2013年12月31日

2013年12月発表、ブラジル携帯会社順位

シェアを重視して自分の携帯のキャリアを選びたいという人に、これを見てほしい。

Brasil tem mais de 270 milhões de linhas de telefonia móvel
http://economia.ig.com.br/2013-12-31/brasil-tem-mais-de-270-milhoes-de-linhas-de-telefonia-movel.html

ブラジルの移動体アクセス数(acessos móveis)-アクセスという単語は、Anatelの発表記事ではセッションではなく契約者数という意味-であるが、2億7,052万に達したという記事だ。
今日12月31日のAgência Nacional de Telecomunicações (Anatel) 国立テレコミュニケーション庁の発表による。
Anatel発表のデータをみると興味深い事実がみえる。

大部分はプリペイド(pré-pagos 複数形)で78.37%、残りが後払い(pós-pagos)であるのが、ブラジル携帯契約方式の特徴だ。

ブラジル全住人1人あたりにすると1.3624回線である。
言われると怒る人もいるだろうが、役人天国の連邦共和国首都の連邦区(Distrito Federal)の住人は、ブラジルの全州の中でただひとつ、一人当たり2回線を超える2.2142回線を所有しており、最貧州の一つといわれる、ブラジル北東部のマラニョン(Maranhão)州は、全州の中でただひとつ、一人当たり1回線を下回る0.9697回線を分け合う。

移動体ブロードバンド(banda larga móvel - WCDMA, 3Gデータ端末, LTE)の数は9,640万、その中で92万3千はLTE(4G - 第4世代)である。
有力な通信方式はGSMで61.33%、次にWCDMA(3G)で32.70%、残りは、クレジット・デビットカード通信端末(3.02%)、3Gデータ端末(2.60%)、LTE(4G)(0.34%)などを含めて、6%に満たない。

ブラジルの移動通信サービスのシェアは次の表のようになった。

順位キャリア13年11月12年4月
1Vivo ヴィヴォ28.71%29.75%
2TIM チン26.99%26.89%
3Claro クラロ25.23%24.48%
4Oi オイ18.55%18.57%
5CTBC セテベセ0.36%0.28%
6Nextel ネクステル0.09%

数字からは3強1弱他泡沫の印象を受けるが、Oiは元々別々だった、ブラジル国土の約半分の州で最優位の固定電話会社(Telemar)と携帯電話会社(Oi)が合併したものなので、州によって強いところ、弱いところがあるが、数字ほど弱いという印象はない。
リオデジャネイロを旅行するとわかるが、公衆電話はどれも「オイ」と書いてあって、そのたびに呼ばれた気分になる。
大井さんは電話会社オーナーになった気分が味わえるだろう。

2013年12月25日

メガセナ、当たったらどうしよう

最近ブラジルでも話題になったのは、アメリカ(合衆国)の賞金額史上第2位のくじだった。
あれは当選者が二人(あるいはチームで賭けていたら二組)が賞金を分ける結果であった。
アメリカのくじは、大多数の州では当選者の名前を公開する決まりになっているという。
インチキの疑いをかけられないようにするためと理由がついている。

ブラジルにもくじはある。
連邦貯蓄銀行 Caixa Econômica Federal 略してカイシャあるいはCEFが主催するくじはいろいろあるが、賞金額が大きくなリがちなのはなんといってもメガセナ Mega-senaである。

セナというと、これも事故死したから不運ともいえようが、F1ドライバー、アイルトン・セナ Ayrton Sennaが有名である。
しかし彼とは別に関係はなく、senaというと6つ組の数字のことである。
ついでに言えば、5つ組はキナ quina、4つ組はクアドラ quadra、3つ組はテルノ ternoという。
服装三つ揃いもテルノである。
どうして3つ組だけ男性名詞、他は女性名詞なのかは不明だ。
ポルトガル語の感性では、女性は多数で群れる、ということなのか?

