ここがブラジルで一番COVID-19が流行している州である。
報道によると、州内のCOVID-19の47%が州都マナウス以外で起きている。
この47%は多いのか少ないのか?
ブラジルの人口最大都市・最小都市ランキング2019年版を見ると、マナウス市の人口(ブラジル全国第7位)はアマゾナス州全体の53%であり、つまり州都以外は47%であるから、人口分布と全く一致している。
州都マナウス市でもアマゾナス州の地方都市でも、偏りを無視すれば単位人口当たりCOVID-19分布は一様であることがわかる。
そして、ブラジル全国の(ブラジルでは人口の大小に関わらずムニシピオmunicípioだが、日本感覚で大から小まで全部というニュアンスで)市町村の、人口10万人当たりCOVID-19死亡数のワースト20の中で、12がアマゾナス州の市町村なのである。
ちなみにブラジルワーストワンはタバチンガ Tabatinga-AM 68.3、2位はマナカプル Manacapuru-AM 57.5で、ワースト6は全部アマゾナス州の町であり、州都マナウスはワースト13位である。
このマナカプルの街路の様子が後に載せるビデオで紹介されているが、信じられないほど住民に緊張・恐怖感が感じられない。
病魔のことなどほとんど心配している様子が見られず、コロナ以前、もうこれは2019年で終わった「前コロナ時代」と別の時代に区分したくなるのだが、昔の日常風景がここでは今でも続いているようだ。
調べたらアマゾナス州の面積は1,571,000 km²とある。
日本全土の4倍以上である。
人口をそれで割った人口密度は2.64人/km²と、日本の346.9人/km²と比較すればその過疎さがわかる。
ウィルスは人から人への伝染によってしかうつらず、どうして広大なアマゾナス州の隅々、交通網から孤立しているような先住民集落までコロナウイルスが移動するのか、日本の常識からは全く想像できないだろう。
最近のニュースで見たが、感染経路は主にモグリの河川客船であると言われている。
ときどきアマゾン河面で船の遭難事故のニュースがあるが、まともに営業している客船が遭難することもあるけれど、もっと儲けようと乗客定員を大幅に超過して、乗客名簿と実数が食い違うような、悪徳な不法船業者の乗客すし詰め船であることが多い。
ルポルタージュ映像を見ると、不法合法に関わらず安い運賃で船室に入れない等級では(そもそも乗ったことがないので客室などあるのか、あったとしても甲板より快適なのか不明であるが)、乗客はハンモック持参で、覆い付き甲板に数多く立つ柱や梁にハンモックを結びつけて張って、隣のハンモックとの間隔は人がかろうじて通れるくらいしかないようである。
そうして何日もかかる河の遡行をするのだ。
隣の人との距離が小さくしかも何日も一緒に過ごすため、壁のないオープンスペースとはいえ、口を閉じておくことのできないブラジル人にとっては、「密」が2要因は重なっている環境だ。
そうして州都マナウスで感染した地方人は、同船の健康人を道連れにして船中で病気を増殖させてから、地方の町へ持ち込む。
まあやっていることは、外洋クルーズ船と同じではある。
孤立した先住民集落へどうして病気が達するかというと、不法金採鉱者や不法伐採業者による接触と言われているが、フナイ(Fundação Nacional do Índio - FUNAI 国立インジオ財団)の職員から感染する例もあると思う。
町に暮らす若いインジオが帰省したり、集落住民が大きな町へ買い出しに行くこともありそうではあるが、それだったら完全な孤立ではないか。
病人の分布は州都・地方で偏りを考慮しなければ同一であるのだが、困ったことに病院の分布はそうではない。
地方で入院が必要になる場合には、地方の中核病院がそれに当たるのであるが、よほど重症になってより集中治療が必要になる場合には、救急飛行機でマナウスへ空輸されることになる。
そのような「公共保険で面倒見るのは地方病院まで」ということはなくて、スス(SUS 保健単一システム)でも行っていると、後から報道を聞いてわかったが、それでも空路輸送にかかるのは、相当重症になってからであることに変わりはない。
マナウスへ着いたといっても安心はできず、州全体が医療崩壊を起こしているから、運良く集中治療病床や呼吸器の空きがないと治療を待たなければならない。
現在マナウスの墓地埋葬数(ペース)は、「前コロナ時代」の3倍に達しているという。
寒さの及ばないアマゾンの田舎町で、野菜や果物を植えて小動物を飼い、野生フルーツやナッツを採集したり川で釣りをして暮らしたいと思っても、COVIDのようにおかしな病気に罹ったら大変であることを痛感する。
墓地の無数の墓穴を鳥瞰したシーンから始まる報道ビデオ(16 Mai 2020)を参考にした。
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