宵・明けの明星は非常に明るいため、それが金星であると認識するかは別として、意識しなくても目に入ってくる存在である。
しかし、より小さく、最も太陽に近い惑星である水星はそのため、わざわざ「観察するぞ」と意気込んで、しかも一年の中でどの時期のどの時刻にどの方向を探すべきか、あらかじめ調べておかないとなかなか見ることができない。
今まで水星を見た記憶が無いということは、これから見ることができれば人生初の水星の肉眼での観察ということになる。
北半球の中緯度にある上記サイトのデータと、当地南半球低緯度の天体の動きは異なるから、参考にはなるが実状は違うはずである。
さいたま☆天文同好会の内山茂男氏による、水星の最大離角をみると興味深いことがわかる。
季節によって水星の高度は変化するが、大雑把に結論すると、時期を選べば南半球は、北半球と比較して水星の高度は高くて、観察の条件が良好である。
西方最大離角のときの日出時高度というグラフを参考にして、当地(南緯19º)は赤道とオーストラリア・パース(南緯32º)の中間だろうと見当をつけると、地平線からの日の出時高度が17º位であることがわかる。
12月には埼玉(東京)とあまり高度差がない。
だから観察の難度も同等かというと、これが大違いである。
南半球は夏を迎えようとしているから、戸外でじっと空を観察するのが楽である。
しかも低緯度でありながら夏時間(サマータイム)実施中であるから、滅茶苦茶早起きしなくても良い。
せいぜい虫除けをするくらいだ。
ごく気楽に出かけられるから、この時期の寒い日本の明け方の星空観察とは大違いである。
夏至の一日前である2018年12月20日、近くの公園の湖の西岸に、スマホと双眼鏡を持ってでかけた。
公園に運動のため行く人々と同じような、半袖シャツとショートパンツである。
全く寒さを感じないから、おそらく22ºCくらいだろうと見当をつける。
スマホにはSky Mapというアプリが入っていて、双眼鏡は8x23 6.3ºという小さめのレジャー用である。
スマホのSky Mapが正確に方角を指さないので、煌々と明るい金星を使って目測で角度補正をする。
湖の向こう方向にはサッカースタジアムの輪郭が見えるが、消灯されている。
スタジアム外壁の上には雲の層が見えるが、もっと上空は晴れている。
12月は雨季なので、ちょっとした大気の具合ですぐ雲が出てくる。
午前6時に立ち止まって観察を開始したら、全く困難なく木星と水星のペアを確認することができた。
より明るく大きく見えるため、水星を探す目標となってくれる木星から、地平線との角度左上約30ºの空間に水星が、これもかなり明るく見える。
発見順は、金星→木星→水星の流れである。
実視界6.3ºの双眼鏡の、丸い視野の直径の約40%離れているので、木星と水星の距離角度は約2.5ºの近さにある。
一応2018年12月20日のデータを書いておこう。
事象 | English | Português | 時刻 |
---|---|---|---|
天文薄明 | Astronomical twilight | Crepúsculo astronômico | 5:09 |
航海薄明 | Naval twilight (Nautical twilight) | Crepúsculo náutico | 5:39 |
観察開始 | 6:00 | ||
市民薄明 | Civil twilight | Crepúsculo civil | 6:08 |
肉眼で水星視認可能 | -6:17 | ||
双眼鏡で水星視認可能 | -6:21 | ||
双眼鏡で木星視認可能 | -6:26 | ||
日の出 | Sunrise | Amanhecer | 6:32 |
2018年12月21日(夏至の日)、この日も観察したが、出遅れた。
公園まで歩いて10分近くかかるのだが、家を出てすぐ前の通りで東の空を見たら、水星が左、木星が右に今日は横一列に並んだ、太陽系で最小と最大の惑星の最接近(見かけだが)を観察できた。
双眼鏡の視野と比較して、2つの惑星の見かけの距離(角度)は1º前後であった。
太陽や月の直径が角度30分であることから、とても近く見えることがわかる。
昨日より天気がよく、曙光を隠してくれた雲がないので、東の空全体がすぐに明るくなってしまい、昨日容易に観察できた時刻でも、今日は観察困難となっていた。
観察は、刻々と増す明るさとの競争である。
水星が双眼鏡でも周りの明るさに埋もれて確認できなくなったのは6:23頃であった。
2018年12月22日(夏至の翌日)、昨日の反省で少し早めに出たが、報われず東の空の雲の層が厚く、観察の条件がここ数日で一番悪い。
6時10分ころようやく木星が確認できた。
それから水星が雲の層の上に現れるまで数分かかった。
この日の水星の位置は、木星の高さの水平平行線から左下へ約60下りた場所だった。
2つの天体の見かけ距離は双眼鏡の視野から概算して大体1.3ºとみた。
これから木星は太陽から離れていき、夜の領域に入っていくため見やすくなる。
水星は反対に太陽に近づくため、観測困難になる。
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