別に銃器マニアになりたいわけではないから、そんなことに詳しくなっても何の得もないとも言えるのだが、これから時事問題を語るときに、銃器の分類や威力を知らないでは語れないようになりそうなのである。
ここで市民という用語は、警察を含む軍人その他の特殊職業と対になる概念で使われる。
これまで市民への銃器の許可は、狩猟、収集とスポーツ射撃目的の場合に認められている。
警察を含む軍人だけでなく、判事のような司法に従事する職業にも認められている。
イタリアのマフィアを裁く裁判官は命がけであるが、職業柄しかたないので、武器携帯を認めるから自分の身はどうぞ勝手に自分で守ってくださいというのも殺生な話で、女性警察官や軍人ならともかく、銃など馴染みそうでない女性判事や検事はどう思っているのだろうか。
市民への銃器の許可については、所有(posse)と携帯(porte)が別々に扱われる。
所有は居住する住宅や市街の外の農村施設に、銃器を所持することである。
そのため銃器を使用する場面は、住宅や農牧場の敷地内部への侵入者に対する自己防衛に限られるはずである。
一方携帯は、所持する銃器を自分の住所外へ携帯して持ち出すことである。
これは危険を伴う職業など、ある条件を満たすものに対して認められる権利である。
いずれにしても誰にも無条件で所有や携帯が認められるわけではない。
最初の前提が無犯罪であって、試験はないと思うが、自動車運転免許と同じように射撃教習所での教習と、どれだけスクリーニングできるのか私にはわからないが、心理学的適性試験が必須でこれに全部通らなければ認められない。
基本的に適格者である市民の銃器所有は許可されるようである。
私見では銃器の所有は、農村地域に限っては認められてもよいだろうと思う。
警察の見回りが頻繁にできる都市地域では、自宅に銃器を所有する必要性は大きくないだろう。
もちろん見るからに金を持っていそうだと目されるような派手な大邸宅で、自分で銃器の管理が完全にできるという自信のある人が持つのは、まあまあ許せるかもしれない。
広大なブラジルの農村地域に、いつでもどこでもくまなく警察力を巡らせるのは、事実上無理な話である。
農場には価値のあるものが多い。
牧場の動物や倉庫の収穫物だけでなく、トラクターやハーベスターのような農業機械や、農薬には高額なものが多い。
しかし農村地域の農牧場の強盗は、例えば牛泥棒を想像してもらえればよいが、かなり大人数のグループでないとできないので、守る側もかなりの人員と武器が要りそうで、実際有効なのか危惧はある。
都市部の銃器所有についてであるが、警察力の欠如を政府自ら認めて勝手に自己防衛してくれと半分さじを投げた形になると感じるのは私だけだろうか。
銃器拡大派の意見は、下手すると犯罪者が、警察を凌ぎ軍隊並みの銃器を密輸などで手に入れるのだから、市民側も対抗するための銃器を持てなければ釣り合いが取れないというものだ。
一理あるのだが、一般市民の所有者が銃器をきちんと安全に保管できるかどうか、非常に心配である。
軍や警察だったら、一応使っていないときの銃器保管については適切な武器庫に格納されるだろう。
それでも不良軍人や警官による武器横流しのような事件はたまに起きる。
これが一般市民の場合に、住宅や店舗の敷地への侵入者に対して守備を行使するという本来の目的以前に、保管のルールが決まっていないと、子供が銃器をいじる事故に遭ったり、これまで密輸業者に代金を払って銃器を入手していた悪党が、空き巣や強盗などの犯罪に多少の手間を掛けてまで、タダで銃器を手に入れようと考えても不思議ではない。
携帯に関しては余計心配である。
これから携帯を許可していこうという対象に、市会議員とか、弁護士のような職業に大判振舞である。
国会レベルの議場で暴力沙汰が起きるのは、ニュースで見る限りアジアの国々に多いような印象があるが、ブラジルもないわけではない。
ましてや地方議員に至っては素性のわからないのが結構いる。
難しい試験と定員が障壁となる判事や検事と違って、弁護士は法学部を卒業してブラジル弁護士会(OAB)の資格試験に合格するだけでなれるから、やたら数が多い。
OABによると全国に百十万人の弁護士がいるそうである。
もちろん全員が弁護士の仕事をしているわけではない。
でも銃器携帯に関しては、弁護士の仕事をしているかしてないかなど調査できない。
弁護士資格が条件だ。
弁護士全体の10%だけが銃器を携帯したいと思っても、11万である。
弁護士仲間の宴会など、危なっかしくて行けるものではない。
弁護士の夫婦喧嘩とか不倫騒ぎとか、考えたくもない。
ブラジルには血気盛んで荒っぽい性格の者が多いから、この手合に銃器の携帯を認めるのは害にしかならないだろう。
最もこの政令は違憲審査申請がいくつも出ていて、かなりの修正を受けるものと予想される。
2019年6月3日追加
今日発表された世論調査会社IBOPEによる聞き取り世論調査結果銃器所有規制の緩和について
反対 61%
賛成 37%
わからない 2%
銃器携帯規制の緩和について
反対 73%
賛成 26%
わからない 1%
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