2020年5月18日

今「田舎でのんびり」できないアマゾン的理由

ブラジル・アマゾナス州は、最近はECサイトの名前のほうが有名になっているかもしれないアマゾン川の中流域である。
ここがブラジルで一番COVID-19が流行している州である。

報道によると、州内のCOVID-19の47%が州都マナウス以外で起きている。
この47%は多いのか少ないのか?
ブラジルの人口最大都市・最小都市ランキング2019年版を見ると、マナウス市の人口(ブラジル全国第7位)はアマゾナス州全体の53%であり、つまり州都以外は47%であるから、人口分布と全く一致している。
州都マナウス市でもアマゾナス州の地方都市でも、偏りを無視すれば単位人口当たりCOVID-19分布は一様であることがわかる。

そして、ブラジル全国の(ブラジルでは人口の大小に関わらずムニシピオmunicípioだが、日本感覚で大から小まで全部というニュアンスで)市町村の、人口10万人当たりCOVID-19死亡数のワースト20の中で、12がアマゾナス州の市町村なのである。
ちなみにブラジルワーストワンはタバチンガ Tabatinga-AM 68.3、2位はマナカプル Manacapuru-AM 57.5で、ワースト6は全部アマゾナス州の町であり、州都マナウスはワースト13位である。

このマナカプルの街路の様子が後に載せるビデオで紹介されているが、信じられないほど住民に緊張・恐怖感が感じられない。
病魔のことなどほとんど心配している様子が見られず、コロナ以前、もうこれは2019年で終わった「前コロナ時代」と別の時代に区分したくなるのだが、昔の日常風景がここでは今でも続いているようだ。

調べたらアマゾナス州の面積は1,571,000 km²とある。
日本全土の4倍以上である。
人口をそれで割った人口密度は2.64人/km²と、日本の346.9人/km²と比較すればその過疎さがわかる。

ウィルスは人から人への伝染によってしかうつらず、どうして広大なアマゾナス州の隅々、交通網から孤立しているような先住民集落までコロナウイルスが移動するのか、日本の常識からは全く想像できないだろう。

最近のニュースで見たが、感染経路は主にモグリの河川客船であると言われている。
ときどきアマゾン河面で船の遭難事故のニュースがあるが、まともに営業している客船が遭難することもあるけれど、もっと儲けようと乗客定員を大幅に超過して、乗客名簿と実数が食い違うような、悪徳な不法船業者の乗客すし詰め船であることが多い。

ルポルタージュ映像を見ると、不法合法に関わらず安い運賃で船室に入れない等級では(そもそも乗ったことがないので客室などあるのか、あったとしても甲板より快適なのか不明であるが)、乗客はハンモック持参で、覆い付き甲板に数多く立つ柱や梁にハンモックを結びつけて張って、隣のハンモックとの間隔は人がかろうじて通れるくらいしかないようである。
そうして何日もかかる河の遡行をするのだ。

隣の人との距離が小さくしかも何日も一緒に過ごすため、壁のないオープンスペースとはいえ、口を閉じておくことのできないブラジル人にとっては、「密」が2要因は重なっている環境だ。
そうして州都マナウスで感染した地方人は、同船の健康人を道連れにして船中で病気を増殖させてから、地方の町へ持ち込む。
まあやっていることは、外洋クルーズ船と同じではある。

孤立した先住民集落へどうして病気が達するかというと、不法金採鉱者や不法伐採業者による接触と言われているが、フナイ(Fundação Nacional do Índio - FUNAI 国立インジオ財団)の職員から感染する例もあると思う。
町に暮らす若いインジオが帰省したり、集落住民が大きな町へ買い出しに行くこともありそうではあるが、それだったら完全な孤立ではないか。

病人の分布は州都・地方で偏りを考慮しなければ同一であるのだが、困ったことに病院の分布はそうではない。
地方で入院が必要になる場合には、地方の中核病院がそれに当たるのであるが、よほど重症になってより集中治療が必要になる場合には、救急飛行機でマナウスへ空輸されることになる。
多分私的医療保険でないと利用できないと思う。
そのような「公共保険で面倒見るのは地方病院まで」ということはなくて、スス(SUS 保健単一システム)でも行っていると、後から報道を聞いてわかったが、それでも空路輸送にかかるのは、相当重症になってからであることに変わりはない。
マナウスへ着いたといっても安心はできず、州全体が医療崩壊を起こしているから、運良く集中治療病床や呼吸器の空きがないと治療を待たなければならない。
現在マナウスの墓地埋葬数(ペース)は、「前コロナ時代」の3倍に達しているという。

