2015年7月27日

ブラジルのブラックバード

http://www.jjazz.net/
を聞いていたら、Sara Gazarek / Josh Nelson の Blackbird / Bye Bye Blackbird という曲がかかった。
最初はビートルズのブラックバードから始まり、途中バイバイブラックバードに変わって、最後またビートルズのブラックバードに戻る構成である。

バイバイブラックバードは、マイルス・デイビスがミュートトランペットで端正にテーマを吹いてから、クインテットの面々の奔放な展開で、ジャズを聴き始めた頃から、誰もが虜にされそうなすばらしい演奏であると確信した曲である。
Wikipediaに"Bye, Bye, Blackbird" is a song published in 1926 by the American composer Ray Henderson and lyricist Mort Dixon.
と書いてあるから、米国の曲である。

Wikipediaには次の気になる記述がある。
「英語でこの鳥のことを Blackbird と呼ぶが、米語で Blackbird といえばムクドリモドキのことになってしまうので注意。
ビートルズの楽曲「Blackbird」や、マザー・グースの6ペンスの唄に歌われている「blackbirds」は、この(前者の)鳥のこと。」

ということは、ビートルズのブラックバードとバイバイブラックバードは似ているが別の鳥である可能性が高いということだ。
英語では、ビートルズブラックバードの方、つまりユーラシアのを common blackbird と言い、バイバイブラックバードの方、つまりアメリカのを new world blackbird と呼んで区別している。

コモンブラックバードの和名がクロウタドリ、漢字で書けば黒歌鳥と、誰が見ても「この鳥の鳴き声は美しい」と予想するだろうに、ニューワールドブラックバードの和名がムクドリモドキ、モドキというのは本物でない似た物ということだから、偽物呼ばわりではないにしろ胡散臭い名前である。
コモンブラックバードとニューワールドブラックバードは、別々の土地で別々に進化してきた別の科の鳥であり、どちらが偉いとかどちらが起源とかいう問題ではないのだが、和名から受ける印象には天と地の差がある。
バイバイムクドリモドキとはひどい、鳥に罪はない、かわいそうだ。

実はブラジルにもブラックバードはいる。
ポルトガル語で pássaro-preto 文字通り黒い鳥という意味である。
野生のが人里にかなりたくさんいる。
近所の公園のそばの電線に100羽位が賑やかに群れているのをときどき見る。
ブラジルのブラックバードも鳴き声がきれいだ。
ブラジルの自然の鳥だからその飼育には多分許可が必要なのだろうが、美しい声でしかも規則性のない複雑なさえずりをするので、この鳥を飼っている人は多い。

ここで問題だ。
バイバイブラックバードつまりニューワールドブラックバードとパサロ・プレトは同じか異なるか?
ブラジルも南アメリカも米国も北アメリカもすべて新世界である。

Common blackbird の項をみると種(しゅ)は一つで写真は嘴の黄色い鳥である。
New world blackbird の項には26の種があり、写真の2種は羽や体の一部が赤かったり黄色だったりする。

ブラジルのパサロ・プレトは全身、つまり羽だけでなく嘴も脚もカラスのように真っ黒である。
気の毒な名を持つムクドリモドキ科の項に、わがブラジルのパサロ・プレトの和名が載っていた。
ミゾハシクロムクドリモドキという大層な和名が付いている。
黒い下嘴に溝がついているところからきた名前のようである。
学名は Gnorimopsar chopi となっているが、ショパン Chopin とは関係ないと思う。

ここでまとめておく。
ビートルズのブラックバード = en. Common blackbird = クロウタドリ(黒歌鳥)
バイバイブラックバード = en. New world blackbird = ムクドリモドキ(椋鳥擬)どの種かは特定せず
ブラジルのパサロ・プレト = po. pássaro-preto = ミゾハシクロムクドリモドキ(溝嘴黒椋鳥擬)

