どこの都市でも危険はどこかにあるものだが、突然自分のいるビル、あるいは目の前のビルが崩れるということは想像できるだろうか。
2012年1月25日午後8時33分、リオデジャネイロで起きた。
座標は、 22°54'31.37"S - 43°10'38.42"Wである。
ラテン系の都市の中心街はセントロ(Centro)と呼ばれることが多いのだが、リオのセントロで、映画館が多いのだろうか、メトロのシネランジア(Cinelândia)駅付近だ。
国立美術館(Museu Nacional de Belas Artes)、国立図書館(Biblioteca Nacional)が一方に並び、反対側にはリオデジャネイロ市議会(Câmara Municipal do Rio de Janeiro)があり、それらを両方に従え市立劇場(Teatro Municipal)が立つ。
政治文化の堂々たる中心地区だ。
市立劇場横の5月13日大通(Avenida Treze de Maio)沿い、劇場の裏手に古いビルがあった。
そのひとつ、18階建てのビルの上部が突然崩れだした。
古いビルを建て替えのために破壊するとき、破片が内側に向かって崩れていくように、ダイナマイトをうまく配置する。
ポルトガル語でインプロゾン(implosão)と呼び、爆発(explosão)と区別する。
それと同じような崩れ方だった。
上部階から下側に向かって崩れていき、隣にある4階建てのビルと、その横の10階建てのビルを巻き添えにして3つのビルが全壊してしまった。
崩れた3つのビルは、1920年、30年、40年代のものだった。
人工的破壊と異なるのは、平日の午後8時半という時間で、商店や事務所のあるビルだったので、多少人が残っていたことだった。
事故から24時間経った1月26日午後8時半の報道では、死者4名、行方不明22名となっていた。
消防(Corpo de Bombeiros)と市民救助隊(Defasa Civil)が中心となって救助作業が続いている。
いっぺんに数万人の命を奪う地震と比較したら、極めて局地的で小規模な事故かもしれない。
しかし事故現場から中継される風景は、地震そのものだ。
地震と異なるのは、地面の揺れなど全くなかったのに建物が突然崩れたことだ。
突然崩れた理由であるが、リオデジャネイロ地区工学農学技師審議会(CREA-RJ - Conselho Regional de Engenharia e Agrônomia do Rio de Janeiro)の最初の分析では、ガス爆発の可能性、地盤の沈下の可能性を否定している。
これから原因調査究明が進んでいくと思うが、現在のところ、最初に崩れた18階建てのビルの3階と9階で行われていた改造工事が何らかの原因になっている見方がされている。
CREA-RJによると、この工事は無許可で行われていた。
発注元企業への罰金は1,500レアルだ。
CREA-RJは工事責任者の技師を探している。
現在の時点の悪者は無許可工事を発注したテナント企業と受託した企業および工事担当技師となっている。
報道によると、古いビルに空調ダクトやケーブル等を通すために、梁に穴を開けたり削ったり、部屋を広くするために壁をぶち抜いたり柱を取り払ったりと、手を加えることが多々あるらしい。
いい加減な工事で、ビル全体の構造を支えている重要部分を損なってしまったのが原因になっているものと思われる。
このビル崩落事故は海外でもかなり報道されている。
アメリカ合衆国では、オバマ大統領がリオで演説した市立劇場の裏で起きた事故だと報道した。
英国は2014年のワールドカップ、2016年のオリンピックに触れて、リオのインフラに不安を示した。
この事故からの教訓であるが、改造工事が行われている古いビルに入ったり近づいたりするのはできたら避けたい。
といってもこのような事故はまれだし、ガス爆発ともなると工事が行われてなくても起きるし、遭う可能性は極めて低いだろうが、避けようとして避けられるものでないのではなかろうか。
(2012年1月26日 Globo Jornal Hoje及びJornal Nacional報道による)
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