2011年10月26日ブラジル連邦最高裁(Supremo Tribunal Federal)は、法学部(direito)を卒業した法学士を対象にブラジル弁護士会(OAB - Ordem dos Advogados do Brasil)が実施する弁護士資格試験が有効である判断をした。
裁判は56歳の法学士ジョアン・ボランチ(João Volante)氏が、OABの試験に合格しなくても弁護士の活動ができるよう連邦最高裁へ特別上告したものだ。
8名の最高裁判事は全員一致で試験を有効とした。
「試験だけが職業能力を評価するものではない、試験によって弁護士の仕事に就けないのは憲法が保証する職業選択の自由に反する」との原告の請求に対して、判事のマルコ・アウレリオ・メロ(Marco Aurélio Mello)氏は、
「理論と実習の授業に出るだけで職業能力があると判断できない、試験によって評価されるべきだ。
もしも試験が能力を評価しないとするなら、大学の試験も能力を測ることはできない。
大学の試験は憲法違反だといえるか?」
と、判決意見を示した。
同じく判事のルイス・フクス(Luiz Fux)氏は次のように述べた。
「能力のない弁護士の失敗を後になって監察し回る事態は許されない。
OABの試験によって法学士が最低の職業遂行能力を持っている保証が得られる。
今日の試験には問題があるかもしれないが、だからといって憲法違反とは言えない。
でたらめな弁護により社会が被る被害の危険性は職業自由を制限できるか、答えはイエスだ。」
他の判事も同様にOABによる試験の必要性を認めている。
次の日曜日10月30日に第5回弁護士会統一試験(第5回統一というのは、以前は州ごとに独立して行なっていたからだろう)の1次試験が実施される。
前回は全受験者の85%に相当する10万人が不合格であった。
(Priscilla Borges, iG Brasília | 26/10/2011 14:08 - Atualizada às 20:31)
ちなみに前回OAB試験合格率ベスト5(2次合格者/1次受験者を合格率とする)をあげる。
1 | セルジペ連邦大学(Universidade Federal de Sergipe - UFS) | 25/36 | 69.44% |
2 | ミナスジェライス連邦大学(Universidade Federal de Minas Gerais - UFMG) | 33/51 | 64.71% |
3 | サンパウロ大学(Universidade de São Paulo - USP) | 44/69 | 63.76% |
4 | リオグランデドスル連邦大学(Universidade Federal do Rio Grande do Sul - UFRGS) | 28/45 | 62.22% |
5 | ジュイスジフォーラ連邦大学(Universidade Federal de Juiz de Fora - UFJF) | 18/30 | 60.00% |
私立大学最高位は26位サルバドル大学(Universidade Salvador - UNIFACS) 33/74 44.59%であった。
(Priscilla Borges, iG Brasília | 23/09/2011 11:39 - Atualizada em 26/09/2011 17:35)
法学部ではない他の分野での資格試験はどうなっているのだろうか。
会計学(contabilidade)では、2000年に会計能力試験が導入された。
試験は連邦法によってではなく、連邦会計評議会(CFC - Conselho Federel de Contabilidade)の規定によって設けられたものに過ぎないという理由で裁判になり、10回実施後の2004年に司法判断によって廃止された。
しかし2010年になって連邦法12,249号が発効して、CFCの会計士登録(つまり資格)条件に、試験への合格が含まれるようになり、試験は復活した。
CFC会長Juarez Domingues Carneiro氏は、会計士試験が中止された期間は教育機関(会計学部)と卒業生の質が落ちたという。
「評議会が受けつける行政処分、監察、苦情の件数が増えた。」
Carneiro氏にとって試験は、大学が教育の質を維持して、学生を合格できるまで鍛える原動力である。
同氏によると、試験が廃止された時点で合格率は60%だった。
今年実施された、中止期間後復活の第1回試験では16,600人以上が試験に挑み合格率は30%であった。
「次回の試験では、1,200を超える会計学部が教育の質向上に取り組んで合格率を上げてくれることを期待する。」
教育省(Ministério da Educação)による全国学生能力試験(ENADE - Exame Nacional de Desempenho dos Estudantes)でも、会計学部の質低下が指摘された。
2006年に不満足(insatisfatório)なレベルの学部が30%であったのが、3年後には32%に増加した。
能力試験とは基準が異なる教育省の評価だけでは、能力試験に匹敵する教育水準アップ効果は見込めなかったのだろう、とCarneiro氏は分析する。
獣医師/獣医学(médico veterinário/medicina veterinária)の資格試験は、2007年に司法判決によって中止された後、実施には至っていない。
連邦医学評議会(Conselho Federal de Medicina)は、達成度試験(teste de progresso)を医学生に実施する考えを支持して、教育省に働きかけている。
試験は医学生の卒業試験として知識を問うものではなく、在学中に能力を測るものとして行い、試験で明らかにされた欠点を修正できるような形が良いと評議会は考えている。
サンパウロ州地域医学評議会(Cremesp - Conselho Regional de Medicina do Estado de São Paulo)は、新卒業生を対象に任意で試験を行なっている。
直近の試験では68%の受験生が不合格で、試験開始以来最悪の結果であった。
(Marina Morena Costa, iG São Paulo | 27/09/2011 07:00)
見てわかるように、現在ブラジルの医学部卒業者にはOABの弁護士能力試験や医師国家試験のような試験がない。
習熟度の判断が各医学部に任されているというのは、正直言って不安だ。
弁護士の例に習うと、診察室によく掲げてある大学の卒業証明書でどこの大学卒業かをチェックしなければならないのかもしれない。
有力大学を卒業していても、現在目の前にいる医者が本当に医師資格にふさわしい職業能力を持っているかはわからない。
サンパウロ州の任意試験結果を見ると、新人医師3人中2人は医者として能力不足ということだろうか。
信じたくない数字である。
口コミ評判が医師を選ぶときに結構重要視される理由の一つだろう。
医師に関しても統一達成度試験を実施して、少しでも安心してかかれる医者を養成するようにしてもらいたいものである。
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