2015年7月13日

みんな大好きドローン

公園の駐車場でドローンを上げている人がいた。
夕暮れから夜に入る時間だったので、飛行機のように両翼に、と言ってもドローンは4つローターがあるので、どこが両端かは判然としないのだが、緑色と赤色の照明を点灯して空中でホバリングしていた。

ごく最近見たドローン関連の記事見出しを2つ載せる。

スイス国営郵便、ドローン郵便配達の飛行試験を開始
http://japan.cnet.com/news/service/35067164/?tag=nl

Líder do grupo Estado Islâmico é morto em ataque de drone americano
イスラム国のリーダー、米国のドローン攻撃で死亡
http://www.msn.com/pt-br/noticias/mundo/l%C3%ADder-do-grupo-estado-isl%C3%A2mico-%C3%A9-morto-em-ataque-de-drone-americano/ar-AAcRzdw?ocid=mailsignoutmd

災害救助にも戦争にも使える道具なのだ。

ドローンというとラジコンヘリコプターと似ているがどこか違う。
ラジコンヘリ=メカ好き、操縦好きの立派なホビー、金がかかりそう、
ドローン=胡散臭いオタクが何か良からぬことを企んでいる、
全く偏見だろうがそんな気がするのだ。
ドローンの正当な愛好者よ、ごめんなさい。

広い公共の場所で飛んでいるのなら良いのだが、住宅地の上空をこういったものがたくさん飛び交うようになったらどうなるのだろうか。
不謹慎で人間性を疑われるのを承知で言うが、盗撮、つまり覗き撮影に最適なのではないかと思ったのが、ドローンが身近に飛んでいるのを見た第一印象である。
多分私の手元にドローンがあったならばこれをしてみたい、という願望かもしれない。
何のことはない、胡散臭いオタクとは私のことだったのか。

ブラジルの住宅地は一般的には日本よりは広く、防犯のためだろうか、塀がかなり高い。
塀の上に鉄条網とか電気ショックワイヤーなど張ってあるのは、醜いブラジルの風景である。
そして夏が長いブラジルである。
高級住宅街はもちろん、かなり大衆的な住宅地でも、高めの塀に囲まれた敷地にプール付きの庭がよく見られる。

わが家の庭を覗き込める隣家はない。
塀の上に見えるのは隣の軒と隣の敷地のマンゴーの木だけである。
屋根の上で工事などしていなければ、覗きこむのは翼のある鳥と軒を歩く猫だけである。
話をややこしくしないために、飛行機やはるか高高度の人工衛星などは一応除いておく。

ブールがなくても、庭にチェアをおいたりタオルを敷いた上で日光浴などする人は多いだろう。
ただでさえ肉体のフォームを非常に気にするブラジル女性である。
他人の視線が全くない、完全なプライバシーが保てる、ということで、女性だけでないだろうがビキニラインをつけたくない人などフィオ・デンタルどころか全裸で寝そべっているかもしれない。
プール完備必須の高級住宅街で夏の暑い季節に、自動撮影カメラを搭載したドローンを100軒くらいの上空を飛ばせば、1軒くらいそういった場面を撮影できるのではないか。

覗き撮影が趣味の一つなら、射撃が趣味だという人もいるだろう。
合法銃器も非合法銃器もあふれているブラジルのことだ。
庭に歓迎しない盗撮物体が現れたらためらいもなく撃ち落としてやるぞと、いつ現るとも知らぬドローンを待ち受けて銃に弾を込めて手ぐすね引いて息巻くガンマニアもいるのではないか。
リオデジャネイロのファベラ(スラム街)で警察と犯罪組織の銃撃戦があったとき、上空を飛ぶ警察のヘリコプターを地上から狙撃する事件が起きたから、そのミニチュア版だ。
先住民(インジオ)だったら弓矢で射落とすだろう。
銃や弓矢がなくても、不埒な侵入飛行物体にパチンコやダーツや投網や投槍や石ころや水鉄砲など何でも手元のものを投げつけたくなるかもしれない。
手頃な標的、といった感じなのだ。

