2022年12月21日

4年に一度ギリシャ語数字を喋り出すブラジル人

ワールドカップの時期になると、高らかに唱えられるのが、ブラジルセレソンの目標、つまり今度優勝したら何回優勝となるかを、
○○○カンペオーン(campeão)
と叫ぶのである。
○○○に入るのは次の接頭辞である。
なぜかギリシャ語なのである。
biとtriはラテン語系ともいうし、下表の発音は現代ギリシャ語より古代ギリシャ語のものに近いようだし、はっきりわからないが堅いことはいわない。

回数接頭辞カタカナ該当する国
1回イングランド、スペイン
2回biフランス、ウルグアイ
3回triトリアルゼンチン
4回tetraテトラドイツ、イタリア
5回pentaペンタブラジル
6回hexaエ(ヘ)キサ
7回heptaエ(ヘ)プタ
8回octaオクタ
9回eneaエネア
10回decaデカ
11回hendecaエ(ヘ)ンデカ
12回duodecaドゥオデカ

ブラジルは2002年から20年間、エキサカンペオーンを唱えてきた。
さらに少なくともあと4年、エキサカンペオンへの願いは続く。
エキサ以上に達する国は、どれだけ待ったら出現するのだろうか?

2022年12月17日

ラテン16、ゲルマン7、スラブ1でラテン大勝

ラテン系(latins, latinos)あるいはラテン民族(Latin peoples, Pueblos latinos, Povos latinos)というと、普通はラテン語を起源とするロマンス諸語を話す国の人々のことを指すと思う。
主なロマンス語は、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、ルーマニア語である。
もちろんロマンス語はこれ限りではなく多数ある。

留学したブラジル育ちの息子が、ブラジル以外のラテンアメリカ出身の仲間をも含めて自分達を総称する"latinos"は、「中南米諸国」、「ラテンアメリカ」とほぼ同意義であった。
つまり、フランス人やスペイン人は"europeus"ヨーロッパ人であって、latinosには含まれないという使い方をしていたようである。

以下の「ラテン」はより一般的であり、ヨーロッパ大陸とアメリカ大陸の国々を含んでいる。
アフリカにはフランス語やポルトガル語を話す国々がかなりたくさんあるが、ラテン系とは言わない。
その理由は知らない。

FIFAワールドカップ2022カタール大会の決勝は、アルゼンチン対フランスとなった。
どちらもラテンか、と思うと、過去の大会の決勝はどうだったか気になった。
現在から遡って、ラテン国が決勝に出ていない回を探す。
実に、1974年西ドイツ大会の西ドイツ対オランダまで遡ることができる。
それ以降現在までを表にしてみよう。
ラテン同士決勝対決は16年ぶり。

大会優勝準優勝
1978アルゼンチンアルゼンチンオランダ
1982スペインイタリア西ドイツ
1986メキシコアルゼンチン西ドイツ
1990イタリア西ドイツアルゼンチン
1994アメリカ合衆国ブラジルイタリア
1998フランスフランスブラジル
2002日本・韓国ブラジルドイツ
2006ドイツイタリアフランス
2010南アフリカスペインオランダ
2014ブラジルドイツアルゼンチン
2018ロシアフランスクロアチア
2022カタール(未定)アルゼンチン(未定)フランス

ラテン系諸国を太字で表した。
それ以外の国は、2018年ロシア大会のスラブ系であるクロアチアを除いてゲルマン系、それもドイツとオランダだけである。

12大会の決勝出場国数で競った、ラテン・ゲルマン・スラブ対抗は、16 vs 7 vs 1 でラテンの大勝
ラテン諸国が少なくとも1つは決勝に進んだ時期だけを選んだからラテンが多くて当然か

2022年12月8日

幻の狐ダンス(日本)vs鳩ダンス(ブラジル)

EnglishEspañolPortuguês
FinalFinalFinal
Semi-finalSemifinalSemifinal
Quarter-finalCuartos de finalQuartas de final
Round of 16Octavos de finalOitavas de final

スペイン語とポルトガル語で、決勝、決勝の半分、決勝の四分の一、決勝の八分の一、という意味は共通している。
英語でもクォーターまでは共通する。
男性形・女性形と異なっている理由はわからない。
さて日本語では決勝、準決勝、準々決勝の次は何が来るのか?
FIFAのサイトの日本語ページでは対応する訳語がなくて、英語の"Round of 16"がそのままのっている。

