2019年7月30日

カリオカの悲しき習性

リオデジャネイロといえばわずか3年前にオリンピックがあったのだが、当時からも、いや当時に増して犯罪が多いのは、ブラジル国内の尺度で測っても、かなりのものである。
そういった話である。

リオに住んでいる姪っ子がベロ・オリゾンテへ旅行した。
一応説明しておくと、リオ・デ・ジャネイロ市はリオ・デ・ジャネイロ州の州都であり、人口約650万人で全国で2位、一方ベロ・オリゾンテはミナス・ジェライス州の州都であり、人口約250万人で全国で6位の、いずれもブラジルの大都市である。

旅先のベロオリゾンテではUberを利用したというが、身についた習慣は恐ろしく的確だ。
車に乗り込んでさっそく行ったことが、自分の横のドアのウィンドウを急いで閉めたことだった。
運転手は窓を開けたまま平気で運転しているので、どうして閉めないのか気が気でなかったという。
えっ、えっ、窓閉めないの?
危ないよ、強盗やひったくりが手を出してくるよ!

そこでようやく自分がリオにいるのではなく、ベロオリゾンテの街中(まちなか)を車で移動していることを思い出したという。
リオデジャネイロの街を車で走るときに、窓を開けたままなんて無謀で危険な行為は考えられないそうである。
カリオカ(リオ市住人)の悲しき習性である。

逆に考えると、ミネイロ(ミナス州住人)がリオへ車で旅行するときは、この話をよく思い出して注意しないと犯罪の被害に遭うことになりそうだ。

そして、少し昔だったら乗用車のエアコンは贅沢装備とみられていたのに、熱波のときは40度にもなるリオデジャネイロで窓を閉め切るために、必須の保安装備と成してしまう、無法な世界になってしまったのではないか。

2019年7月29日

オートマ車は欠陥危険機械

ブラジルのボルソナロ大統領が議会へ送った交通法改正案が、また議論を呼んでいる。
  • 免停到達点数を現行20点から40点へ引き上げ
  • チャイルドシート不使用の違反金を廃して書類通知と減点のみにする
  • カテゴリーC以上の免許更新時の薬物検査義務の中止
  • 免許証有効期限の現行5→10年へ、65歳以上は現行3→5年へそれぞれ拡大

多くの運転免許を所持する一般市民が喜びそうな政策であるが、政府が一番ターゲットと考えているのは、去年全国でストを打たれて、国全体がマイナス成長に落ち込んだ原因となったトラック運転手の組合である。
すぐに免停になってしまう、免許更新に金がかかる、といった職業運転手の不満を少しは抑えておいて、去年の全国トラック運転手ゼネストのようなことが起こらないようにする手立てであろう。
チャイルドシート以外の項目は、トラック運転手にとっては利害の大きい問題であるからだ。

さてどの項目も規制緩和がゆる過ぎなのだが、この中で現在の日本では全く受け入れ不可能なものがある。
4番目の免許証有効期限の拡張である。
最近次から次に出てくる日本の交通事故のニュースには、高齢者のドライバーがペダルを踏み間違えるのが原因で起こる事故に大いに関係がある。

ブラジルは最近になって高価格帯からオートマチック・トランスミッション採用モデルが拡がってきているが、まだまだマニュアル・トランスミッション車も多い。
オートマ車と比較して価格が安いことが理由の一つだと思う。
免許が比較的取りやすいというオートマチック車限定免許というものがブラジルにはないから、免許取得のためには将来乗る予定がなかったとしてもマニュアル車を習得しなければならない。
うちの大衆車もマニュアル車である。

そもそも運転が楽だという理由で普及してきたオートマチックは、機械工学的にそうなのかはわからないが、人間工学的というか安全工学的にに大きな欠陥があるのではないかと思う。
この点でどれだけ共感してくれる人がいるのか、異論が多いことは想像する。
それでも説明してみよう、なぜか。
  • 発進・加速するとき→ペダルを踏み込む
  • 減速・停止するとき→ペダルを踏み込む
もちろんペダルは異なるが、操作運動方法はまったく同じである。
踏み込む位置を間違えると全く反対の結果となってしまう。

