2021年4月30日

コロナワクチン第1回接種

ブラジルの新型コロナ感染症による1日あたり死亡数は、不名誉な世界第1位をしばらく続けている。
死亡数の過去7日の移動平均は、4月20日時点で約2,800人である。
4月前半には1日3千人を超える日があった。
4月27日になると、約2,340まで下がっていて、果てしない上昇は終わり、第2波の下降期へ入ったと判断して良いかもしれない。

そして4月21日のニュースによると、ブラジルで少なくとも第1回接種を受けた人の割合は、ようやく総人口の13%に届いたところである。
4月27日には約14%近くなっていたから、第1回接種の速度は、1週間で人口の1%のペースで進んできている。
しばしばワクチン供給が途絶えて、接種が中断されることも多く、50%上昇するのに50週間とは非常にもどかしい。

ブラジルの予防接種についての、各レベル行政府の役割分担はこうなっている。
連邦政府がワクチン原液輸入の交渉をして、 輸入された原液から国内の保健医療機関で調製された製品ワクチンは、各州に分配するため、それぞれの州都へ送られる。

州都にある州政府が州内各市への配布をするときには、まず各地方の中核都市へ送られ(ここまでは概ね空路)、近隣各市の担当者がそこまで自動車で取りに行く、といった形である。
国土が広い国で考えられる、ごく自然なやり方といえる。

そのワクチン流通の最終部である、ミナス・ジェライス州のわが町のワクチン接種システムについて書く。

まず市民である接種希望者は、市のサイトで登録をする。
識別の一意キーは、ブラジルの「マイナンバー」にあたるCPFが使われる。
つまり少なくとも現在は、わが町でワクチン接種を希望しない人は、ここで登録しなければ、決して呼ばれることはないと思われる。

もしも接種希望者が非常に少なくて、ワクチンが余るのに集団免疫ができない恐れがある、といった場合には、半強制的な招集が行われることになるのかもしれないが、今のところワクチン供給が遅く、コロナ流行は最盛に近い勢いのため、予防接種を望む人が大勢であるから、その心配はまずいらないだろう。

しばしばワクチン供給が途絶えて、接種が中断されることが多いため、市保健局は一週間先のワクチン受領の予想すらできない。
そのため、携帯電話のSMS(ショートメッセージサービス)によって、 ⽇時場所の指定を受け取ったのは接種前日の午後になってであった。

ワクチンの種類はおろか、時間も場所も選ぶことができない。
市内に3箇所ある接種会場の中で、セントロにある一番遠いところに割り当てられてしまった。
車で行って適当なところに駐車して、少し歩くことになる。
持参するよう指示されたものは、写真付き身分証明書と予防接種カードであった。

市保健局は密を避けるために、指定時刻よりずっと前に会場に行くなと念を押している。
5分前に着いた。

こうして書き出してみると、わが市のシステムは、下に書くような他の市と比較してかなりしっかりしたものと思われる。
日時場所を自分で指定できないのは少し不満だが、雑な指定のため待ち時間が多くなるのも嫌だ。

日時場所を自分で指定できるようにするとなると、システムは非常に複雑になるだろうし、米国や日本で行われるような街の医院や薬局でも受けられるようにすることは、ワクチンが余ったときに無駄になるし、データ集計も時間や漏れの心配が出てくるだろう。

会場入口でまず、係員が口頭で接種予約のない人をチェックして、会場に入れさせない。
会場は市のスポーツ施設の一つ、テニスクラブの体育館で、大スペースを2つに分けて、接種場と、急性の副反応に備えて、間隔を開けて椅子が並べられた接種後休憩場となっている。
アーチ型大天井だけで、壁がない部分が多く、換気は非常に良好だ。

コンピュータ端末のある登録チェック窓口が、3つ並んで通路に設置されている。
本人と写真付き身分証明書とシステムに記録された接種予約を正式に照合する。
行列は3人のみだった。