"殺人凧 vs ドローン" 安っぽい映画のタイトルのようであるが、ブラジルの冬の風物詩というか、困りものの、ガラス粉を糸に着けて武装した凧とドローンの手に汗握る空中戦もきっと楽しめることだろう。

塀の中にいる連中が禁止されている物を持ち込むのに伝書鳩とかとかいろいろ悪知恵を働かせるのだが、ドローンは便利な運び屋になりそうである。
ドローンを使って爆薬を運ぶ銀行強盗なんかも誰かが考えつくかもしれない。

いろいろな趣味や犯罪の対象になりそうなブラジルのドローンである。

2015年7月7日

ギリシャ人の巨大な贈り物

今ギリシャが大変である。

威勢よく OXI これはどうしても 0x1 に見えてしまうので、ゼロかける1はゼロでないか、それとも酸素(オキシ)なのか、と言いたくなるのだが、ノーと叫んで大丈夫なのだろうか。
かの国の人々は将来のことをあれこれ心配しないのだろうか。
極めて楽天的なのか、行き当たりばったりなのか。

かなりブラジル人の性格と似ているような気がするのだが、ブラジルが今のギリシャのような境遇に落ちて同様の国民投票があったら、ブラジルも反対が賛成を圧倒するのだろうか。
それともよほど今まで緊縮に痛めつけられて、もう耐えられなくなった沈痛の叫びなのか。
お祭り騒ぎのようであり、とてもそうとは見えないが。

ポルトガル語でギリシャ国は Grécia、形容詞ギリシャの、名詞ギリシャ人、ギリシャ語は grego である。

なんかとりとめのない話をしていて、「それはギリシャ語か」と言われたら、意味がわからないと言われるのと同じだ。
意味がわからないと言いたいのなら、ロシア語でも中国語でも、もちろん日本語でも良いのだが、なぜかいつもギリシャ語に例えられるのだ。

「ギリシャ人のプレゼント」という表現があることはこのブログに書いたことがある、
ギリシャ人のプレゼントというと、トロイの木馬を指すのだろう。
何でも、もらって嬉しくないプレゼントのことらしい。

「ギリシャ風キス」という奇妙なフレーズがある。
アヌスへのキスという性愛のバリエーションを意味する。

ギリシャのつく成句はどうも普通でないものが多いようだ。
そしてギリシャは今、とてつもなく巨大なプレゼントを抱えてやって来たところだ。

2015年6月6日

ブラジル・イングレスは三つの敵

イングレスと聞いて何を想像するか。
日本でどれだけ流行しているのかわからないが、知っている人は、全地球をフィールドに見たてた仮想現実?現実仮想?ゲームを思い浮かべることと思う。

ポルトガル語で'inglês'というと、英語でEnglish、つまり"英国人"とか"英語"とかの名詞や、"英国の"などの形容詞になる。
ゲームの方は'Ingress'と綴るので、カタカナで書くとどちらも「イングレス」となる。
カタカナで書くと同じでも、発音は異なる。
日本ネイティブ、いやこんな言い方は嫌らしいから、「日本育ち」の人にとってなかなか苦手な'l'と'r'の違いがある。
英語耳のある息子と話をするときは、発音に注意しなければならない。

ブラジルでイングレス(ゲームの方)をする人なんかいるのか、と思っていたのだが、何回か付き合って徒歩や車で回ってみた。
これがなかなか面白いのだ。

近所にあるポータルは警察署と2つの教会である。
2キロ近く歩くと市役所前のオブジェ、スーパーCarrefourの標柱、隣接するショッピングセンターなどにポータルがみられる。

やはり学生は新しい物好きなのだろう、徒歩で通う大学キャンパス内はポータルの密度が高いのだが、息子が言うには、キャンパス内のポータルは激戦地であって、最近始めたばかりの彼のレベルでは歯が立たないという。
息子は緑組だが、キャンパス内は青組が優勢という。

