昨日の本ブログ記事のキューバ人医師の数について次の考察をしたのだった。
当ブログの前記事「ブラジルで医師になるための最後の難関」のデータを大まかな仮定に基づいて概算すると、「もっと医者を」プログラムに参加する8332名のキューバ人医師のうち13%に当たる1095名のキューバ人医師が、「もっと医者を」プログラムの契約解除を承知で、またはできるかどうか知らないが隠れて、医師資格の法的有効化試験の受験に挑戦して、そのうちの140名が二次試験まで進んだ勘定になる。
試験に通った僅かな者はブラジルで勤務や開業をできるから万歳であるが、大部分の落ちた者はアルバイトをしながら次回の試験を待つのだろうか。
この計算をした後で見た11月19日の晩のニュースで、連邦政府は「もっと医者を」プログラムの募集要項を発表した。
要項は明日11月20日付けで公開される。
保健省は火曜日(20日)に「もっと医者を」の8,500ポストの募集を公開する
Ministério da Saúde vai publicar nesta terça (20) edital com 8.500 vagas para o Mais Médicos
2,824自治体(ムニシピオ)と34先住民居住区の計8,517ポスト募集、報酬は11,800レアルである。
そして契約期間は3年で、3年の再契約があり得る。
一次募集はブラジル人および外国人で、ブラジルの医学部を卒業して医学審議会の登録済、つまりブラジルの正式資格の医師が対象である。
自治体ごとのポスト数を発表して、自治体単位で先着優先とする。
一次募集で補充できなかったポストには二次募集を行う。
この段階でようやく、ブラジル人および外国人で、ブラジル以外の国で医師の資格を取ったが、ブラジルの法的有効化試験を通っていない医師が応募できる。
一次募集を通った医師は、来月7日からポストで勤務することが求められる。
二次募集は様々な書類の審査があるので、完了まで多少時間がかかる予定である。
ボルソナロ次期ブラジル大統領が表明したように、ブラジル医師資格を持たないキューバ人医師は(キューバ人だけでなくどの国籍でも同じだが)、即座に法的有効化試験合格を求められることはないが、医師として働くためには二次募集に応募するしか道はない。
外国で資格を取った医師は1万7千人ほどいるとみられ、現在法的有効化試験の結果待ちや、残念ながら落ちてしまったキューバ人医師はもちろん、現行「もっと医者を」プログラムの契約解消に伴って12月までの帰国指示を受けたその他のキューバ人も、かなりこの二次募集に期待することになるのではないか。
キューバ政府の帰国命令に従う医師の帰りの運賃は、キューバ政府の一方的契約破棄であるため、ブラジル政府は一切負担する予定はないと、ブラジル側は発表した。
ざっと分析してみると、今回の二次募集は現行「もっと医者を」プログラムと要件も待遇もほぼ同じであり、単に次期大統領の気に入らないキューバ政府の関与(派遣医師からピンはねして左翼政権の国庫に入れる)を外すためだけにわざわざ行ったと勘ぐることができる。
キューバ政府にとっては外国に医師を派遣する事業は大きな外貨獲得源であるが、その原動力であるキューバ人医師の切り崩しを狙い、希望者には亡命してブラジルで医療で働く道を与え、帰国希望者にはキューバ政府のお金で帰国してもらうという形になっており、次期ボルソナロ政権はうまく立ち回ったのではないか。
二次募集に成功したならの条件がつくが、キューバ人医師はとりあえず医師資格の法的有効化試験の準備時間を稼げた格好で、本国帰還を放棄するものがどれだけ出るのか、なかなか興味が湧く。
2018年11月20日
2018年11月19日
左右政権国際喧嘩で揺れるキューバ人医師
「私は祖国を愛するが、帰りたくない」ブラジルのキューバ人医師の状況
'Eu amo o meu país, mas não quero voltar': A situação de médicos cubanos no Brasil
15/11/2018 17:06 -02 | Atualizado 15/11/2018 18:14 -02
「もっと医者を」(Mais Médicos)は、通常はブラジル国内で医療行為を行えない、ブラジル国外で医師資格をとっている医師に、ブラジルの医療過疎地で働いてもらうプログラムである。
「もっと医者を」プログラムに参加するキューバ人医師は、その他の国籍の者と同様に、自国で取得した医師資格をブラジルの法的有効化を行う義務を免除されて、プログラムの枠内の制限付きでブラジル国内で医療行為を行うことを許される。
しかしこの記事を読むと、キューバ政府はこれを逆手に取り、「もっと医者を」プログラムのためにキューバ国営の「キューバ医療サービス提供会社」と契約させられる「キューバ保健のプロフェッショナル」―つまり公務員であるキューバ人医師―が、「もっと医者を」プログラムの枠外で―つまりキューバ政府から独立して―ブラジル国内で勤務や開業を目指して、ブラジルで法的有効化の試験を受けようと試みると、即座契約終了となる契約の縛りがある。
「造反者」としてキューバに帰国したら何かの罰則があるかどうかはわからないが、良い待遇が待っているはずがない。