接種員がいる接種テーブルが12ほどある接種場への行列は待ちがなく、すぐに空いていたテーブルへ行くよう指示された。

各テーブルにはワクチンの入った保冷ボックス、接種済み登録入力用のパソコン、注射器やアルコール綿などが置いてあり、看護師が一人で担当している。

予防接種開始当初ときどき起きた「ワクチン空打ち事件」を防ぐためだろう、決められたプロトコル(手続き)がある。
  • 薬瓶を見せて、「あなたが受けるワクチンはxxxxで、nミリリットルです」と宣言する
  • 目の前で注射器に薬液を吸引して、「nミリリットルです」と復唱する
  • 注射する
  • ピストンが押されて空になった注射器を見せる

といったものである。

そして、テレビのニュースでみた接種風景と同じように、ほとんどの人が付添人か本人がスマホで接種場面の写真や動画を撮影している。
いちおう担当看護師さんに、写真や動画を撮ってよいか聞いたら、すぐに肯定したことからわかるように、プロトコルの一つになっている。

現在ブラジルで承認された上に流通している2種類のワクチンは、中国シノバック社の商品名「コロナヴァッキ」と、アストラゼネカであるが、1回め接種時にどちらが当たるかは指定された会場に行ってみないとわからない。
当日会場に着いて、ワクチンの種類を見て「これは打ちたくないから、今回はキャンセルしてもう一回予約する」というわがままを聞いてくれるかどうかは定かでないし、そのような人が今までいたかどうかも不明である。

この日この時間この会場では、アストラゼネカであった。

注射後、あたりを観察しながら休憩場の椅子に座って、しばらく休んでから帰路についた。

副反応であるが、当日翌日くらいに、腕を動かしたとき接種部分に軽い痛みを感じたくらいで、インフルエンザの予防注射と大差ないと思えた。
しかし同じワクチンで、 発熱したり体がだるくなったと訴えた知人もいた。
アストラゼネカとジョンソン&ジョンソンのワクチンに起きうるという血栓症は、接種後2週目に多発するというから、今その時期にあたっているが、宝くじの確率だろう。

接種翌日、市役所のサイトで照会したら、1回め接種済みとしっかり記録されていた。
アストラゼネカの2回め接種は4週間から12週間の間に行われるというから、2回めの日時場所指定が携帯電話のSMSに届くのをじっと待つことになる。

隣市の予防接種システムはもっと雑で、x月x日には、yyyy年生まれの氏名アルファベットAからLの人はA会場で、MからZの人はB会場で、といった具合である。

リオデジャネイロ都市圏のある市のシステムは極めて雑で、x月x日には65歳から67歳までの人ですから来てください、と広報するだけであったという。
それですら既に手持ちのワクチンが不足する人数を軽く超えている上に、住所確認が求められなかったため、近隣のよその町からも話を聞いた人が集まってしまい、密になりながら半日待ったのに、ワクチンがなくなったというので無駄足で帰っていった人も多く出た。

リオデジャネイロ都市圏には、治安に問題がある市が多いのだが、このような運営が滅茶苦茶な市に住んでいなくてよかったとは思う。

2021年3月23日

フランスもブラジルも「寒う」

 
いや全く大したことはないのだが、気がついて面白いと思ったので書こう。

現在ブラジルは、あのグダグダのWHOにすらも世界の脅威になると心配されるくらい、Covid-19の感染者と死亡者の増加がひどく、もっと力を合わせろと警告を受けている。

テレビのニュースで、フランスでも再び市民の外出制限が敷かれると、パリの街の情景が流れた。
パリの救急車の車体にも"SAMU"と書いてあるのを見て、あっブラジルと一緒だ!と思ったので調べてみた。

ブラジルでは「サムー」と後ろの音節に強勢がある。
長音ではないが心持ち長くなるようである。
"Sam"と混同しないようにサムーとここでは書き表わそう。
フランスでどのように発音するのかは不明だ。

