By Tim Bowler
Business reporter, BBC News
http://www.bbc.co.uk/news/business-21518574
ななめ読みしたのだが、ツッコミどころの多い記事である。
要点だが、文法的に現在時制と未来時制が強く区別される言語(その例が英語)を話す人は、両時制の区別が弱い言語(その例が中国語)の話者と比較して、老後の蓄えが少ないという、トンデモ学説なのである。
このほら話を発表したのは、堂々たる有名大学エール大学の行動経済学者キース・チェン氏(Yale University behavioural economist, Keith Chen)である。
時制区別の弱い言語話者が、時制区別の強い言語話者と比較して、どれだけ差がつくのか。
- 退職するとき39%貯金が多い
- 年間貯金額が31%多い
- 喫煙癖が24%少ない
- 運動習慣が29%多い
- 肥満が13%少ない
どうして使用言語の時制が習慣に影響するのか。
現在時制と未来時制を使い分ける言語で、自分の将来のことを話す場合、時制が異なるので「現在と未来の間にわずかな乖離」を起こすというのだ。
記事原文は"If your language separates the future and the present in its grammar, that seems to lead you to slightly disassociate the future from the present"とある。
つまり現在の自分と未来の自分の関連付けが小さい、現在の意志が未来の自分に及ぶという信念が小さいということなのだろう。
例があげられている。
午後のミーティングに出られない理由を言うとき、
英語では 'I will go, am going, or have to go to a seminar'
中国語(の英語訳)では 'I go listen seminar'
という違いがあると説明している。
同じ西ゲルマン語群でも
英語 'it will rain tomorrow'
ドイツ語(とその英語訳)'morgen regnet es' - it rains tomorrow
と明確な差があるという。
調査は英語と中国語で行ったわけでなく、文化・社会・経済環境が似通った、つまりは教育水準、所得水準、宗教と、他の要因が十分に同一であるような隣人が異なる言語を使うバイリンガルな国で話されている複数の言語の文法構造と、その隣人たちの行動を比較したのだ。
その国々とは、Belgium, Burkina Faso, Ethiopia, Estonia, DR Congo, Nigeria, Malaysia, Singapore, and Switzerlandの9カ国だ。
例えばナイジェリアでは時制強区別言語Hausaの話者と、時制弱区別言語Yorubaの話者を比較したという。
もちろん、経済学者、言語学者両サイドから反論も十分に出ている。
"It's a tempting idea that simply doesn't make any sense."
「奇をてらうだけの何の意味もない与太だ」
私もそう思う。
が、この与太話が万が一真実だったとしたらどうしよう。
日本語 明日は雨だろう。明日は雨だ。どちらでもよさそうだ。
ポルトガル語 Amanhã vai chover. Choverá amanhã. 両方とも未来時制だ。後者は文語的だが。Chove amanhã.(現在時制)とは言わないだろう。
結論:
ブラジルでより金持ちになり、健康的に暮らすには、ポルトガル語でなくできるだけ日本語を使うようにしよう。
そのためには日系社会のど真ん中で、日本語を話す人達に囲まれて生活しなければならない。
残念ながら、私の環境ではまず無理だ。
日本では英語教育など忘れてしまうこと。
徹底して日本語だけで暮らすこと。