2012年7月8日

すべての人に大学を、と言っても競争はあり

ブラジルの高等教育(大学過程)振興策に、プロウニ(Prouni)というプログラムがある。
Programa Universidade para Todosというのがその本名だ。

これは連邦政府教育省(Ministério da Educação (MEC))のプログラムで、低所得者層の学生へ、私立大学の授業料の全額あるいは半額を無償支給するというものだ。
家族一人あたりの収入が1.5最低給料(R$933)までの場合には授業料全額、1.5から3最低給料(R$1,866)の場合には授業料半額が支給される。
志願者は、全国中等教育試験(Exame Nacional do Ensino Médio (Enem))を受けて、最低400点を取ることが必要条件になっている。
小論文で0点をとると、いくら他科目の合計が400点以上でも失格だ。

もう一つの条件は、中等教育を公立学校か、私立学校を奨学金待遇で修了していることである。
私立学校の授業料を、自費で払う程度の経済力のある家庭の子弟には、支給しないということだ。

大学卒の学位を保持しているものは志願できない。
二回目の学生生活で受け取ることはできないわけだ。

身体に障害のある人や、公立学校の現役の先生は、教員課程か教育学分野に限って志願できる。
この場合には所得制限はない。
身障者の社会参加プログラムと、全国の有資格教員不足を補う、社会的意義があるのだろう。

志願者は、通常の入学試験を受けたり、既に大学から入学が認められている必要はない。
プログラムに志願すると、ENEMの点数が合否判定に使われることになる。
志願受付期間中に、Prouniのサイトで志願手続きをすることになっている。

受け入れる私立大学は、一次選考合格者を、受験料無料の条件のもとで、独自の試験を課すことができる。

Prouniは身体障害者及び、自称、つまり本人の宣言による、原住民(indígena)、褐色人(pardo)、黒人(preto)への特別枠を持つ。
特別枠の定員は、IBGEによる最新の国勢調査による、州ごとの人種割合と同じ比率に設定される。
特別枠へ志願するものは、一般枠と同様に上記条件を満たしていなければならない。

ということは、本人の宣言のない場合の一般枠と比較すると、人種宣言することによって多少倍率が低くなると考えてよいのだろうか。
ある特定の人種に志願者が集中してしまい、特別枠の倍率が一般枠より高くなってしまうことなどないのだろうか。
この疑問について、まだ説明をみたことはない。
しかし、この人種枠をみても、Prouniは社会参加プログラムの一環であることが伺える。

連邦政府が2004年にこのプログラムを創設してから、現在まで100万人を超える学生を援助して、その内の67%が全額支給を受けた。

2012年7月3日に発表された、2012年後期の志願者数は456,973人であった。
ひとりで2つの選択ができるので、選択の数では874,273となっている。
一次選考の結果は5日木曜日に発表された。

志願者は、全国の1,316私立大学の90,311の奨学金枠を競った。
52,487が全額支給、37,824が半額支給であった。
今回の倍率は5.1倍で、2012年前期の6.2倍と比較すると低い。

倍率が低くなったといっても、「すべての人に大学を」という名前に反して、誰でもたやすく取れるものではなさそうだ。
「すべての人に大学を」と銘打っても、当然ながらすべての人が大学に入れるわけではない。
「すべての人に等しく大学への機会を」と言ったほうがいいか。

教育省はProuniの改善を今年にもめざしており、そのひとつは所得要件を高くして学生をもっと呼び込むこと、もうひとつは、経済発展に寄与の大きい学科への奨学金付与を多くして、人文科目への集中を緩和することとされている。

「所得要件を高くして」ということは、「所得要件を厳しくして」とは反対の意味と取れるが、そうすると競争はいっそう激しくなるであろう。
経済発展に寄与の大きい学科を厚遇するというのは、工学・自然科学分野への志願者を増やし、国策としてこの方面に力を入れるということである。

(http://ultimosegundo.ig.com.br/educacao/2012-06-21/o-que-e-o-prouni.html及び
http://ultimosegundo.ig.com.br/educacao/2012-07-05/mec-divulga-convocados-para-receber-bolsas-do-prouni.htmlを参考した)

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