フランスのサムー = Service d'aide médicale urgente
その英語訳 = Urgent Medical Aid Service
その日本語訳 = 緊急医療援助サービス

ブラジルのサムー = Serviço de Atendimento Móvel de Urgência
その日本語訳 = 緊急モバイルケアサービス
病院に着くまでに車内で緊急処置を進められる設備を備えた救急車のことである。

ブラジルのサムーをフランス語に訳したら = Service de soins mobiles d'urgence
略語(頭文字)は一緒でも、元の語は確かに少し違いがある。

さらにわかったことは、サムーには国際シンボルがある。
そのためブラジルの救急車もフランスの救急車も、車体にSAMUと大書してある上に、六角アスタリスクを背景に、杖に巻き付く蛇のマークをつけているから、遠目には全く区別がつかないのだ。

2021年3月7日

二部落ちしたデング熱

感染の心配の少ない、食事を用意したり会食することができる、三方の風通しが良く開放した広いスペースが田園地域にあるので、ときどき週末に会うほぼ唯一の親戚家族がある。
その者と一緒に働くトラック運転手が体調不良になった。
2週間前のことだ。
風邪のような症状と聞いて、まず恐れるのは当然新型コロナ感染症である。
これは検査結果がわかるまで会わないほうが良いかなと、一週間考えていた。

結果がすぐにわかる簡易検査は陽性だったので、PCR検査の結果を待った。
こちらは陰性だった。

最近町で問題になっていることに、簡易検査、つまり抗体検査キットの精度が悪く、これで陰性と出たので普通の生活に戻ったところ、実はPCR検査の結果は陽性であり、それが判明するまで周りの人にウィルスをばらまいてしまうという困った状況が出ていることである。
市の衛生当局は、キットを配布した保健省へ返却するとか言っていた。
まあこんなゆるゆるだから、日本の人の目から見ればブラジルでコロナが蔓延するのも当然だと思われるかもしれない。
うん、その通り、確かに返す言葉はない。

このトラック運転手の場合は通常問題になるケースと逆で、抗体検査では陽性、PCR検査では陰性となったところが異なる。
他の病気の検査もしたところ、デング熱であったことが判明した。
みんなの口々で異口同音に聞かれたのが、「ああ、デング熱で良かった」という言葉だった。

6年前の昔、「デング熱とソファと女性の関連性」という題の記事を書いたが、その頃に恐れられていたデング熱が、「なーんだ、デング熱か、安心した」と言われるようになってしまった。

デング熱は、病気のチャンピオンシップで二部リーグ落ちしたようなものだ。

2021年3月6日

ブラジルがコロナ死亡数1位になる日

米国はワクチン入手と接種に全力で取り組んでいる。
国内に複数のワクチン開発生産メーカーがある上に、政府の呼びかけに応えてライバル会社も巻き込んで協力して、ワクチン生産能力を上げている。
バイデン大統領は約3ヶ月先の5月末までに、米国の成人にワクチン接種を終えるつもりだと発言した。
そして現在の1日あたり接種人数は約2百万人で、これまで人口の15%が接種済みだという。

一方ブラジルはどうか。
本ブログの一つ前の記事で、ブラジル連邦政府はワクチンの購入交渉が下手で、ワクチン入手が非常に困難なことを書いた。
今日(2021/3/5)のニュースは、保健省の3月ワクチン購入予定数が4千5百万から3千7百万台まで下がったと言った。
それもまだ未契約だったり未承認だったりするワクチンを含んでいるという、不確実な数字である。

毎日発表される24時間の接種数を見ているが、一日あたり25万から30万くらいである。
それも連邦政府の五月雨式供給が途絶えると、接種も中断する。
2021年3月5日現在人口の3.75%が少なくとも1回、1.2%が2回めの接種を完了している。