2022年12月5日(月)Oitavas de final
Japão 1-1 (1-3) Croácia
Brasil 4-1 Coreia do Sul

ブラジルが韓国に余裕を見せて勝ったが、監督までゴールセレブレーション・ゴールパフォーマンスをするのは、やりすぎで相手に失礼ではないかという意見があった。
中継を見ていたが、どう考えてもチッチ(Tite)監督は、周りに無理やりやらされたように見えた。
一回見ただけではよくわからなかったが、羽ばたきしているような仕草は Dança do pombo、つまり「鳩ダンス」と言っていた。
へえそんなものがあるんだ。

現役の選手なら、ネイマールとか、クリスチアーノ・ロナウドのように、属人的に決まったポーズはいろいろある。
この鳩ダンスというのは、そのように形が定着していくものかは知らない。

日本のプロ野球に「狐ダンス」というものがあるという記事を読んだことはある。
これは後で検索して、動画で確かめる必要がありそうである。

もし日本がクロアチアに勝っていたのならば、準々決勝(Quartas de final)でブラジルと当たって、狐vs鳩のダンス決戦が見られたのに、それは実現しなくて非常に残念に思う。

2022年12月2日

2022カタール大会32か国名対照

gentílico, ca 形容詞①〔キリスト教側から見た〕異教徒の②[形容詞が]国名を表す
単体で使われると、「~人」という意味になる。
形容詞・名詞であるから、性数変化をする。
Google翻訳では「異邦人」と出る。

4年前に作った、FIFAワールドカップ2018ロシア大会に出場した32の国についての、三か国語対照表のようなものを今回も作ってみる。
そして今回は最初に説明したgentílicoを入れよう。
本来はポルトガル語だけでなく、英語にもスペイン語にもそれぞれに存在するのだが、スペースの関係もあるから、ポルトガル語のものだけに限った。

日本が属するEグループの結果が決定したこの日の報道から例文を取り出してみる。
将来いつかこの大会を思い出す助けになるだろう。

O zagueiro costarriquenho Vargas disse que a ideia, a partir daquele momento, era se segurar na defesa, não dar espaço aos alemães.
その時から、ドイツ選手たちにスペースを与えずにディフェンスを固める構想だった、とコスタリカのディフェンダー、バルガスは言った。

A Espanha, contou com ela, porque no estádio Al Bayt, os dois gols de Havertz e o de Fulkrug não mudaram nada para seleção alemã, pela segunda vez seguida eliminada na fase de grupos.
スペインはドイツをあてにしていた、というのも、アル・ベイト・スタジアムでのハヴァーツの2つのゴールとフュルクルクのゴールは、ドイツ代表には何の助けにもならず、2大会連続でグループステージで敗退することになったからだ。

例文ではないが、これを忘れないで入れよう。
Na sequência, novo ataque. Mitoma acreditou até o fim e cruzou para Tanaka marcar o segundo. A jogada foi revisada pelo árbitro de vídeo, que validou o gol indicando que a circunferência da bola encostou milimetricamente na linha de fundo na hora do passe.
新たな攻撃が続く。三笘は最後まで諦めずに田中にクロスして彼は2点目を決めた。プレーはビデオ審判で再チェックされて、パスのときにポール外周がミリ単位でゴールラインに接していることを示し、ゴールを確認した。

ブラジルは何といっても、2014年地元大会でドイツに1-7で屈辱的大敗したことを忘れないから、今回のEグループ同時第3戦はドイツが負けるかどうかが何よりも気になって、ドイツ-コスタリカの方を地上波中継した。
当時1-7という野球的スコアでブラジルを下したドイツが、今回は別の試合、もちろん日本によるボール1ミリの僅差で帰国することになったのは、日本もドイツもきっとブラジルにとっても、忘れがたい事実となったのである。

