2021年3月2日

富者のワクチン、貧者のワクチン

 各国の新型コロナ感染症対策は、その国で利用可能なリソースによって決まるから、ある国の治療法は、必ずしも隣の国の治療法と同じだとは限らない。
新型コロナのワクチンであっても事情は同様だ。

下の表は全ての認可されたりその候補のワクチンを上げたのではなく、現在ブラジルで話題に上がるものだけである。

番号開発者名称商品名開発国種別特徴
1AstraZenecaウィルスベクター2回接種、冷蔵保管
2Johnson & Johnson蘭/米ウィルスベクター1回接種、冷蔵保管
3ModernaRNA2回接種、冷凍保管
4Pfizer/BioNTech米/独RNA2回接種、冷凍保管
5Bharat BiotechCovaxin不活化ウィルス
6Gamaleya研究所Sputnik Vウィルスベクター
7SinovacCoronaVac不活化ウィルス2回接種、冷蔵保管


現在ブラジルで認可を受けているワクチンは3種である。
いずれも昨年からブラジル国内で第3フェーズ試験を行ったため、以前の法規に則って、ブラジル衛生監視庁(アンヴィザ ANVISA - Agência Nacional de VIgilância SAnitária)より認可された。

  • 1.アストラゼネカ(英国)
  • 4.ファイザー/ビオンテッキ(米国・ドイツ)
  • 7.シノバック(中国)


1.アストラゼネカは、ブラジルの医学衛生分野で権威実績のある、オズワルド・クルス財団(フィオクルス FIOCRUZ)と提携して、年内の国内生産を目指している。
現在は緊急使用許可で、フィオクルスが生産を開始するまでは、中国工場からのワクチン原液の輸入と、インド工場からの製品ワクチンの輸入に頼っている。

4.ファイザー/ビオンテッキは、初めてブラジル国内で完全使用許可を得たワクチンであるが、連邦政府は商談に手こずっていて、契約に至っていない。
2020年半ばにファイザーブラジルがブラジル連邦政府に契約を打診したのだが、副反応が出たときの免責条項にブラジル政府が同意しなかったので、提案はそのまま放置された。
免責条件に同意しなかった国は、ブラジルの他にはベネズエラとアルゼンチンだけだったというのだが、ニュースで一回聞いた限りで、以降確認していない。

7.シノバックは、サンパウロ州立の医学衛生研究機関ブタンタン研究所(Instituto Butantan)が第3フェーズ試験を行った。
ブラジルで権威のある研究所をパートナーとしたので、情報開示に問題がありがちな共産圏ワクチンであるが、検証はしっかり行われたと信じたい。
現在は緊急使用許可で、もちろん原料は中国に頼っている。

1.アストラゼネカも7.シノバックも中国頼みであるが、ブラジル大統領派の議員や大臣が中国批判ばかりするので、ブラジルへのワクチン原料が妨害されて遅れているのではないかと噂されていた。
中国の返答は事務手続きに時間がかかるという理由であったが、外交のことであるから隠れた本心はわからない。

ブラジルで第3フェーズ試験が行われているものはあと一つ、2.ジョンソン&ジョンソン(米国)があるが、ANVISAへの承認申請が行われていない。

これまでの法規は、ブラジルで治験が行われたワクチンでないと国内使用は認可されなかったのであるが、あまりにもワクチン入手に困難があるため、連邦議会は認可条件を緩和する立法に取り組んでいる。
例えば、科学的に信用のおける国の保健機関が認可したワクチンについては、試験結果を引用して簡略に許可するといった方策である。

そのような流れで未だブラジル衛生監視庁から認可されていないが、連邦政府が契約しようとしているのが次のワクチンだ。

  • 5.商品名コバクシン Covaxin(インド)
  • 6.商品名スプートニク・ブイ Sputnik V(ロシア)


米国は自国で複数のワクチンの開発が行われているので、全く比較対象にはならないだろうが、現在まで3種のワクチンが認可されている。

  • 2.ジョンソン&ジョンソン(米国)
  • 3.モデルナ(米国)
  • 4.ファイザー/ビオンテッキ(米国・ドイツ)


ブラジルのワクチンリストと米国のワクチンリストを比較すると、ワクチン生産国のコントラストがくっきりしている。

ブラジルにはブラジル独自の事情がある。
インディオはこれまで他の文明から隔離されてきたため、いろいろな感染症に免疫を持っていない。
インディオが、医療従事者や高齢者と並ぶ予防接種優先順位に位置づけられる理由である。