メガセナは、1から60までの60個の数字から6個の数字が当選数字として抽選される。
くじを買う人は6個以上の数字をマークシートする。
6個の数字をマークする最低賭け金は2レアルである。
そのときの6個数字命中確率は、60から6つを取る組み合わせであるから、50,063,860分の1という、航空機事故に遭ったり雷に打たれる確率より低そうな数字である。

日本同様、ブラジルでも当選者は自分から望まなければ匿名でいられるはずである。
ところが、なかなかそうは簡単に匿名ではいられず、宝くじで高額賞金を当てた幸運者とやっかまれることがある。

ある当選者は、この際にうまくいっていない妻と別れ愛人と新生活を計画して、速攻で妻と離婚してから賞金を受け取り、愛人と逃亡したが、裁判からは逃げられなかった。
ある当選者は、しばらく豪遊してから知り合ったばかりの若い恋人と結婚したが、新妻の愛人と共謀で毒殺された。
多くの当選者がたどる運命は、にわかに親戚や友人が寄ってきて借金を迫り、誰も金を返さないので人間不信に陥る、というものらしい。

そして今回の「幸運のち凶運者」である。
左官としてごく普通の生活をしていたAさんは、メガセナで6百万レアルの賞金を当てた。

Aさんは、当選したと言って浮かれたりしないで、仕事も止めずに、地道に目立たない生活を続けていたと言う。
どこでどう誘拐犯から目をつけられたのかは、今までの報道では不明だが、Aさんは兄弟の一人とともに誘拐された。
犯罪が起きたのは、サンパウロの国際空港の名で知られる、サンパウロ大都市圏のグアルーリョス市内だ。

クリスマスイブの24日、誘拐犯グループは、別件捜査していたサンパウロ州民事警察により、被害者兄弟を監禁していた隠れ家を包囲され、銃撃戦の後、犯人1人死亡、1人逮捕、1人あるいはそれ以上?逃亡し、警察側と監禁されていた被害者兄弟は別条なかった。

警察の捜査によると、誘拐犯グループは人質から50万レアルを身代金として奪おうとしていた。
その後、テレビのニュースでは、Aさんは賞金の残りを寄付することにした、とのことだった。

ここ数年、大晦日に抽選会が中継される、Mega da Virada 年越しの大メガセナ、というのが恒例になっている。
今年の一等賞金総額は2億レアルと予想されている。
年越しだけあって?賞金繰越はなく、セナ当選者が複数だったら等分し、セナ当選者がいなかったらキナ当選者で分配することになっている。

そこで私も運試しだ。
万が一、いや五千万が一当選したらどうしようか、金の使い方を考える前に、金の隠し方、といっても、壺に入れて庭に埋める、とかいうのではなく、秘密を固く守れそうな銀行選び、身の処し方といったものであるが、ポーカーフェイスのしかた、誘惑に負けない態度、実にいろいろなことを考えておかなければならない。

2013年12月8日

2014年のキリスト教移動祝日

キリスト教行事の中には、毎年、天体の月の動きに応じて移動するものがある。

年の後半にある、だれでも知っているクリスマスは12月25日、ブラジルでは死者の日(Finados)と呼ばれる万霊節は11月2日-これは日本ではハロウィン-万聖節-万霊節の一連としたほうがわかりやすいだろう-と決まっているが、年の前半にある宗教祝日は移動するものが多い。

2014年の移動宗教祝日を下に一覧表にしてみた。
復活祭の日、2014年ならば4月20日日曜日が、すべての移動祝日の基準になっていると言ってよい。
2014年の3月分点、つまりUTCの春分の日は3月20日、その次の満月の日は4月15日だ。

ブラジルで任意休日(ponto facultativo)になっている日と、特に休日になっていない日がある。
任意休日というのは、職種組合や職場によって、休日とするか勤労日とするか異なるのだが、大部分の勤め人にとっては、普通の休日と変わらない。