英語国名とスペイン語国名はFIFAのワールドカップのサイトからそのまま写した。

EnglishEspañolPortuguêsPortuguês gentílico
ArgentinaArgentinaArgentinaargentino
AustraliaAustraliaAustráliaaustraliano
BelgiumBélgicaBélgicabelga, bélgico
BrazilBrasilBrasilbrasileiro
Cameroon*CamerúnCamarõescamaronense, camaronês
Canada*CanadáCanadácanadense, canadiano
Costa RicaCosta RicaCosta Ricacosta-riquenho *1
CroatiaCroaciaCroáciacroata
DenmarkDinamarcaDinamarcadinamarquês
Ecuador*EcuadorEquadorequatoriano
EnglandInglaterraInglaterrainglês
FranceFranciaFrançafrancês
GermanyAlemaniaAlemanhaalemão
Ghana*GhanaGanaganês, ganense
IranIránIrãiraniano
JapanJapónJapãojaponês *2
Korea RepublicRepública de CoreaRepública da Coreiasul-coreano
MexicoMéxicoMéxicomexicano
MoroccoMarruecosMarrocosmarroquino
Netherlands*Países BajosPaíses Baixosneerlandês, holandês
PolandPoloniaPolôniapolaco, polonês *3
PortugalPortugalPortugalportuguês
Qatar*CatarCatarcatarense *4
Saudi ArabiaArabia Saudí *5Arábia Sauditasaudita
SenegalSenegalSenegalsenegalês
SerbiaSerbiaSérviasérvio
SpainEspañaEspanhaespanhol
SwitzerlandSuizaSuiçasuíço
TunisiaTúnezTunísiatunisino, tunisiano
United States*Estados UnidosEstados Unidosamericano *6
UruguayUruguayUruguaiuruguaio, oriental *7
Wales*GalesGalesgalês

英語国名の *(8か国)は前回ロシア大会に出場しなかった新入り・出戻り組
*1 costa-riquenho, costa-riquense, costarriquense, costa-ricense, costarricense とたくさんある
*2 japonês, japonense, japônico, nipônicoとたくさんある上に、ポルトガルのポルトガル語では"ô"が"ó"となる
*3 polacoはポルトガルで、polonêsはブラジルで多く使われる
*4 catarense, catari, catariano があげられている
*5 この形はスペインで主に使われ、ラテンアメリカではポルトガル語と同じ"Saudita"が多く使われる
*6 americano, norte-americano, estadunidense, estado-unidense, ianque 最後のはいわゆる「ヤンキー」
*7 ウルグアイの正式国名は「ウルグアイ東方共和国」と呼ばれるように、「東方」は地名であったことから来ており、西洋と対比する東洋のオリエンタルではない

この表の内容とは全く関係ないのだが、32カ国の中にウクライナとロシアが含まれていたのなら、きっとワールドカップ停戦が成立していたであろうと思う。

2022年11月24日

現地観戦はイスラム茨道

FIFAワールドカップ2022カタール大会が始まっている。

地下に膨大な化石資源を持つ砂漠の国カタールは、一体何を求めてワールドカップを招いたのか。
大会が終わったら全く使い道のなさそうな大スタジアムをいくつも建設した。
きっと大モスクに改造して、近隣国の敬虔なムスリムを集めて聖地にしたいのだろう。

その工事で命を落とした外国人出稼ぎ建設労働者の数が6500とか言われているのは、全く理解の範囲を超えている。
昔の日本のトンネル工事で何人とか何十人とか死亡したり、現在でもいろいろな場所の鉱山なんかで、かなりたくさんの人が死ぬことがある。
ここブラジル、ミナス・ジェライス州ブルマジニョで、鉱山残渣ダムが決壊した事故が2019年初めに起きたが、死者数は272人となっている。
6500人とは何だ、意味分からない。
スタジアム一つに千人近い人柱が立っているのか。
イスラムにも亡霊はあるのではないか。
怖い話である。
これだけ死者数が多いと、カタールやイスラム世界を恨む、例えばマスコミが盛りに盛った話のような気もしてくる。
コロナやワクチンのニュースのようなものなのか。
普通の労働災害とは意味が違いそうである。
話百分の一くらいに聞いておいたほうが良いのかもしれない。

試合を見るだけでなく、ビールを飲んで騒ぐために参加する人は決して少なくないだろう。
カタールでビールが飲める場所と時間が、すごく限定されている。
土壇場になって首長家の鶴の一声のためらしい。
バドワイザーとの契約はどうなっているのか。
話が違うのではないだろうか。

