2020年2月4日

45日季節先取り東洋人

1年に4つの季節があるのは、少なくとも言語の世界ではどこも共通であると思われる。
日本語でも、英語でも、ポルトガル語でも、春夏秋冬にあたる単語が存在する。
赤道直下であって実際の季節変化が従わなくても、言語上は1年は4つの季節があり4分割される。
アマゾン地方では雨の少ない乾季を冬と呼ぶので、実は冬は夏より暑い、と聞いている。

そして北半球では、というより東洋では、2月4日は立春である。
しかしブラジルでは何のこともない普通の日である。
南半球に投影すると立春は立秋に対応するのであるが、この日に秋が立つ(始まる)などど誰も言わない。
「夏の真ん中の日」とか言われたり、ましてや祝ったりなどされない。

ブラジルの季節の始まりと終わりは、暦から極めて明確に決められる。
秋が始まるのは立秋ではなく、秋分点、つまり2020年なら3月20日0時49分である。
春は(南半球の)春分(Vernal Equinox)から始まる約90日
夏は(南半球の)夏至(Summer Solstice)から始まる約90日
秋は(南半球の)秋分(Autumnal Equinox)から始まる約90日
冬は(南半球の)冬至(Winter Solstice)から始まる約90日
各季節の一日目は、東洋ではその季節の真ん中の日に当たる。
「東洋(あるいは東方)」とは漠然としているが、下の参照リンクで中国語名、朝鮮語名、ベトナム語名、日本語名があるのでこう呼んでおく。

面倒なので1年を、商が整数となるように360日とする。
そうすると太陽が天球をめぐる黄道の1度が1日に対応する。

東洋の暦で節分をもって季節を区切る考え方は、1年を8分割する。
春 立春から45日、春分から45日
夏 立夏から45日、夏至から45日
秋 立秋から45日、秋分から45日
冬 立冬から45日、冬至から45日

そして
分点 = equinox (en.) = equinócio (po.)
至点 = solstice (en.) = solstício (po.)

については英語もポルトガル語も対応する単語があるのだが、節分、立春、立夏、立秋、立冬に対応する単語はみつからない。
ましてやより細かい二十四節気に対応するような単語は存在しない。
"Solar term"をみると英語訳と言うか、意味の説明がある。

そんなわけで、南北半球の180日の反対の季節を調整しても、東洋人は45日先取りして次の季節を待ちわびるような、繊細な気候の捉え方を持ち合わせる。

もちろん実際の気温と合わないので、例えば立春は「暦の上では今日から春」というような決まり文句がつくのであるが、区別がつきにくくはっきりしないブラジルの四季推移と比べると、日本は自然現象に変化が多くて美しく趣があるものだ。
代償として夏暑く冬寒いのは仕方がない。
日本に住む人よ、90日経てば次の季節が巡ってくるのだから、感謝しながら我慢しよう。

2020年1月12日

2020年のキリスト教移動祝日

2020年のカーニバルは何月何日か。
米国のカーニバルで有名なニューオーリンズのサイトがあって、2056年までのMardi Gras(マルディ・グラ)の日付がここでわかる。
Mardi Grasとはフランス語で確か「肥えた火曜日」と言う意味だったと思うが、ブラジルでは普通にTerça-feira de Carnaval「カーニバルの火曜日」と呼ぶ日である。

カーニバルがキリスト教行事かというと巨大な疑問であるが、少なくとも日付の決め方だけは教会に従っている。
このようにキリスト教行事の中には、毎年、天体の月の動きに応じて日付が移動するものがある。

年の後半にある、知らない人はいないクリスマスは12月25日(ブラジルの祝日)、ブラジルでは死者の日(Finados)と呼ばれる万霊節は11月2日(ブラジルの祝日)―これはハロウィン(10/31)-万聖節(11/1)-万霊節(11/2)と続く―と、毎年同じ日付に決まっているが、年の前半にある宗教祝日は移動するものが多い。

2020年の移動宗教祝日を下に一覧表にした。
復活祭の日、2020年ならば4月12日日曜日が、一連の移動祝日の基準になっていると言ってよい。
2019年より9日早い。

