2012年6月11日

Yokiの役員の猟奇な殺人

6月に入って、ブラジル各地でフェスタ・ジュニーナ(Festa junina 6月祭)の準備が進んでいる。
6月祭につきものの食物といったら、トウモロコシや落花生がある。
トウモロコシや落花生その他穀類、乾物や、豆乳など飲料を生産する会社に、Yoki Alimentosがある。
Yokiというマークで、漢字が横にあって、与喜と書かれる。

さて最近テレビニュースで話題になっている事件が、このYokiの役員のバラバラ殺人だ。
この事件について見てみよう。
殺人事件が起きたのは2012年5月19日、被害者はマルコス・マツナガ Marcos Kitano Matsunagaというから、日系ブラジル人だ。

手足がバラバラにされて(esquartejado)ビニール袋に入れられた被害者の死体は、大サンパウロ都市圏で日系人も多く住むコチア(Cotia)の郊外で、5月27日に発見された。
鑑識官は、バラバラにする手際の良さに驚いた。

鶏を一羽まるごと買ってきて、味付けしてオーブンで焼く、鶏の丸焼きは誰も大好きだが、慣れない人が解体するとうまく関節のところで切断できず、きれいに切り分けられない。
せっかくの料理がまずそうに見えてしまう。
人間も同じようなもののようで、鑑識官は、犯人は解剖学に明るいと見た。

解剖学に通じた、動機のある容疑者は誰か?
逮捕されたのは被害者の妻のエリゼ・マツナガ Elize Kitano Matsunagaだ。
彼女は看護師の資格を持っている。

証拠はいろいろなところで上がってきているが、決定的なのは容疑者と被害者の住むサンパウロ市内の高級アパートのエレベーターに取り付けられた防犯カメラの画像だ。

19日晩、外出から戻った夫婦、まだ1歳の娘、乳母はエレベーターで高層のアパートへ昇る。
TV画面を見ると、最上階のペントハウスのようだ。
乳母は仕事を終え、すぐに自宅へ帰っていった。
被害者はいったんアパートから出て、地階へ降り、宅配ピザを受け取ってアパートへ戻る。
一人でエレベーターの中で壁を蹴りつけたり、かなりいらいらしている様子だった。
これが被害者の最後の映像だった。

警察によると19日20時ころ、容疑者は至近距離で夫を射殺した。
容疑者は、被害者の死体を10時間放置後に包丁で解体した。
死後硬直と血液凝固のため、解体時に部屋はそれほど汚れなかった。
翌日11時半、容疑者はひとりでアパートを出てエレベーターに乗ったが、大きなキャスター付きトランク3つを引いていた。
その朝、もう一人の乳母は(乳母二人とは裕福な家庭だ)アパートに着いていたが、異常には全く気づいていなかった。
12時間家を空け、23時50分に帰宅したときは、トランクなしだった。

逮捕された容疑者は犯行を自白した。
夫の浮気が原因で別れ話もあり、喧嘩していたという。
子供は小さいから、一人で自由にできる遺産を目当てにしたのかもしれない。

報道では、容疑者は夫と知り合った2004年当時、娼婦(garota de programa)だったという。
でも看護の心得があり、法学士であるというから、勉学好きだったのだろう。
400枚もの結婚式の写真は、幸福な結婚生活を予感させるものだったのに、どこかで狂ってしまった。

さて、このマルコス・マツナガさんであるが、銃器の収集という趣味があった。
警察はライフルを含む、三十丁を超える火器を発見した。
千発近い弾丸も一緒だ。

マツナガ夫妻は、強盗に襲われることを恐れていた。
銃器のコレクションは、その強迫観念と関係があるのかもしれない。

でもそのコレクションが一つの命を奪い、もうひとつの人生を殺人者となしてしまうのは、皮肉な運命だ。
容疑者が夫を撃った380口径のピストルは、夫にプレゼントされたものだったという。

[2012年6月14日追加]
その後の報道では、エリゼが夫の浮気を調べるため依頼した私立探偵が撮影した、マルコスが女とレストランの前でいちゃつく場面が独占スクープでテレビに流れたり、この女の供述によるとマルコスは妻に嫌気が差して離婚したいとこぼしていたとか、愛人援助の具体的金額とが暴露されていて、金持ちのおやじと妻・愛人、それは同時に客と元・現売春婦の三角関係的愛憎ドラマ事件の様相を示している。

マルコスは愛人をYokiの工場に招いて見学させて、その時は彼女を落花生生産者という肩書きで案内したという面白い話もあった。

事件が報道された当初、冷酷に死体をバラバラにするという手口から、エリゼが一方的に悪者にされていたようだが、殺された旦那も因果応報ではないかとみられてきているようである。

(TV Globo, TV Record, ig.com.brの多くの記事を参考にした)

教訓:
恋人・妻選びは慎重に。
危険な趣味に手を出さない。
金で必ず幸せが買えるわけではない。

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