しかし多少心配があるのだ。

ブラジルは交通マナーが荒っぽい。
もちろんところによっては、取り締まりの成果なのか、歩行者が待っていると車は止まって横断するのを待つという都市もあるのだが、歩行者優先というルールは基本的にないと言って良い。
スマホに気を取られてふらふらと車道へはみ出したりしても、車は必ず止まってくれて、せいぜい罵声を浴びせられる、のならばまだいい。
当て逃げや轢き逃げする奴も少なくないから、怪我損で目も当てられない。
普通の人ならそんなところでスマホなどいじる気になどならないだろう。

車の通行が少ない場所では、気が緩んで歩きスマホなどするかもしれない。
四輪車は重いけれど二輪車だったらぶつかったら相手も転倒するし、大したことないなどと軽く考える人がいるかもしれない。
その考えは甘い。
強盗やひったくりがある。
スマホでなく普通の携帯であっても、あまり通話やメッセージなどに気を取られてしまうと、怪しい人影がそっと近づいても気付かないで金目の物を奪われる危険がある。
二輪車の二人乗りはひったくり強盗の愛用の乗物だ。
そんな場所では普通の神経の人だったらスマホや携帯を取り出すのをためらうだろう。

イングレスというのはそんな懸念を押しやるような面白さがあるので、トキソプラズマの力に頼らなくても、危なげな場所でもスマホを取り出してポータルを我がものとするために何分か熱中することになってしまうのではないか。

住めばどこも都、住民になってしまえば近所は皆友達、大したことないのだろうが、外から見ると怖いのがファベラ(favela スラム街)である。
ファベラの中や周辺にもポータルがあるのだろうか。
ハックも命がけで値千金、千倍といかなくても2、3倍位のポイントが付いて良さそうである。

ファベラでも安全にイングレスをやれる方法はないのだろうかと、ここから妄想モードに入る。
実はイングレスに付属している物語を見ると、不法薬物とそれを密売する組織の抗争に例えられる点が多い。

ゲームで拾い集めるXMはエキゾチック・マターと呼ばれるが、これは人間の心身に啓発的な効果を及ぼす謎の物質と説明されている。
本当に啓発されるかどうかは知らないが、身体に効果を与えて、臨界量を超えるXMは影の存在の影響を受けて侵略される(日本語Wikipedia)ことなど、薬物依存や中毒そのものだ。
ポータルをリンクさせてコントロールフィールドを作り、その範囲内にある地域に住む人々を支配下に置く、というところは対立密売組織の抗争に当てはめることができる。

だから、対立組織の縄張り争いで発砲と流血が絶えない地域では、双方が銃器を収めて、販売エリア、まあ縄張りとも言うが、いっそのことイングレスで決めてしまったらどうか。

麻薬類の販売ポイントはポルトガル語で"boca de fumo"、直訳で「煙口」と言うのだが、これをポータルにする。
ポータルを所有している組がそのポイントで販売を行い、ポータル同士を結ぶエリアを得た組がそのエリアの支配権を得て、エリアに住む客、というかクスリを買いたい常用者に薬物を売ることができる、と決めるのだ。
薬物を欲しがる客はファベラ内にとどまらないから、ファベラ外の一般の住民や観光客も交えて仲良くイングレスをプレーして、商圏拡大を競い合うのだ。

現実に戻るが、きのうのテレビのニュースで、学校の周辺で児童や生徒たちが携帯を脅し取られる事件が多いという記事を見た。
初耳だったのは、最高価格帯のモデル(topo da linha)でないと、これは要らない、取っとけ、と返してくれると言っていたが、全部の強盗がそうなのかは分からない。
iPhoneとかGalaxyの一番高いのとかでなく、普通の価格や低価格モデルだったら心配する必要はないということになる。