寒さの及ばないアマゾンの田舎町で、野菜や果物を植えて小動物を飼い、野生フルーツやナッツを採集したり川で釣りをして暮らしたいと思っても、COVIDのようにおかしな病気に罹ったら大変であることを痛感する。

墓地の無数の墓穴を鳥瞰したシーンから始まる報道ビデオ(16 Mai 2020)を参考にした。

2020年5月7日

COVID-19ブラジルの危険な州と安全な州

ブラジルは十分に広いから、COVID-19の流行状況も場所によって大きな違いがある。
岩手県のように全く感染者が確認されない場所や、大都市のように感染拡大が避けられない場所がある点は、日本でも全く同じである。

日々増加していく数字なので、あくまでも2020年5月7日時点に過ぎず、これから将来の予測をすることは全く不可能である。
特に最近ブラジルは、商店閉店や自主的隔離(Fique em casa つまり Stay home)の緩みが著しく見られるので、1、2週間先の見込みは暗い。

COVID-19による10万人あたりブラジルの州ごと死亡数(2020/5/7)
地方人口COVID-19死亡数10万人あたり死亡数
(参考 スペイン全国)46,755,00017,26336.92
NAM アマゾナス4,144,59780619.45
NECE セアラ9,132,0789039.89
NEPE ペルナンブコ9,557,0718458.84
SERJ リオデジャネイロ17,264,9431,3948.07
NAP アマパ845,731617.21
SESP サンパウロ45,919,0493,2066.98
NPA パラ8,602,8654104.77
NEMA マラニョン7,075,1813054.31
(ブラジル全国)212,559,0009,1464.30
NAC アクレ881,935364.08
SEES エスピリトサント4,018,6501553.86
NEAL アラゴアス3,337,357982.94
NEPB パライバ4,018,1271012.51
NRR ロライマ605,761142.31
NERN リオグランデドノルテ3,506,853762.17
NRO ロンドニア1,777,225372.08
CWDF 連邦区3,015,268351.16
NEBA バイア14,873,0641651.11
NESE セルジペ2,298,696251.09
NEPI ピアウイ3,273,227351.07
SPR パラナ11,433,9571040.91
SSC サンタカタリナ7,164,788630.88
SRS リオグランデドスル11,377,239900.79
CWGO ゴイアス7,018,354440.63
NTO トカンチンス1,572,86690.57
SEMG ミナスジェライス21,168,7911060.50
(参考 日本全国)126,476,0005510.44
CWMT マットグロッソ3,484,466130.37
CWMS マットグロッソドスル2,778,986100.36

死亡数は全て2020年5月7日発表された、ブラジル保健省のページ、及びスペイン、日本の政府機関による
人口は2019年のIBGE(ブラジル地理統計院)のサイトから入手できるファイルより

2020年5月5日

ブラジルの人口最大都市・最小都市ランキング2019年版

最近のニュースは新型コロナウィルスについての記事がほとんどだが、ブラジルの州や大都市の人口を知りたくなる場合が多い。
そこで、ブラジル地理統計院のサイトからダウンロードできるファイルをもとに表を作成した。