アマゾナス州の保健部門で働く人がインタビューで言っていた。
インディオ部落へワクチンを届けるのは並大抵でない。
川船で6日川をさかのぼってから、小さいボートに乗り換えてさらに1日かかるというような辺鄙で不便な場所がある。
辺境地では電力事情が悪いだけでなく、電気自体が通っていない場所もある。
国土が広いため空路でも陸路でも、冷凍輸送するには機材や燃料が高くつくし、時間が足りない。
マイナス20度冷凍保存のワクチンなど持っていけるわけがない。

そのような事情で、90%を超える有効性を誇っても、取り扱いが非常に面倒なワクチンは、手元にあっても十分に役に立ってくれない可能性は大きいのだ。
日本のようにワクチン全量がファイザーであるような国を羨ましがっても仕方がない。
接種を受けるのは無料だし、地元にあるワクチンで満足しなければバチがあたる。

ブラジルは、規則に従って国内で第3フェーズ試験が行われて、50.38%という際どい数値ながら、WHOが基準と定める必要な数字を叩き出したから許可したのである。
中国製ワクチンを闇雲に入手するのとは違う。

今のところブラジルで入手可能なワクチンの中で、唯一の西側先進国製のアストラゼネカにしても、政治的事情はあるもののEU諸国では不利な情報があふれて、できるなら避けたいワクチンナンバーワンになっているようなのだ。
ブラジルなら打ちたいワクチンナンバーワンになれるぞ。

インフルエンザワクチンと同じようなもので、発病しても入院して重症に至る確率が低くなれば、個人にとっては儲けものだし、医療機関が機能不全に陥ることはないから、社会全体が安心できる。

まあそれにしても、BRICSの中でもワクチンを生産しているのは中国、ロシア、インドががんばっているのに、熱帯病研究に強いはずのブラジルが、治験と生産の提携に過ぎないのは残念である。
計画と信念、何よりも予算が足りないのだろう。

2021年2月27日

コロナ禁酒と外出禁止令

lei seca - 禁酒法
toque de recolher - 外出禁止令

よその州や市で、夜間外出禁止令やアルコール販売禁止令などが出ているというニュースは、最近よく耳に入る。
お気の毒なことに、と人ごとのように感じていたものの、わが町も強力な規制がかかった。
病床を増やしてもすぐに足りなくなる医療崩壊状態だから、しかたない。

2021年2月23日から少なくとも一週間、20時から翌朝5時までの、緊急要件に当たらない外出と、24時間つまり少なくとも7日間ぶっ続けのアルコール飲料販売禁止が、市条例で施行されている。

ニュース記事の見出しが、"Lei seca e Toque de recolher"となっていた。

Lei seca は、文字通りだと「干上がる法律」ということだろうが、通常アルコール販売が禁止されている状態を表している。
米国の「禁酒法」は簡単に調べてみる(Wikipedia)と、合衆国憲法修正18条のもとで、アルコールの製造、販売、輸送を、1920年から1933年もの長期間禁止した法律である。
原語は"Prohibition"と簡潔である。

今回のアルコール販売禁止は、立法府による法律ではなく、行政府である市役所によるから、適用地域は市域に限られている。

Toque de recolher をポルトガル語辞書で調べると、「晩鐘、消灯の鐘」と書いてある。
toqueは鐘などの鳴る音のことで、recolherは帰宅するという動詞であるから、トッキ・ジ・レコリェルとは元々は、現在もあるかどうか知らないが、日本の学校で鳴る下校チャイムのことであろう。
toqueには楽器の演奏の意味もあるから、下校時刻を知らせるための、ドヴォルザークの「家路」のような、聞いたら自然と家に帰りたくなる音楽のことを toque de recolher と呼んでもよいだろう。

しかし帰宅時刻である20時だけでなく、20時から5時までの間に toque de recolher という言葉を当てるのなら、その時間帯に外出するなということだから、外出禁止令としておこう。

今晩のニュースを見ていたら、サンパウロ州政府は、全州で金曜日の2月26日から3月初めまで、23時から翌朝5時までの外出禁止を行うそうである。
23時からと20時からをくらべると、特にレストランやバーのような外食業種にとっては、全く大違いである。

先週2月17日から、熱心な信徒が節制を行う四旬節に入っているため、アルコールなど販売禁止にしても、市民の抵抗が少ないとでも思ったのだろうか。
レイ・セカ前日は、駆け込み酒類購入のため、スーパーなどが密状態になる逆効果がみられた。

