2018年6月30日

まず32か国名三か国語対照

日本の外務省のページ
世界と日本のデータを見る
(世界の国の数,国連加盟国数,日本の大使館数など)平成30年3月5日
によると、世界の国の数は196か国(日本が承認している国の数である195か国に日本を加えた数)である。

いっぺんに二百近い国名を覚えるのはとうてい無理だけど、FIFAワールドカップ2018ロシア大会に出場した32について、三か国語対照表を作った。
これを作った時点ですでに半分の16か国しか勝ち残っていないのだが、まあ気にしない。
32は全ての国の数の約6分の1をカバーする勘定である。

英語とスペイン語はFIFAのワールドカップのサイトから国名を写した。
FIFAのサイトは、英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、アラビア語、ロシア語、中国語に切り替えができるようになっている。
ポルトガル語の国名はブラジルのポータルサイトから写した。

韓国の国名については、大会用の名称だという。
通常ポルトガル語では、Coreia do Sul、Coreia do Norteと、南コリア、北コリアと呼ぶのが普通だ。
同じくイランは、単にIrã、イランと呼ばれることが多い。

国名の固有名詞だけでなく、国民や国語を意味する形容詞・名詞形、つまりJapanに対するJapaneseをのせなければ万全ではないが、時間があったらやってみよう。

EnglishEspañolPortuguês
ArgentinaArgentinaArgentina
AustraliaAustraliaAustrália
BelgiumBélgicaBélgica
BrazilBrasilBrasil
ColombiaColombiaColômbia
Costa RicaCosta RicaCosta Rica
CroatiaCroaciaCroácia
DenmarkDinamarcaDinamarca
EgyptEgiptoEgito
EnglandInglaterraInglaterra
FranceFranciaFrança
GermanyAlemaniaAlemanha
IcelandIslandiaIslândia
Islamic Republic of IranRepública Islámica de IránRepública Islâmica do Irã
JapanJapónJapão
Korea RepublicRepública de CoreaCoreia do Sul
MexicoMéxicoMéxico
MoroccoMarruecosMarrocos
NigeriaNigeriaNigéria
PanamaPanamáPanamá
PeruPerúPeru
PolandPoloniaPolônia
PortugalPortugalPortugal
RussiaRusiaRússia
Saudi ArabiaArabia SaudíArábia Saudita
SenegalSenegalSenegal
SerbiaSerbiaSérvia
SpainEspañaEspanha
SwedenSueciaSuécia
SwitzerlandSuizaSuiça
TunisiaTúnezTunísia
UruguayUruguayUruguai

2018年6月28日

テレビごとネイマールを倒すな!

SNSでこんなのが回ってきた。

Recadinho para todos
Durante o jogo evitem esbarrar na TV pra não derrubar o Neymar
皆様にお知らせ
試合中はネイマールが倒れるから、テレビにぶつからないよう気をつけろ

ネイマールがコロコロ倒れるのはブラジルでも有名である。

ブラジルのワールドカップ中継局グロボGloboの看板スポーツアナウンサーであるGalvão Buenoの言動で、ネイマールが気分を害したという。
Neymar se irrita com críticas, e Globo nega distinção entre jogadores
Folhapress 2018.6.25

一節だけ引用する:
Ao longo da partida, Galvão criticou o que viu como um "gesto artístico" de Neymar durante pênalti que foi marcado pelo árbitro, mas acabou anulado com ajuda do vídeo.
試合の途中で、審判が宣言したペナルティーがビデオ判定で取り消された場面で、ガルボンは見たことを、ネイマールの「芸術的なジェスチャー」と批判した。

これを書いているのは2018年6月28日、日本はポーランドに負けながらも、ノックアウトフェーズへ進出した。
同時間のHグループ別試合でコロンビアがセネガルに先行してから、日本は失点とイエローカードをくらわないように自陣に籠もってボール回しを始めた。
昼の試合後のニュースのコメンテーターは、「どのチームもそうするだろう」と同情したものの、夜のニュースのガルボン・ブエノは容赦しなかった。
「間違いではないが、柔道だったらどうだろうか。消極性のためポイントを取られるではないか」

一応ワールドカップの史上初の「規律によってノックアウトフェーズに進んだ」ニュース価値は認めていた。
勝ち点-得失点差-総得点-直接対決が同一で、5番目の基準イエローカード数が日本とセネガルの明暗を分けた。

一方でGグループのイングランドとベルギーの試合は、結果如何に関わらず両者はグループフェーズを勝ち抜けることが試合前から決定しているのだが、ガルボンによると勝者の1位抜けは歴代チャンピオンが4か国いる難しい山へ、敗者の2位抜けはチャンピオンが2カ国の易しい山になるけれど、イングランドとベルギーはわざと2位になろうと手を抜かなかったと、日本の戦い具合と対比して称賛した。