2年前の時点のブラジルの人口最大都市・最小都市ランキング2017年版と同様に作った。
今回のは2019年7月1日時点の推計値である。

ムニシピオ município とは、簡単に言うと日本の市町村レベルの地方自治体のことである。

ブラジルの人口の多いムニシピオ
都市推定人口備考
1SPSão Paulo12,252,023サンパウロ州都
2RJRio de Janeiro6,718,903リオデジャネイロ州都
3DFBrasília3,015,268連邦共和国首都
4BASalvador2,872,347バイア州都
5CEFortaleza2,669,342セアラ州都
6MGBelo Horizonte2,512,070ミナスジェライス州都
7AMManaus2,182,763アマゾナス州都
8PRCuritiba1,933,105パラナ州都
9PERecife1,645,727ペルナンブコ州都
10GOGoiânia1,516,113ゴイアス州都
11PABelém1,492,745パラ州都
12RSPorto Alegre1,483,771リオグランデドスル州都
13SPGuarulhos1,379,182サンパウロ大都市圏
14SPCampinas1,204,073サンパウロ州地方
15MASão Luís1,101,884マラニョン州都
16RJSão Gonçalo1,084,839リオデジャネイロ大都市圏
17ALMaceió1,018,948アラゴアス州都
18RJDuque de Caxias919,596リオデジャネイロ大都市圏
19MSCampo Grande895,982マトグロッソドスル州都
20RNNatal884,122リオグランデドノルテ州都
21PITeresina864,845ピアウイ州都
22SPSão Bernardo do Campo838,936サンパウロ大都市圏
23RJNova Iguaçu821,128リオデジャネイロ大都市圏
24PBJoão Pessoa809,015パライバ州都
25SPSão José dos Campos721,944サンパウロ州地方
26SPSanto André718,773サンパウロ大都市圏
27SPRibeirão Preto703,293サンパウロ州地方
28PEJaboatão dos Guararapes702,298レシフェ大都市圏
29SPOsasco698,418サンパウロ大都市圏
30MGUberlândia691,305ミナスジェライス州地方
注:ここで"地方"は、州都が属する大都市圏以外の場所を意味する

ブラジルの人口の少ないムニシピオ
都市推定人口
1MGSerra da Saudade781
2SPBorá837
3MTAraguainha935
4RSEngenho Velho1,034
5TOOliveira de Fátima1,112
6GOAnhanguera1,149
7RSUnião da Serra1,154
8MGCedro do Abaeté1,164
9SPUru1,165
10PIMiguel Leão1,246
11SCSantiago do Sul1,260
12SPNova Castilho1,267
13PRJardim Olinda1,331
14RSAndré da Rocha1,333
15GOCachoeira de Goiás1,351
16RSPorto Vera Cruz1,360
17RSCarlos Gomes1,377
18GOSão João da Paraúna1,381
19MGGrupiara1,388
20TOChapada de Areia1,406

次は州と地方ごとの統計である。

2019年7月1日現在ブラジル総人口及び地方と州ごとの人口推計値
地方・州州略号推定人口
Brasil 全ブラジル210,147,125
Região Norte 北地方18,430,980
Rondônia ロンドニアRO1,777,225
Acre アクレAC881,935
Amazonas アマゾナスAM4,144,597
Roraima ロライマRR605,761
Pará パラPA8,602,865
Amapá アマパAP845,731
Tocantins トカンチンスTO1,572,866
Região Nordeste 北東地方57,071,654
Maranhão マラニョンMA7,075,181
Piauí ピアウイPI3,273,227
Ceará セアラCE9,132,078
Rio Grande do Norte リオグランデドノルテRN3,506,853
Paraíba パライバPB4,018,127
Pernambuco ペルナンブコPE9,557,071
Alagoas アラゴアスAL3,337,357
Sergipe セルジペSE2,298,696
Bahia バイアBA14,873,064
Região Sudeste 南東地方88,371,433
Minas Gerais ミナスジェライスMG21,168,791
Espírito Santo エスピリトサントES4,018,650
Rio de Janeiro リオデジャネイロRJ17,264,943
São Paulo サンパウロSP45,919,049
Região Sul 南地方29,975,984
Paraná パラナPR11,433,957
Santa Catarina サンタカタリナSC7,164,788
Rio Grande do Sul リオグランデドスルRS11,377,239
Região Centro-Oeste 中西地方16,297,074
Mato Grosso do Sul マトグロッソドスルMS2,778,986
Mato Grosso マトグロッソMT3,484,466
Goiás ゴイアスGO7,018,354
Distrito Federal 連邦区DF3,015,268

2020年5月3日

日本もブラジルも9本針の効果か

前回の表をもう一度載せる。

スペインブラジル日本
死者初出日2020/3/132020/3/172020/2/14
10万人あたり死亡数33.952.780.33
死亡数15,1754,543351
人口(千人)46,755212,559126,476
人口密度(人/平方km)93.725.4346.9
65歳以上割合(%)20.09.628.4
3・4月平均気温(℃)11.5520.7511.30
3・4月合計雨量(mm)73240242

