intervenção militar = 軍部介入
monarquia = 王政、君主制
トラック運転手ストライキ9日目の2018年5月29日になって、事態は好転に切り替わった。
先のトピックに書いたように、トラック運転手の労働者組合は、連邦政府と合意に達して、組合員には道路封鎖とピケを解いて労働に戻るように声明を出した。
5月28日になって連邦政府側がしきりとアピールしているのだが、組合執行部の決定に従わずに道路封鎖を続ける不服従集団の中に浸透している政治的分子の存在である。
政府と組合執行部の合意に満足せず、労働復帰を拒否している連中を煽っているのは、もはやトラック運転手でなく、反政府勢力であるというのだ。
それなら一体どんな政治的勢力なのだろうか。
ようやくストライキが解決したので喜んで労働に戻ろうとしたら、トラック運転手とは何の関係もないのにストライキ団に入り込んでいるおかしな連中に、ストを続けるように脅迫されたとインタビューに答えたトラック運転手が何人もいる。
ブロックから離脱しようと動かしたトラックに投石されてフロントガラスが割られたり、小競り合いでシャツを破られたりするトラック運転手もいる。
一体どこの誰がしているのかわからないが、ストライキを応援するように食事その他の差し入れが届けられる。
労働者のストライキと言ってまず想起されるのが、労働者党のような社会主義・共産主義を標榜する政党に率いられるものである。
しかし、ストライキの開始から現在に至るまで、左派運動につきものの赤旗や赤シャツは一切スト団の中には見られず、ストライキ名物の、貸切バスで送り込まれる土地なし・屋根なし運動の参加も見られない。
今回のストライキには左派は一切関与していないのである。
ストライキの収拾に失敗してストが長引き、国民生活への影響が過大になって一般国民の不満が爆発すれば現政権への批判は大きくなって、10月の選挙に打撃を与えることができるから、罷免されたジルマ・ルセフ前大統領や収監下のルラ元大統領の所属する前政権党である労働者党にとっては十分な動機があると考えられる。
しかし今回はそうではない。
29日のニュースを見て、労働へ戻らないトラック運転手の不満勢力に浸透している政治的分子とは何と、軍政復活を願う人達であるという。
本気で言っているのか、それとも一種の脅し程度の意味として使うのか不明だが、「即座に軍部介入を!」"Intervenção Militar Já!"と言ったスローガンを掲げた連中の映像が流れた。
ブラジルは1980年代前半まで軍政が続いていたので、その記憶を持つ人はかなり存在する。
反政府勢力を暗殺などの汚い方法で始末したことが今でも糾弾される軍政は、特にその後期には膨大な累積債務や増長するインフレに経済政策では苦慮していたが、治安面では少なくとも薬物や武器の密輸販売で勢力を競う組織的犯罪や殺人・強盗のような凶悪犯罪に、今日のように一般国民が悩まされることはなかった。
多少言論の弾圧や自由の抑制があったとしても、安全な日常生活を過ごすことができた時代を懐かしむ人がいてもおかしくない。
世界的風潮だろうが、軍政以降に生まれた世代も少数派排斥性向と結びついてこの方向に流れるものがいないわけではない。
ヘルペスのように、潜伏していたウイルスが身体の免疫力が弱ったときに症状が顕在化して苦しめるように、中道政権がつまずいて社会が不安になると左派だけでなく極右までが政権を揺さぶろうと蠢き出すことを今回のトラック運転手のストによって実感した。
現在までブラジルの王室(ポルトガル王室ブラガンサ家)の子孫が続いていて、その人達はもはや望みはしないだろうが、それでも王政復古を目指すモナルキスタのグループまで存在するのだから、軍政復活を目指す市民がいることも少しは頷ける。
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