日本でもブラジルでも、日本チームは次の試合にかかる期待値のハードルがすごく高くなった。

2018年6月23日

10秒のおフザケ、一生の後悔

人々の心がいやでもうきうきする夏至の頃から、FIFAワールドカップ2018ロシア大会たけなわである。
スタジアムの外でも国際交流は進む。

日本女性に下品な言葉コロンビア男性が謝罪
2018年6月21日 8:30

日本で話題になったが、こういったのはブラジルでも事欠かかない。
オリンピック2016リオデジャネイロ大会でこのような事件の記憶がないが、なぜか今回のワールドカップではやけに目立つ。
SNSの隆盛の波に乗っていることは間違いない。

ブラジルの報道では、女性を侮辱する行動として捉えられている。

Vídeos machistas de torcedores na Rússia se espalham pela web e causam revolta
Por G1
19/06/2018 19h21

2つ目の画像(静止画)は、例のコロンビア人と日本女性のものである。

最初の画像(動画)では、3人のブラジル人の身元が割れた。
4番目と5番目の画像(静止画)は、1番目のビデオからのキャプチャ静止画である。

弁護士で元ペルナンブコ州のある市の観光局長-州議会が非難決議を行った。
警察官-サンタカタリーナ州警察の行政処分を帰国時に受ける予定。
土木技師-所属先である技師評議会が声明を出し、懲罰を受ける可能性。

本記事には載ってないが、もっと悲惨な目にあった男がいる。
2人のブラジル人男性が3人のロシア人女性に同様に、いたずらで卑猥な言葉を言わせて笑っている動画がSNSを通じて拡散した。
2人のうち1人はブラジルの航空会社ラタン(LATAM Airlines Brasil)の従業員だった。
映像が拡散して不名誉な話題が拡大した時点で、ラタンは「会社の価値観と原則に反する、倫理行動規範に違反」という理由で即時に解雇してしまった。

一連の悪趣味な悪ふざけを仕掛けたブラジル人は、帰国時に連邦警察に逮捕されるだろうという報道もある。

10秒の悪気のない悪ふざけだったつもりが、一生を台無しにする後悔に変わってしまった。

その場限りの悪ふざけだったら、仮に相手が嫌な思いをしたとしてもその場でしっかり謝れば済んでしまう。

しかし映像にしてSNSに載せてしまうと事情は異なる。
いたずらの対象にされた人は、自分も無邪気に楽しんで嫌な思いなど少しも感じなかったとしても、撮られた映像が拡散して不特定多数の人が見ることになると、何を言わされたか分かってない状況で騙された被害者の愚かさが視聴者の笑いの種になったり、見るだけで不愉快になる視聴者も出るだろう。

一生を台無しにはしないが、似た状況は自分たちにもときどき起こる。
自分たちとはブラジルに住む日本人のことである。

酒の席とかあまり堅苦しくない状況に(日本人にとっての)外国人がいて、何か日本語(の単語)を教えてくれと言ってきたときに、「お○ん○ん」とか「お○○こ」その他の卑猥な単語をふざけて言わせておもしろがる悪ふざけをしたことがある人は少なくないのでなないか。

そしてこんな状況で受けることがある、次の質問にはいつも困惑する。
「日本語で"filho de puta"は何て言う?」という質問だ。
日本ではこの意味の罵倒語はないとことわった上で、「売春婦」だと長いし硬いし、「女郎の子」と言うことが多いが、意味はわかるが全く使わない語法だから、口に出してもしっくりこないので、とても気持ちが悪い。

ブラジル人から日本語の単語を知っているから聞いてくれと、「ジョロノコ(女郎の子)」を逆に聞かされることもある。
「女郎の子」はかなり普遍的に知られているようなのだ。
きっと昔から日本人移民も、聞かれることが多く、困り果てながら教えてやった歴史があるのだ。
注釈をつけて正しい知識を教えるのが、正しい民間交流のあり方ではないのかと大上段に構えたりするのだが、根が優しいから、「きっとウケ狙いで言うのだから、面白がって欲しいのだろうな」と入らぬ気遣いをして、そうかそうかと力なく笑ってあげるくらいしかできないことが多いのだ。