死亡数はスペインブラジル日本のデータは2020/4/30発表のもの
人口関係3指標は2019年の国連ファイルより
気候関連2指標は、マドリード、サンパウロ、東京、Wikipediaより

スペインとポルトガルからなるイベリア半島の国々は、南アメリカの国々の旧宗主国である。
だから言語だけでなくその習慣も引き継いでいるのは当然である。
欧州全体的にそうであろうが、キスやハグや握手の習慣である。

スペインとブラジルは肉体接触的習慣の多くが共通しているのだが、コロナ感染拡大の速度は両国で全く異なる理由は何だろうか。
今回コロナ感染が広まるまでは、普通の人がマスクを使うことはまったくなかった。
それはスペインも同じである。
スペイン人の生活の詳細はわからないが、ブラジル人は清潔好きで、よく言われるフランス人とは全く異なり、1日1回以上はシャワーを浴びる。
だからといってよく手を洗う国民かというと、そうでもないと思う。

前回で人口密度や年齢構成や気温や降水量やら何らかの関係があるのかと思ったが、データを眺めるだけではよくわからない。

高齢者人口の割合がスペインより相対的に低いブラジルは、そのために死亡率が低いとは言えるだろう。
でもそれだけでは、10万人あたりコロナ死亡率が1桁単位で違う説明を十分にできたと言えない。

感染と死亡が急速に増大して全く他に取る方策がなくなったスペインは、イタリアや英国と同様に罰則を伴う厳しい隔離、いわゆるロックダウンを行うことになり、その苦労の結果、ようやく隔離緩和へ向かえるようになった。

感染と死亡が急速に増大せず、しかもかなり局地的なブラジルは、最初3月下旬には住民の自主隔離実行率が高かったものの、4月末にかけて家篭りがだんだんゆるんできていた。
日米欧ほど財政状態が強くない国は、いや強い国であっても生産が止まる隔離状態を続けたくない政府の意向が反映する。
スペインほど死亡数増加が急速ではないものの、全く死亡増加率低下、検査の拡大や病床空き率の改善が認められないのに、5月に入ったら隔離緩和に向かっている。
そのためこれから1週間、2週間先に、ブラジルのコロナ死亡数が爆発的に増加しないか非常に心配である。

北半球と南半球の違いをして、これから北半球は下火になり南半球は酷くなるような予想があるが、これはどうだろうか。
ブラジル北部地方のアマゾナス州の州都マナウス、ブラジル北東部地方のセアラ州のフォルタレザやペルナンブコ州のレシフェなどの、いずれも熱帯地方の都市で、5月2日現在いずれも死亡数500以上にまで感染が拡大しているから、高温多湿だけでは病気の減少は望めない。

しかし、ブラジルで人口が一番多いがコロナ患者も一番多い、南回帰線が通るサンパウロ市では、最寒月7月でも平均気温は15.8℃であるから、マドリードや東京の3・4月平均気温より温和である。
だから天候のせいでそれほど悪くなることはないだろう。
インフルエンザの予防注射により側面擁護する必要はあると思うし、実際それは今ブラジルで行われている。

そこでBCG説である。
日本のコロナ死亡率が低い理由を説明する一つの仮説である。

もう腕を見ても痕跡を見つけることはできないが、3×3=9つの点があったことは確実に記憶にある。
ブラジル育ちの妻に、「9本針のはんこ」の記憶があるか聞いたら、覚えていると言った。
息子の予防接種カードを見たら、0歳時にBCG接種の記録がある。
日本もブラジルもBCG接種国であることがわかった。

同じイベリア半島でも、ポルトガルは接種国であるが、スペインはそうではない。
BCG接種のコロナ抵抗力増強仮説では、それがポルトガルのコロナ死亡率がスペインより低い理由を説明しているという。

現在のところこの仮説は実証されていないし、ブラジルのマスコミでこの話を聞いたことは一度もない。
でも十分ありそうな気がしている。
だからといって、残っているかわからないBCG接種の残存効果に期待するわけにはいかない。