オートマチック車しか知らない人のために一応書くと、マニュアル車だったら、
  • 発進・加速するとき→ペダルを踏み込むだけでは発進せず、クラッチ操作が必要
  • 減速・停止するとき→ペダルを踏み込むだけで一応減速・停止するが、クラッチ操作をしないとエンジンが停止する
かなり複雑になる。
間違えたペダルを踏んだら車の動きとエンジン音からすぐに分かるし、クラッチがあるからすぐに修正をかけられる。
というより、クラッチ操作があるからこそドライバーはエンジン音に敏感に反応すると言える。
それだけ運転操作に、聴覚・ペダル触覚・加速感覚が集中するのである。

年をとって自動車の運転があやふやになってしまっても、操作が簡単なために漫然とオートマチック車に乗り続けることができるだけに、わけがわからないまま事故を起こすのが問題なのだ。
危険な機械を扱うのだから、容易く運転できればよいというものではない。

昔日本で免許をとったときには存在していなかったオートマチック車限定免許ができたのは、今調べたら1991年に普通自動車免許のAT車限定という形で誕生したものという。
ということは、その年に年齢30歳であってAT車限定免許を取った人は、再来年は年齢満60歳となり、AT車限定免許をとって30年を迎える。
これからAT車しか運転できない老人ドライバーがどんどん増えるだろう。

極端な提案をしてみるが、欠陥自動車しか運転できないAT車限定免許は欠陥免許であるから、ある年齢以上の者に持たせておくのは危険なので、所持者がある年齢、例えば満65歳に達したら失効するように法改正をすればよい。

「日本における乗用車のAT車の販売台数比率は2011年で98.5%である」という記述を見た。
もちろん乗用車区分の話であるから、大型のトラックやバスのようなプロフェッショナル用途であると、まだMT車は活躍していると思われるが、どうもMT車とは、絶滅危惧種のようである。
米国もAT車の割合が非常に高いらしい。

アクセルペダルだけで加速と減速を制御する「シングルペダルコントロール」
https://japan.cnet.com/article/35139615/
この記事を読んだだけでは、この経験したことのないメカニズムがよくわからない。
「ペダルを踏めば加速し、離すと回生ブレーキがかかって減速する」ということは、アクセルを急に離すと強いブレーキがかかって、「惰性で走る」状態がないということだろうか?
慣れないとペダルを離したときに急減速がかかり、後続車に追突される恐れはないのだろうか。
そのような心配がないのだったら、かなり有効と思う。

AT車限定免許に有効年齢期限を設け、達したら強制失効させるといった、上に書いたような過激な変革を本当にやろうとしたら、AT限定免許所持者の不満を一斉に浴びて、絶対無理だろう。
AT車製造と輸入を制限などしたら、非関税障壁などと騒ぐ外国もありそうだ。
そこを、高年齢運転者にはペダル踏み間違え警告安全装置つきの自動車しか運転できないように法改正する、といったら、導入するのに抵抗は少ないだろう。

しかし、検問して免許証と運転者の顔と車のメカニズムを全部チェックしないと違反を見つけることは不可能だろう。
罰則を極めて厳しくして一発で免許取り消しとしたら、あえて違反して運転する高齢者は減るだろうか。

中国でやっているような、何でもかんでも、ここではすべての自動車に顔認証を付けて、その車を運転する資格のない人が運転席に座るとエンジンが決してかからないようにすれば、車両盗難予防も兼ねて対策は完璧だろうが、金がかかるし、深刻なプライバシーの侵害につながる。

しばらくブラジルの交通法規はゆるゆるが続きそうだが、日本と同じようなAT車の普及と高齢運転者の増加によって日本のような事故が目立つようになったら、いつかはブラジルにも変化が訪れるかもしれない。
くれぐれもブラジルにAT車限定免許など導入しないように祈る。