夜8時を回ると、これまでの深夜のごとく辺りが静まり返るのは、新鮮な感覚だ。
バスも夜8時には終点に着いているし、通りを走る自家用車も商用車もない。

特筆すべきは2021年2月25日の夜だ。
コロナのために2021年までずれ込んだフットボールのブラジル選手権(Brasileirão)の最終節で、人気クラブの一つ、フラメンゴが2年連続優勝した。
花火は打ち上げられたが、普通の年だったら熱心なファンが通りに繰り出して、クラクションを鳴らしながら走り回る、にぎやかな自発的優勝パレード(というか馬鹿騒ぎ)が全くないので、静かすぎてしまらない、奇妙な優勝の夜だった。
この静寂さは通常のときはなかなか得られない、とても貴重な時間だ。

2021年2月23日

コロナ気になる薬

「コロナ治療」で広がる輸入 未承認薬、厚労省「安易な服用控えて」
時事ドットコムニュース 2021年02月21日07時05分

ニュースに接したときにすぐ理解できるように、最近ニュースで見ることのあるコロナ治療薬、あるいはその候補をここに書いておく。

当記事による、日本で承認されているコロナ治療薬-医師の処方が必要

  • レムデシビル - en. Remdesivir - po. Remdesivir  抗ウィルス薬
  • デキサメタゾン - en. Dexamethasone - po. Dexametasona ステロイド系抗炎症薬

ブラジルで承認されたことのある・されているコロナ治療薬
  • ヒドロキシクロロキン - en. Hydroxychloroquine - po. Hidroxicloroquina 抗マラリア剤
  • アジスロマイシン - en. Azithromycin - po. Azitromicina 抗生物質
  • イベルメクチン - en. Ivermectin - po. Ivermectina 駆虫薬

以上が全てではないと思われるが、ブラジルのボルソナロ大統領、米国トランプ前大統領の思い込みなどから強力に推すものも含め、ブラジル保健省が「初期治療」"tratamento precoce"に使用できるとみなしたもの。
報道によると薬効の科学的裏付けが存在しないものは、現在は保健省の正式文書からその記述は抹消されているらしい。

注目されているが日本では承認されていない薬剤-つまり使ってみたくなる薬
  1. ファビピラビル - en. Favipiravir - po. Favipiravir RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤
  2. イベルメクチン - en. Ivermectin - po. Ivermectina 駆虫薬

1番目は商品名アビガン Aviganとしてよく知られているものである。
RNAウィルスである新型コロナウィルス (SARS-CoV-2) の増殖を阻害する働きが期待されるが、まだ決定的な効力は持たないようであって、そのためコロナ治療薬として承認されないのだろう。
想像である。
この薬についてブラジルでコメントされたのを聞いたことがない。
当然だが、ブラジルでこれまで使われていて、そのため入手しやすい薬剤がよく話題に上がる。

2番目であるが、報道記事によると日本人が個人輸入を行って自己処方して服用した例がある。

ブラジルの話である。
ある知人は予防と称して、毎月1回服用している。
他の友人は、風邪をひいたかなと思ったら、ということは何らかの症状が出ているということだが、重症化しないように服用するという。
これについて、ある日公共診療所の内科医に聞いたことがある。
予防のため月一で服用することは意味がないが、罹り初めのときに服用することは肯定した。

果たして効果があるのかはわからない。
実証が行われていないからだ。
ブラジルでイベルメクチンが、新型コロナ感染症患者の内どのくらいの割合で処方されているのかはわからないが、これを服用したら全く重症化しない、という仮説が正しかったとしたら、ブラジルでコロナによる死者数がこれほど伸び続けるということはないのではないか。
科学的な実証が待たれる。

2021年2月14日

垂直に深く刺す筋肉注射

「コロナワクチン投与法の動画公開 厚労省、筋肉注射で」
という見出しの記事を見た。(2021/02/12 共同通信)
一節を抜き出す。

「日本のワクチンは皮下注射が多く、浅く斜めに針をさす。筋肉注射は、皮下組織の下にある筋肉まで針をまっすぐに深く刺すのが特徴だ。」

へーそんな違いがあったなんて、全く気づかなかった。
ブラジルでも、もう何回もいろいろな注射をしてもらったが、注射のやり方の違いが気になったことなどない。
実は怖いから自分の腕に針が刺さるのを見たくないので、いつも注射の腕の反対側を向いているか、目をつぶっていたりして、どんなふうに注射をしているのか、全く気をつけてみたことがない。