全世界の最新のコロナ状況がここ"COVID-19"で見られるのだが、これを一日中見て恐れ嘆くのもどうかと思う。

2020年4月30日

コロナでスペインと同じにならないブラジルの謎

ブラジルでCOVID-19の初めての死者が出たのは2020年3月17日であり、インターネットラジオOTTAVA(オッターヴァ)の番組、本田聖嗣さんのOttava Frescaの「世界のニュース」関連の投稿を2020/3/24にしたときは、スペインの13日遅れと誤認してしまったが、実際は4日遅れであった。

その時添えた言葉は、「国民の性格や習慣と国のゆるさがそっくりなため、ブラジルは間違いなくイタリアやスペインの後を追っています」であったのだが、現実にそれは起きていない。
スペインの大感染をブラジルが4日遅れでたどっているわけではない。

死亡の実数で比較すると、同じ5千人であっても、人口5千万人の国と2億人の国では4倍の重みの差があるわけだから、指標としてよく使われる10万人当たり死亡数で比較する。

スペインブラジル日本
死者初出日2020/3/132020/3/172020/2/14
10万人あたり死亡数32.462.140.28
死亡数15,1754,543351
人口(千人)46,755212,559126,476
人口密度(人/平方km)93.725.4346.9
65歳以上割合(%)20.09.628.4
3・4月平均気温(℃)11.5520.7511.30
3・4月合計雨量(mm)73240242

死亡数は2020/4/27発表のもの
人口関係3指標は2019年の国連ファイルより
気候関連2指標は、マドリード、サンパウロ、東京、Wikipediaより

これを見るとすぐに気づくのが、死亡数が大まかに見て、
スペイン >(10倍)> ブラジル >(10倍)> 日本
である。

日本の死亡数がごく少ないのは特筆ものだが、今回は「国民の性格や習慣と国のゆるさがそっくり」な、スペインとブラジルの比較に注目する。

人口密度を見ると当然予想されるように、広大な国土のブラジルが低く、日本が非常に高い。
しかし、人間が密接に集中する都市部で比較すると、ミクロな差異が大きい。
ブラジルのスラム街は、小さな建物がぎっしり詰まっている上に、一部屋に住む人数が多く、距離を取ることが極めて難しい問題がある。
ここにコロナウィルスが入ると、急速に感染拡大する可能性が大きい。

国の全人口に占める高齢者の割合をみると、スペインはブラジルより多数の死者が出る要因が明らかにある。
しかし超高齢な国の一つである日本の死者数が少ない説明はつかない。
日本の老人はスペインの老人と比較して、数世代の大家族ではなく、子供や若者がいない、独居や老人夫婦のみの家庭が多いのではないだろうか。

3月と4月の平均気温の平均は、スペインと日本がほぼ同じで、温度の高い場所でウィルスの働きが鈍るという仮定に立つと、これもどうして日本の死者数が少ないのか説明できない。

3月と4月の降水量が他の2つよりかなり少く、乾燥しているスペインで死者が多いのは、低温と乾燥が合わさると死者が多くなるのではないかという仮定はできる。

昨日のニュースでは看過できない推定があったので書いておく。

リオデジャネイロの登記所で死因不定の死亡記録が急増
専門家は疑いのある患者のコロナウィルス検査不足が原因と見る。
Notificações de mortes por causa indeterminada disparam em cartórios do Rio
Especialistas culpam a falta de testes para coronavírus em pacientes com suspeita da doença.
Por Jornal Nacional 28/04/2020 21h03 Atualizado há uma hora

つまり、COVID-19と思われる病気で死亡した人がいても、必ずしも検査が行われないので、COVID-19と断定できずにより一般的な重症急性呼吸器症候群 (síndrome respiratória aguda grave, Severe acute respiratory syndrome = SARS)や、不特定呼吸器疾病 doença respiratória indeterminadaとかで記録されていることがある。
”残念なことに記録されているCOVID-19による死者数より約50%多いのではないかと思われる、とFiocruzの研究者は言った。”

そこで表のブラジルの死亡数を50%よりもっと潜在していると仮定して倍にしてみたのが、
スペインブラジル日本
10万人あたり死亡数32.464.280.28
である。
これでわかるように、それでもスペインには届かない。