以上の数字と国連発表の人口統計から計算してみた。
2020年推計で米国の人口は3億3100万、ブラジルの人口は2億1256万である。

米国もブラジルも一番優先順位が高いグループは医療従事者、とりわけコロナ患者に直接接触する人たちであるが、その人数は不明なため、高齢者から接種が始まったものと仮定する。
そして接種のペースは上の数字がこれからも続き、接種を拒否する人はいないとした。

65歳以上の人口と接種が終わる予定日
米国 55,049千人(総人口の17%)2021/3/7
ブラジル 20,389千人(総人口の10%)2021/4/15

18歳以上の人口と接種が終わる予定日
米国 257,510千人(総人口の78%)2021/6/16
ブラジル 158,962千人(総人口の75%)2022/7/21

確かにバイデン大統領の掲げた目標は、少し頑張れば半月早めて達成できそうだ。
しかしブラジルでは同じ結果となるまで、1年以上も余計に年月を要するということだ。
最初に接種した人たちの免疫が切れてしまい、次の接種サイクルに入ってしまうだろう。
永遠のワクチン接種キャンペーンになる。

現在までの新型コロナ死亡数
米国 520千人(世界1位)人口10万人あたり157人
ブラジル 261千人(世界2位)人口10万人あたり123人

まだ今のところは単位人口あたり死亡数で比べると、米国の状況はブラジルより深刻だといえる。
しかし米国はあと3ヶ月もすれば18歳以上の国民皆接種、つまり国民の78%がワクチンによる免疫を得て、国全体が集団免疫獲得のレベルに達する。
そうすれば死亡数増加もおのずからゼロに近くなってくるだろう。

かたやブラジルの単位人口あたり死亡数は米国とかなり近くなっているし、ワクチン接種が進むまでブラジルの死亡数減少は減速しないとなると、実数でも米国に追いつくことは間違いない。
ブラジルの接種速度が一日100万であったとしたら、2021/8/2に18歳以上の人口に接種が完了するのであるが、奇跡を妄想してもしかたがない。

米国は科学無視のトランプ大統領が、科学重視のバイデン大統領に代わり、流れが一気に変わった。
ブラジルはトランプ大統領に薫陶されたボルソナロ大統領が、思想を変えない限り2022年末まで相変わらず科学軽視・無視を続ける見込みであることが、両国の科学力・生産力の差を、さらに拡大していく未来が心配される。

しかし2022年下旬の大統領選挙で再選を目指すとなると、急速に方向転換する可能性は非常に大きい。
現実に、連邦政府がワクチン入手にもっと力を入れないと、地方政府が共同でワクチンを直接購入する動きが急速に形成されていて、連邦政府は保健政策の主導権と国民の称賛を持っていかれる可能性があり、大統領はそれを望まないだろう。
だらだら長びくコロナ流行のもとで、経済を止めたり緩めたりを繰り返しながら補助金を小出しにする消耗戦より、流行を一気に停止してから経済全開にするほうが政府の税収を増やし出費を減少するという認識が、もっと広まり力を得ると良いのにと思う。

2021年3月2日

富者のワクチン、貧者のワクチン

 各国の新型コロナ感染症対策は、その国で利用可能なリソースによって決まるから、ある国の治療法は、必ずしも隣の国の治療法と同じだとは限らない。
新型コロナのワクチンであっても事情は同様だ。

下の表は全ての認可されたりその候補のワクチンを上げたのではなく、現在ブラジルで話題に上がるものだけである。

番号開発者名称商品名開発国種別特徴
1AstraZenecaウィルスベクター2回接種、冷蔵保管
2Johnson & Johnson蘭/米ウィルスベクター1回接種、冷蔵保管
3ModernaRNA2回接種、冷凍保管
4Pfizer/BioNTech米/独RNA2回接種、冷凍保管
5Bharat BiotechCovaxin不活化ウィルス
6Gamaleya研究所Sputnik Vウィルスベクター
7SinovacCoronaVac不活化ウィルス2回接種、冷蔵保管


