中にブラジルナッツという名前だったと思う、歪んだラグビーボール形をした一番大振りなナッツがあった。
こちらではカスターニャ・ド・パラ(castanha do Pará つまりパラのナッツ)と呼ばれる。
パラ州はブラジル北部、アマゾン河下流流域部にある州だ。
カスターニャ・ド・パラは一年中見られるのだが、クリスマスひと月前ということで、今日スーパーへ行ったら目立つ場所で、大袋に入れられたのから客が必要分を小袋にとってレジへ持っていく、量り売りをしていた。
ポルトガル語でノイス(noz)と言うクルミの大袋と並んでいて、殻付きの値段は両方共1キロ19.50レアルだった。
クルミの方は大袋の中に割れた空の殻が結構入っている。
どんな動物が食べたのだろうか。
しばらく観察していると、客がクルミの殻を割って中身を食べている。
さすがに大袋の前に居座って何個も割って腹一杯食べる図々しい奴はいないようだが、一個二個味見のつもりで食べている人が結構いるようだ。
そうでなければあれだけ殻が残っているはずがない。
しかしカスターニャ・ド・パラの殻付きは、金槌で叩かないと割れないほど頑丈なので、殻を割って食べようとする者はいない。
ブラジルはどこからクルミを輸入しているのだろうか。
ヨーロッパからアジアにかけた北半球温帯原産の植物だから、チリやアルゼンチンでも移植されて栽培されているが、ポルトガルから輸入されているという話を聞いたことがある。
北半球の旧世界産のクルミは手で容易に殻を割れるので、ブラジルの行儀悪い客に耐性がない。
しかしカスターニャ・ド・パラはブラジルの行儀悪い客も寄せ付けない。
カスターニャ・ド・パラは行儀悪いブラジル人という環境のもとで進化して硬い殻をつけるようになったのだ。
トンデモ結論とは思えない。
クルミの他にスーパー内部で行儀悪いブラジル人が好んで食する食物があるのでここにあげてみる。
- ポテトチップスのような袋入りスナック類
- カップ入りアルミ箔フタのヨーグルト類
- パン
- ブドウ
- 干しダラ
1,2については腹をすかせてうるさい子供を黙らせるために親が与えるという、いささか反教育的行動が見られるが、正直な大半(と信じたい!)の消費者は、空になった袋やカップをレジに持って行って代金を支払ってから捨てる。
不届き者は空の袋やカップを店の中にこっそり置いてきてしまう、つまりネコババだ。
3のパンはクルミ同様量り売りで、パン売り場で小袋にとって計量したものを、レジに到着する前に食欲に負けてしまい開封して食べるという行動なので、普通は5個計量したパンがレジに到着するときは3個になっていたりするのだが、計量した時のバーコードチケットが袋に貼ってあるから、客は既に食べてしまったパンの代金をレジで払う。
反道徳的には、2個量ったパンを店内で全部食べてしまって空袋を捨ててしまったり、5個量って店内で2個食べて袋に残った3個のパンを店内にそっとおいてきたりすることも可能なのだが、実行しているのを見たことはない。
4のブドウは、この美味で高価な果物がつまみ食いしやすい罪な形状をしていることが問題だ。
洗ったほうが良いのではないかと思うが、もちろん行儀悪い客はそんなこと気にしない。
バナナなど、皮をむくのがきわめて楽であるが、大型なのと単価が安いことからこれを店内で食べているのを見たことはない。
ちなみに今日見た値段は、ブドウR$10.78/kg(パック入り)、バナナR$1.98/kg(量り売り)だった。
最近は行儀悪い客対策のためか、その他の目的があるのか、ブドウなどは量り売りをやめてパック入りになっている店が増えている。
パックを壊してまでつまみ食いする輩はさすがにいない。
パックを壊すのはつまみ食いとは言わないか。
5であるが、量り売りのため陳列棚にどんと乗っている干しダラをちぎって口に入れる客は結構多い。
しょっぱくて噛みごたえがあるし、単価が高いのでしょっちゅう買えないことも行儀悪い客をひきつける要因であろう。
行儀悪いブラジル人の習性がどこから来たものかと思ったが、本にこう書いてある。
(引用はじめ)
果樹園には一種の不文律がある。見しらぬ人間がはいってきて枝からもいで食べても一向にかまわない。一人の腹に入る分くらいたかがしれているという考え方だ。前にふれたシロアリハリナシの巣をとった時など、仕事をはじめてからおわるまでに、各人20くらいのマンゴーをたいらげた。
(引用終わり)
(私のブラジルとそのハチたち 坂上昭一著 思索社 1975年)
行儀悪いブラジル人は、スーパーマーケットの店内と果樹園の区別がつかないのかもしれない。
最後に付け加えておくが、ブラジル人の大半は行儀悪くないのである。