そのビールがやけに高い。
500ml一杯が20ドルとかするらしい。
いまブラジルの最低給料が月給1,212レアルである。
最低給料持ってカタールへビールを飲みに行き、今日の公定レート1ドル5,31レアルで計算してみると、12杯飲めないぞ。
ブラジルの試合を全部見るのに全く足りないぞ、これでは。

世界のおいしい食べ物がなんでもある?
豚肉は全くないらしい。
きっと本物のハムやソーセージもないだろう。
でも羊肉など、別の美味しいものがあるのなら結構である。
野菜は不味そうな気がする。
そして値段が安いわけがない。

世界の有名アーチストのパフォーマンスが盛りだくさん?
労働者の人使いとLGBTQ+迫害に抗議して、大勢ボイコットしている。
しかし1日5回のお祈りの時間はしっかり取ってあるそうだ。
お祈りはしっかりできても、他に見どころも大してなさそうだ。
無料で見られるようなものは特に。

質素なベッドしかないコンテナハウスはバス共同とか、灼熱砂漠地帯なのにエアコンがろくに効かないらしい。
死ぬぞ。
朝涼しいうちに冷房のある場所に移動して、夜涼しくなってから寝るために帰ることしかできないだろう。
そんなところが一泊3万円くらいするらしい。

なんで大金を払ってこんな目に合わなければならないのか。
きっともっと金を払えば払うほど、それなりに待遇は良くなるという教えなのだろう。

どちらにしろろくな場所でないのは、ブラジルセレソンの行動を見ればわかる。
本大会前の親善テストマッチなど捨てて、カタール入りしたのは参加国の中で一番遅い、大会開始前日だった。
できるだけカタールに居たくない気持ち満々である。

アルゼンチンはなかなか頭がいい。
高いだけのホテルなどに泊まらず、大学の寮を借りているそうだ。
金持ち国の金持ち子弟の通う金持ち大学だから、敷地も寮も広々、設備も良い。
何よりアルゼンチン人の好物アサードつまりバーベキューが自由にできる。
そんなことを第一に心配していたので、初戦でサウジアラビアに負けてしまった、と勘ぐる人もいるだろう。
何だ全然頭良くない。

ドイツはドイツで、今日はFIFAへ写真で抗議することに忙しくて、日本戦を落としてしまった。
サッカー以外のことを考え出すとサッカー伝統国でも神罰が下るようだ。

旅行する予定が全くなくても、肉と炭とビールを買って、ついでにこういう旗とか鳴り物を仕入れて、庭でシュラスコを焼きビールをぐびぐび飲みながら、テレビ観戦するのが一番正解なようである。
わずかな予算でカタールで貧乏旅行をすることになって、大会運営がこのようであるのなら、負け惜しみでなく、正直現地へ行きたい気持ちが全く起きない。

2022年6月30日

ブラジル現代の「北風と太陽」

イソップ寓話 Fábulas de Esopo
北風と太陽 O vento norte e o sol

風と太陽はイソップ寓話では、誰が旅人の外套を剥がすことができるか競争するのだが、ブラジルではコスト競争に励んでいるようである。

政府の電力入札において太陽光と風力発電の競争力上昇
Energias solar e eólica foram as mais competitivas em leilões do governo, mostra pesquisa
21/06/2022 22h48m

要約すると、新興エネルギー源のコストが安くなっているということで、次の表のようになっている。

電力コスト比較
過去5年10回の政府による電力入札の平均
単位:メガワット当たりレアル
ソース:CCEE(Câmara de Comercialização de Energia Elétrica 電力取引市場)

区分発電源コスト
安価水力 Hidrelétrica204.00
安価風力 eólica210.20
中位太陽光 solar297.90
中位天然ガス gás natural300.10
高価燃料油 óleo combustível320.00
高価石炭 carbão311.70

風力と太陽光の近年の伸びは大きい。
風力発電プラントの伸び率は2016年から過去5年間で16.02%
太陽光発電プラントの伸び率は2016年から過去5年間で25,898%

新興エネルギー源の利点として、ブラジルの識者は次をあげる。

  • コスト
  • 短い建設期間
  • 少ない環境への負荷

欠点はよく知られている。

何と言っても発電が間欠的で、無風や夜では発電量はゼロだろう。
しかし電力需要の少ない夜に発電できなくても、問題は少ないのかもしれない。
将来増えると思われる電気自動車のバッテリー充電などを、需要ピーク時を避ければ平滑化できるだろうか。

