2020年8月29日

コロナ感染速度減少局面入りか

集団免疫 = (po.) Imunidade de grupo/rebanho

マラニョン州の住民の10人に4人がCovid-19に罹っただろう
Quatro em cada dez moradores do Maranhão tiverem Covid-19
2020/8/25

今日と14日前それぞれの過去7日移動平均を比較したとき、15%以上減少した場合に、Covid-19流行速度が減少局面に入ったと判断されている。
2020年8月末の時点でそのような州は増加しているが、マラニョン州はその一つである。

マラニョン連邦大学とマラニョン州保健局が、マラニョン州で住民の血清調査を行った。
調査のサンプルは7/27から8/8の期間に、全州217のうち69の自治体で行われた。

その結果はかなり驚くべきことだと思われるが、住民の40%が抗体を保有していることがわかった。
マラニョン州の人口は約7百万人であり、その40%に当たる280万人がウィルスに感染して抗体を得たということである。
今まで報告された確認感染者は州全体で14万4千人であるから、その約20倍の感染者が存在する計算になる。

罹病者には通常3つほどの症状が現れ、代表的なのは嗅覚喪失と味覚喪失である。
そして感染者の26%に当たる人は無症状であった。

州で最初のCovid-19患者は3/19に発見されたので、4ヶ月半で住民の40%に感染するのは確かに驚くべき感染力といえる。
そして現在は住民全体に対する感染者の割合が増えて、ウィルスはかなり「感染する相手を見つけるのが困難になって」いるのだろう。

ウィルスとそれが引き起こす病気について、人間の知識と経験が増えて、当初より死亡率が下がっているのかもしれない。
ウィルスに知能はないだろうが、エボラウィルスのように馬鹿力で押して宿主を殺してしまうよりも、適当にぬるくやって永続する方法に淘汰圧が働いているのかもしれない。

この感染速度減少期を経た後、感染増加がゼロになったとき、集団免疫が得られたということになるのだろうが、マラニョン州全体でその日はそれほど遠くないのではないかと思う。

2020年8月14日

コロナを利用する悪人ども

少し日は経つが、こんなニュースがあった。

ゴイアス州で薬物取引と戦う街道作戦
Operações nas estradas combatem tráfico de drogas em Goiás

本編の前に宣伝あり、pularでスキップ
0'28" 棺桶の中は麻薬のペーストブロック
1'38" 働く麻薬探知犬

葬儀屋の車に積んだ2体の棺桶の中は300kgの麻薬ペーストブロックが詰まっていた。
検問する警察へ答えた運転手の言葉は、
「Covid-19の死者の棺桶を運んでいるところだ」
というものだった。
そう言えば警官も恐れて、敢えて開けて中身を確認しようと思わないだろうから、かんたんに逃れられる、と考えたのであったが、思惑が外れた。

1'38"では、トラックの荷台下を嗅ぎ回る麻薬探知犬の活躍が見られる。
仕組んだ偽装底に隠した薬物も感知できる。
このような働き者の動物の力を借りて、薬物不法取引との戦いはコロナの大流行の中であっても、ひとときも休むことはないようである。

このビデオには登場しないが、コロナがらみの犯罪には、入院したいコロナ患者の家族に近づき、病院のスタッフに知人がいるから、金を払えば早く呼吸器の便宜を図ってやるとの言葉で金を騙し取る、というのがあった。
病床や呼吸器の不足と言う情報を利用して、古典的な犯罪が新しい衣をかぶっている。

ブラジル連邦政府は、コロナのために収入が減った自営業者や生活保護受給者を対象とした緊急援助金を設立してほぼ月1回ペースで支給している。
最初の支給は4月半ばから始まったから、即座とは言えなくても、日本の10万円支給と比較するとかなり早かった。

現役の公務員や犯罪者が不正申請をして金を手にしたのが摘発されているから、これもコロナ利用の犯罪と言える。
不正の疑いがある口座が約130万あるというが、大方の摘発が1回目の支払い後であったので、以降の支払いは停止されているという。
もっともこの数には、正当な受給者に相当するのだが書類不備のため保留されたといったケースも含まれていて、全部が不正ではない。
実際にそれだけの数の口座に1回の支給が行われたとしたら、7億8千万レアルの国庫損害である。
どうして初回支給にチェックが間に合わなかったのか、きっと迅速な支給を第一として、厳密な審査を後回しにしてしまったのだろう。

