2020年8月1日

苦労して見たネオワイズ彗星

ネオワイズ彗星は、まず北半球で見えるようになり、近日点通過前には夜明け時に東の空にかなり明るく(1等星)輝いたそうである。
しかし梅雨の長雨が時期外れまで続く日本では、実際に見ることができた場所はそう多くないようである。

南半球で見られる位置までやってきたので、彗星観察に挑戦した。

第1回試行 2020/7/22
日が経つほど彗星は太陽から離れて暗くなっていくので、なるべく早いうちの観察が良いのだが、早いうちは地平線に近すぎるという欠点もある。
私が住む場所の緯度で観察できる2日目に当たる日であった。

太陽に近いので、当然日没時には既に地平線間際で沈む寸前まで低い位置であるため、遠くに見える地平線際の街灯に光が消され気味な条件のもと、予習不足で正確な位置がわからないうちに時間切れとなってしまった。

第2回試行 2020/7/24
天頂の周囲の上空はきれいに晴れているのだが、北西の地平線際にはいわし雲があって、彗星自体も、彗星の位置の参照にする恒星の並びも確認できないうちに時間切れとなってしまった。

第3回試行 2020/7/26
地平線際の照明がない、観測に最適な場所へ行くことはできなかったが、前回の失敗から学んで、手前にある木々が灯りを隠すことのできる場所を選んでおいた。
電灯の直接光が双眼鏡に入らなくてもその近辺に視線を向けると、鏡筒かレンズの表面から、変な反射が起きて、星の光と区別しにくくなることがわかったからである。

第1回試行日には三日月であったものが、この日には上弦の月になっていて、しし座とおおぐま座にある、彗星の位置の参照に使う恒星がなかなか見えてこない条件であった。

あらかじめ確認した2つの恒星(おおぐま座ξとν)が作る線を延長した先が彗星の想定位置であったから、双眼鏡で丹念に光を探した。
多分これだと思われた、右上方向に薄く刷毛を引いたようなぼやけた光の点は、本当にこれかなと多少疑問が残った。

観察を終えて部屋に入り、彗星の位置を推定するのに使った、日本出版の星図を開いて、さっき彗星が見えた場所に何の恒星も存在しないことを確認した。
しいて言葉で書くと、おおぐま座の2つの4等星ξ(クシー)星とν(ニュー)星を結ぶ線を右方へ延長したところにある2つの5等星55星と57星を一辺とした上側へいびつな三角形を作る場所である。
場所を忘れないうちに鉛筆で星図上に年月日時刻と地平線を書き込んで、その写真を撮って彗星観察の記録とする。


サンパウロ市(南緯23º)の2020/7/24 18:30を基準としたネオワイズ彗星推定位置と等級である。
これを見ると、7/26の推定光度は5.39等である。
見つけるのが困難なはずだ。


舞台から一番遠い席から観劇したオペラのような感じではあるが、これを見逃すと6800年待たないと戻ってこない貴重なものを見ることができて、刈り取りの終わった畑の地際から這い上がるダニに噛まれながらも苦労した甲斐があったというものだ。

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