2015年5月29日

デング熱とソファと女性の関連性

今ブラジルでデング熱が流行している。
epidemia、つまりエピデミック(en. epidemic、po. epidêmico)であると宣言される地域が多い。
人口10万人あたりデング熱患者300人というのがその目安らしい。
2015年になってブラジル全国で75万人が罹病した。
昨年同期比+234%という。

デング熱には次の2つの重症ケースがあるという。

水分補給が追いつかないと体内水分が減少する。
その結果血圧が下がると危ない。

骨髄を冒すので血小板製造力が落ちる。
血小板が減少すると出血しやすくなる。
鼻血や歯茎の出血がみられる。
内臓から出血して重症の場合死に至るのが、出血性デング熱(Dengue hemorrágica)といわれる。

デング熱対策に一日22杯の水、という記事を書いたのであるが、デング熱上がりの友人に聞いたところ、そんなに簡単ではないらしい。
デング熱は急に症状が来る。
デング熱だけでなく風邪やインフルエンザなどで、人生一回も高熱になったことのない人はいないと思うのだが、高熱の習いとして、毛布を何枚かぶっても収まらないガクガクの震えが来たのちに、浴びるような汗をかくという繰り返しだ。
身体中の筋肉が痛いというから、全身筋肉痛という感じなのだろうか、とにかくだるく痛く何もできず、歩くのも立つのも苦しく、体がソファに張り付いてしまうらしい。
デング熱の症状に眼の奥の痛みと言われるが、彼の場合は片目だけ痛くなったという。

ソファに張り付いていたら、奥さんには、
「あんたそんな熱くらいで仕事休むの?皆勤賞がもらえなくなるでしょう」
と言われたので、彼は苦々しく、というか痛々しく答えた。
「冗談じゃない、この痛さは人生かって無かった辛さなんだ、お前病院へ連れて行ってくれないか、俺死にそうだ」

病院には同じような症状を訴える患者がすでに数人いた。
デング熱の疑いがあるとすぐに検査が行われる。
結果は4時間後に出るというので、いったん家に帰ったらしい。
陽性となったら市役所の動物課が、デング熱ウィルスを媒介するネッタイシマカの退治のため、家周辺に殺虫剤を撒いて近所の住民に注意を促す。
彼の場合には隣人が先にデング熱に罹ったので、既に蚊によってウイスルをうつされていたようである。

何も食べたくない。
水を飲めと言われても無理、喉を通らない。
オレンジやカジュー(カシューナッツの果実)のジュースと、スープの液体部分が口に入れることのできた全てだった。
点滴を一日2リットル受けた。

結局10日ほど仕事はできず、家で休養するしかなかったが、二度めにかかると重症の出血性デング熱に移行し易いと言われるので、再感染を心配している。

「現代ポルトガル語辞典」でdengueをひくと、
男性名詞 《ブラジル用法》①色っぽさ、色気、しな。②[子供が]むずかること。
女性名詞 [医学]デング熱。
と書いてある。

デング熱が女性名詞なのは、英語のfeverにあたるfebre(熱病)が女性名詞だから頷けるのだが、色っぽさや「しな」が、デング熱と関連があるのだろうか。
デンゴーザ(形容詞形・名詞形、つまり~な・~な人)と呼ばれる人は、色っぽい動作・様子をみせて男の気を引こうとする女性のことだ。
ということは、しなを作る女性とデング熱は同じようなものである、「誰でも一回はかかる、二回目は重い、運が悪いと命を失うこともある」と乱暴に解釈した。
しかし妻にはデンゴーザとデング熱とは全く関係ない、デンゴーザは女性、デンゲは病気、と言下に断言された。
こういった比喩はあまり好きでないらしい。

Dengosa という曲がある。
熱い愛情を求める女性である。
詩ではdengue(=dengo)の関連語を次々に連呼している。
dengosa, dengoso
denguinho
dengo
Elis Reginaが歌う軽やかなボサノバは、デング熱のどろんとした体の重苦しさと全く対極にある。

5月になって涼しい日も増えてきたから蚊も減って、デング熱も沈静化してきている。
これからはインフルエンザが心配になる。

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