最近のニュースではブラジル各地のワクチン注射の光景がよく流れるが、注射シーンのクローズアップも多い。
そうして注目してみると、いかにも筋肉注射である。
皮下注射とは様相が違う。

接種者は被接種者の腕を、肉が盛り上がるようにつかんで、皮膚面と垂直な角度で、短い針の場合には根元の太い基部が膚にくっつくくらいまで、容赦なく深く刺す。
針が腕の骨に刺さるのではないかと、心配すらしてしまう。

今回順番が回ってきて、これまでのワクチン開発の歴史の通例を破って、わずか1年足らずで作られた新型コロナウィルスワクチンを自分が打たれることになったとしても、目をつぶっていればよいだろうと思っていたのだが、そうもいかない事件があった。

ゴイアス州ゴイアニアで起きたことだ。
順番が来た年配の女性が注射を受けた。
付き添いの娘さんがスマホで、記念すべき接種シーンの撮影をした。
あとからビデオを見たら、腕に針を刺しただけで薬液を注入しないまま針を抜いたという、手抜きというか、接種詐欺というか、そんな目にあったと言って警察に訴えた。
撮影されたビデオがテレビニュースで流されたが、本当に刺しただけでピストンを押さないまま抜いてしまったのかはよくわからなかった。

これは貴重なワクチンの窃盗だろうか。
接種詐欺だとして、いったい誰が得をするのか。
刺すだけで注射したふりをして、ワクチンが一人分入った注射器を捨てないで、隠して外へ持ち出そうとしているのか。
ずいぶん手間のかかる盗み方だ。

誰がワクチンを欲しているか。
医療関係者や高齢者でなく、優先順位がついていない普通の人だろう。
予防注射がまだ公式に始まっていない日本で、偽物の疑いすらある中国製ワクチンを、闇市場から入手する金持ちがいるとか聞くから、ブラジルでも自分の順番が回って来るのは何ヶ月も先のことだから、いくら金をかけてもいち早く予防接種を受けて安心したいという人がいるのだろう。

いやしかし、一刻も早くワクチンが欲しくても、一度見知らぬ誰かの腕に刺した針を、自分の腕に刺してもらっても平気だという人が一体いるのだろうか。
ただでもらえると言われても、御免こうむる。

訴えがあったため、警察は接種担当者を捜査することになっているが、こんな事件が頻繁に起こるとは考えられない。
だがそうではない場合に、接種詐欺の被害者にならないためには、同行者に証拠ビデオを撮影してもらうか、それができなかったら、確かに薬液が腕の中に注入されているか、自分の目ではっきり確認しなければならない。

ああ怖い、ああいやだ。

2021年2月9日

行きは寝台、帰りは椅子が理想な旅行

アマゾナス州の州都マナウスから、18人のCovid-19中・重症者が、ブラジル空軍輸送機でミナス・ジェライス州西部の町ウベラバへ搬送された。
3週間前のローカルニュースである。
2名の医師、数名の看護師も同行した。

Google Mapsで計測する、ウベラバ-マナウス間の直線距離は2,270キロである。
ニュースでは3千キロと大雑把に言っていたが、いささか大げさではないか。
と思ったのだが、経路検索をしたら、自動車で陸路移動するとなると3,570キロもある。
鉄道というオプションはない。

2021年2月5日の報道によると、アマゾナス州から全国16州へ、合計503人の患者が搬送されたそうだ。

北地方(3)-アクレ AC、パラ PA(この2州はいちおうアマゾナス州の隣)、トカンチンス TO
北東地方(6)-マラニョン MA、ピアウイ PI、リオ・グランデ・ド・ノルテ RN、パライバ PB、ペルナンブコ PE、アラゴアス AL
南東地方(3)-ミナス・ジェライス MG、エスピリト・サント ES、リオ・デ・ジャネイロ RJ
南地方(3)-パラナ PR、サンタ・カタリナ SC、リオ・グランデ・ド・スル RS
中西地方(1)-連邦区 DF