きっと祖国では干される運命が待っているだろうと想像する。
たしかにこういう運命が見込まれるならば、独立を目指すなら祖国との絆は一切断ち切って、つまり亡命覚悟で試験を受けなければならず、誰もが容易に選択することのできる進路ではないだろう。
そして最近の大変動である。
ボルソナロ次期ブラジル大統領は2019年1月1日に就任するが、労働者党(PT)政権(2003-2016)が創設した「もっと医者を」プログラムで働く医師が、ブラジルで正式な資格を持つ医師でないことを問題にしている。
しかしそれだけではない。
キューバが問題なのである。
多分次期大統領の本心では、そちらの方が大問題かもしれない。
ボルソナロ次期大統領は声明の中で、労働者党政権と仲の良かったキューバ政府と結んだ医師派遣プログラムに文句をつけて、応えたキューバはブラジルに派遣している8,332名のキューバ人医師を今年中に強制帰国させる決定をしたので、大いに問題になっている。
他の国籍の医師も参加しているのに、なぜキューバだけが問題なのか。
派遣される医師は報酬1万レアル(毎年インフレ率で調整されているので現在は1万1千レアル台)を受け取ることになっている。
キューバだけは事情が異なっていて、かの国の医師は全員公務員であるが、キューバ国営の「キューバ医療サービス提供会社」からブラジル政府に派遣されるという形になり、ブラジル政府からの医師への報酬の70%はキューバ政府に直接送金されて、医師本人は30%しか受け取れないことになっていて、キューバ以外の外国の医師と著しい格差が生じている。
キューバ国家にピンはねされるわけだが、考えようでは、本国で税率70%で源泉課税されているとも言える。
ともかく、キューバ人医師1人1か月あたり7千レアルが共産国家の国庫に入る、国際人材派遣のしくみなのである。
左派の労働者党は喜んで盟友カストロのために尽くしたのであるが、右派のボルソナロにこれが気に入るわけがない。
これまでの「もっと医者を」プログラム関連のボルソナロ次期大統領の声明では、
迷惑を被るのはキューバ人医師だけでなくて、本当に大多数の被害者は、キューバ人医師に引き上げられると診療所の医師がいなくなる地域に住むブラジル国民である。
'Eu amo o meu país, mas não quero voltar': A situação de médicos cubanos no Brasil
15/11/2018 17:06 -02 | Atualizado 15/11/2018 18:14 -02
「もっと医者を」(Mais Médicos)は、通常はブラジル国内で医療行為を行えない、ブラジル国外で医師資格をとっている医師に、ブラジルの医療過疎地で働いてもらうプログラムである。
「もっと医者を」プログラムに参加するキューバ人医師は、その他の国籍の者と同様に、自国で取得した医師資格をブラジルの法的有効化を行う義務を免除されて、プログラムの枠内の制限付きでブラジル国内で医療行為を行うことを許される。
しかしこの記事を読むと、キューバ政府はこれを逆手に取り、「もっと医者を」プログラムのためにキューバ国営の「キューバ医療サービス提供会社」と契約させられる「キューバ保健のプロフェッショナル」―つまり公務員であるキューバ人医師―が、「もっと医者を」プログラムの枠外で―つまりキューバ政府から独立して―ブラジル国内で勤務や開業を目指して、ブラジルで法的有効化の試験を受けようと試みると、即座契約終了となる契約の縛りがある。
「造反者」としてキューバに帰国したら何かの罰則があるかどうかはわからないが、良い待遇が待っているはずがない。
きっと祖国では干される運命が待っているだろうと想像する。
たしかにこういう運命が見込まれるならば、独立を目指すなら祖国との絆は一切断ち切って、つまり亡命覚悟で試験を受けなければならず、誰もが容易に選択することのできる進路ではないだろう。
そして最近の大変動である。
ボルソナロ次期ブラジル大統領は2019年1月1日に就任するが、労働者党(PT)政権(2003-2016)が創設した「もっと医者を」プログラムで働く医師が、ブラジルで正式な資格を持つ医師でないことを問題にしている。
しかしそれだけではない。
キューバが問題なのである。
多分次期大統領の本心では、そちらの方が大問題かもしれない。
ボルソナロ次期大統領は声明の中で、労働者党政権と仲の良かったキューバ政府と結んだ医師派遣プログラムに文句をつけて、応えたキューバはブラジルに派遣している8,332名のキューバ人医師を今年中に強制帰国させる決定をしたので、大いに問題になっている。
他の国籍の医師も参加しているのに、なぜキューバだけが問題なのか。
派遣される医師は報酬1万レアル(毎年インフレ率で調整されているので現在は1万1千レアル台)を受け取ることになっている。
キューバだけは事情が異なっていて、かの国の医師は全員公務員であるが、キューバ国営の「キューバ医療サービス提供会社」からブラジル政府に派遣されるという形になり、ブラジル政府からの医師への報酬の70%はキューバ政府に直接送金されて、医師本人は30%しか受け取れないことになっていて、キューバ以外の外国の医師と著しい格差が生じている。