復活祭の日付の決定方法について過去の記事に説明した。

待降節(Advento)は、クリスマスに備える期間であるが、その第一日は日曜日に決まっていて、11月30日の「聖アンデレ(Santo André)の日」に最も近い日曜日からクリスマスイブまでの約4週間で、最も早い年で11月27日、遅い年でも12月3日に始まる。
アドベント期間には必ず4つの日曜日が含まれる。
つまり年の前半の移動祝日とは、その決め方が全く異なる。

行事日の決まり方2020年休日種類
カーニバル
Carnaval
週末から灰の
水曜日前日4日間
2月24-25日
月火曜日
PF
灰の水曜日
Quarta-feira de Cinzas
復活祭46日前の水曜日2月26日水曜日14時までPF
四旬節Quaresma灰の水曜日から復活祭前日
枝の主日
Domingo de Ramos
復活祭7日前の日曜日4月5日日曜日
聖週間Semana Santa枝の主日から復活祭前日
キリスト受難日
Paixão de Cristo
復活祭の2日前の金曜日4月10日金曜日FN
復活祭Páscoa北半球春分の次の
満月の次の日曜日
4月12日日曜日
ペンテコステPentecostes復活祭の49日後の日曜日5月31日日曜日
キリスト聖体の日
Corpus Christi
復活祭の60日後の木曜日6月11日木曜日PF
今年から次も入れよう
待降節初日
Início do Advento
11月30日に最も近い日曜日11月29日日曜日

ブラジルで国定祝日(feriado nacional - 上表ではFN)、任意出勤(ponto facultativo - 下表ではPF)になっている日と、特に休日になっていない日がある。
任意出勤というのは、条例や労使協定によって、地方自治体、職種組合や職場ごとに、休日とするか勤労日とするか決められる。
大部分の勤め人にとっては、普通の休日となることが多いが、商店は営業するところと休むところがある。

2020年1月11日

2020年のブラジルの祝祭日

連邦政府の経済省は、2020年の祝日と任意出勤についての通達PORTARIA Nº 679, DE 30 DE DEZEMBRO DE 2019を2019年12月31日付官報に掲載した。
下の表はこれに準ずる。
2018年の管轄省は企画開発管理省であったが、2019年1月に就任したボルソナロ大統領の省庁統合のため、今回は経済省の部門となっている。
そして条文に断っているように、本来の目的は連邦行政官庁の休日を定めたものである。

一連のキリスト教関連の移動休日は、2019年より9日早くなる。
たとえば2019年の灰の水曜日は3月6日、2020年は2月26日であるので6+3(2020年はうるう年)=9を引いた日になる。

暦のために年々移動する固定祝日の曜日が週末(土日)と隣接する連休日は、2019年では3日しかなかったが、2020年は7日あることが話題になっている。
ブラジルの暦には振替祝日はないので、年間実質休日数は毎年増減する。
給料をもらう労働者は休みが多くて喜ぶが、雇用主は休業するか休日出勤手当を払うかしなければならず、良いことがない。

1 1月1日 Confraternização Universal 世界友好の日 FN
2,3 2月24-25日 月火 Carnaval カーニバル PF
4 2月26日 quarta-feira de cinzas 灰の水曜日 14時までPF
5 4月10日 Paixão de Cristo キリスト受難の日 FN
6 4月21日 Tiradentes チラデンチス FN
7 5月1日 Dia Mundial do Trabalho 世界労働の日 FN
8 6月11日 Corpus Christi キリスト聖体の日 PF
9 9月7日 Independência do Brasil ブラジル独立の日 FN
10 10月12日 Nossa Senhora Aparecida アパレシーダ聖母の日 FN
11 10月28日 Dia do Servidor Público 公務員の日 PF
12 11月2日 Finados 死者の日 FN
13 11月15日 Proclamação da República 共和制宣言の日 FN
14 12月24日 véspera de natal クリスマスイブ 14時以降PF
15 12月25日 Natal クリスマス FN
16 12月31日 véspera de ano novo 大晦日 14時以降PF