行事日の決まり方2014年休日種類
カーニバルCarnaval週末から灰の水曜日前日4日間3月3-4日月火曜日PF
灰の水曜日Quarta-feira de Cinzas復活祭46日前の水曜日3月5日水曜日14時までPF
四旬節Quaresma灰の水曜日から復活祭前日
枝の主日Domingo de Ramos復活祭7日前の日曜日4月13日日曜日
聖週間Semana Santa枝の主日から復活祭前日
キリスト受難日Paixão de Cristo復活祭の2日前の金曜日4月18日金曜日PF
復活祭Páscoa北半球春分の次の満月の次の日曜日4月20日日曜日
ペンテコステPentecostes復活祭の49日後の日曜日6月8日日曜日
キリスト聖体の日Corpus Christi復活祭の60日後の木曜日6月19日木曜日PF

2013年12月14日追加

ポルトガル語でクアレズマ quaresma と呼ぶ四旬節は、ポルトガル語の序数、「第40の」クアドラジェジマ quadragésima (形容詞の女性活用形)、元のラテン語ではアクセントがないだけのquadragesimaが語源になっているという。

ということは四旬節は40日でなければならない。
日本語でもその意味である。
日数計数については、wikipediaのLentにカレンダーを使って説明してあるのがわかりやすい。

四旬節の期間について、このブログに1年半にわたり、誤った情報をのせていたことがわかった。
上の表は正しくなっている。
ここで訂正しておわびいたします。

40という数字は聖書をみると特に意義のある数字である。
イエスが荒野で断食してサタンの誘惑と戦ったのが40日間であった。

2014年のブラジルの祝祭日

2014年のブラジルの国定祝祭日及び任意休日を現在わかるかぎりあげておこう。
年末に連邦政府が正式発表したら確認訂正の予定である。

一連のキリスト教関連の移動休日は、2013年より20日遅くなる。
たとえば2013年の灰の水曜日は、2月13日であった。

1月1日Confraternização Universal世界友好の日feriado nacional
3月3-4日月火Carnavalカーニバルponto facultativo
3月5日Quarta-feira de Cinzas灰の水曜日14時までponto facultativo
4月18日Paixão de Cristoキリスト受難の日feriado nacional
4月21日Tiradentesチラデンチスferiado nacional
5月1日Dia Mundial do Trabalho世界労働の日feriado nacional
6月19日Corpus Christiキリスト聖体の日ponto facultativo
9月7日Independência do Brasilブラジル独立の日feriado nacional
10月12日Nossa Senhora Aparecidaアパレシーダ聖母の日feriado nacional
11月2日Finados死者の日feriado nacional
11月15日Proclamação da República共和制宣言の日feriado nacional
12月24日Véspera do Natalクリスマスイブ14時以降ponto facultativo
12月25日Natalクリスマスferiado nacional
12月31日Véspera de Ano Novo大晦日14時以降ponto facultativo

feriado nacionalは国定休日であるが、ponto facultativoは任意出勤で、休日になったり勤務日になったりは職種・職場によって異なる任意休日のことだ。
任意だからといって、勤め人が職場の決まりを無視して勝手に休んで出勤扱いになることはない。

灰の水曜日の14時まで任意休日というのは、午前中は前夜火曜日のカーニバル大騒ぎの疲れを癒す時間となっており?、銀行・官公庁や商店などは午後2時から開店する習慣があるからである。
灰の水曜日自体はキリスト教の行事であり、四旬節(クアレズマ Quaresma po. / Lent en.)つまり復活祭の前日までの主日(日曜日)を除く40日の節制期間の始まりである。
節制期間前に、はめをはずして大騒ぎするというのがカーニバル(こちらではカルナヴァル)の存在意義なのだが、宗教的意義から離れてにぎやかな祭りとして独立してしまったというみかたは多い。
つまり、はめをはずして大騒ぎはするのだが、四旬節の節制はしない、という人がかなりいるのである。

また、ここにあげた全国一円の休日のほかに、各地で市と地方の記念日が数日定められていることが多い。

2014年1月15日追加

連邦政府官報(Diário Oficial da União)2014年1月6日の発表である。
http://www.brasil.gov.br/cidadania-e-justica/2014/01/divulgada-lista-de-feriados-e-pontos-facultativos-de-2014