2019年7月21日

日程がきつくコストが高い在外投票

2019年7月21日は投票日であるから、選挙について書こう。
ブラジルではなくて日本のである。

サンパウロの領事館から選挙のお知らせが届いた。
7月10日か11日のことだった。

2019/07/04 選挙の公示日
2019/07/05 在外公館投票の開始日
2019/07/21 日本国内の投票日

投票方法は3つある。
金のかかる順番で説明すると、
  1. 日本国内における投票 期日前投票、不在者投票、投票日に投票の3つの方法がある
    ブラジルから日本まで片道2万キロの旅行をしなければならない。
  2. 在外公館投票 7月5日(金)から13日(土)まで各日9:30から17:00まで
    サンパウロ市内の日本領事館まで片道600キロの旅行をしなければならない。
  3. 郵便投票 三段階を経る必要があり、どれも飛ばすことはできず、国内の投票日までに順番に行われて完結しなければ、投票は有効にならない。
    1. 海外の有権者は日本の選挙管理委員会へ郵便で選挙人証を送り、投票用紙を請求する
    2. 日本の選挙管理委員会は郵便で選挙人証と投票用紙を有権者へ送付する
    3. 有権者は記入した投票用紙を郵便で日本の選挙管理委員会へ返送する
    つまり、郵便はブラジルと日本を一往復半しなければならない。
    これを公示から投票日までに済ませなければならない。

1.については当然、たまたま日本に帰国した期間が投票とぶつかったならば取ることのできる方法であり、わざわざ起こす投票行動ではない。(いや俺は行くぞという異論は認めるが)

2.であるが、サンパウロ市内(あるいは他の国・他の都市の大使館・領事館のある場所)に住んでいるのだったら、話は簡単である。
サンパウロ市内だったらバスだけで行くと4.30レアル、バスと電車やメトロを乗り継いでも7.48レアルで行けるはずだから、時間はともかく、金銭的には負担が少ない。
しかし、地方在住であると事情は全く異なり、大旅行をしなければならない。
日本で投票のためだけに、飛行機でことによったら泊りがけになる旅行をするかと聞きたい。

3.であるがこれを今日は問題にしたい。

かって郵便局の信用が高かった時代があった。
近年になって商店や銀行や、水道電気などの公共サービス会社は、取り立て書類を郵便で送ることが少なくなった。
銀行の取引明細も紙にプリントでなく、ネットバンキングでサイトから勝手に取ってくれ、という流れである。
いきおいブラジル全体の郵便物の数量は激減する。
それと共に郵便サービスの劣化が起きるのだ。
しっかり計測記録したことはないが、以前より郵便の届くまでの日数が国内、国際ともにかかるようになったと思う。

公示から投票日まで17日の期間である。
日本-ブラジル間の普通郵便が一週間程度で届いていた、以前のある時期には、ブラジルから日本までの2回の郵送を普通郵便で行うと、日本側は多分、制度を作っておきながら郵便でケチって投票を無駄にすることはできない、という気概があるのだろう、郵便では一番早い、つまり料金が高いEMSを使ってくれるので、公示日にすぐ3.A.の行動を起こせば何とか間に合ったはずである。

現在はどうか。
6月に普通書留(prioritário registrado)で日本へ送った郵便物が宛先地に着くまで13日かかった。
これではブラジル-日本郵送2回で26日かかるからどうしても間に合わない。
もっと早く着くのはないかというと、これがあってEMSなのだが、郵便料金は重量50gで133レアル、普通郵便書留なしが8.95レアルだから考えてしまう。
レアル→円換算は、レアル数字に29、面倒だから30を掛ければ良い。
投票のためだけに8千円払えるか?ときかれたら、払えるよという人はかなり少ないと思う。

告示前から期日が確定している選挙であったら、先を見込んで告示前に選挙人証を郵送する手が使えるが、不意に解散した衆議院選挙ではそうもいかない。
でも実際的に考えたら、このフライング請求しか取る方法はないのかと思うので、次回は試してみよう。
せっかく制度があるのだから、無駄にせずに利用できたほうが良い。
ニュースに敏感になるという利点もついてくる。