せっかく連邦歳入庁(税務署)が徴税目的のため管理するCPFという、日本のマイナンバーのずっと先輩の個人識別手段があるのに、どうして公務員や正規の被雇用者のCPFのリストと照合するという手数を踏まなかったのか、そんなに時間とコンピューターパワーを必要とする大仕事であったのか疑問である。

現役の公務員や会社員が緊急援助金の申請手続き方法を見て、軽い気持ちでダメもとで試してみたら本当に金がもらえたからそのままもらっておくか、といったケースもあるだろうし、不正に入手した他人のCPFとデータを使用して本人より先に手続きをしてしまい横取りをする、といったケースもある。
後者に関しては、パソコンやスマホを多数備えた事務所を構えて、大人数で他人のCPFを使って詐取する犯罪組織まで摘発されている。

性善説が通用しない輩が、かなりいることは予想できたはずである。

2020年8月13日

当たる予測外れる予言

ルイス・エンリケ・マンデッタ(Luiz Henrique Mandetta)は、2019年1月から2020年4月までブラジルの保健相であった。
国民の隔離政策とクロロキン使用について、ボルソナロ大統領との意見の相違が大きく、4月半ばに罷免された。

この人は元々医師であり、Covid-19の流行の予測を行ったことを2020年3月29日の当ブログ記事に書いた。
思い出してみよう。

「患者の増加期は4,5,6⽉、平坦期が7,8⽉、下降期は9⽉からで、⼈⼝の50%が感染するまで続くだろう、と予想していると発言した。
しかしこれは政府と国民が全く対策を取らなかった場合であり、医療崩壊に至ると付け加えた。」
ということだった。

最近のテレビニュースでは、ブラジルのCovid-19動向を説明するのに、感染確認数増加や死亡数増加について、今日と14日前それぞれの日から7日前までの移動平均をとって、その間の比率を計算している。
14日前と比較してプラスマイナス15%以内に収まっていたら、増減なしと判断する。

それに準じて、7日間移動平均のグラフを作ってみた。
死亡数増加について見てみる。
初期に当たる4月中旬に200%程度から始まった死亡数増加数の14日間増減曲線は上下しながらも急速に低下して、6月中旬ころからグラフ横軸を中心として上下する増加数平坦期(つまり、おおよそ一日1000から1050)に入っていて、現在も続いている。
マンデッタ元保健相の予測にほぼ沿っているといえる。

ということは、マンデッタ予測がこれからも当たるのならば、いま8月中旬に入っているから、あと3週間もすれば増加数が減少していく時期を迎えることになるだろう。
あるいは平坦期入りが半月早まったことから、減少期も早まってすぐにこれから減少が始まる(常にグラフの横軸の下に位置する)かもしれない。

さて、ボルソナロ大統領の問題発言にこういうのがあった。
ブラジルのCovid患者急増に関してどういった政策を取ろうとしているのか記者に問われて、
「どうしろって言うんだ?私は救世主だが奇跡は起こせない」
と答えたものだった。

種を明かせば大統領のフルネームは"Jair Messias Bolsonaro"で、メシアスがミドルネームであるから、それにかけているのであって、何も自分が救世主であると自任しているわけではない。

名前が救世主であるのはまあ良いとして、予言者であるかどうかが問題だが、別の機会にこう発言した。
「コロナは国民の"60%"が罹るまで続く」
"60%"と言う数字は50から60だったか、それとも60から70だったかよく覚えていないが、とにかく半分以上ということだ。

この発言は明言しないまでも、スウェーデンが拠りどころとする、国民が集団免疫に達するのを目標とするということと、実質的に同じではないか。

マンデッタ元保健相はボルソナロ政府発足当時からの保健相であるから、両者が決別するまでのボルソナロ大統領の医学・疫学的な発言内容は、マンデッタがボルソナロに指南したことに違いないと思われる。

さて、当たるか当たらないか?