このデータと比較できるように、さらに7日遡る2020年4月20日のものだが、ヨーロッパの3つの国の人口10万人あたりのCOVID-19死亡数を書き写しておく。

人口1023万人のスウェーデンでは4月20日現在、新型コロナウイルスの感染者数が1万4000人を超え、1580人が死亡している。
4月20日現在、人口536万人のノルウェーでは、新型コロナウイルスの感染者数は7100人を超え、181人が死亡。
人口550万人のフィンランドでは感染者数が3800人を超え、94人が死亡している。

10万人あたり死亡数
スペイン32.46
スウェーデン15.44
ブラジル(2倍)4.28
ノルウェー3.38
フィンランド1.71
日本0.28

スペインブラジル日本は2020/4/27のデータ
スウェーデン、ノルウェー、フィンランドは2020/4/20のデータ
ブラジルのみ故意に2倍にしてある

スウェーデン政府は国民に速やかに集団免疫をつけさせる政策をとっているそうで、一方スペインは政策を議論する以前に感染が爆発して、否応なく集団免疫をつける方向になってしまったといって良いだろう。

2020年4月28日

口座のない人に入金する技ブラジル編

前回、ブラジル連邦政府のコロナウィルス対策低所得者救済プログラムは、Auxílio Emergencial(緊急援助)と呼ばれ、特に政府のデータベースに名前が載ったことのない非正規労働者がどのように申請して登録されるのか書いた。

今回は、銀行口座を持たない多数の人々にどうやって現金を支給するかの問題である。
現在日本に全く銀行や郵便局に口座を持たない人がいるのかどうかは知らない。
しかし今回ブラジル連邦政府は、銀行口座を持たない数千万人に援助金を渡さなければならない。

既に政府の福祉関係データベースに登録されていて、援助金受給資格のあることが証明されて、しかも2つの政府系金融機関、つまりBanco do Brasil(BB ブラジル銀行)とCaixa Econômica Federal(CEF 連邦貯蓄銀行)に既に口座がある個人には、確か4月10日までに振り込みが行われた。
そして既に連邦政府の福祉プログラムBolsa Famíliaを受け取っている人は、そのカードを使って従来の受取日にこの緊急援助金の受け取りができる。
だから以上のグループは支給に問題はない。

既存データベース及び今回のスマホやPCによる申請登録によって援助金受給資格のあることが証明されたが、上記2つの銀行に口座がなかったり、申請登録時に他銀行を指定しなかった人にどうやって援助金を配るか?
連邦貯蓄銀行は、そのような人のために、Poupança Social Digital(社会デジタル貯金)口座を強制的に作り各個人に割り当てた。

デジタル口座へのアクセスは、CEFのスマホアプリ"Caixa Tem"を使わないとできない。
スマホアプリがCEFのサーバーと通信確立できれば、バーコードのある請求書の支払いや、無料回数に制限はあるが他銀行の口座へ振り込み、そして下に説明するカードなしでATMから現金引き出しをするときに必要なコードの入手ができる…、はずである。

しかしアクセス数が半端でないため、通信確立ができない。
何日もトライし続けて、早朝の過疎時間にようやく通信できたという報告が多い。
通信に成功しても、対話式の操作全部が終わって、振り込みや支払いの証明書や引き出しコードを受け取らないうちに切れたらやり直しである。
地方によってつながりやすさが違うらしいが、何日もつぶすことのある苦行である。

そして銀行口座など一切持っていないから、とにかく現金をおろしたい人は、多分もう一つの苦行が待っている。

CEFは、デジタル貯金口座からの現金引き下ろしスケジュールを次のように発表した。
4/27 誕生日1月2月、4/28 誕生日3月4月、4/29 誕生日5月6月、…
その日だけ引き出せるのではでなく、その日から引き出せるものと思われる。

銀行カードも生体認証もなしでどうやって現金を引き出すかというと、件のアプリで現金引き出しを選択すると表示されるコードをATMへ打ち込むという方法が使われる。
数千万の受給者の複数回の取引を区別しなければならないから、コードは10桁以上であろう。