現在ブラジルで認可を受けているワクチンは3種である。
いずれも昨年からブラジル国内で第3フェーズ試験を行ったため、以前の法規に則って、ブラジル衛生監視庁(アンヴィザ ANVISA - Agência Nacional de VIgilância SAnitária)より認可された。

  • 1.アストラゼネカ(英国)
  • 4.ファイザー/ビオンテッキ(米国・ドイツ)
  • 7.シノバック(中国)


1.アストラゼネカは、ブラジルの医学衛生分野で権威実績のある、オズワルド・クルス財団(フィオクルス FIOCRUZ)と提携して、年内の国内生産を目指している。
現在は緊急使用許可で、フィオクルスが生産を開始するまでは、中国工場からのワクチン原液の輸入と、インド工場からの製品ワクチンの輸入に頼っている。

4.ファイザー/ビオンテッキは、初めてブラジル国内で完全使用許可を得たワクチンであるが、連邦政府は商談に手こずっていて、契約に至っていない。
2020年半ばにファイザーブラジルがブラジル連邦政府に契約を打診したのだが、副反応が出たときの免責条項にブラジル政府が同意しなかったので、提案はそのまま放置された。
免責条件に同意しなかった国は、ブラジルの他にはベネズエラとアルゼンチンだけだったというのだが、ニュースで一回聞いた限りで、以降確認していない。

7.シノバックは、サンパウロ州立の医学衛生研究機関ブタンタン研究所(Instituto Butantan)が第3フェーズ試験を行った。
ブラジルで権威のある研究所をパートナーとしたので、情報開示に問題がありがちな共産圏ワクチンであるが、検証はしっかり行われたと信じたい。
現在は緊急使用許可で、もちろん原料は中国に頼っている。

1.アストラゼネカも7.シノバックも中国頼みであるが、ブラジル大統領派の議員や大臣が中国批判ばかりするので、ブラジルへのワクチン原料が妨害されて遅れているのではないかと噂されていた。
中国の返答は事務手続きに時間がかかるという理由であったが、外交のことであるから隠れた本心はわからない。

ブラジルで第3フェーズ試験が行われているものはあと一つ、2.ジョンソン&ジョンソン(米国)があるが、ANVISAへの承認申請が行われていない。

これまでの法規は、ブラジルで治験が行われたワクチンでないと国内使用は認可されなかったのであるが、あまりにもワクチン入手に困難があるため、連邦議会は認可条件を緩和する立法に取り組んでいる。
例えば、科学的に信用のおける国の保健機関が認可したワクチンについては、試験結果を引用して簡略に許可するといった方策である。

そのような流れで未だブラジル衛生監視庁から認可されていないが、連邦政府が契約しようとしているのが次のワクチンだ。

  • 5.商品名コバクシン Covaxin(インド)
  • 6.商品名スプートニク・ブイ Sputnik V(ロシア)


米国は自国で複数のワクチンの開発が行われているので、全く比較対象にはならないだろうが、現在まで3種のワクチンが認可されている。

  • 2.ジョンソン&ジョンソン(米国)
  • 3.モデルナ(米国)
  • 4.ファイザー/ビオンテッキ(米国・ドイツ)


ブラジルのワクチンリストと米国のワクチンリストを比較すると、ワクチン生産国のコントラストがくっきりしている。

ブラジルにはブラジル独自の事情がある。
インディオはこれまで他の文明から隔離されてきたため、いろいろな感染症に免疫を持っていない。
インディオが、医療従事者や高齢者と並ぶ予防接種優先順位に位置づけられる理由である。

アマゾナス州の保健部門で働く人がインタビューで言っていた。
インディオ部落へワクチンを届けるのは並大抵でない。
川船で6日川をさかのぼってから、小さいボートに乗り換えてさらに1日かかるというような辺鄙で不便な場所がある。
辺境地では電力事情が悪いだけでなく、電気自体が通っていない場所もある。
国土が広いため空路でも陸路でも、冷凍輸送するには機材や燃料が高くつくし、時間が足りない。
マイナス20度冷凍保存のワクチンなど持っていけるわけがない。