結局ブラジルでイングレスをやるとき、敵は三つある。
プレー上の敵(Enlightened 対 Resistance)と、危険な車両往来と、強盗などの暴力である。
ヒャッハーでもよい、修羅の国でもいい、スリルはいや増す、ブラジルのエージェントの仕事は楽でない。

2015年5月29日

デング熱とソファと女性の関連性

今ブラジルでデング熱が流行している。
epidemia、つまりエピデミック(en. epidemic、po. epidêmico)であると宣言される地域が多い。
人口10万人あたりデング熱患者300人というのがその目安らしい。
2015年になってブラジル全国で75万人が罹病した。
昨年同期比+234%という。

デング熱には次の2つの重症ケースがあるという。

水分補給が追いつかないと体内水分が減少する。
その結果血圧が下がると危ない。

骨髄を冒すので血小板製造力が落ちる。
血小板が減少すると出血しやすくなる。
鼻血や歯茎の出血がみられる。
内臓から出血して重症の場合死に至るのが、出血性デング熱(Dengue hemorrágica)といわれる。

デング熱対策に一日22杯の水、という記事を書いたのであるが、デング熱上がりの友人に聞いたところ、そんなに簡単ではないらしい。
デング熱は急に症状が来る。
デング熱だけでなく風邪やインフルエンザなどで、人生一回も高熱になったことのない人はいないと思うのだが、高熱の習いとして、毛布を何枚かぶっても収まらないガクガクの震えが来たのちに、浴びるような汗をかくという繰り返しだ。
身体中の筋肉が痛いというから、全身筋肉痛という感じなのだろうか、とにかくだるく痛く何もできず、歩くのも立つのも苦しく、体がソファに張り付いてしまうらしい。
デング熱の症状に眼の奥の痛みと言われるが、彼の場合は片目だけ痛くなったという。

ソファに張り付いていたら、奥さんには、
「あんたそんな熱くらいで仕事休むの?皆勤賞がもらえなくなるでしょう」
と言われたので、彼は苦々しく、というか痛々しく答えた。
「冗談じゃない、この痛さは人生かって無かった辛さなんだ、お前病院へ連れて行ってくれないか、俺死にそうだ」

病院には同じような症状を訴える患者がすでに数人いた。
デング熱の疑いがあるとすぐに検査が行われる。
結果は4時間後に出るというので、いったん家に帰ったらしい。
陽性となったら市役所の動物課が、デング熱ウィルスを媒介するネッタイシマカの退治のため、家周辺に殺虫剤を撒いて近所の住民に注意を促す。
彼の場合には隣人が先にデング熱に罹ったので、既に蚊によってウイスルをうつされていたようである。

何も食べたくない。
水を飲めと言われても無理、喉を通らない。
オレンジやカジュー(カシューナッツの果実)のジュースと、スープの液体部分が口に入れることのできた全てだった。
点滴を一日2リットル受けた。

結局10日ほど仕事はできず、家で休養するしかなかったが、二度めにかかると重症の出血性デング熱に移行し易いと言われるので、再感染を心配している。

「現代ポルトガル語辞典」でdengueをひくと、
男性名詞 《ブラジル用法》①色っぽさ、色気、しな。②[子供が]むずかること。
女性名詞 [医学]デング熱。
と書いてある。

デング熱が女性名詞なのは、英語のfeverにあたるfebre(熱病)が女性名詞だから頷けるのだが、色っぽさや「しな」が、デング熱と関連があるのだろうか。
デンゴーザ(形容詞形・名詞形、つまり~な・~な人)と呼ばれる人は、色っぽい動作・様子をみせて男の気を引こうとする女性のことだ。
ということは、しなを作る女性とデング熱は同じようなものである、「誰でも一回はかかる、二回目は重い、運が悪いと命を失うこともある」と乱暴に解釈した。
しかし妻にはデンゴーザとデング熱とは全く関係ない、デンゴーザは女性、デンゲは病気、と言下に断言された。
こういった比喩はあまり好きでないらしい。