2018年6月11日

ブラジルの不審電話

次のリンクは日本のものである。
自動音声で「65歳以上ですか」 個人情報聞く不審電話
6/9(土) 16:04配信

ブラジルの電話にも自動音声の通話がかかってくる。
その時は面倒だし、自動音声なら重要性もないだろうし、どうせセールスだろうからすぐに切る。
受話器を取ると対応する間もなく1、2秒で切れてしまう通話もたくさんかかってくる。
インターネットで検索するとそのような瞬切りを受ける人は多く、そのような番号リストもある。
ほとんどテレフォンセールスの会社のようである。
通話が切れる理由は不明だ。

セールスと寄付のお願い以外の、これまであった不審な電話を書いてみる。

だいぶ前の昼飯時のこと、市外局番11サンパウロから「俺だよ俺、サンパウロのいとこだよ」と男の声で固定電話にかかってきた。
そして金が無いとかなんとか言っていた。
サンパウロにいとこはいない。
発信元と日時の記録はない。
記憶にあるだけである。

別の通話である。
去年の8月のある日の日記に「詐欺の可能性の通話」と記してある。
隣の州の州都の携帯電話から固定電話にかかってきた。
「父さん助けて、助けて」と女性の声だった。
私達に娘はいない。

詐欺電話やらセールス電話やら面倒だから、発信番号を見て未知の番号からかかってきたときは、すぐに切れることも多いし、受話器を取っても自分から声を出して話し出さないようにしている。
そうすれば電話の向こう側の詐欺脅迫者が、「お父さん助けて」と切り出すか、「お母さん助けて」と言い出すか判断できないだろうから。

もっともこの最初から沈黙対応作戦はブラジルだから通用するのかもしれない。
日本だったらベルは待たせるな、受話器をとったらすぐ名乗れと教わってきたからだ。
ブラジルでは向こうから掛けてきた電話に出るとすぐ「どなたですか」と聞かれることが多いのだが、これに対して日本からブラジルに来たばかりの人は「てめえが掛けてきたのになぜ名を聞く」と怒り出す人がいる。
どのくらいの昔の時代のことかはわからないが、ブラジルの電話は交換の間違いや混信が非常に多かったから、話したい本人につながっているか前もって確かめるために自分が電話をかけたとき、通話先で電話をとった人の名前を尋ねるのだ、と聞いたことがある。

最近はかかってこなくなっているが、受話器を取っても無言の電話がある。
いたずら電話か電話の故障かはわからない。
そのような相手にはこちらも無言で答えるのだが、沈黙では申し訳ないので、優しく音楽を聞かせてあげるようにしている。
音楽はその時聞いていたものだからこれとは決まっておらず、テレビ音声を聞かせることもある。
しばらくすると音楽に飽きるか満足して電話は切れている。

2018年6月9日

多様化する恋人たち

en. homophobia = po. homofobia = ホモフォビア、同性愛嫌悪
en. LGBT = po. LGBT

6月12日はブラジルの恋人の日"Dia dos Namodados"である。
衣料品小売大手のRennerの恋人の日のプロモーションビデオである。



後で見つけたが、もう一つの衣料販売C&Aも負けていない。



見ればすぐに分かるが、レズビアンとゲイ、つまりLGBTのLとGそれぞれのペアが参加しているのである。
ブラジルのLGBTは、Wikipediaによると、Lésbicas, Gays, Bissexuais, Travestis, Transexuais及びTransgêneros、つまりレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、いわゆるオカマ、トランスセクシュアル及びトランスジェンダーの頭文字である。
トランスセクシュアルとトランスジェンダーの違いはよく説明されていないのだが、前者は肉体的に、後者は心理的・社会的に生まれて持つ性と異なるものに自身を認識するとされている。

注意してみると、出身地・肌の色や年齢のような要因に愛は囚われていないというメッセージも含まれているようだ。

YouTubeの動画のスポンサーになっているのを見つけたのであるが、ネットショッピングのためと思われる文言"Compre online"が入っている。
万人が視聴する地上波でこのビデオが放送されているかは、今のところ確認をしていない。

コメント欄は賛・否・どうでも良いが混じっている。
反対理由として、神の摂理に反するとか地獄に落ちるとかいう宗教的理由をあげるところにブラジルらしさが現れている。

2018年5月31日

軍政復活や王政復古を願う人達

intervenção militar = 軍部介入
monarquia = 王政、君主制

トラック運転手ストライキ9日目の2018年5月29日になって、事態は好転に切り替わった。
先のトピックに書いたように、トラック運転手の労働者組合は、連邦政府と合意に達して、組合員には道路封鎖とピケを解いて労働に戻るように声明を出した。