注:FN = Feriado Nacional 国定祝日、PF = Ponto Facultativo 任意出勤


Feriado Nacionalは国定祝日であるが、もう一つのPonto Facultativoは任意出勤という意味である。
職種や企業や自治体によって働くか休むかが決められる日である。
各人が勝手に自分の都合で出勤したり欠勤したりして良いという意味ではない。

10月28日(水)の「公務員の日」(Dia do Servidor Público)は、民間は通常日であるが、(連邦の)官庁は任意出勤となる。
2019年のこの日には、市の消費者保護機関は通常通りに仕事をしていたが、州の裁判所は閉まっていた。
国営銀行とみなされるブラジル銀行(Banco do Brasil)と連邦貯蓄銀行(Caixa Econônica Federal)について、この日に営業するかは確実でなく、注意する必要がある。

当表の連邦政府が定める全国一円の休日のほかに、各地で市、地方あるいは州の記念日が数日定められていることが多い。

次のサイトで、任意の過去・将来年の、任意の国の休日が入った月齢付きカレンダーを閲覧・印刷できる(英語・ドイツ語・当国語-ブラジルならポルトガル語)。
このリンクはブラジルの2020年

2020年1月3日

風のようにゴーン

2019年から2020年の年末年始の大ニュースは、カルロス・ゴーン(Carlos Ghosn)大逃走であった。

見張られている建物に人が入って、そこから人が消えてしまうケースで思い出すのは、サウジアラビアのジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏の殺害事件である。
この事件は2018年10月2日、舞台はトルコ、イスタンブールのサウジアラビア公館であった。
つまりサウジアラビア政府公認に近い殺害である。

現在でも「サウジアラビア総領事館内で殺害されたとみられる」という書き方しかできないのは、トルコの警察権が及ばない外国公館敷地で溶解されたとか、灰になったとか、分断されて運び出されたかわからないからであろう。
何よりもサウジアラビア政権そのものであろうムハンマド王子が黒幕となっていると推定されたが、確たる証拠がないということだ。

これら事件から類推できるのは、次のことである。
  • 貨物を搬送する業者がグルだったり、買収されている可能性が高い
  • 見張る建物には、人間の出入りだけでなく、生きている人間が入れる大きさの貨物の出入りも注意しなければならない
  • しかし死んだ人間の場合はもっと小さな荷物に小分けされることも想定しなければならない
  • 容疑者が権力者の場合、捜査結果は真実とは限らない可能性がある
  • そしてこの世の沙汰は金次第-裁判官を買収しなくても、高額保釈金支払いも、大掛かりな逃走でもなんでもできる
一番最近のニュースによると、カルロス・ゴーンはフランスのパスポートを2通持っていて、一通は弁護士のもとにあったが、もう一通はゴーンの手元のケースにあって、弁護士は鍵だけを保管していたのを今になって思い出したというから、全くこれは出来レースであることがわかった。

現在所持しているパスポートを紛失とか盗難とかの虚偽の理由で、回数が多いと怪しまれるだろうが、1回くらいは再発行してもらうことは可能であろう。
最近のパスポートは万国共通のフォーマットで、表紙裏(1ページ目)に英数字2行記載で、内部に非接触ICカードが埋め込まれている。
出入国時に物理スタンプを押さない場合でも、ICカード情報には出入国来歴が電子的に記録されるのだろうか?
再発行に関しては次の2つの疑問がある。
  • 再発行のタイミングで最初のパスポートの無効手続きが行われて、任意の国の入出国管理で最初のパスポートを読み取り機に通したときに、オンラインで発行国データベースにアクセスして、即座に無効パスポートであることがわかるか
  • 新しいパスポートを機械読み取りして発行国データベースに照会をしたときに、元のパスポートが行方不明になっている、少し怪しい再発行パスポートであることがすぐにわかるか
具体的にはこうするのだろう。
  1. 将来没収されることを予期して、現行パスポートを隠しながら紛失したと言って再発行してもらう
  2. 裁判所よりパスポートを提出するよう命令が出たら、隠しておいた古いパスポートを裁判所に渡す
  3. 新しいパスポートを使って逃亡する
ゴーンは三重(あるいは四重)国籍なので、フランス、レバノン、ブラジル(とナイジェリア)それぞれに再発行してもらい、理論的には6通以上を所持することが可能である。

