2012年4月24日

トキソプラズマにあやつられるブラジル人

日経ビジネスオンライン
ネコが人を元気にする科学的な根拠
寄生虫のなせる技?
石 弘之 2012年4月16日(月)
を読んだ。

猫に寄生する原虫トキソプラズマがネズミに感染すると、ネズミの行動が変わってネコに食べられやすくなるというのだ。
寄生されたネズミは、脳内物質のドーパミンが多量に分泌されて「威勢がよくなり」ネコを恐れなくなるという説だ。

トキソプラズマに寄生されて威勢がよくなるのは、ネズミだけではない、人間も同様なのだという。

ドーパミンは最近よく聞く言葉だが、快感や感動したときに脳内で放出される物質だ。
興奮するだけでなく、行動を起こす動機づけ効果があることもわかってきた。
「やる気が出る」ドーパミンである。

トキソプラズマに感染した人は、世界人口の3分の1と推測されている。
結構多いものだ。
感染率は地域により差があり、韓国は6%にすぎないが、ガーナは92%と高い。
日本は20-30%とされており、世界平均より少し少ない。

スタンフォード大学のパトリック・ハウス博士は、ワールドカップ2010南アフリカ大会の成績と、国民のトキソプラズマ感染率との関連を調べた。
サッカーの強さとトキソプラズマ感染率とには相関関係があるという。

FIFAのランキングトップ25ヶ国を感染率で並べ替えると、上位からブラジル(感染率67%)、アルゼンチン(52%)、フランス(45%)、スペイン(44%)、ドイツ(43%)となり、このなかには過去10回のワールドカップの優勝国がすべて含まれている。
イギリスやイタリアは、例外的にトキソプラズマ感染率が低いサッカー強国という。

ハウス博士は、トキソプラズマに感染すると男性ホルモンのテストステロンの分泌が増えるので、積極的、攻撃的になってこれがサッカーを強くするというのだ。

そうか、ブラジルは3人中2人はトキソプラズマに感染して、男性ホルモン満々なのか。
ネコが広く飼われているという感じはしないのだが、シュラスコ(po. churrasco バーベキュー)でがつがつと生焼けの肉を食べることが多いから、トキソプラズマが広がりやすいのだろう。

ラテンアメリカはmachismo「マッチョな気風」があるというのも、トキソプラズマのせいなのか。
トキソプラズマのせいで、女性もなかば男性化して、社会進出も進んでくるのだろうか。
ジルマ・ルセフ(Dilma Vana Rousseff)大統領(ブラジル初女性大統領)も、トキソプラズマを持っているのだろうか。

ブラジルがサッカーが強くなるのは良いが、ネコを恐れなくなるネズミならぬ、交通事故を恐れぬ運転者とか、警察を恐れぬ犯罪者とか、汚職買収を恐れぬ政治家とか、税務署を恐れぬ企業家とか、危ない人間が多いのはトキソプラズマのせいにして良いのだろうか。

2010年のブラジル交通事故死は40,610という恐るべき数であった。
また、ブラジルの殺人数は実数で世界一、2009年に43,909人だった。
総人口(分母)が多いから死亡数(分子)も大きくて当然だが、ブラジルはいいところだと吹聴したい私は、あまり良い気はしない。

元記事に戻る。
カリフォルニア大学サンタバーバラ校のケビン・ラファティ博士のように、ネコからのトキソプラズマ感染は、人の探求心や知的好奇心を形成した重要な要素であり、人をより人らしくした、と主張する研究者もいる。

ブラジルにとっては救いだ。
しかし、この説にならうと、ガーナは人間らしさ満点の国で、韓国は人でなしの国ということになってしまうが、これでいいのか?

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