また、日本ではよくもこんな所へというような、危険な傾斜地のような地形に無理やり太陽電池を敷き詰めて水害を引き起こしてしまう例もある。
そんな無理矢理設置もこちらでは報道されていない。
ブラジルでは平らな土地に見渡す限りの太陽電池の平原といった風景はある。
野生動物や植物にとっては住む場所がなくなくなるのだから、絶対にいいはずはないのだが、今のところ影響については聞かされていない。

風車への鳥の衝突死とか低周波の健康への害とかはどうなったのだろうか、最近あまり聞かない。
人家が近い風車が強風で倒壊したら被害は少なくなさそうだ。
そのような疑念について、少なくともこの記事からはわからない。

それぞれを代表する業界団体もあり、勢力を競っているようである。
Abeeolica (Associação Brasileira de Energia Eólica) 風力
ABSOLAR (Associação Brasileira de Energia Solar Fotovoltaica) 太陽電池
まあ立地条件が両者では異なるから、あまり喧嘩することはないのかもしれない。

とにかく広い国土、熱帯地方の雨量が少なく利用度が低い内陸地、単純で長大な海岸線、したがって気候と風が安定する場所が多いことから、太陽光とか風力とかの発電プラントの建設はブラジル向きであるといえるだろう。

2022年5月30日

マスク嫌いな人たち

先月のことであるが、復活祭の翌週ブラジルでは、エスコーラ・デ・サンバ(サンパのチーム)が、大掛かりなコンテストで競う形式のカーニバルが、リオとサンパウロ両都市で開催された。
コロナウィルスのオミクロン株の急速な感染拡大のために、今年の場合3月末から4月初めに当たる、本来教会が定めたカーニバルの時期から1ヶ月半以上の順延であった。

テレビ中継を見ればわかるが、誰もマスクを着用していない。
カーニバルパレード会場は屋外ではある。

ブラジル26州と1連邦区の州都全部で、屋外のマスク使用義務はすでになくなっており、屋内でのマスク着用義務もほとんどの州都で終了している。
わが町も医療機関内を除くすべての場所でマスク着用義務は撤廃されて、公共交通機関内のマスク使用については推奨となっていて、義務ではなくなった。
学校は小学校から大学まで、学校の規則により着用が義務となっているところが多い。

日本の報道や街角のライブカメラを見ると、歩く人々は全員マスクをつけている。
日本の現在の気候は、マスク着用が苦になるほどの暑さに達することもあるだろう。
暦では秋といってもブラジルの各地方では、南部を除いたら昼間30度を超える暑さになる場所が多いので、暑く蒸れるから慣れないとマスクが苦しいという人は多い。

義務化されていなくても集団的自主規制心理により、マスク全員着用の日本と、着用義務撤廃のブラジルと新型コロナ感染症の流行状況と比べたら、ブラジルの状況が急速に改善したのかという疑問が起きるが、実際どうなのか?

コロナについて記録をつけ始めた流行初期の前年となる2019年の人口推計は、ブラジル2億1千3百万、日本1億2千6百万であった。
ブラジルの人口は日本の人口の68%増しである。

最近のコロナ感染症による死亡数の7日移動平均はだいたい、
ブラジル 約110人
日本 約35人
計算して単位人口あたりで比べると、ブラジルの死亡数が日本より68%多い約60人であったなら、単位人口あたり死亡数が日本と同じ水準になるといえる。
しかし実際のブラジルの死亡数はそれよりかなり多い。
つまり、ブラジルの死亡数は、日本より改善したどころか、逆にかなり多いではないか。

病原体が重症化しにくいオミクロン株に置き換わった結果、医療機関のコロナ患者増大による逼迫がかなり前のことになっているから、もうブラジル人の心からはコロナ流行がすっぽり抜け落ちたように感ずる。

パリ生活の長いピアニスト本田聖嗣さんによると、パリでマスクをして通りを歩いている人がいたら、それを見た通行人は、どこかの病院から抜け出した重病人が歩いていると訝しく感じたそうである。
新型コロナ出現以前のことである。
フランスもブラジルも同じようなものだった。