ざっと計算したところ、デジタル貯金口座を持つ個人の半数が現金引き下ろしを選択した場合に1千万人、その12分の2が一日に集中すると仮定すると、ブラジル人口2億1千万人の0.8%にあたる167万人が全国のCEF支店のATMやCEF業務を一部代行している宝くじ売り場へ集中することになる。
人口百万人の都市で8千人である。
ATMや宝くじ売り場窓口が150あるとして、8時間で払い出すとなると1台1時間で6.7人が計4000レアルを引き出す勘定になる。
60分割る6.7は9分である。
援助金引き出し目的でなく、他の一般業務のためにATMを使う人も多いから一人に割ける時間はその半分として4, 5分であろう。
全員が機械操作に迷わなければ可能な気はする。
でもそれは全員があらかじめアプリでコードを手にしていてATMに打ち込むだけという状態であったらの話である。

第一関門は他銀行振替を選択した人と同様、スマホアプリCaixa TemでCEFのサーバーへ接続して引き出しコードを入手することであるが、インターネットにあふれる苦情をみると、朝5時から7時位までが一番つながりやすいが、それでも皆さん何日もかかったようである。

どうも雰囲気では、何時間も何日もアプリがつながらなくて頭に血が昇っている受給者が、大勢で銀行支店に押しかけて大行列を作って社会的距離など全く無視して、窓口で受け取ろうと押し問答になる予感が強い。

既に年金を受給している人はこの援助金を受け取る資格はないから、明日からの支払日に機械操作に全く疎い老年者はいないはずであるが、銀行の機械など一度も触ったことのない人も多いだろうし、読み書きができない人もある程度(2018年15歳以上人口の6.8%)いて、そのような場合には助けてもらうために家族同伴で行くことになり、行列人数は1人でなく2人が並ぶことになるから、密集をどれだけ避けることができるか疑問である。

もう一つの心配はデジタル詐欺である。
打ち込むだけでお金がおろせるコードをなんとかして盗もうとする悪意を隠した、例えば「列に並ばなくても引き出し時刻の予約ができる登録をするからここへコードを入力せよ」とかいった、一見お助けのメッセージなどが氾濫して、騙される人が続出するような危険は一杯である。

ここから4月27日夜に書いている。
新たにわかった新事実は、現金引き出しコードの有効期限はスマホアプリCaixa Temで取得してから2時間きりということなので、安全性はより高いものの、早朝家で取ってから昼食後にゆっくりATMへ向かうというような融通はきかない。

なお協定によって、スマホにクレジット残高がなくてもどの携帯会社も無料で接続できることになっている。
しかし、スマホに送られる確認コードの関係で、1台のスマホでは一人分のデジタル口座しか取り扱うことができないという不便がある。
後からCEFのドキュメントによってわかったのだが、セキュリティの理由で1台のスマホには2つのCPF、つまり2つの口座まで登録できる。
緊急援助は1世帯に2人まで受け取ることが認められているので、家にスマホが1台しかない場合でも大丈夫で、一応整合性は取れている。

予想した通り、ブラジルじゅう各地のCEFの支店には、アプリでは全くアクセスできないから現金引き出しコードを取れないとか、申請したがいつまで待っても「調査中」で許可不許可の返事が出ないとか、そもそもガラケーしか持っていないとか、スマホアプリに不満たらたらの人々が、支店でなんとか引き出しをしようと長い行列を作っていた。
ペルナンブコ州の州都レシフェでは大雨が降って道路が水浸しになったので、傘を差して、くるぶしまで水に浸かりながら行列する人々が気の毒であった。

一方人々の苦労の張本人のCEFは、スマホアプリのアップグレードはときどき行っているようだが、アクセス数に対して明らかに非力なサーバーやアクセス容量の増強とか、受給者向けの親切な説明とかの努力をしているようにはとても思えない。
誰もクビにならない国営企業の、非効率の極みである。

2020年4月19日

ブラジル版マイナンバーはCPF

ブラジル連邦政府のコロナウィルス対策低所得者救済プログラムは、Auxílio Emergencial(緊急援助)という。

  • 連邦政府の社会単一登録―つまり社会福祉を受けるための基本的登録を済ませている
  • 非正規労働者や失業者
  • 個人極小事業主(Microempreendedor individual)や社会保障個人負担者
以上の中で、個人や家族所得がある基準に達せず、既に年金や失業保険のような連邦政府の他の恩典を受けていない18歳以上の者に最低給料の約1.7ヶ月分を支給するというものである。
4千万人とか5千万人とか言われている受給資格者をどのように把握して、同一人二重支払いや支払い漏れが起きないように、しかも申請や受け取りのための密集が起きないようにするかが運用の課題である。