そのような事情で、90%を超える有効性を誇っても、取り扱いが非常に面倒なワクチンは、手元にあっても十分に役に立ってくれない可能性は大きいのだ。
日本のようにワクチン全量がファイザーであるような国を羨ましがっても仕方がない。
接種を受けるのは無料だし、地元にあるワクチンで満足しなければバチがあたる。

ブラジルは、規則に従って国内で第3フェーズ試験が行われて、50.38%という際どい数値ながら、WHOが基準と定める必要な数字を叩き出したから許可したのである。
中国製ワクチンを闇雲に入手するのとは違う。

今のところブラジルで入手可能なワクチンの中で、唯一の西側先進国製のアストラゼネカにしても、政治的事情はあるもののEU諸国では不利な情報があふれて、できるなら避けたいワクチンナンバーワンになっているようなのだ。
ブラジルなら打ちたいワクチンナンバーワンになれるぞ。

インフルエンザワクチンと同じようなもので、発病しても入院して重症に至る確率が低くなれば、個人にとっては儲けものだし、医療機関が機能不全に陥ることはないから、社会全体が安心できる。

まあそれにしても、BRICSの中でもワクチンを生産しているのは中国、ロシア、インドががんばっているのに、熱帯病研究に強いはずのブラジルが、治験と生産の提携に過ぎないのは残念である。
計画と信念、何よりも予算が足りないのだろう。

2021年2月27日

コロナ禁酒と外出禁止令

lei seca - 禁酒法
toque de recolher - 外出禁止令

よその州や市で、夜間外出禁止令やアルコール販売禁止令などが出ているというニュースは、最近よく耳に入る。
お気の毒なことに、と人ごとのように感じていたものの、わが町も強力な規制がかかった。
病床を増やしてもすぐに足りなくなる医療崩壊状態だから、しかたない。

2021年2月23日から少なくとも一週間、20時から翌朝5時までの、緊急要件に当たらない外出と、24時間つまり少なくとも7日間ぶっ続けのアルコール飲料販売禁止が、市条例で施行されている。

ニュース記事の見出しが、"Lei seca e Toque de recolher"となっていた。

Lei seca は、文字通りだと「干上がる法律」ということだろうが、通常アルコール販売が禁止されている状態を表している。
米国の「禁酒法」は簡単に調べてみる(Wikipedia)と、合衆国憲法修正18条のもとで、アルコールの製造、販売、輸送を、1920年から1933年もの長期間禁止した法律である。
原語は"Prohibition"と簡潔である。

今回のアルコール販売禁止は、立法府による法律ではなく、行政府である市役所によるから、適用地域は市域に限られている。

Toque de recolher をポルトガル語辞書で調べると、「晩鐘、消灯の鐘」と書いてある。
toqueは鐘などの鳴る音のことで、recolherは帰宅するという動詞であるから、トッキ・ジ・レコリェルとは元々は、現在もあるかどうか知らないが、日本の学校で鳴る下校チャイムのことであろう。
toqueには楽器の演奏の意味もあるから、下校時刻を知らせるための、ドヴォルザークの「家路」のような、聞いたら自然と家に帰りたくなる音楽のことを toque de recolher と呼んでもよいだろう。

しかし帰宅時刻である20時だけでなく、20時から5時までの間に toque de recolher という言葉を当てるのなら、その時間帯に外出するなということだから、外出禁止令としておこう。

今晩のニュースを見ていたら、サンパウロ州政府は、全州で金曜日の2月26日から3月初めまで、23時から翌朝5時までの外出禁止を行うそうである。
23時からと20時からをくらべると、特にレストランやバーのような外食業種にとっては、全く大違いである。