Dengosa という曲がある。
熱い愛情を求める女性である。
詩ではdengue(=dengo)の関連語を次々に連呼している。
dengosa, dengoso
denguinho
dengo
Elis Reginaが歌う軽やかなボサノバは、デング熱のどろんとした体の重苦しさと全く対極にある。

5月になって涼しい日も増えてきたから蚊も減って、デング熱も沈静化してきている。
これからはインフルエンザが心配になる。

2015年5月24日

感謝祭の赤旗は左翼ではない、精霊だ

五旬祭、ペンテコステ po. Pentecostes

日本で赤旗と言ったら共産党、ブラジルにも共産党はある。
一つだけでなく二つもある。

古い方はPartido Comunista Brasileiroといい、略称はPCB、創立は1922年である。
新しい方はPartido Comunista do Brasil、その歴史を見るとPCBから1962年に分かれてできたものである。
そのために名称は'Brasileiro'と似て異なる'do Brasil'を使っている。
略称はPCdoBペーセードベーと呼ばれる。
内部分裂は左翼のお家芸なのだろう。

泡沫候補とも言うが、独自候補を立てて玉砕するガチガチの古いPCBと比べて、新生PCdoBはより柔軟に連立を組む、まあ日和ってるのかも知れないが、現在の連邦政府の構成党であり、ワールドカップ時のスポーツ相で有名になり現在科学技術相であるAldo Rebelo氏はPCdoBに属する。
2014年の総選挙では党から初めての州知事、Flávio Dinoマラニョン(Maranhão)州知事を選出しているが、連邦政権党PTの仇敵PSDBの副知事とコンビを組んでいるのでわけがわからない。
現実主義の結果なのだろう。

ブラジル連邦政府と言ったら、共和国大統領を選出している労働者党Partido dos Trabalhadoresであるが、やはり赤旗である。

昨日テレビのニュースで見たデモは、参加者が赤い旗を掲げ赤いスカーフをつけている。
最近汚職、経済不振、綻びを繕うための増税緊縮政策で人気の落ちている労働者党政権を激励する官製デモか。
よく見るとデモの中に、野菜を満載した何台もの旧式の2頭立て牛車を、きれいな飾りをつけた牛たちが引いている。

暦は5月の下旬になったが、北半球の暦にあわせ6ヶ月ずらすと11月下旬になる。
カナダでは10月第2月曜日、アメリカ合衆国では11月第4木曜日が感謝祭になっている。
こちらはいま秋、ちょうど感謝祭の季節に重なる。

デモと早とちりしたのは、実はサンパウロ大都市圏の東方で、日系人も多く住むモジ・ダス・クルゼス(Mogi das Cruzes)の収穫を祝う行列だったのだ。
4世紀前から、というとブラジルという国が成立(1822年独立宣言)するずっと以前から続いている収穫感謝のパレードは、キリスト教行事ペンテコステの行列という。

そう、今日日曜日は五旬祭、ペンテコステ(Pentecostes)の日だ。
イエス・キリスト復活の49日後の日曜日については、聖書の使徒行伝あるいは使徒言行録に書いてある。

印象的なところを一部だけ引用する。
また、舌のようなものが、炎のように分れて現れ、ひとりびとりの上にとどまった。(使徒言行録2-3)
すると、一同は聖霊に満たされ、御霊が語らせるままに、いろいろの他国の言葉で語り出した。(2-4)

ニュースで言っていたのを聞いて、なるほどと思うことがあった。
「この日に精霊が降りてきて、意気地なしだった使徒たちが急に強くなった」と言った。
カトリック国であるブラジルのテレビが何気なく教えてくれた。

信心があるわけではない私が聖書を読んで不思議に思っていたのが、どうしてイエスの弟子たちは、何よりも大切な師が捕まり磔にされるときに散り散りに逃げ去ったのか。
情けないぞ、と思うだが、だからこそペドロ(ペテロ)の三度の否認とかのストーリーが語られ、涙なしに聞けない名作マタイ受難曲やヨハネ受難曲が生まれたともいえる。

