リオ、正確に言うとリオ・デ・ジャネイロ州がおかしい。
日本でもブラジルでも公務員は堅実な職業である。
しかもブラジルの公務員は警察や医療も含めてストライキ権が認められている上に、馘になることがほとんどない。
1千2百万人といわれる失業者や失業すれすれの生活をしている民間から見れば天国である。
しかし今リオ州の公務員の給料遅配は常態となってしまっている。
遅れたり分割払いになったりしている。
全員がうらやまれるような金額をもらっているわけではないし、第一支払スケジュールが狂うから自転車操業家計の人は大変だろう。
多少気の毒である。
リオ州知事が公務員の負担増加を伴う州の緊縮財政案を提出して、州議会は審議中なので議事堂前では公務員のデモで大騒ぎである。
それだけではない。
2016年11月18日の各新聞の1面見出しに語ってもらおう。
Correio紙
「リオで24時間内2人目の元州知事逮捕」
"Rio tem segundo ex-governador preso em 24 horas"
そう、一昨日はアントニー・ガロチーニョ、昨日はセルジオ・カブラルである。
O Globo紙
「カブラル発見される」
"CABRAL É DESCOBERTO"
これだけでは何のことかわからないだろう。
Correio Braziliense紙
「カブラルがバングーを発見した日」
"O dia em que Cabral descobriu Bangu"
カブラルと発見はなんか関係があるのか?
そこで少しだけブラジルの歴史を説く。
ポルトガル人探検家ペドロ・アルヴァレス・カブラル Pedro Álvares Cabralは大西洋を横断して、西暦1500年4月22日、その年のイースターの8日後に、将来ブラジルとなる土地を発見した。
この知識があれば、なぜこの日の新聞が執拗に引用しているのかがわかるだろう。
そして少々の地理の知識を。
バングーは留置所や刑務所のコンプレックスのあるリオ・デ・ジャネイロ市の地区の名である。
MEIA HORA紙
「連邦警察はカブラル発見、カブラルは牢屋発見」
"A FEDERAL DESCOBRIU O CABRAL E CABRAL DESCOBRIU A CADEIA"
この新聞は大衆紙だろうか、1500年のカブラルの服装のイラストに前州知事の顔をコラージュして、吹き出しに
「バングーが見えたぞ!」 "BANGU À VISTA!"
と叫ばせている。
連邦警察と検事局の捜査によると、セルジオ・カブラルは収賄した金で豪奢な生活を楽しんでいたというから、次の新聞見出しが意味を持ってくる。
海外旅行だけでなく、豪華ボートとかヘリコプターとかを所有していたという。
O Dia紙
「パリからバングー8へ」
"DE PARIS A BANGU 8"
バングーは刑務所・留置所コンプレックスであり、バングー8は高学歴者と警察・消防官用の留置所だそうだ。
今日のニュースでは、竣工式で除幕をしたのはセルジオ・カブラル前州知事自身という皮肉な事実を報道した。
EXTRA紙
「今度の旅行はパトカーで」
"AGORA O PASSEIO É DE CAMBURÃO"
カンブロンとはただの警察車でなく、後部に隔離された逮捕者用区画があるので、コンパートメントが付いているという意味では豪華客船や豪華列車のようなものかもしれない。
内側に取っ手がなく自分では外に出られない点が異なっている。
リオ出身で留置所住まいの仲間はもう一人大物がいる。
Dilma元大統領と相打ちした格好になったエドゥアルド・クーニャ元下院議長は、リオ・デ・ジャネイロ州選出である。
オリンピックのリオ・デ・ジャネイロ大会が終わってから問題が急にあらわになったようにみえるが、オリンピックを開催できたのは意地で問題を先延ばしにしてきたからだと言えるだろう。
ワールドカップ2014ブラジル大会で決勝会場となり、今年はオリンピック会場となったマラカナンスタジアムの改修工事費用から5%が抜かれていたと言われている。
2年後に冬季オリンピック大会が開催される、元大統領がことごとく不運に見舞われ、現大統領が死に体になっている韓国と、今のリオ・デ・ジャネイロ州の姿が重なる。
日本の良いところであり悪いところであるのが、時間にまだ余裕があるのに前々から心配して、あれをやれとかやるなとか喧喧囂囂(けんけんごうごう)であるが、リオの後なら運営はどう転んでもマシに見えるのだから自信を持って、リオ大会を他山の石として資金が正しく使われるように政治家と建設会社の動きには十分注意してもらいたいものである。
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