患者受入地はブラジルの全地方に広がっているが、距離はどうか。
以下距離は州都同士の直線距離で比較をする。
患者輸送は全部空路なので適当であろう。

まず近そうな隣接州をみてみる。
マナウス-リオ・ブランコ AC 1,150キロ
マナウス-ベレン PA 1,280キロ
隣接州と言っても、千キロ以上ある。

北東地方だったらどうか。
マナウス-ジョアン・ペッソア PB 2,860キロ
ブラジル最東端の州都である。

南東地方
マナウス-リオ・デ・ジャネイロ RJ 2,850キロ

一番遠そうな南地方
マナウス-ポルト・アレグレ RS 3,140キロ

さて、ポルトガルも大変なことになっていて、ドイツから医療団を送ったり、オーストリアが患者を受け入れると表明した。
リスボン-ウィーン 2,300キロ
なかなか遠い。
でもこれは3つか4つ向こうにある、遠い別の国である。

第1波のときには、北イタリアからドイツへ患者空輸が行われた。
ミラノ-ミュンヘン 350キロ
イタリアとドイツは国境を接していないが、これまでの例と比べるととても近い。

マナウスの医療資源不足のため空輸された患者たちは、見知らぬ土地の病院でどうなったか。
2月5日報道によると、503名中153名が退院してマナウスへ帰還した。
37名は治療の甲斐なく死亡した。
残りは入院治療中である。

ウベラバの町へ着いた18名の行方は、6名退院帰還、5名入院治療中、7名死亡ということだ。

アマゾナス州都マナウスは、人口約220万人の、ブラジル第7番目の大都市であるが、ブラジルの都市集中部からは、大地と大河に阻まれる隔絶地である。
空輸された患者たちの中には、これが人生最初の州外への旅行である人も少なくないと思われる。
アマゾン川を直線距離で600キロ下れば、隣州パラの大都市サンタレンだから、きっと船で州外旅行をしたことはあるという人もいるだろう。
今調べたら、川下り30時間、川上り42時間かかるそうだ。

退院となって病院から空港へ運ばれ、帰りの便まで一切自由時間がない、一風変わった初めての州外旅行であっても、生きて帰るものは幸いである。
帰り便も横になって、しかし棺の中なんていうのは辛い。

2021年1月27日

2021年のキリスト教移動祝日

 ブラジル各地の2021年のカーニバルは軒並み中止になってしまったが、当然暦の上では例年のようにカーニバルは存在する。

米国のカーニバルで有名なニューオーリンズのサイトがあって、2056年までのMardi Gras(マルディ・グラ)の日付がここでわかる。
Mardi Grasとはフランス語で確か「肥えた火曜日」と言う意味だったと思うが、ブラジルでは普通にTerça-feira de Carnaval「カーニバルの火曜日」と呼ぶ日である。

世界2大コロナ猖獗国である米国とブラジルである。
ニューオーリンズのマルディ・グラのパレードも中止となってしまった。
暦のけじめがつかないではないか、憎きコロナよ。

カーニバルがキリスト教行事かというと巨大な疑問であるが、少なくとも日付の決め方だけは教会に従っている。
有り体に言えば、謝肉祭というくらいだから、カーニバルで現世の喜びを十分に満悦してから、心置きなく襟を正して四旬節の節制に臨む、という意味をつけられる。
とにかく、キリスト教行事の中には、毎年、天体の月の動きに応じて日付が移動するものがある。

年の後半にある、知らない人はいないクリスマスは12月25日(ブラジルの祝日)、ブラジルでは死者の日(Finados)と呼ばれる万霊節は11月2日(ブラジルの祝日)―これはハロウィン(10/31)-万聖節(11/1)-万霊節(11/2)と続く―と、毎年同じ日付に決まっているが、年の前半にある宗教祝日は移動するものが多い。

2021年の移動宗教祝日を下に一覧表にした。
復活祭の日、2021年ならば4月4日日曜日が、一連の移動祝日の基準になっていると言ってよい。
2020年より8日早い。

復活祭の日付の決定方法について過去の記事に説明した。

待降節(Advento)は、クリスマスに備える期間であるが、その第一日は日曜日に決まっていて、11月30日の「聖アンデレ(Santo André)の日」に最も近い日曜日からクリスマスイブまでの約4週間で、最も早い年で11月27日、遅い年でも12月3日に始まる。
アドベント期間には必ず4つの日曜日が含まれる。
つまり年の前半の移動祝日とは、その決め方が全く異なる。