2020年8月4日

コロナ誰が先に抜け出せるカナ

Covid-19による死亡数が最も多い7月:32,912の生命が失われたと各州保健局は指摘
32.912 vidas perdidas: julho foi o mês com mais mortes por Covid-19 no Brasil, apontam secretarias de Saúde

前回引用したページにはもう一つ興味深いデータがあったからここにのせる。
Covid-19が流行している国々の比較である。
どの国が一番「うまくやって」いるのだろうか?
答えはすぐに出ない。
有効なワクチンが出回って、十分にCovid-19の制御ができるようになったときに、ようやく判定が出るだろう。

月別死亡数の変移
2020推計人口(千)死亡数/10万人7/31合計2月3月4月5月6月7月
ブラジル212,55943.5592,56802025,80423,33530,31532,912
米国331,00345.33150,05402,39850,03049,13924,63623,851
イタリア60,46258.1135,1322111,57016,0915,6581,404388
連合王国67,88667.7645,9992221,40824,68912,2795,1992,424
フランス65,27446.1730,13623,01521,0374,6631,013406
インド1,380,0042.5935,7470291,0454,09011,72918,854
メキシコ128,93335.1845,3610201,5497,84617,23318,713
データ元:ブラジル各州の保健局および世界保健機関(WHO-ポルトガル語ではOMS = Organização Mundial de Saúde)

元報道の月ごと死亡数の表に、2020年推計人口(単位:千人)と、計算された各国人口10万人あたり2020/7/31までの累計死亡数を一緒に載せた。
これをみると、ブラジルは米国のまだまだ後ろにいると思っていたのだが、単位人口あたり死亡数で追いつき追い越す勢いである。

いわゆる「先進国」のピークが4月であるのに対して、「発展途上国」のピークが7月であるのはたまたま偶然であろうが、先進国対発展途上国という図式になった。

先進国グループの特徴として、みんな金を持っているから国内・海外を旅行する人が多くて、ウィルスを急速に蔓延したので、感染が3月、4月の初期に急増した。
もともと欧州自体国境がないようなものだったし、米国人は世界中どこでも観光していた。
その結果、「冷や水を浴びせる」効果にあたって、政府は厳しい隔離政策を執る判断に容易に踏み込めた。

発展途上国グループは金持ちもいるが、自分の生まれ育った町から出たことのない人も多く、初期の感染は緩慢だった。
その証拠に、ブラジルの初期の感染者はヨーロッパ旅行帰りの富裕層から始まった。
職場を共にする、例えば富裕層の家庭で働く家政婦とか運転手とかの人たちが、富裕層からウィルスを庶民層の家庭へもたらす役割を果たした。
そのように、初期においてじりじりと緩慢な拡大であった途上国グループは、残念ながら「茹でガエル現象」であり、感染が激増した時期には「隔離疲れ」も加わり、強力な社会隔離を継続する条件になかった。

ブラジル、インド、メキシコでピークが7月にあるということは、8月も現状維持、下手するとさらに増加するのではないかという恐れはある。
変な言い方になってしまうが、インドは「伸びしろ」が大きい。

2020年8月3日

誰もが罹ることになるのかコロナ

Covid-19による死亡数が最も多い7月:32,912の生命が失われたと各州保健局は指摘
32.912 vidas perdidas: julho foi o mês com mais mortes por Covid-19 no Brasil, apontam secretarias de Saúde

COVID-19による1日当たり死亡数の2020/8/1の過去7日移動平均1,017は、14日前の過去7日移動平均と比較して-4%であり、統計的には変化なし。
COVID-19の1日当たり確定感染者数の2020/8/1の過去7日移動平均44,635は、14日前の過去7日移動平均と比較して+34%であり、統計的に増加した。
これから1,2週間後の死亡数が増加するかどうか懸念される。

月別死亡数
死亡数
2月0
3月202
4月5,804
5月23,335
6月30,315
7月32,912
合計92,568
出典:ブラジル有力報道機関のコンソーシアムが各州の保健局による数字を集計したもの

2020年5月8日に州ごとの10万人あたり死亡数の比較表を作ったのであるが、約3ヶ月たった今、同じ表を作成した。

表の色は次の意味がある。

8月1日の1日10万人あたり死亡数の過去7日移動平均が、14日前の1日10万人あたり死亡数の過去7日移動平均と比較して:

赤 増加中:14日前より15%以上増えた
黄 変化なし:14日前よりプラスマイナス15%に収まっている
青 減少中:14日前より15%以上減少した

順位地方人口COVID-19死亡数死亡数/10万人5/6の順位
1NRR ロライマ605,76151384.6913
2NECE セアラ9,132,0787,69884.302
3NAM アマゾナス4,144,5973,27879.091
4SERJ リオデジャネイロ17,264,94313,55678.524
5NEPE ペルナンブコ9,557,0716,59769.033
6NAP アマパ845,73156867.165
7NPA パラ8,602,8655,75066.847
8SEES エスピリトサント4,018,6502,56663.8510
9NESE セルジペ2,298,6961,44862.9918
10NAC アクレ881,93553560.669
11NERN リオグランデドノルテ3,506,8531,87953.5814
12CWMT マトグロッソ3,484,4661,84953.0626
13SESP サンパウロ45,919,04923,23650.606
14NRO ロンドニア1,777,22588149.5715
15CWDF 連邦区3,015,2681,49049.4216
16NEAL アラゴアス3,337,3571,58147.3711
17NEPB パライバ4,018,1271,83345.6212
(ブラジル全国)212,559,00093,56344.02
18NEMA マラニョン7,075,1813,03242.858
19NEPI ピアウイ3,273,2271,35441.3719
20NTO トカンチンス1,572,86639024.8024
21CWGO ゴイアス7,018,3541,68624.0223
22NEBA バイア14,873,0643,51723.6517
23SPR パラナ11,433,9571,97517.2720
24SRS リオグランデドスル11,377,2391,94717.1122
25SSC サンタカタリナ7,164,7881,15416.1121
26CWMS マトグロッソドスル2,778,98638914.0027
27SEMG ミナスジェライス21,168,7912,86113.5225
出典:表の死亡数はブラジル連邦政府保健省、色付けの根拠はブラジル有力報道機関のコンソーシアムが各州の保健局による数字を集計したもの
人口データは5月作成と同じIBGEのもの

さて、この色付けから何が読み取れるか。
最初に注意しておくと、ニュースで発表されるこの色付けは、毎日くるくる入れ替わる性質のものなので、あまり真剣に気にするものではない。

大雑把な傾向であるが、10万人あたり死亡数上位の州は、青い色が多い。
つまり、多くの人が罹患してしまった後で速度が落ちてきたのかもしれない。
現在死亡数増大の速度が落ちた青色の州が、そうでない州と比較して社会隔離を熱心に行った結果であると、多少はその傾向はあるだろうが、完全には肯定することはできない。

7月終わりのブラジルの社会状況は、なんとかロックダウンを避けて、できるだけ通常営業へ持っていきたい州ばかりである。
もちろん、各州は科学的見地に則って数段階の基準を作って、隔離緩和を段階的に行う手順を備えているから、社会隔離がいっときに元の木阿弥になるわけではない。

そして10万人あたり死亡数下位の州は、死亡数が2週間前より増加している赤色の州が多くなっている。
これは最初増加がゆっくりで、防疫コントロールが成功して一見このまま収まってしまうのではないか、と思えた州であっても、社会隔離が何ヶ月も継続させられる経済的条件をブラジルのどの州も持っていない状況で、結局いつかは死亡数の増加を抑えることが不可能になるときがやって来ることを意味しているのではないだろうか。

つまり、いまは平穏無事であっても、いつかはきっとコロナと対面すべき時が、誰にもどうしても避けられないのではないか。

2020年8月2日

外国人から治療費を取りっぱぐれない方法

日本に入国した外国人海外旅行客や、不法入国外国人が病気にかかって治療を受けたのは良いが、支払えない治療費をどうするかが問題になることがあったと思う。
もっとも最近はコロナの恐れのためそもそも入国が認められないので、ニュースで聞くことはなくなったようではある。

日本がコロナ回復期になって外国人に国境を開放することになったら、問題になりがちな医療のただ乗りや踏み倒しを防ぐためには、次に書くブラジルの施策を取ると良いのではないか。

ブラジルは飛行機で到着する外国人に国境を再開
Brasil reabre fronteiras para estrangeiros que chegam de avião
2020/7/30

この記事によると、ブラジルはこのほど空路で到着する外国人に国境を再開することを決定した。

やみくもに再開したのではない。
条件付きである。
ブラジル滞在期間中ブラジルで有効な健康保険、つまり疾病をカバーする海外旅行保険のことだと思うが、これに加入していることを、出発地で航空会社によるチェックを通った、ブラジル滞在90日までの外国人に入国許可が出ることとなった。

マトグロッソドスル、パライバ、ロンドニア、リオグランデドスル及びトカンチンスの5州の空港については当入国許可規則は適用されない。
以上の措置は8月末日まで有効であるが、陸路または水路による外国人の入国は今まで通り認められない。