だいたい抜け目なく頭の切れると評判の辣腕弁護士が、パスポートが2通あるという最重要なことを忘れるわけがない。
そして、弁護士や裁判官は、フランス発行で有効なゴーンのパスポートが2通出てきたとき、不審に思わなかっただろうか?
仕組まれた茶番劇であることが推察されるのである。

これから想定されたシナリオに従って、各参加者は予想される行動をして予想される反応をしていくだけである。

警察・検察は「逃げたということはクロ、だから裁判所にあれだけ言ったのに、我々の捜査は正しかった」
裁判所は「法律の要件に従って妥当な保釈金であったし、法律が許す範囲のことは不公平なく行ったから保釈に落ち度はなく、裁判続行できないのは残念である」
法務省入国管理局は「パスポートの照合による出国管理は万全であるのに、我ら税関ではないから荷物の中まで点検する権限はない」
弁護士「依頼人の裏切りだ、パスポートに関しては人間誰も忘れることがある」

一応どの参加者も自分が責任者でないと、他人に責任押し付けが可能だ。

カルロス・ゴーンを受け入れる側の国の事情はどうだろうか。

カルロス・ゴーンが四重国籍(ポルトガル語Wikipediaによる)をもつようになった理由は、
  • レバノンは1920年-1943年に大レバノン État du Grand Liban と呼ばれるフランスの委任統治領であった
  • 祖父がレバノンからブラジルへ移住した
  • その息子(カルロスの父)はレバノン系ブラジル人になるが、ナイジェリア生まれのレバノン人である女性(カルロスの母)と結婚した
  • カルロスは生地主義であるブラジルで誕生した
ということだろう。

まずフランスは、3カ国の中で一番日本と価値観が共通している。
共和国制度の雄であり、成功した立憲君主制民主主義国家と自認する日本とはG7仲間でもあるから、ゴーンが入国したら、日本からの要請を外交的に対応する必要がある。
富裕層寄りとみられているマクロン政権は、富裕層と労働階級に国内を分断している、黄色ベスト運動や年金改革反対スト・デモという国内問題に苦しんでいる。
マクロンがゴーンの強い味方と自認することは、反対勢力の反発を呼ぶ可能性がある。
英国が抜けるのでEUの大国として事後のEU引き締め対策も大変である。

フランス側でもルノー経営に関わるゴーン捜査が行われているため、ゴーンがフランスにいるなら本格捜査が行われるだろうから、ゴーンは日本に引き渡しはされないとしても、フランスを避けたい理由がある。

ブラジルはどうか。
日本からは投資を呼び込んで経済的結びつきを強固にしたいブラジル政府は、日本政府との間に障害を生ずることは避けたい。

ブラジルでは、カルロス・ゴーンはブラジル人であることをニュースでは必ず言うが、「困っているならブラジルに来るべきだ」という意見は、少なくとも表立っては全く聞いたことがない。
ボルソナロ大統領はイスラエルを盟友と考え、他のイスラム・アラブ世界とは少し距離を置く。

以上のような理由で、フランス政府もブラジル政府も内心は、ゴーンには来てほしくないと思っているだろうと私は想像する。
日本との要らぬ対立は避けたいので、来られると面倒なのだ。

ゴーンが国籍を持つ3つの国のどこが受け入れることになったとしても、引き渡し協定のない日本に自国民を引き渡すことは、自国民保護の原則から絶対に実現しない。
ペルーのフジモリ元大統領が日本に亡命したことを見れば、それは当然な反応だ。
そのため日本との間に外交交渉が行われるはずだが、ゴーンを守りながら日本の言い分をうまくさばかなければならない。
特にフランスはルノー日産事情があるから、日本政府とのいざこざは避けたいはずだ。

その意味で日本政府にとって、一番外交的親密性が薄いと思われるレバノンに逃亡してくれたのは一番好都合だったと思う。
日本政府・司法にとってゴーン奪還は無理であっても、面子がつぶれる度合いが一番少ない。

