- 免停到達点数を現行20点から40点へ引き上げ
- チャイルドシート不使用の違反金を廃して書類通知と減点のみにする
- カテゴリーC以上の免許更新時の薬物検査義務の中止
- 免許証有効期限の現行5→10年へ、65歳以上は現行3→5年へそれぞれ拡大
多くの運転免許を所持する一般市民が喜びそうな政策であるが、政府が一番ターゲットと考えているのは、去年全国でストを打たれて、国全体がマイナス成長に落ち込んだ原因となったトラック運転手の組合である。
すぐに免停になってしまう、免許更新に金がかかる、といった職業運転手の不満を少しは抑えておいて、去年の全国トラック運転手ゼネストのようなことが起こらないようにする手立てであろう。
チャイルドシート以外の項目は、トラック運転手にとっては利害の大きい問題であるからだ。
さてどの項目も規制緩和がゆる過ぎなのだが、この中で現在の日本では全く受け入れ不可能なものがある。
4番目の免許証有効期限の拡張である。
最近次から次に出てくる日本の交通事故のニュースには、高齢者のドライバーがペダルを踏み間違えるのが原因で起こる事故に大いに関係がある。
ブラジルは最近になって高価格帯からオートマチック・トランスミッション採用モデルが拡がってきているが、まだまだマニュアル・トランスミッション車も多い。
オートマ車と比較して価格が安いことが理由の一つだと思う。
免許が比較的取りやすいというオートマチック車限定免許というものがブラジルにはないから、免許取得のためには将来乗る予定がなかったとしてもマニュアル車を習得しなければならない。
うちの大衆車もマニュアル車である。
そもそも運転が楽だという理由で普及してきたオートマチックは、機械工学的にそうなのかはわからないが、人間工学的というか安全工学的にに大きな欠陥があるのではないかと思う。
この点でどれだけ共感してくれる人がいるのか、異論が多いことは想像する。
それでも説明してみよう、なぜか。
- 発進・加速するとき→ペダルを踏み込む
- 減速・停止するとき→ペダルを踏み込む
踏み込む位置を間違えると全く反対の結果となってしまう。
オートマチック車しか知らない人のために一応書くと、マニュアル車だったら、
- 発進・加速するとき→ペダルを踏み込むだけでは発進せず、クラッチ操作が必要
- 減速・停止するとき→ペダルを踏み込むだけで一応減速・停止するが、クラッチ操作をしないとエンジンが停止する
間違えたペダルを踏んだら車の動きとエンジン音からすぐに分かるし、クラッチがあるからすぐに修正をかけられる。
というより、クラッチ操作があるからこそドライバーはエンジン音に敏感に反応すると言える。
それだけ運転操作に、聴覚・ペダル触覚・加速感覚が集中するのである。
年をとって自動車の運転があやふやになってしまっても、操作が簡単なために漫然とオートマチック車に乗り続けることができるだけに、わけがわからないまま事故を起こすのが問題なのだ。
危険な機械を扱うのだから、容易く運転できればよいというものではない。
昔日本で免許をとったときには存在していなかったオートマチック車限定免許ができたのは、今調べたら1991年に普通自動車免許のAT車限定という形で誕生したものという。
ということは、その年に年齢30歳であってAT車限定免許を取った人は、再来年は年齢満60歳となり、AT車限定免許をとって30年を迎える。
これからAT車しか運転できない老人ドライバーがどんどん増えるだろう。
極端な提案をしてみるが、欠陥自動車しか運転できないAT車限定免許は欠陥免許であるから、ある年齢以上の者に持たせておくのは危険なので、所持者がある年齢、例えば満65歳に達したら失効するように法改正をすればよい。
「日本における乗用車のAT車の販売台数比率は2011年で98.5%である」という記述を見た。
もちろん乗用車区分の話であるから、大型のトラックやバスのようなプロフェッショナル用途であると、まだMT車は活躍していると思われるが、どうもMT車とは、絶滅危惧種のようである。
米国もAT車の割合が非常に高いらしい。
アクセルペダルだけで加速と減速を制御する「シングルペダルコントロール」
https://japan.cnet.com/article/35139615/
この記事を読んだだけでは、この経験したことのないメカニズムがよくわからない。
「ペダルを踏めば加速し、離すと回生ブレーキがかかって減速する」ということは、アクセルを急に離すと強いブレーキがかかって、「惰性で走る」状態がないということだろうか?
慣れないとペダルを離したときに急減速がかかり、後続車に追突される恐れはないのだろうか。
そのような心配がないのだったら、かなり有効と思う。
AT車限定免許に有効年齢期限を設け、達したら強制失効させるといった、上に書いたような過激な変革を本当にやろうとしたら、AT限定免許所持者の不満を一斉に浴びて、絶対無理だろう。
AT車製造と輸入を制限などしたら、非関税障壁などと騒ぐ外国もありそうだ。
そこを、高年齢運転者にはペダル踏み間違え警告安全装置つきの自動車しか運転できないように法改正する、といったら、導入するのに抵抗は少ないだろう。
しかし、検問して免許証と運転者の顔と車のメカニズムを全部チェックしないと違反を見つけることは不可能だろう。
罰則を極めて厳しくして一発で免許取り消しとしたら、あえて違反して運転する高齢者は減るだろうか。
中国でやっているような、何でもかんでも、ここではすべての自動車に顔認証を付けて、その車を運転する資格のない人が運転席に座るとエンジンが決してかからないようにすれば、車両盗難予防も兼ねて対策は完璧だろうが、金がかかるし、深刻なプライバシーの侵害につながる。
しばらくブラジルの交通法規はゆるゆるが続きそうだが、日本と同じようなAT車の普及と高齢運転者の増加によって日本のような事故が目立つようになったら、いつかはブラジルにも変化が訪れるかもしれない。
くれぐれもブラジルにAT車限定免許など導入しないように祈る。
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