日本で子供時代を送った人は、冬になって少しくらい風邪を引いても、よほど熱が出ないと学校を休ませてくれないから、マスクを着けて登校したものだった。
あの頃はガーゼマスクだった。
子供はマスクの意義がよくわからないから、顎マスクも鼻出しマスクも一向に平気だった。
だから年配の人も若い人も、マスク着用をそれほど嫌うことがない。

気候が温暖であるブラジルには、杉林やヒノキ林のような針葉樹単一種の大植林はない。
材木や木炭の生産のために、ユーカリや松の大植林はあるが、これらは空気を黄色くするような花粉を放出することはないようである。
だから日本には花粉症というアレルギー症状が春にあって、そのためにずっと昔から多くの人がマスクをする習慣があるのだと、妻などこちらの人に説明しても今一つ理解してもらえないようなのだ。

だから2000年のカーニバルが終わって、ブラジルでも新型コロナによる死者が数えられるようになってから、スーパーでマスク手袋の女性を見たときには本当に驚きだった。
最初の頃はWHOが率先して、普通の人はマスクをしても意味がないとか説いていたくらいである。

強制されなくても国民が自主的にマスク着用をする稀有な国、日本のような条件にない大多数の国々では、マスク着用を条例で制定しなくては呼吸器病の流行を抑えることができなかった。
法律で強制的に着用を課されたものは、当然法律が撤廃されると着けるモチベーションがなくなる。

ブラジルでも多くの人々は、病気に関する知識を一応教えられてきたわけだから、いつも発表される新型コロナ流行に関するニュースを参考にしながら、自分の健康状態と今自分がいる環境をを自分で分析して、自分の責任で着けるか着けないかを決めることになる。
昔のパリのように、マスクを着けた人を怪訝な目で見ることはなくなっているのが救いである。

2022年3月8日

敵の敵も敵

北大西洋条約機構
この機関が記者会見をするとき、パネルにはNATOとOTANの略語が並ぶ。
英語: North Atlantic Treaty Organization
フランス語: Organisation du traité de l'Atlantique nord
スペイン語: Organización del Tratado del Atlántico Norte
ポルトガル語: Organização do Tratado do Atlântico Norte

報道によると、2022年3月2日の駐日ロシア大使館のツイートは、「欧米の対ロシア制限政策に反対し、我が国を支援する国家」として、中国、ブラジル、ベネズエラ、キルギス、ミャンマー、シリア、キューバをあげた。

ロシアによるウクライナ侵攻の前の週に、ブラジルのボルソナロ大統領は、慎重に止めるように勧める周りの声も聞かず、プーチン大統領に招待されたからと、ホイホイでかけていったのだった。

アメリカ合衆国の前トランプ大統領を盟友と仰いでいたボルソナロ大統領の意向のため、ブラジル政府がバイデン大統領に当選の祝辞を送ったのは諸国の中で最後の方だった。
環境問題に口を出してくるのを疎ましく思っているヨーロッパ諸国とも距離をおいている。
そのためNATO(ブラジルではOTAN)や欧米諸国と全面的に行動を共にするつもりはないことはわかる。
その結果ロシアの仲間とされているのであるが、仲間のメンバーが何と言ったらよいか、誠に香ばしいことになってしまった。

ボルソナロの赤嫌いワクチン入手などに困難をきたしたこともあるくらい大統領一派の批判の対象であった中国にも関わらず、中国、ベネズエラ、キューバと仲良しグループにされてしまった形である。

敵の敵は味方というのは、この場合には当たらない。
まあ欧米はブラジルの敵とは言えないが、特に最近はボルソナロ政権の近い味方でもない。
だから敵の敵も敵であることもある。

この面々が集まった中でブラジルの外交官はきっと、間違った部屋に入ってしまった居心地の悪さを感じることになると思う。

2022年1月23日

2022年のキリスト教移動祝日

リオデジャネイロとサンパウロのカーニバルは数ヶ月延期となってしまったが、当然暦の上では本来の日付のカーニバルは存在する。

米国のカーニバルで有名なニューオーリンズのサイトがあって、2058年までのMardi Gras(マルディ・グラ)の日付がここでわかる。
Mardi Grasとはフランス語で確か「肥えた火曜日」と言う意味だったと思うが、ブラジルでは普通にTerça-feira de Carnaval「カーニバルの火曜日」と呼ぶ日である。
カーニバルがキリスト教行事かというと巨大な疑問であるが、少なくとも日付の決め方だけは教会に従っている。
有り体に言えば、謝肉祭というくらいだから、カーニバルで現世の喜びを十分に満悦してから、心置きなく襟を正して四旬節の節制に臨む、という意味をつけられる。
とにかく、キリスト教行事の中には、毎年、天体の月の動きに応じて日付が移動するものがある。

