2020年4月19日

ブラジル版マイナンバーはCPF

ブラジル連邦政府のコロナウィルス対策低所得者救済プログラムは、Auxílio Emergencial(緊急援助)という。

  • 連邦政府の社会単一登録―つまり社会福祉を受けるための基本的登録を済ませている
  • 非正規労働者や失業者
  • 個人極小事業主(Microempreendedor individual)や社会保障個人負担者
以上の中で、個人や家族所得がある基準に達せず、既に年金や失業保険のような連邦政府の他の恩典を受けていない18歳以上の者に最低給料の約1.7ヶ月分を支給するというものである。
4千万人とか5千万人とか言われている受給資格者をどのように把握して、同一人二重支払いや支払い漏れが起きないように、しかも申請や受け取りのための密集が起きないようにするかが運用の課題である。

社会単一登録や個人極小事業主の登録が済んでいる者は、この時点で識別と所得の捕捉ができているから良い。
問題は非正規労働者である。
ブラジルの非正規労働者とは、社会保障に登録がなく当然負担もしない自営者や、正式な労働契約のない従業員、つまり社会保障にも労働省にも無縁であり、社会福祉も受けていない、連邦政府とギブもテイクもない労働者のことである。
この範疇の人たちの登録は何と、インターネットサイトやスマートフォンアプリで自己申告をするという。
一人がいくつもの偽名を使って、援助金を多重に受け取ろうとする悪だくみをどうやって排除するのか?
どうやって調査したのかは不明だが、既に犯罪者が塀の中から数万件の申請を行ったとかの話がある。

ブラジルで個人を登録する手段はいくつかある。
  • RG 一般登録(Registro Geral)内務省・州政府が管理する身分証明書番号、日本の戸籍に近いもの
  • CPF 自然人登録(Cadastro de Pessoa Física)日本の国税庁にあたる経済省連邦歳入庁が管理する、マイナンバーに近いもの
  • 選挙人登録 選挙管理委員会にあたる選挙裁判所が管理する
  • 軍務証明書(男子のみ)防衛省が管理する兵役義務履行証明

この中で特に近年最も一般的になり多用されているのはCPFである。
CPFはxxx.xxx.xxx-xxフォーマットの11桁の数字である。
日本のマイナンバーに近いものと書いたが、それほど極秘のものではない。
契約書などには必ずこの番号が記載されるし、買い物をした商店などの顧客名簿には、一意な個人識別符号として気軽にオープンに使用されているから、全く秘密ではない。

だから悪用されることもよく起きた。
顔見知りでもなく、どこに住んでいるかもわからない同姓同名の不届き者が、金を借りて踏み倒すためにCPFを借用してなりすまされて、そのため警察に被害届を出してCPFを抹消・新規入手したのだが、ときどき悪事を繰り返されるのでそのたびに警察に呼ばれていた知人がいる。
でも近年はすべて照会がオンラインになっているから、そのような抹消されたCPFでなりすましされるような件は少なくなっているはずだ。

昔のブラジル人は旅行や一人歩きをするような年齢になると、身分証明書つまりRGを取得して、さらに年齢が進んで銀行口座開設や労働のような経済活動のために必要になってから、CPFを取る形が多かったと思う。
現在は出生届を行うと出生証明書にすでにCPFが割り振られて印刷されているらしい。
そしてこの番号は一生使用されることになるのである。

今回の援助金支給では、CPFが有効であることが必須となっている。
所得税申告義務がある者がそれを怠ると、CPFは効力停止(サスペンド)になる。
このため申告者の最新の所得を調査できる。
投票が義務であるブラジルでは、投票を行わなかった者のCPFが罰金を支払うまで効力停止となる。
これを正常化するまで援助金を受け取ることができない。

CPFが有効でないと、パスポートを取れない、公務員試験や統一入試などを受けることができない、連邦政府の住宅融資などを利用できないなど様々な不便が起きるのだが、もともと非正規労働者であるくらいだから、そもそもそのようなものを必要とせず困ることがなかったから、CPFが停止されていても全く平気であったのだ、、、今までは。
こういった人々が全国で1千万人、実に人口の5%くらいはいるということで、この連中が一気に税務署に押しかけるような密集密接大混乱を避けるために、連邦歳入庁は、無投票によるCPF効力停止の縛りを撤廃して、これが原因の停止CPFをすべて有効と処理した。

日本でもこれと似たような状況がある。
住民台帳に登録されている市民に10万円を支給するようだが、マイナンバーを使えば難なく解決するはずだと思うが、違うのか。
マイナンバー・カードの普及率が15%位しかないと聞いたが、カードを所有する利点が全く無い、つまりマイナンバーのシステムを有効に利用できていないのではないか。
宝の持ち腐れではないか。

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