さてカルロス・ゴーンである。
インターポールで指名手配の身では、少なくとも日本と取引がある国際的大企業の経営者に就任することは無理である。
国籍を持つ国以外へ旅行したら、逮捕されて日本へ引き渡されることを心配しなければならない。
事実上レバノン軟禁に近い状態であるから、これまでに貯めた財産は十分あるのだから引退するか、どうしても仕事をしたいのならレバノン国内で日本とは全く縁のない事業に携わるしか道はない。

著名企業の経営者となる可能性がないのだったら、当初は記者がちやほやして、日本司法批判や自伝の著作の依頼などがあるかもしれないが、公演やセミナー活動がレバノン国内でしかできないのだから、いずれは割と短時間に国際的に忘れられる運命ではないか。

ゴーンの復讐とか鳴り物入りで当初騒がれるかもしれないが、日本司法はそのときだけ丁寧に、人質司法に関して反論すれば良いのである。
ゴーンが逃亡した状態で日本司法を批判して得られるメリットが考えられない。
レバノンで論争に勝ったからと言っても指名手配状態が消滅するわけではなく、法廷で決着がつかなければ全世界を胸を張って歩ける身分には戻らない。

レバノンに落ち着くカルロス・ゴーンも、日産が日本の会社であって、中国の会社でなかった運命に十分感謝しているはずである。

2019年12月30日

自由裁量田舎バス

前に話題にしたワンダー一杯田舎バスの路線は時々使うのだが、半年くらい前の、ブラジルのこのあたりでは寒い日のできごとを思い出した。

一年で一番寒い日は6月から7月の頃に起きる。
日は短く夜の訪れは早く、寒さのため出歩く人は少ない。
夜7時ターミナル発でやって来た路線バスに7時10分ころ乗ったら、先客は男女二人であった。

ブラジルの市内路線バスは料金均一であることが多いが、前乗りで料金を支払うかICプリペイドカードをタッチして、乗客数を計数するカトラカ catraca、あるいはロレタ roletaと呼ばれるターンスタイル(回転木戸)を回して後ろ側の広い区域へ入るようになっている。

木戸を回して私達が入ったのだが、後ろ側に女性がひとり座って私達を呼ぶ。

「ちょうどよかったあんたたちが乗ってきてくれて。わたしたちすぐ先で降りるから。この運転手新人だから道順教えてあげて」

「教えるってどうするの?」

「私のダンナが前にいるでしょ。運転手に説明しているの」

「なんで乗客が道順教えなければならないの?」

「夜運転するのが初めてで自信がないんだって」

「え、でも俺あの農場地域の土道のところ、夜しか通ったことないから道案内などできないよ。バスが道間違えたら、知らない狭い道で真っ暗な中で方向転換なんて無理だよ」

「行かなくていいから」

「今なんて言った?」

「あの土道には行かなくてもいいそうよ」

「でも路線図を見ると、あそこへ行く決まりだろ?(しかしあの区間で人が乗り降りするのを見たのは、これまでにたった一回だけだし、きっと今夜も誰もいないだろう)」

確かに「ツバメ公園」集落を抜ける前に、道案内夫婦は降りていった。
今度は私達が道案内する番だ。
他に乗客はいないので言った。

「運転手さん、道路がよく見えるように室内灯消していいですよ。安全第一でよろしく」

果たしてバスは方向転換点であるバル「揚げ魚」に着いた。
寒い日でバル「揚げ魚」も、営業しているのかどうかわからないほど閑散としていた。
バスの転回スペースを邪魔する無法駐車もなかった。

「確かこの辺にUターンする所があったよな?」

(全く頼りないな)と思ったが、冷静に教えなければ自分の身が危うくなる。

「右側の大木のところで右側に大回りして、木を一周して方向転換するんだ」

バスはぎくしゃくしながら、慣れている運転手だったら必要のない2回ほどの切り返しをして、もと来た道へ向きを変えた。
普段から往来の少ない道だが、道を塞いだときに対向車がなくてよかった。