行事日の決まり方2021年休日種類
カーニバル
Carnaval
週末から灰の
水曜日前日4日間
2月15-16日
月火曜日
PF
灰の水曜日
Quarta-feira de Cinzas
復活祭46日前の水曜日2月17日水曜日14時までPF
四旬節Quaresma灰の水曜日から復活祭前日
枝の主日
Domingo de Ramos
復活祭7日前の日曜日3月28日日曜日
聖週間Semana Santa枝の主日から復活祭前日
キリスト受難日
Paixão de Cristo
復活祭の2日前の金曜日4月2日金曜日FN
復活祭Páscoa北半球春分の次の
満月の次の日曜日
4月4日日曜日
ペンテコステPentecostes復活祭の49日後の日曜日5月23日日曜日
キリスト聖体の日
Corpus Christi
復活祭の60日後の木曜日6月3日木曜日PF
ぽつんと年末に孤立
待降節初日
Início do Advento
11月30日に最も近い日曜日11月28日日曜日


ブラジルで国定祝日(feriado nacional - 上表ではFN)、任意出勤(ponto facultativo - 下表ではPF)になっている日と、特に休日になっていない日がある。
任意出勤というのは、条例や労使協定によって、地方自治体、職種組合や職場ごとに、休日とするか勤労日とするか決められる。
大部分の勤め人にとっては、普通の休日となることが多いが、商店は営業するところと休むところがある。

2021年1月25日

2021年のブラジルの祝祭日

ブラジルの2020年の暦は、カーニバルが終わるまでは、コロナなどよその惑星のできごとであるかのような能天気だったが、患者第1号が出てからはもう有無を言わさずコロナ対応に引き込まれた。
そのため、花火打ち上げやクラブの年越しパーティーのような年末年始行事だけでなく、来月2月のカーニバルはおろか、それを7月に延期した時期外れカーニバルも、開催時期未定のまま再延期になったりして、いささか暦感覚がない2021年になろうとしている。
そんなわけで毎年年末の、来る年の祝日チェックを放ってしまっていた。
コロナ疲れの一種である。
でも来月は何も公式行事がなくても、カーニバルはやってくる。
そこで政府による祝日関係の発表を検索した。

連邦政府の経済省は、2021年の祝日と任意出勤についての通達PORTARIA Nº 430, DE 30 DE DEZEMBRO DE 2020を2020年12月30日付官報に掲載した。
下の表はこれに準ずる。
条文に断っているように、本来の目的は連邦行政官庁や国営企業の休日を定めたものである。

一連のキリスト教関連の移動休日は、2020年より8日早くなる。
たとえば2020年のキリスト受難金曜日は4月10日、2021年は4月2日である。

1 1月1日 Confraternização Universal 世界友好の日 FN
2,3 2月15-16日 月火 Carnaval カーニバル PF
4 2月17日 quarta-feira de cinzas 灰の水曜日 14時までPF
5 4月2日 Paixão de Cristo キリスト受難の日 FN
6 4月21日 Tiradentes チラデンチス FN
7 5月1日 Dia Mundial do Trabalho 世界労働の日 FN
8 6月3日 Corpus Christi キリスト聖体の日 PF
9 9月7日 Independência do Brasil ブラジル独立の日 FN
10 10月12日 Nossa Senhora Aparecida アパレシーダ聖母の日 FN
11 11月1日 Dia do Servidor Público 公務員の日 PF
12 11月2日 Finados 死者の日 FN
13 11月15日 Proclamação da República 共和制宣言の日 FN
14 12月24日 véspera de natal クリスマスイブ 14時以降PF
15 12月25日 Natal クリスマス FN
16 12月31日 véspera de ano novo 大晦日 14時以降PF

注:FN = Feriado Nacional 国定祝日、PF = Ponto Facultativo 任意出勤
任意出勤とは、職種や企業や自治体によって働くか休むかが決められる日である。
各人が勝手に自分の都合で出勤したり欠勤したりして良いという意味ではない。

11月1日(月)は10月28日(木)の「公務員の日」(Dia do Servidor Público)の振替であり、民間は通常日であるが、(連邦の)官庁は任意出勤となる。
2019年のこの日には、市の消費者保護機関は通常通りに仕事をしていたが、州の裁判所は閉まっていた。
国営銀行とみなされるブラジル銀行(Banco do Brasil)と連邦貯蓄銀行(Caixa Econônica Federal)について、この日に営業するかは確実でなく、注意する必要がある。
当表の連邦政府が定める全国一円の休日のほかに、各地で市、地方あるいは州の記念日が数日定められていることが多い。

次のサイトで、任意の過去・将来年の、任意の国の休日が入った月齢付きカレンダーを閲覧・印刷できる(英語・ドイツ語・当国語-ブラジルならポルトガル語)。
このリンクはブラジルの2021年