ブラズーカとブラジルの風土

ワールドカップ2014ブラジル大会の公式球が、2013年12月3日リオデジャネイロで披露された。
Brazucaと命名されたこのボールは、最近の公式球の流れをくみ、曲線模様で飾られる。
一般から投票を募った公式ボールの名前は、Bossa NovaおよびCarnavalescaをはるかに超える78%の票を集めて当選した。

当地のニュースでは、このボールのデザインをインスパイアしたのは、アマゾン河の蛇行と、ボンフィンの願掛けリボンと説明していた。
当然、曲線模様の形がアマゾン河の蛇行であり、模様の鮮やかな原色が願掛けリボンである。

バイア州の州都サルバドルにボンフィンの主教会 Igreja do Senhor do Bonfimがあるが、ここがいわゆる願掛けリボン、fita (あるいはfitinha) do Bomfimの発祥の地であり、現在もサルバドルの観光スポットとなっている。

wikipediaのFita do Bonfimによれば、発祥は1809年のこと、その長さは47センチメートル、当教会のボンフィンのキリスト像の右腕のサイズと一致する。
当初は絹製で、模様と聖人の名が刺繍され、金銀のインクで仕上げして、首に巻いてメダルや聖像などを吊り下げていたようだ。
つまり、現在よりずっと豪華版だったのだ。
聖者に病気・けが治癒の願掛けをして成就したとき、その部分、例えば腕だったら腕の写真や蝋細工の腕を奉納して、教会を象徴するリボンを記念に頂いたものだったらしい。

一時は廃れたこの風習であるが、1960年台にバイア州にも発生?したヒッピーが飾りとして使うようになり、後には観光客をも呼びこむ、教会にとっては幸運のリボンとなり復活して今日に至る。

色とりどりのリボンであるが、各色はオリシャ(Orixá)というアフリカの種々の先祖神を代表しているという。
サイトによると、各オリシャはキリスト教の聖人とも対応しているそうで、ここでも昔連れて来られたアフリカの人々の信心と、ヨーロッパに由来するカトリックの境目の不明な融合がみられて、非常にブラジル的現象である。
その意味でもこの願掛けリボンをブラジルの文化の一断面として、ワールドカップブラジル大会の公式球のデザインとしたのは当を得たものと思う。

工業化と産業の適地化によって、リボンはポリエステル製になり、サンパウロで製造されたのがサルバドルへ輸送されていたという。
最近になって、原点へ帰れというので、地元バイア州で、綿糸を使って作られるようになったそうだ。

テレビではこう言っていた。
「ポリエステルのリボンは丈夫すぎて切れにくかった。
現在は自然素材の綿になったから、ちょうどよい時期でほころびて擦り切れるようになった。
だから今は、少し昔より願いがかないやすくなったわけだ。」
そうしてみんなが幸せな思いを持てるのだったら、いいことである。

バイアを観光で訪問する人のために、fita do Bomfimの使い方を書いておこう。
リボンを手首に巻くだけである。
結ぶときに、三重結びをするのだが、一結びしたらお願いをする、これを三回繰り返すのだ。
つまり、アラジンのランプのように3つのお願いができるのだ。
あとは手首に巻いたリボンが自然に擦り切れて切れたら願いごとがかなうのを待つだけだ。
非常に簡単である。

色によって効果が異なるのか、リボンは一つだけつけるのかたくさんつけても良いのか、気になるところだか、そこまで詳しく説明したものはみつからなかった。
写真では色の異なるのを6本も腕に巻きつけている。

先に各色はオリシャの一つを代表する、キリスト教の聖人とも対応する、と書いたのだが、よほどの凝り性の人でなければ色を選ぶ必要はないだろう。
ブラジル人でも細かいことは気にしないで、きれいな色の組み合わせを選ぶようである。
ここまで凝らなければやる意味が無い、という徹底完璧をめざす人のためにいちおう書いておく。
wikipediaをみると色とオリシャの対応表(ポルトガル語のみ)があり、見出し語オリシャではどんな性格のオリシャであるか個々の説明(ポルトガル語、英語、スペイン語その他)がある。