舗装された本道と農場地域へ入る土道との分岐がある「肌黒男たちの小屋」のロータリーを回っているとき、運転手にどの方向へ抜けるのか確認のために聞かれた。
確かにこの田舎のロータリーには、行先案内標識など全くない。
それが最後の質問であり、後は道に迷ったり質問されることもなく、バスターミナルに着いた。

運行路線を短縮したのは一体誰の権限なのだろうか。
もしも私達がいなかったら、果たしてこのバスはバル「揚げ魚」まで、いやそのずっと手前の「肌黒男たちの小屋」集落まで行っただろうか。

それとも誰も乗客がいないのを良いことにして、「ツバメ公園」集落で打ち切って、バスを止めて少し時間つぶしをしてから、しらっとした顔でターミナルへ帰ってしまったのではないか。

運転手が勝手に運行路線を短縮してしまったら、多分装備されているタコメーターでバレてしまうはずだが、バス運行本部もグルなのか?
ブラジルの田舎路線バスについての、答えのない疑問はたくさん残っている。

2019年12月15日

環境の決め手は中国とマトリックス

COP25がマドリッドで開催されているが、最終声明に手こずっている。
環境問題であるが、私たちは地球を守る必要などない。
何より地球を守るなどと大それたことなどできないし、地球は人間の営みなどで壊れることはない。
壊されるのは人間、多分その一部と、哀れにも巻き添えを食ういくらかの動植物であって、地球は壊れない。
地球は強靭で崇高なものだ。

火星や金星には、昔は空気や水があったと信じられているが、誰も悪さをしないのに、現在は呼吸できない薄い大気とか、高圧高温の有害な大気という厳しい環境になっている。
火星や金星自体は、多分外観がかなり変わっているかもしれないが、びくともしていない。
地球もそれと同じで、表面で何が起きようとも全く気にしていない。
惑星に意識があったとしての話であるが。

二酸化炭素が増加しているからと言っても、それは大昔に植物やプランクトンであった炭素が、石油や石炭のような炭化水素に形を変えたいわゆる化石燃料が、大気中に放出されているものである。
大昔の地球は、植物がおきなく吸収して繁茂できるほどの二酸化炭素の濃い大気であり、高温多湿であったであろう。
どんどん育ってから次々に倒れて地面に積もり重なり合って、腐った植物が高圧で固体になったものが石炭だと教わった。
海中にはプランクトンも大量に繁殖して、海底に積もったその死骸が地殻変動で地中に取り込まれて高圧・高温の作用で濃縮された炭化水素になったものが原油と理解している。
1億年以上に渡って地中に蓄積された炭化水素が、ここ数百年で全部放出されたらどうなるのか。
  1. 大気中の二酸化炭素濃度が増える
  2. 温室効果で気温と表層海水温が上がる
  3. 極地方の氷が溶けて海面面積が増大する
  4. 海面の蒸発量が増える
  5. 高温多湿のため巨大低気圧が陸地を襲う
  6. 豊富な二酸化炭素、水、高温多湿のため石炭紀のような植物が進化する
  7. 石炭紀の再来
というわけで、地球はちっとも困らない。

もう面倒だから何も環境対策をしないというのはどうだろう。
温暖化などがほら話だったなら万歳、不幸にも災厄が本当に起きたのなら、残念ながら人類社会の弱いところが犠牲になって人口を減らしてもらう。
人口が減って生産活動の規模が小さくなれば、環境への負荷の排出は同様に小さくなって、環境を生命維持が難しい方向へ悪化させてきた要因はなくなる。

でもそれはあまりにも無策と言われそうだから、妄想を働かしてみる。

環境が悪化していく途上で、今はかなりバラバラな科学者の意見が収斂して、全人類の賛同を集結することができて、全世界の国々の指導者が団結することに成功すれば、放っておいたら更に人類生存に不適になる環境悪化をくい止めて、その修復のために人類の全力を傾けるという、感動的な復活のシナリオが描けるだろう。