年の後半にある、キリスト教関係で一番有名な日であるクリスマスは12月25日(ブラジルの祝日)、ブラジルでは死者の日(Finados)と呼ばれる万霊節は11月2日(ブラジルの祝日)―これはハロウィン(10/31)-万聖節(11/1)-万霊節(11/2)と続く一連であるが、前の2つは祝日ではない―と、毎年同じ日付に決まっているが、年の前半にある宗教祝日は移動するものが多い。

2022年の移動宗教祝日を下に一覧表にした。
復活祭の日、2022年ならば4月17日日曜日が、一連の移動祝日の基準になっていると言ってよい。
2021年より13日遅い。

復活祭の日付の決定方法について過去の記事に説明した。

待降節(Advento)は、クリスマスに備える期間であるが、その第一日は日曜日に決まっていて、11月30日の「聖アンデレ(Santo André)の日」に最も近い日曜日からクリスマスイブまでの約4週間で、最も早い年で11月27日、遅い年でも12月3日に始まる。
アドベント期間には必ず4つの日曜日が含まれる。
2022年は、この最も早い年に当たり、11月27日、12月4日、11日、18日の4つの日曜日の後、25日クリスマス自体が日曜日に当たる。
このように、天体の月の動きによって大幅に日付が前後する、年の前半の移動祝日とは、その決め方が全く異なる。

行事日の決まり方2022年休日種類
カーニバル
Carnaval
週末から灰の
水曜日前日4日間
2月28日,3月1日
月火曜日
PF
灰の水曜日
Quarta-feira de Cinzas
復活祭46日前の水曜日3月2日水曜日14時までPF
四旬節Quaresma灰の水曜日から復活祭前日
枝の主日
Domingo de Ramos
復活祭7日前の日曜日4月10日日曜日
聖週間Semana Santa枝の主日から復活祭前日
キリスト受難日
Paixão de Cristo
復活祭の2日前の金曜日4月15日金曜日FN
復活祭Páscoa北半球春分の次の
満月の次の日曜日
4月17日日曜日
ペンテコステPentecostes復活祭の49日後の日曜日6月5日日曜日
キリスト聖体の日
Corpus Christi
復活祭の60日後の木曜日6月16日木曜日PF
ぽつんと年末に孤立
待降節初日
Início do Advento
11月30日に最も近い日曜日11月27日日曜日

ブラジルで国定祝日(feriado nacional - 上表ではFN)、任意出勤(ponto facultativo - 下表ではPF)になっている日と、特に休日になっていない日がある。
任意出勤というのは、条例や労使協定によって、地方自治体、職種組合や職場ごとに、休日とするか勤労日とするか決められる。
大部分の勤め人にとっては、普通の休日となることが多いが、商店は営業するところと休むところがある。

2022年1月22日

2022年のブラジルの祝祭日

ブラジルのコロナ時代、つまりコロナ暦をいつにするかといえば、やはり2020年カーニバル後に初めてのこの病気による死者が出たときからとなるだろうが、一般的には2019年までは平穏な時代、2020年から困難な時代に入ったと言える。

2022年初めは、昨年末の第2波収束から一転、オミクロン株席巻による第3波上昇中の今日このごろである。
リオデジャネイロもサンパウロも、カーニバルのパレードを数ヶ月延期した。

そのカーニバルはいつの予定だったか、やはり今年のカレンダーをチェックしないとわからない。
連邦政府の経済省は、2022年の祝日と任意出勤についての通達PORTARIA ME Nº 14.817, DE 20 DE DEZEMBRO DE 2021を2021年12月22日付官報に掲載した。
下の表はこれに準ずる。
条文に断っているように、本来の目的は連邦行政官庁や国営企業の休日を定めたものである。
一連のキリスト教関連の移動休日は、2021年より13日遅くなる。
たとえば2021年のキリスト受難金曜日は4月2日、2022年は4月15日である。