5月28日になって連邦政府側がしきりとアピールしているのだが、組合執行部の決定に従わずに道路封鎖を続ける不服従集団の中に浸透している政治的分子の存在である。
政府と組合執行部の合意に満足せず、労働復帰を拒否している連中を煽っているのは、もはやトラック運転手でなく、反政府勢力であるというのだ。
それなら一体どんな政治的勢力なのだろうか。

ようやくストライキが解決したので喜んで労働に戻ろうとしたら、トラック運転手とは何の関係もないのにストライキ団に入り込んでいるおかしな連中に、ストを続けるように脅迫されたとインタビューに答えたトラック運転手が何人もいる。
ブロックから離脱しようと動かしたトラックに投石されてフロントガラスが割られたり、小競り合いでシャツを破られたりするトラック運転手もいる。
一体どこの誰がしているのかわからないが、ストライキを応援するように食事その他の差し入れが届けられる。

労働者のストライキと言ってまず想起されるのが、労働者党のような社会主義・共産主義を標榜する政党に率いられるものである。
しかし、ストライキの開始から現在に至るまで、左派運動につきものの赤旗や赤シャツは一切スト団の中には見られず、ストライキ名物の、貸切バスで送り込まれる土地なし・屋根なし運動の参加も見られない。
今回のストライキには左派は一切関与していないのである。

ストライキの収拾に失敗してストが長引き、国民生活への影響が過大になって一般国民の不満が爆発すれば現政権への批判は大きくなって、10月の選挙に打撃を与えることができるから、罷免されたジルマ・ルセフ前大統領や収監下のルラ元大統領の所属する前政権党である労働者党にとっては十分な動機があると考えられる。

しかし今回はそうではない。
29日のニュースを見て、労働へ戻らないトラック運転手の不満勢力に浸透している政治的分子とは何と、軍政復活を願う人達であるという。
本気で言っているのか、それとも一種の脅し程度の意味として使うのか不明だが、「即座に軍部介入を!」"Intervenção Militar Já!"と言ったスローガンを掲げた連中の映像が流れた。

ブラジルは1980年代前半まで軍政が続いていたので、その記憶を持つ人はかなり存在する。
反政府勢力を暗殺などの汚い方法で始末したことが今でも糾弾される軍政は、特にその後期には膨大な累積債務や増長するインフレに経済政策では苦慮していたが、治安面では少なくとも薬物や武器の密輸販売で勢力を競う組織的犯罪や殺人・強盗のような凶悪犯罪に、今日のように一般国民が悩まされることはなかった。

多少言論の弾圧や自由の抑制があったとしても、安全な日常生活を過ごすことができた時代を懐かしむ人がいてもおかしくない。
世界的風潮だろうが、軍政以降に生まれた世代も少数派排斥性向と結びついてこの方向に流れるものがいないわけではない。

ヘルペスのように、潜伏していたウイルスが身体の免疫力が弱ったときに症状が顕在化して苦しめるように、中道政権がつまずいて社会が不安になると左派だけでなく極右までが政権を揺さぶろうと蠢き出すことを今回のトラック運転手のストによって実感した。

現在までブラジルの王室(ポルトガル王室ブラガンサ家)の子孫が続いていて、その人達はもはや望みはしないだろうが、それでも王政復古を目指すモナルキスタのグループまで存在するのだから、軍政復活を目指す市民がいることも少しは頷ける。

2018年5月30日

ブラジルのトラック運転手という階級

血栓症重症のブラジル

caminhoneiro = トラック運転手

5月21日からブラジル社会の大麻痺状態の原因となったブラジルのトラック運転手とはどんな人達だろうか。
次の記事から見えるその実体は、強固な労働組合組織を形成する一枚岩の労働者の団体像とは、印象がかなり異なる。

Edição do dia 25/05/2018
25/05/2018 21h17 - Atualizado em 25/05/2018 21h17
Governo tem suspeita de locaute na greve dos caminhoneiros
http://g1.globo.com/jornal-nacional/noticia/2018/05/governo-tem-suspeita-de-locaute-na-greve-dos-caminhoneiros.html

なお下の文章は記事のみでなく、他から持ってきた情報も含んでいる。

2015年のトラック運転手法(法律)は、労使間協約があれば一日12時間、週72時間の労働を認める。
しかし法律はいくつもの例外を設けて、車両が安全な場所や目的地に到着するまで労働時間を延長することが許される。

長時間の運転の眠気と疲労を追い払うために、日本では覚醒剤に指定されている、こちらの日常言葉でレビッチ(rebite)と称されるアンフェタミンの力を借りる運転手もいる。

トラック運転手の仕事は奴隷にもたとえられる。
年平均200日は自宅の外で過ごし、狭いトラック内のキャビンで強盗の脅威にびくびくしながら浅い眠りを取りながらの旅が続く。