キューバ国家にピンはねされるわけだが、考えようでは、本国で税率70%で源泉課税されているとも言える。
ともかく、キューバ人医師1人1か月あたり7千レアルが共産国家の国庫に入る、国際人材派遣のしくみなのである。
左派の労働者党は喜んで盟友カストロのために尽くしたのであるが、右派のボルソナロにこれが気に入るわけがない。
これまでの「もっと医者を」プログラム関連のボルソナロ次期大統領の声明では、
- ブラジル国外の医師資格所持者は、ブラジルの法的有効化試験を通らなければブラジル国内で医療行為を認めない
- 医師は報酬の全額を受け取らなければならない
- 外国人医師は家族を帯同する権利がある
- 現役のプログラム参加中のキューバ人医師が、ブラジルの法的有効化試験に合格してブラジルに残りたい場合は亡命保護を認める
迷惑を被るのはキューバ人医師だけでなくて、本当に大多数の被害者は、キューバ人医師に引き上げられると診療所の医師がいなくなる地域に住むブラジル国民である。
2018年11月18日
ブラジルで医師になるための最後の難関
900名を超す医師がブラジルで資格を有効にするための試験を受ける
Mais de 900 médicos fazem exames para validar o diploma no Brasil
2018/11/17放送
外国で取得した医師資格をブラジルで法的有効化する試験の二次(そして最終)試験が2018年11月17日から18日にかけて行われる。
報道で見ると、この試験には"Revalida"(男性名詞)という名前がつけられたようである。
INEP(国立研究学習教育研究所)によると、外国の医師資格を所持するがブラジルで有効な資格にしたい応募者の55%はブラジル人、15%はキューバ人、10%がボリビア人で占められる。
一方同ソースによると、各人が取得した資格の40%はボリビア、19%はキューバ、13%がパラグアイのものである。
一次試験受験者は7300名で、二次試験に進んだ者は937名であるので、易しい試験ではないことがわかる。
テレビニュース報道では2人にインタビューしている。
ボリビアで医学を修めて、ブラジルで医師の職を見つけたいボリビア人と、アルゼンチンで医学を学んだが、ブラジルで開業したいブラジル人である。
開始から3年になる「もっと医者を」プログラムは、国外資格医師にブラジルでの法的有効化試験受験を免除していて、現在11,607人の国外資格医師が参加している。
この中では、国家が派遣組織を作って後押ししているキューバ人医師が8,332名と大部分を占める。
ボルソナロ次期大統領が、体制が相容れないキューバ国家のピンはねに手を貸しているこの制度に手を入れる意向を表明して、応えたキューバは30日内にキューバ人医師の引き上げを命じていることから、早く手を打たないと600を超える市町村が無医地区となる恐れがある。
週が明ければ、連邦政府はブラジル資格のブラジル人医師を、それで足りなかったら他の国籍の医師を募集する要項を発表することになっている。
緊急経過措置として、ブラジル医師資格非所持のキューバ人以外の国籍の医師を採用し続ける可能性も残っていると思う。
Mais de 900 médicos fazem exames para validar o diploma no Brasil
2018/11/17放送
外国で取得した医師資格をブラジルで法的有効化する試験の二次(そして最終)試験が2018年11月17日から18日にかけて行われる。
報道で見ると、この試験には"Revalida"(男性名詞)という名前がつけられたようである。
INEP(国立研究学習教育研究所)によると、外国の医師資格を所持するがブラジルで有効な資格にしたい応募者の55%はブラジル人、15%はキューバ人、10%がボリビア人で占められる。
一方同ソースによると、各人が取得した資格の40%はボリビア、19%はキューバ、13%がパラグアイのものである。
一次試験受験者は7300名で、二次試験に進んだ者は937名であるので、易しい試験ではないことがわかる。
テレビニュース報道では2人にインタビューしている。
ボリビアで医学を修めて、ブラジルで医師の職を見つけたいボリビア人と、アルゼンチンで医学を学んだが、ブラジルで開業したいブラジル人である。
開始から3年になる「もっと医者を」プログラムは、国外資格医師にブラジルでの法的有効化試験受験を免除していて、現在11,607人の国外資格医師が参加している。
この中では、国家が派遣組織を作って後押ししているキューバ人医師が8,332名と大部分を占める。
ボルソナロ次期大統領が、体制が相容れないキューバ国家のピンはねに手を貸しているこの制度に手を入れる意向を表明して、応えたキューバは30日内にキューバ人医師の引き上げを命じていることから、早く手を打たないと600を超える市町村が無医地区となる恐れがある。
週が明ければ、連邦政府はブラジル資格のブラジル人医師を、それで足りなかったら他の国籍の医師を募集する要項を発表することになっている。
緊急経過措置として、ブラジル医師資格非所持のキューバ人以外の国籍の医師を採用し続ける可能性も残っていると思う。
登録:
投稿 (Atom)