バラバラな科学者の意見を調節するためには、難しそうだが、世界に唯一の地球気候変動に責任を持つ気候変動定義学会を作って、できるだけ多くの観察・実験結果から計算に使われる多数の係数を世界一意に決定して、唯一の全地球モデルによる気候予測を算出する。
人類活動による二酸化炭素(とその他の温室効果を起こすガス)排出と気候変動の間に因果関係が存在するのならば、異論が出なくなるまで、環境悪化は容赦なく続き、データは蓄積して、因果関係存在説への賛同がどんどん増えるだろう。
検討し尽くされて誰もが納得したこの段階から先、異論やちゃぶ台返しは絶対許してはいけない。

拒否権によって何も決まらないような安全保障理事会など廃して、気候変動定義学会の成果を忠実に実現するため、絶対的な強制力を持つ地球未来総会を創設して、その指揮のもとで各国は温室効果ガス削減を指導・監視される。
そうだ、この期になってまだ権力にしがみついて、生活緊縮から逃げ切ろうとする、年金受給世代の影響力を削ぐために、前回の記事環境は年金と同じ老若対決で書いたように、年金負担世代の投票権を2倍にすることを、地球未来総会は世界中の民主主義国へ強制しなければならない。
絶対君主国や独裁国にはその強権を発揮させて、地球未来総会の決定に国を従わせる。
人類生存の危機だったらできるだろう。

理論的に言えば、国民一人当たりが大量の二酸化炭素を排出している国は、削減すべき量が大きくなるはずである。
ただ、誰でも今優雅な暮らしをしている人は贅沢を失いたくない。

現在ブラジルを含めて開発途上国が持っている不満は、先進国は環境問題などなかった時代に、時には植民地を利用して化石燃料を自由に使って豊かになることができたのに、環境政策の制約のため、途上国に豊かになる権利がないのは不公平であるというものだ。
それだったら、豊かな国、つまり国民一人あたりの温室効果ガス排出量が多い国の必要削減量の一部を、貧しい国に支払うことにすれば良い。
難民を流出させるような途上国は大部分熱帯近くにあって、当然国民一人あたりの温室効果ガス排出量は低いはずであって、温室効果ガス削減量の移転を受け取ることができる。

ただでお金がもらえるのではなく、その代償は、移転された資金を使って、絶対に難民を他国へ流出しないで暮らせるような仕組みを国内に作ることである。
祖国で十分人間的な暮らしを送れるのならば、難民として他国を目指す必要がなく、摩擦を起こす原因となりうる人間の移動を制限できるのなら、制度化された国際的なベーシックインカムであっても構わないと思う。
難民問題はこれで解決。
人類生存の危機だったらできるだろう。

温室効果ガス排出量を的確に捉えることはできるか?
産業場面では当然農業や工業の生産でも、サービス業のサービスでも、経済活動にコスト計算がされているのだから、温室効果ガス排出量はどちらかというと算出しやすい。
世界中の会計士よ、あなた達の出番だ。

問題は個人の活動である。
ブラジルのように貧富の差が世界一、二の不公平な国であったらどうするのか。
下手に平均で語っては、貧富の差による不公平は埋まらない。
どうするのか。

中国のようにキャッシュレス支払いシステムと顔認識機能つき監視カメラをめぐらして、国民の行動を全部記録するのである。
国民一人ひとりの行動を追跡して、牛肉を1キロ食べたから何グラム、飛行機で1000キロ移動したから何グラムといった標準排出量を合計すれば、その個人の一ヶ月とか一年とか単位期間当たりの温室効果ガス排出量が出せるはずである。

共産党幹部が素直に従うかは非常に疑問が残るが、全世界で実施することに全世界が同意するくらい気候悪化が切羽詰まったら、中国政府が経済分野のようにええかっこしいして、ついでに儲けを取ろうとシステムを全世界に売りまくる算段をして、結構率先してやるかもしれない。

現在の中国の技術と監視体制でも国民が、都市部だけではあろうが、何を購入して何を食べて、どこへどの交通機関を使って移動して、そこで何をしたかが、かなりわかっているのではないだろうか。
国民個人の信用力が調査されて、様々な場面で使われているらしい。