冷静に考えてみれば、弟子たちがイエスの側から離れられなくて一網打尽で捕まって一緒に処刑されてしまったり、師を一人だけ引き渡すのは無念だとローマ兵と戦って全員玉砕したりしたら、話はそこで終わってしまって聖書が書かれることはなく、現在の世界と全く異なるバラレルワールドになってしまっただろう。

イエスの側にいたから強い信仰をもてるのではない。
そうだったらイエスなき時代に生きるものたちは誰も信仰をもてないではないか。
そうではない、イエスの側にいた時は弱虫だった弟子たちが、精霊の導きによって強い信仰を持てるようになった。
イエスなき世のわれわれにもこれならできそうだ、と思わせてくれるのが大切なのだ。
それが神の思し召しなのだ。

ペンテコステのできごとは教会の始まりと言われている。
もちろん赤い旗や赤いスカーフは、共産党でも労働者党でもなくて、一人ひとりの上に降りてきた、「舌のような炎のような精霊」をあらわしているのだ。

使徒言行録2-4に描かれたことが日本で起きたら、神社は語学学習成就のお守りや絵馬をきっと作るだろう。

2015年5月10日

不運なポケット

昨日のテレビで気になるニュースがあった。
サンパウロの繁華街、衣服などが安い3月25日通り(rua 25 de março)と言ったと思う、そこで強盗団、というかひったくり団が出没している。
それだけなら大して珍しくもないが、東洋人(orientais)が被害者になっていると言ったから、これは大変だ。

このニュースで指摘したことはかなり信憑性がありそうだ。
なぜ東洋人が狙われるか。
東洋人はポケットに金を入れて歩くことが多い、と言うのだ。

だったら、西洋人というか普通のブラジル人はポケットに金を入れないのだろうか?
手提げカバンやショルダーバッグを持つのだろうか。
バックパックを背負ったり、危ないところでは腹の前に抱えるのだろうか。
そもそも現金をあまり持ち歩くことはないのだろうか。

私はよくポシェッチ(pochete)を使う。
ダサくてもこいつを腹の前につけて、しかもシャツは外出しだからシャツの下に隠す。
なおポルトガル語でいうポシェッチとは、日本語のポシェットとは異なるものを指す。

手口はこうだ。
ひったくり団は複数、テレビカメラにとらえられた画像では4人いた。
3人が羽交い締め、手足を押さえつけてから残りの一人がポケットに入れてある札入れを抜き取るという、武器は使わないもののかなり荒っぽいやり方で、犯行時間は10秒もかからない。

一人で5万レアルの被害を被った人がいると言った。
ちょっと待った。
ブラジルの最高額紙幣は100レアル札である。
5万レアルと言ったら500枚でないか。
100枚を紙帯でくくった束の厚さがどのくらいかは知らない。
1センチとしたら、5万レアルは5cmの厚さになる。
もちろん大きさは100レアル札の大きさだ。
そんなかさばる現金の束をポケットに入れて一人で歩くような、不用心な者がいるのだろうか。

その元になった記事を探してみたが、読んでみると少し違う。

テレビカメラに捉えられた4人だけでなく少なくとも15人いるという。
東洋人、と言われていたのは、記事内では「中国人の商人」と、かなり限定している。
強奪されるものは現金、携帯電話、宝飾品とされていて、ポケットの中の現金などとは書いていない。
といったようにテレビで聞いた記事と、書かれた記事とは多少異なるのだが、まあいい。

事件が起きたのはサンパウロであるが、来年リオでオリンピックもあることだし、用心に越したことはない。
「東洋人はポケットに金を入れて歩く」というような風説が広まると、ポケットに何も入れてなくても、襲われかねないからである。

「ポケットの中には札束が一杯」にしておくと、増えるどころかどつかれて一文無しになるという、「不運なポケット」となってしまうという惨めなオチである。