2012年8月18日

労働者党政権下でも公務員ストの季節

労働者党(PT - Partido dos Trabalhadores)は、労働組合を支持基盤としていた。
だから労働者党が政権をとったら、労働組合に擦り寄った政策をとり、ストライキが減少するだろうというのは全く間違った読みだ。
だれが政権をとっても、無い袖は振れない事実は、ブラジルでも日本でも変わらない。

8月は連邦予算の期限となっている。
この時期のどさくさに予算獲得をねじ込もうと、どの公務員組合も考えるのだろうか、8月になって連邦公務員ストが頻発している。

連邦大学教員組合は、5月からストに入っており休講続きで、学生は、休暇期間に補習が行われるのか、あるいは半年期(semestre)がふいになるのではないか、と心配をしていて気の毒なのだが、大学に接点を持たない一般の人に大きな影響は出ていなかった。
学生は、ストは迷惑と現在感じていても、将来大学の教員になる可能性も大きいので、その時に給料が増えていたら自分も得をするというので、ストに賛成したり共感を持ったりする。
確かブラジル訪問していたノーベル賞を出しているスイスの大学人がインタビューで「ストライキ?全く考えられない」と話しているように、大学自治権もある大学教員が数ヶ月もストライキで活動停止するという事態は、国際的にみたらかなり異端なのだろう。
自治権といっても、もちろん自分たちの給料はみずから決められないからストライキが起きるのだ。
まあ熱心な研究者だったら、講義を行わなくて良いのを幸いに、研究に没頭できるメリットがあるのかもしれない。

今週になって目立っているのが、連邦警察、連邦道路警察、連邦税庁、農務省検疫など交通や流通をコントロールする職種のストライキだ。

連邦警察が犯罪人でない一般人との接点を持つのは、パスポート発行と入出国管理である。
パスポート発行は、多くの州で健康上の理由など緊急の場合を除いて停止されている。

国際空港の入出国管理は必要以上に時間をかけるので、出入国ゲートは長蛇の列となった。
同じく国際空港の業務である税関は、連邦税庁の管轄であるが、ここがまたスト中なので、再び行列になる。
陸続きの国境の税関でも、車が数キロメートルの行列を作っていた。

ずっと昔JRが国鉄だった頃、遵法闘争というストがあった。
その名の語るように、法を守りながらの闘争ということだが、要するにノロノロ運行するということだった。

ブラジル版は、operação padrão「標準作業」と言われる。
日本の国鉄とやることは同じだ。
出入国管理が普通の何倍もの時間がかけられる。
税関では例えば10人に1人が通常抜き打ち携帯品検査にかけられるのが普通であっても、スト中は全員必ず検査を受ける。

8月16日木曜日になって、連邦警察と連邦道路警察職員による遵法闘争の停止を求める、連邦政府による仮処分請求が、Superior Tribunal de Justiça高等裁判所に承認された。
Napoleão Nunes Maia Filho 判事は遵法闘争を違法と認め(表現が矛盾しているが)、不服従の組合には一日につき20万レアルの罰金を科すと仮処分判決した。

連邦政府は法相と国家総弁護部を通じ司法権に請求していた。

判事はさらに、スト員が、公務員の同僚、当局関係者、一般利用者を問わず通行禁止や締め出しをすることを禁止した。
これにより人間の通行だけでなく、商品や貨物の流通を同時に確保する。
遵法闘争は事務手続きの効率を大きく損なうことを目的にした違法行為とみなした。

司法請求に先立って、Luís Inácio Adams弁護総長は、連邦警察と連邦道路警察職員の行動を、サボタージュとみなし、絶対容認不可と批判している。
連邦警察職員組合は、初任給を7,500レアルから18,800レアルへ、最高給を11,800レアルから24,800レアルへ引き上げ要求をしている。

連邦政府は30に及ぶ職種の連邦公務員の賃上げに140億レアルをあてると大統領府は発表した。
諸組合の要求を丸呑みすると、922億レアルが必要だという。
大統領府の見解は、同じ労働党によるLula前政権で十分改善した公務員給料に、これ以上の待遇改善をする余裕はない。

さて次の8月17日の報道では、司法判断を受けた連邦警察組合側は遵法闘争を止め、反対にoperação sem padrão「規範なし作業」に戦術を変更した。

同日報道では連邦政府は18の職種に対し15.8%昇給の一律回答をした。
それを受け、いくつかの連邦大学職員組合はスト中止を決定した。

ストライキに寛容的なブラジルではあるが、テレビで解説した経済学者の意見が一番まともであろう。
「Lula前政権の期間は世界経済もブラジル国内経済も税収増に寄与して、公務員の昇給も容易だったが、今は経済環境が全く異なっている。
世界中の国々をみてみるが良い。
政府が手綱を引き締めるのは当然の政策だ。
ブラジルでは民間と比較して公務員の給与水準は高いし解雇もない。
状況を直視せよ。」

(http://estadao.br.msn.com/ultimas-noticias/stj-pro%C3%ADbe-que-pol%C3%ADcias-federal-e-rodovi%C3%A1ria-fa%C3%A7am-opera%C3%A7%C3%B5es-padr%C3%A3o
http://estadao.br.msn.com/ultimas-noticias/governo-prop%C3%B5e-aumento-de-158percent-para-grevistas
TVニュースその他を参照した)

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