そうすれば今贅沢をしている人は排出量削減目標は大きく、美食や観光は諦めるように命令され、慎ましい暮らしの人は目標は小さく、今の暮らしとあまり変わらないことだろう。
反社会的勢力は命令から逃れようとするだろうから、本番に入る前に先進国の排出量移転の資金を利用して徹底的に潰す。
貧富の差という社会問題はこれで解決。
人類生存の危機だったらできるだろう。

行動と精神の自由を制限されてまで生きたくない?
今から全世界総力でAI技術を集結して、もうマトリックスのように何もしないでカプセルの中で培養されて、仮想現実世界で思いっきり贅沢をすればいい。
人間の精神の自由の問題はこれで解決。
人類生存の危機だったらできるだろう。

2019年12月14日

環境は年金と同じ老若対決

pirralho, -a 名詞 子供;小柄な人
ativista 名詞男女同形 活動家

ごく最近世界のニュースで注目されたポルトガル語の単語がある。
ブラジルのボルソナロ大統領がグレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)を語るときに形容した単語、pirralhaである。

ポルトガル語の綴りと発音規則を知らないと多分どう発音するのかわからないだろう。pirralho ピラーリョ、私の地方の発音に従うとピハーリョ、「ガキ」とは書いてないが、上の訳は辞書によるものだ。
グレタは女性なのでpirralha ピラーリャである。

グレタ少女が米国の雑誌Timeの「今年の人」に選ばれて表紙に載ったことに反応したトランプ大統領であるが、自分がとってやろうと目論んでいるノーベル平和賞を、下手したらさらわれそうだという恐れから出た発言ではないかと思ったりする。
「俺より目立っているから癪だ」という理由かもしれない。

この「とんがった少女」は、もう将来の道は活動家に決まったようなもので、政治家になる可能性も高いが、世界はその一挙一動に注目しているから、予想に反して清貧であることをやめて、肉食をしたり自家用機で飛び回ったりし始めたら世間の風当たりは半端ではないだろう。

とにかく今のところ、名指しでグレタさんについてネガティブな批評をしたのはトランプ大統領とボルソナロ大統領であって、それに応ずるグレタさんのSNSへの発言には面白がって、記事にすると視聴率は上がるから喜んでいるのは世界のマスコミである。

環境問題は押しなべて人類に関わるのではなく、地域間にでもあるが、世代間に利害対立が生ずる運命である。
これから20年の余命しかない世代が世界の国々を代表して、やりたくない決断を渋って先延ばしにして、もしも大災厄が本当に存在するのだったら、これから80年生きる世代の未来を左右する状況なのだ。

この世代間闘争、もっと直截にいうと老害排除のために、各国の公式な年金受給年齢に達した有権者の票数を1票から0.5票に削減すればよいのだ。
もっと良さそうなのは、年金受給世代の票数を1票としておいて、年金負担世代の票数を2票にするのだ。
そうすれば2票の使いみちを、与党をもっと盤石にしたければ与与、バランス感覚を考えれば与野、政権交代を望むのなら野野のように、あるいは、右右、右中、中中、左中、左左、もちろん左右でもよいが、自分の票の使い方に選択肢が増えて投票が楽しくなるから、投票率も少しは上がるだろう。

年配の人の経験と知識を社会に奉仕してもらうために、選挙権は二分の一にしても、被選挙権は年齢に関わらず維持するのである。
参政権の侵害だという意見には、国民や人類の生存権の尊重という意見をぶつけてやれば良い。
もちろん受給世代の尊厳ある生存を保障することは、成文化して不安を取り除く。

環境問題は地球全体に関わることであるから、日本が率先して世界にこの方法を呼びかけて、年金年齢は国によって違っても、将来生きる時間に応じて負担世代と受給世代の意見の重みを加減するのは、環境、人口などの問題の全世界的解決に役立つことだろう。

現在フランスは年金改革に反対するストやデモでなかなか荒れているが、50歳で年金入りする制度を維持したいというのが労組の要望であっても、選挙権が半分になると言ったら少しは考えが変わるかもしれない。

もちろん書いていて、憲法改正が必要であるから、老年人口が既に増えた今では、この試みは絶対無理だとは思う。
でもグレタ少女の登場は、若い世代にとってその意見を反映していくのにどうしたらよいか考える絶好の機会を与えてくれる。