何年も争っている間全く収監されずに、自宅で寝起きできる。
一つの例としてあげられたのは、裕福な農場主に殺人容疑が掛けられたが、この裁判引き延ばしと人身保護請求の二本立てで、一度も(と肯定はできないが、少なくとも長期間)牢屋に入ること無く、時効が来て無罪になってしまった。
このような馬鹿げた恥ずべき「犯罪が罰せられない(impune)ブラジル」という事態を許さないために、事実審理が終わる二審まで審理が尽くされたら服役してもよいのではないか、という判例の規範が2016年に連邦最高裁判所によって出された。
実際にルラ元大統領の収賄容疑は連邦裁判所で審理されていて、現在二審である連邦地方裁判所の3人の判事の合議判決は全員一致で、一審の連邦判事一人の判決(禁錮9年6か月)より重罪とした(12年1か月)。
ルラ元大統領の弁護団は人身保護請求を別系統の司法裁判所に請求して棄却されたために、連邦最高裁判所つまり最終審に改めて人身保護請求を行ったのだが、同様に否決されたわけである。
しかし裁判の最終的な行方はわからず、選挙裁判所がルラ元大統領の被選挙権を確認したら、獄中の立候補者という想像し難い大統領候補が生まれる可能性も否定できないのである。
結局、金持ちと貧乏人は「法のもとで平等」ではないと誰もが感じている。
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