先週2月17日から、熱心な信徒が節制を行う四旬節に入っているため、アルコールなど販売禁止にしても、市民の抵抗が少ないとでも思ったのだろうか。
レイ・セカ前日は、駆け込み酒類購入のため、スーパーなどが密状態になる逆効果がみられた。

夜8時を回ると、これまでの深夜のごとく辺りが静まり返るのは、新鮮な感覚だ。
バスも夜8時には終点に着いているし、通りを走る自家用車も商用車もない。

特筆すべきは2021年2月25日の夜だ。
コロナのために2021年までずれ込んだフットボールのブラジル選手権(Brasileirão)の最終節で、人気クラブの一つ、フラメンゴが2年連続優勝した。
花火は打ち上げられたが、普通の年だったら熱心なファンが通りに繰り出して、クラクションを鳴らしながら走り回る、にぎやかな自発的優勝パレード(というか馬鹿騒ぎ)が全くないので、静かすぎてしまらない、奇妙な優勝の夜だった。
この静寂さは通常のときはなかなか得られない、とても貴重な時間だ。

2021年2月23日

コロナ気になる薬

「コロナ治療」で広がる輸入 未承認薬、厚労省「安易な服用控えて」
時事ドットコムニュース 2021年02月21日07時05分

ニュースに接したときにすぐ理解できるように、最近ニュースで見ることのあるコロナ治療薬、あるいはその候補をここに書いておく。

当記事による、日本で承認されているコロナ治療薬-医師の処方が必要

  • レムデシビル - en. Remdesivir - po. Remdesivir  抗ウィルス薬
  • デキサメタゾン - en. Dexamethasone - po. Dexametasona ステロイド系抗炎症薬

ブラジルで承認されたことのある・されているコロナ治療薬
  • ヒドロキシクロロキン - en. Hydroxychloroquine - po. Hidroxicloroquina 抗マラリア剤
  • アジスロマイシン - en. Azithromycin - po. Azitromicina 抗生物質
  • イベルメクチン - en. Ivermectin - po. Ivermectina 駆虫薬

以上が全てではないと思われるが、ブラジルのボルソナロ大統領、米国トランプ前大統領の思い込みなどから強力に推すものも含め、ブラジル保健省が「初期治療」"tratamento precoce"に使用できるとみなしたもの。
報道によると薬効の科学的裏付けが存在しないものは、現在は保健省の正式文書からその記述は抹消されているらしい。

注目されているが日本では承認されていない薬剤-つまり使ってみたくなる薬
  1. ファビピラビル - en. Favipiravir - po. Favipiravir RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤
  2. イベルメクチン - en. Ivermectin - po. Ivermectina 駆虫薬

1番目は商品名アビガン Aviganとしてよく知られているものである。
RNAウィルスである新型コロナウィルス (SARS-CoV-2) の増殖を阻害する働きが期待されるが、まだ決定的な効力は持たないようであって、そのためコロナ治療薬として承認されないのだろう。
想像である。
この薬についてブラジルでコメントされたのを聞いたことがない。
当然だが、ブラジルでこれまで使われていて、そのため入手しやすい薬剤がよく話題に上がる。

2番目であるが、報道記事によると日本人が個人輸入を行って自己処方して服用した例がある。

ブラジルの話である。
ある知人は予防と称して、毎月1回服用している。
他の友人は、風邪をひいたかなと思ったら、ということは何らかの症状が出ているということだが、重症化しないように服用するという。
これについて、ある日公共診療所の内科医に聞いたことがある。
予防のため月一で服用することは意味がないが、罹り初めのときに服用することは肯定した。

果たして効果があるのかはわからない。
実証が行われていないからだ。
ブラジルでイベルメクチンが、新型コロナ感染症患者の内どのくらいの割合で処方されているのかはわからないが、これを服用したら全く重症化しない、という仮説が正しかったとしたら、ブラジルでコロナによる死者数がこれほど伸び続けるということはないのではないか。
科学的な実証が待たれる。