1 1月1日 Confraternização Universal 世界友好の日 FN
2,3 2月28日,3月1日 月火 Carnaval カーニバル PF
4 3月2日 quarta-feira de cinzas 灰の水曜日 14時までPF
5 4月15日 Paixão de Cristo キリスト受難の日 FN
6 4月21日 Tiradentes チラデンチス FN
7 5月1日 Dia Mundial do Trabalho 世界労働の日 FN
8 6月16日 Corpus Christi キリスト聖体の日 PF
9 9月7日 Independência do Brasil ブラジル独立の日 FN
10 10月12日 Nossa Senhora Aparecida アパレシーダ聖母の日 FN
11 10月28日 Dia do Servidor Público 公務員の日 PF
12 11月2日 Finados 死者の日 FN
13 11月15日 Proclamação da República 共和制宣言の日 FN
14 12月25日 Natal クリスマス FN
注:FN = Feriado Nacional 国定祝日、PF = Ponto Facultativo 任意出勤
任意出勤とは、職種や企業や自治体によって働くか休むかが決められる日である。
各人が勝手に自分の都合で出勤したり欠勤したりして良いという意味ではない。

10月28日(金)は「公務員の日」(Dia do Servidor Público)で、民間は通常日であるが、(連邦の)官庁は任意出勤となる。
連邦政府が定める当表に載っている全国一円の休日のほかに、各地で市、地方あるいは州の記念日が数日定められていることが多い。

次のサイトで、任意の過去・将来年の、任意の国の休日が入った月齢付きカレンダーを閲覧・印刷できる(英語・ドイツ語・当国語-ブラジルならポルトガル語)。
このリンクはブラジルの2022年

2022年1月19日

ブラジルの電力はエコか

近年の電気自動車へのシフトは、かなり急速と思えるのだが、実際の話し、その電源がどのように作られているのかがわからなければ、エコロジカルかどうかは判定のしようがない。

ブラジルの発電方式の大部分は、広大な流域面積の降雨を集めた膨大な流量を持つ河川をせき止めたダムに設置された水力発電所によるものであった。
下のデータに見るように、その割合は昔ほど大きくないとはいえ、いまだに水力発電に頼っていることがわかる。
一見して安定しているように見える水力発電であるが、昔より降水量が減っているのか、灌漑その他の水消費量が増えているからか、年々ダムの貯水量(満水量に対するパーセント)が減ってきている。
12月から1月初めにかけて当地方でも大雨のせいで、多くの町に浸水被害が出ているが、電源となる貯水池地方のダム貯水率はせいぜい30%が40%となったくらいで、安心な貯水量へはまだまだ遠い。

2022年1月18日Jornal Hoje報道による、最近の太陽光発電の普及についてである。
データソースはいずれも ABSOLAR(ブラジル太陽光発電協会)である。
データの正確さが欠けているようだが、傾向を見ることはできる。

ブラジルの太陽光発電の担い手

発電者種別割合
住宅76.6%
商業・サービス業13.4%
農業生産者7.6%
工業2.1%
太陽光発電全量における割合であるが、発電者数に対するのか、それとも発電量に対するのか、ニュース記事からは不明だった。
住宅の屋根の太陽光発電などは一番規模が小さいだろうから、発電者数に対する割合と思える。

太陽光発電の盛んな上位3州

  1. ミナス・ジェライス州 全国の18.3%
  2. サン・パウロ州 全国の12.9%
  3. リオ・グランデ・ド・スル州 全国の12.4|%

ブラジル電力の源

エネルギー源割合
水力63.0%
風力11.6%
ガス火力8.8%
バイオマス8.2%
太陽光2.6%
燃料火力2.5%
表の数字を合計すると96.7%であることから、「その他」が3.3%あることになるが、元データに表れないので、ここでも表に入れないでおく。

発電者数が百万に達した太陽光発電は、8.6GWを記録したが、これはブラジル・パラグアイ国境にあり共同で運用している巨大なイタイプ水力発電所の発電量の2/3にあたるそうで、かなりのものであるが、それでもブラジル全発電量の2.6%に当たるだけなのだ。
そして潜在発電量13GWは、ブラジルを世界14番目の太陽光発電国の位置につけている。