コロナ大爆発で現在のところ、どこへ行っても鼻つまみされるブラジル人(もちろんブラジル居住外国人も含む)である。
ブラジル居住者が外国へ旅行するのは、非常に困難な時期である。
夏のバカンスシーズンに海外観光客を大いに呼び込んで経済を復興させたいEUも、ブラジル人や米国人はお断りである。

伝染病流行国では黄熱のように、入国するために予防接種証明書を必要とする病気・国がある。
現在のブラジルは米国と並ぶ世界一、二のコロナ流行地である。
ブラジル観光旅行をしたいという外国人がどれだけいるかわからないが、ワクチンのない今はブラジル旅行中にコロナにかかって入院するような事態になったとしても、旅行者本人も安心して治療を受けられるし、ブラジル保健システムも本来の対象外である非居住者の治療代がかさむようなことがないようにというのが目的であろう。

日本では3ヶ月以上滞在の外国人は国保加入義務があるので、普通の考えの善意の人にはそうしてもらえばよいが、そうでなく最初から3ヶ月滞在込みで高額治療を目的とするような外国人に対しては、既往症免責など別の方策が必要になるだろう。

2020年8月1日

苦労して見たネオワイズ彗星

ネオワイズ彗星は、まず北半球で見えるようになり、近日点通過前には夜明け時に東の空にかなり明るく(1等星)輝いたそうである。
しかし梅雨の長雨が時期外れまで続く日本では、実際に見ることができた場所はそう多くないようである。

南半球で見られる位置までやってきたので、彗星観察に挑戦した。

第1回試行 2020/7/22
日が経つほど彗星は太陽から離れて暗くなっていくので、なるべく早いうちの観察が良いのだが、早いうちは地平線に近すぎるという欠点もある。
私が住む場所の緯度で観察できる2日目に当たる日であった。

太陽に近いので、当然日没時には既に地平線間際で沈む寸前まで低い位置であるため、遠くに見える地平線際の街灯に光が消され気味な条件のもと、予習不足で正確な位置がわからないうちに時間切れとなってしまった。

第2回試行 2020/7/24
天頂の周囲の上空はきれいに晴れているのだが、北西の地平線際にはいわし雲があって、彗星自体も、彗星の位置の参照にする恒星の並びも確認できないうちに時間切れとなってしまった。

第3回試行 2020/7/26
地平線際の照明がない、観測に最適な場所へ行くことはできなかったが、前回の失敗から学んで、手前にある木々が灯りを隠すことのできる場所を選んでおいた。
電灯の直接光が双眼鏡に入らなくてもその近辺に視線を向けると、鏡筒かレンズの表面から、変な反射が起きて、星の光と区別しにくくなることがわかったからである。

第1回試行日には三日月であったものが、この日には上弦の月になっていて、しし座とおおぐま座にある、彗星の位置の参照に使う恒星がなかなか見えてこない条件であった。

あらかじめ確認した2つの恒星(おおぐま座ξとν)が作る線を延長した先が彗星の想定位置であったから、双眼鏡で丹念に光を探した。
多分これだと思われた、右上方向に薄く刷毛を引いたようなぼやけた光の点は、本当にこれかなと多少疑問が残った。

観察を終えて部屋に入り、彗星の位置を推定するのに使った、日本出版の星図を開いて、さっき彗星が見えた場所に何の恒星も存在しないことを確認した。
しいて言葉で書くと、おおぐま座の2つの4等星ξ(クシー)星とν(ニュー)星を結ぶ線を右方へ延長したところにある2つの5等星55星と57星を一辺とした上側へいびつな三角形を作る場所である。
場所を忘れないうちに鉛筆で星図上に年月日時刻と地平線を書き込んで、その写真を撮って彗星観察の記録とする。


サンパウロ市(南緯23º)の2020/7/24 18:30を基準としたネオワイズ彗星推定位置と等級である。
これを見ると、7/26の推定光度は5.39等である。
見つけるのが困難なはずだ。


舞台から一番遠い席から観劇したオペラのような感じではあるが、これを見逃すと6800年待たないと戻ってこない貴重なものを見ることができて、刈り取りの終わった畑の地際から這い上がるダニに噛まれながらも苦労した甲斐があったというものだ。