社会単一登録や個人極小事業主の登録が済んでいる者は、この時点で識別と所得の捕捉ができているから良い。
問題は非正規労働者である。
ブラジルの非正規労働者とは、社会保障に登録がなく当然負担もしない自営者や、正式な労働契約のない従業員、つまり社会保障にも労働省にも無縁であり、社会福祉も受けていない、連邦政府とギブもテイクもない労働者のことである。
この範疇の人たちの登録は何と、インターネットサイトやスマートフォンアプリで自己申告をするという。
一人がいくつもの偽名を使って、援助金を多重に受け取ろうとする悪だくみをどうやって排除するのか?
どうやって調査したのかは不明だが、既に犯罪者が塀の中から数万件の申請を行ったとかの話がある。

ブラジルで個人を登録する手段はいくつかある。
  • RG 一般登録(Registro Geral)内務省・州政府が管理する身分証明書番号、日本の戸籍に近いもの
  • CPF 自然人登録(Cadastro de Pessoa Física)日本の国税庁にあたる経済省連邦歳入庁が管理する、マイナンバーに近いもの
  • 選挙人登録 選挙管理委員会にあたる選挙裁判所が管理する
  • 軍務証明書(男子のみ)防衛省が管理する兵役義務履行証明

この中で特に近年最も一般的になり多用されているのはCPFである。
CPFはxxx.xxx.xxx-xxフォーマットの11桁の数字である。
日本のマイナンバーに近いものと書いたが、それほど極秘のものではない。
契約書などには必ずこの番号が記載されるし、買い物をした商店などの顧客名簿には、一意な個人識別符号として気軽にオープンに使用されているから、全く秘密ではない。

だから悪用されることもよく起きた。
顔見知りでもなく、どこに住んでいるかもわからない同姓同名の不届き者が、金を借りて踏み倒すためにCPFを借用してなりすまされて、そのため警察に被害届を出してCPFを抹消・新規入手したのだが、ときどき悪事を繰り返されるのでそのたびに警察に呼ばれていた知人がいる。
でも近年はすべて照会がオンラインになっているから、そのような抹消されたCPFでなりすましされるような件は少なくなっているはずだ。

昔のブラジル人は旅行や一人歩きをするような年齢になると、身分証明書つまりRGを取得して、さらに年齢が進んで銀行口座開設や労働のような経済活動のために必要になってから、CPFを取る形が多かったと思う。
現在は出生届を行うと出生証明書にすでにCPFが割り振られて印刷されているらしい。
そしてこの番号は一生使用されることになるのである。

今回の援助金支給では、CPFが有効であることが必須となっている。
所得税申告義務がある者がそれを怠ると、CPFは効力停止(サスペンド)になる。
このため申告者の最新の所得を調査できる。
投票が義務であるブラジルでは、投票を行わなかった者のCPFが罰金を支払うまで効力停止となる。
これを正常化するまで援助金を受け取ることができない。

CPFが有効でないと、パスポートを取れない、公務員試験や統一入試などを受けることができない、連邦政府の住宅融資などを利用できないなど様々な不便が起きるのだが、もともと非正規労働者であるくらいだから、そもそもそのようなものを必要とせず困ることがなかったから、CPFが停止されていても全く平気であったのだ、、、今までは。
こういった人々が全国で1千万人、実に人口の5%くらいはいるということで、この連中が一気に税務署に押しかけるような密集密接大混乱を避けるために、連邦歳入庁は、無投票によるCPF効力停止の縛りを撤廃して、これが原因の停止CPFをすべて有効と処理した。

日本でもこれと似たような状況がある。
住民台帳に登録されている市民に10万円を支給するようだが、マイナンバーを使えば難なく解決するはずだと思うが、違うのか。
マイナンバー・カードの普及率が15%位しかないと聞いたが、カードを所有する利点が全く無い、つまりマイナンバーのシステムを有効に利用できていないのではないか。
宝の持ち腐れではないか。