ブラジル司法の頂点連邦最高裁判所(STF - Supremo Tribunal Federal)は、血液1リットル中6デシグラム以上のアルコール濃度で運転することは、たとえ事故を起こしたり、他人に危険を与えていなくても犯罪(crime)であると判決をした。
ミナスジェライス州の検問で酒酔い運転で現行犯逮捕された男の保釈請求としての裁判であり、保釈は棄却された。
アルコールに酔って運転することを犯罪と定めた2008年の法律に基づく最初の連邦最高裁の判断らしい。
この男は呼気計測で0.9mg/lのアルコールが検出された上に、明らかな酒酔いの症状、言葉がもつれたり(fala desconexa)、酒臭く(hálito etílico)、目が充血(olhos vermelhos)であったという。
「武器所有と同じだ。
実際に武器を使って不法行為をしたかは問題でない。
所有しているだけで他の財産に危険を及ぼすから抽象的危険を形成している。
ブラジル交通法306条が公衆の安全保護を目的とした法的根拠だ。」
Ricardo Lewandowski判事は述べた。
あれ?飲酒運転はもともと犯罪でなかったのか?
(以下Wikipedia 罪刑法定主義から引用)
罪刑法定主義(ざいけいほうていしゅぎ)は、ある行為を犯罪として処罰するためには、立法府が制定する法令(議会制定法を中心とする法体系)において、犯罪とされる行為の内容、及びそれに対して科される刑罰を予め、明確に規定しておかなければならないとする原則のことをいう。
(引用終わり)
なるほど、犯罪となるのは法律に規定された行為でなければならないわけだ。
ブラジル交通法(Código de Trânsito Brasileiro)を調べた。
2006年から2008年までは、302条により、「アルコール又は薬物の影響下で運転した時」に、事故を起こして人を殺した場合、殺意なき殺人(homicídio culposo)の懲罰(2年から4年の拘置と運転免許の停止)を三分の一割り増す、となっていた。
2008年の改正で、306条は「アルコール濃度血液1リットル中6デシグラム以上の状態あるいはその他依存性の精神作用を起こす薬物の影響下にあるときに公道で車両を運転すること」が犯罪とされた。
以前の条文から「他人の安全を潜在的に害する」が外されて、誰もいない公道を酒酔いで運転しただけで罪になるということだ。
日本ではどうなのか?
日本には危険運転致死傷罪(刑法208条の2)というのがある。
日本では飲酒運転だけでは罪にならないということのようだ。
以上の記事でアルコール濃度の二通りの単位、血中濃度と呼気中濃度が出てくるので整理しておく。
ブラジルで酒酔い運転で引っかかる血中アルコール濃度6dg/l=0.6mg/mlは、呼気アルコール濃度0.3mg/lに相当する。
日本の道交法で酒気帯び運転となる呼気アルコール濃度は0.15mg/lなので、ブラジルで許容されるアルコール濃度は日本の2倍と、結構甘いと思われるかもしれない。
今までブラジルは飲酒運転だけでは罪にならなかったものが、今回の連邦最高裁の判例は、後を絶たない飲酒運転撲滅にかける社会の姿勢が現れたものだろう。
2010年のブラジル交通事故死は40,610という恐るべき数であった。
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