2012年5月23日

ブラジルで石を投げても大卒に当たらない

今日の話は、ブラジルの高等教育の普及度についてだ。
参考記事の数字は、IBGE(ブラジル国立地理統計院)によっている。

15歳から17歳の年齢層(中等教育に相当する)で在学している者の割合は、過去10年間で77.4%から83.3%へ伸びた。

ブラジルの地方別では、南西部が一番進学率が高く、低い地方は北部と南部だ。
北部はそうかなと納得するが、南部は教育熱心でありそうに思えるので、これは少し以外な結果だ。

中等教育(ensino médio)の修了が大学、つまり高等教育(ensino superior)へのアクセスである。
大部分の中等教育の生徒にとって、この段階でぶつかる困難は、公立大学は入試が難しく、私立大学は学費が高いという事情だ。
それでも国勢調査は、現在高等教育への扉はかってなかった広さで開いていることを示している。

IBGEの国勢調査によると、大学卒業の学位を持つブラジル人の割合はこの10年で4.4%から7.9%へ急増した。
もう少しで10人に1人が大卒という時代がやってくる。

教育省(MEC)によると、2001年から2010年への10年間、大学在学生は倍増した。
ブラジル連邦政府は、無償奨学金と融資奨学金を創設した。

Alexsandraさんは毎日2時間半を通学時間に費やして、心理学の授業を受ける。
全国中等教育試験(ENEM)で良い成績をとって、ProUni制度の無償奨学金を受けることができたので、私立大学に学んでいる。
6人兄弟の中で初めての大学生だ。
「私がうれしいだけでない、家族みんなが喜んでいる」Alexsandra Moreiraさんは語る。

Alexsandraさんのように、全体の74%の学生は私立大学に通う。

ブラジルの競争力に大きな影響を持つのは、科学技術分野である。
この分野は経済にも大きな影響がある。
カルロス・シャーガス財団(Fundação Carlos Chagas)の研究コーディネーター、Sandra Unbehaum氏はそのように考える。

しかし技術・工学分野は、志願者が比較的多くない。
大部分の生徒は社会科学、経営、法学を目指す。

調査の数字がその原因を示してくれる。
中等教育修了者のわずか11%しか、数学で満足なレベルに届いていない。

こういった生徒は大学に入って、自分の習学レベルがずっと遅れていることに気づく。
これは初等教育から持ち越されてきたものだ。
この10年で中等教育は、質的向上がみられたとはいえない。
この停滞が高等教育へ与える影響は非常に大きい。

(Edição do dia 02/05/2012 02/05/2012 21h08 - Atualizado em 04/05/2012 16h59
Cresce número de brasileiros com diploma universitário
http://g1.globo.com/jornal-nacional/noticia/2012/05/cresce-numero-de-brasileiros-com-diploma-universitario.htmlを参考)

ブラジルの大卒の人口に占める率を見ると、世界の中でのポジションがどうなのか気になる。
調べたらかなり衝撃的なことがわかった。

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/3929.htmlによると、ブラジルの大卒率は32ヶ国中最下位だった。
最終節を引用する。
「グラフの対象となった36カ国は、若年層の大卒率の高い順に、韓国、カナダ、ロシア、日本、ニュージーランド、ノルウェー、アイルランド、デンマーク、イスラエル、ベルギー、オーストラリア、米国、スウェーデン、フランス、オランダ、スペイン、ルクセンブルク、スイス、英国、フィンランド、エストニア、チリ、アイスランド、ポーランド、スロベニア、ギリシャ、ハンガリー、ドイツ、ポルトガル、イタリア、メキシコ、オーストリア、スロバキア、チェコ、トルコ、ブラジルである。」

大卒率が高い国は、韓国、カナダ、ロシア、日本で、25-34歳人口の55%以上が大学を卒業している。
大学全入に近くなると、大学の高等学校化、つまり教育レベルの低下が避けられないはずである。
日本の大学では、全部の大学ではないだろうが、最近の大学新入生は数十年前の新入生と比較して基礎学力が足りないので、大学1年は高校の学習の復習に当てていると聞く。

一方ブラジルは大卒率が低い、人口の中の大卒が少ない、珍しい、尊重される存在だ。
石を投げても大学生にはまず当たらないわけだ。
大卒が少ないということは、学士の資格が重みを持つ、つまり高卒と比較して給与水準が高いということだ。

ブラジルの産業構造は韓国に似ていて、国際的にも競争力の強い少数の大企業と、大多数の中小企業で構成されているとみなせる。
就職先にこだわるとそれなりに困難はあろうが、不相応なところをめざさない限り、大学生は就職には困らないと思う(と無責任に言ってみる)。
将来は「大学は出たけれど…」の韓国やスペイン状態がやって来るであろうが、今のところブラジルは10人に大卒たった1人状態だ。

大学生に価値がある社会を求む日本の若者よ、ブラジルに若いうちに移住して、ブラジルの大学で学ぶという手もある、と言いたい。
なにしろ公立大学は授業料が無料だ。
現在のブラジルの学制は基礎教育8年、中等教育3年で、日本より1年少ないから入試は日本より簡単であろう。
たとえば、高校数学では微積分はでてこない。
外国語(ENEMでは英語・フランス語・スペイン語から選択)も難しくなさそうだ。
ポルトガル語で小論文があるのが難問だろう。

基礎中等教育課程で1年少ない分をポルトガル語学習にあてて、高校を4年で卒業して大学に入るという道もありだ。
もっとも大学は5年コースが多いから結局総年数は日本と変わらなくなるが。
ブラジルに骨を埋める決心が必要であろうが、英語をしっかり学んでおけば外国で仕事をすることもできるわけだ。

日本の大学に不満と日本の将来に不安を抱く日本の若者よ、ブラジルへ来たれ!

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