街道沿いには食堂だけでなく、売春も行われているから、トラック運転手は性病の高リスクグループであるという不名誉な属性も持つ。

昔のトラックの装備は、運転手仲間で情報を共有するためにせいぜい無線が付いていたくらいだったが、現在はインターネット接続や、運転手が初めての配達先に迷うことなく到着するためのカーナビだけでなく、トラック盗難や強盗に備えて遠隔から位置確認が可能なGPSによる監視がされている。

サンパウロ大学が2月に発表した調査によるトラック運転手の横顔は、この職業が楽なものでないことを示している。
  • トラック運転手の58%は正式な被雇用者
  • トラック運転手の27%は自営者、つまり自分が所有するトラックを運転する
  • トラック運転手の15%はその他の形態の契約
ストライキの間は労働を中止しているから、当然自営者の場合収入はなくなるのだが、運送会社の従業員の給料体系はどうなっているのだろうか。
自営者と被雇用者の間に格差ができそうなものだが、そこを説明してくれる報道はない。
  • トラック運転手の43%は法定の週44時間以上労働する
  • トラック運転手の85%は1から3最低給料を稼ぐ
  • トラック輸送は国内輸送の60%以上を担う(2018年4月)
調査などのデータからみると、社会で大きな力を誇示しにくい、どちらかというと社会弱者と考えられる、ばらばらで団結力がなさそうなトラック運転手が、どのように組織化した実力行使を行い、一般市民の同感を得ているのはどうしてだろう。

まず、今回の全国規模のトラック運転手ストライキを組織したのは一体どこの団体だろうか。
報道によると、トラック運転手の労働者組合と考えられる2つの団体が、既にスト入り前から連邦政府に警告の書状を送っていた。
ブラジルトラック運転手協会(Associação Brasileira dos Caminhoneiros - ABCAM)と、全国自営運輸業連盟(CNTA - Confederação Nacional dos Transportadores Autônomos)である。
トラック運転手の労働組合はこれだけではなく、全国組織も地方組織もいろいろあってあって多数存在する。

そもそもなぜこのような抗議活動が始まったかと言うと、汚職スキャンダルに見舞われたペトロブラスが、その反省から最大株主の連邦政府から独立性を高めて、製品価格をドル為替と原油価格に連動して、ほぼ日単位で変動するように2016年から変更した価格決定方針が原因になっている。
そのため連邦政府が人気取りやインフレ率の操作のために、ペトロブラスの製品価格を人為的に抑制することや、会社の資産が不正な政治献金に流用されることが難しくなって、ペトロブラスは復配できるまで体力を取り戻してきた。
反対にペトロブラス製品であるガソリンや軽油の価格調整は、国際情勢緊張のため原油価格の上昇とレアル下落によってインフレ率を大幅に超えて、自動車所有者を苦しめる結果となった

だからストに参加したのはトラック運転手だけではない。
タクシーやUberや通学バンの運転手も、局地的一時的であったが賛同ストやデモを各地で行った。
ストに参加した職業運転手だけでなく、仕事で車を使う人も私用にしか使わない人も大部分が、燃料の価格と付加される税金を下げろというストの趣旨には賛同している。

さらに問題を複雑にするのがトラック運転手の雇用者の立場である。
燃料価格が下がって、しかも上乗せされる税金が減税されたならば、一番得をするのは給料をもらう個々の運転手ではなく、利益の大部分を持っていく雇用主だろう。
だから、故意にか不作為にかに関わらず、運転手を焚き付けてストをしてもらえば労せず得するわけだ。
そこで連邦政府はブラジルでは禁止されているロックアウト、つまり運送会社の事業所や車庫を閉鎖して運転手に労働させない戦術をとった疑いを持って、日本の公正取引委員会に相当する経済防衛行政審議会(CADE - Conselho Administrativo de Defesa Econômica)が捜査に入っている。

2018年5月27日日曜日になって、軽油の価格を0.46レアル引き下げ、連邦政府はペトロブラスに差額を補填する、その他いろいろある詳しい内容については省略するが、実施事項を政令で定めることに、連邦政府とトラック運転手の多数の労働組合の間で合意に至って公式的にはストライキは終結した。
と言い切りたいのだが、実はそう簡単に全てのトラック運送が復帰するのではなく、時限立法であることに不安を持つ一部の勢力は中央執行部の決定に従わない、いわゆる山猫スト状態になっている。

ロックアウトから山猫ストまでいろいろな戦術が出ているのだが、闘争目的が労使で一致して大衆の支持も高いという珍しいできごとではある。