しかしこのBrazucaというボール、色鮮やかな風車のようで、緩回転するのを見たら目が回りそうだ。

2013年12月7日

W杯ブラジル大会は移動と気候も戦い

参加国の戦力分析によるグループ突破予想などは、専門のわかる人にゆずり、わかりやすい別の視点から組み合わせを見てみよう。

昨日ワールドカップ2014ブラジル大会の組み合わせ抽選会が、バイア州の海岸リゾート地、サウイペ海岸(Costa do Sauípe)で行われた。
http://www.fifa.com/worldcup/matches/index.html
その数時間前に、テレビのスポーツ番組でかなり力を入れて説明していたのが、グループリーグの移動距離である。

ひとつのグループは4カ国だから、グループリーグは3試合ある。
どの参加国も満を持して第1戦に臨むはずだから、余裕を持って到着することだろう。
しかし、第2戦、第3戦はそうはいかない。
中4日で次の試合会場都市へ移動しなければならない。
ブラジル大会の会場選定は、どの地方に住んでいても近くで試合が見られるよう、広い国土に散らばるように選定されているようである。
試合開催12都市は、「ブラジルの人口最小都市・最大都市ランキング」の上位10位まで順当だが、11位ベレン(Belém - PA)と12位ゴイアニア (Goiânia - GO) の代わりに、ナタル(Natal - RN)とクイアバ(Cuiabá - MT)が入っているかたちになる。
第1戦と第2戦、第2戦と第3戦の、2回の移動距離でみる不公平を避けることはできないようだ。

そのスポーツニュースによると、
一番過酷な移動を強いられるチームは、A2である。
サンパウロ -> マナウス -> レシフェ
の順で、移動距離は5,533kmに及ぶ。
離着陸などの低速飛行時間を考えず、単純に巡航速度時速800キロとして、約7時間になる。
ブラジルが開催国であるので、初戦相手を萎えさせるための仕打ちか、と勘ぐりさえしてしまいそうだ。
気の毒なA2を引いたのは、クロアチアだった。
クロアチア選手たちが、飛行機の中でもゆっくり休息できる猛者たちであることを祈る。

一番移動が楽なチームは、H1である。
ベロオリゾンテ -> リオデジャネイロ -> サンパウロ
の順で、移動距離は698kmにすぎない。
飛行時間は離着陸時間を合わせても2時間に満たないだろう。
H1はベルギーだ。
移動が楽で、試合地が比較的涼しい都市であるのは、第1ポットの大当たりと少々軽くみられるベルギーへのささやかなプレゼントだろうか。

抽選終了後にいくつかの国でファンや専門家に組み合わせの結果についてインタビューしていた。
http://g1.globo.com/jornal-nacional/noticia/2013/12/confira-reacoes-de-torcedores-de-5-paises-ao-sorteio-dos-grupos-da-copa.html

アルゼンチン
Hグループが第一希望だった。
両国が勝ち進めば決勝でブラジルと対戦するからだ。
出たのはFグループ、移動距離は有利で(リオデジャネイロ -> ベロオリゾンテ -> ポルトアレグレ)、6月は涼しい場所で、アルゼンチンから比較的近くにまとまっているので観戦にも便利であるのは良いが、Fグループから優勝した例はないというジンクスを気にする記者がいた。
対戦して勝利経験のある相手なので楽観視である。

イングランド
イタリア・ウルグアイの優勝経験国が含まれる死のグループでないか。
冷涼気候なイングランドである。
第1戦の対イタリア戦は、アマゾナス州の州都、アマゾン河流域の中心、内陸の孤立した大都市、高温湿潤マナウスの試合を心配していた。
「ルーニーは(涼しい)ヨーロッパでの試合でもあんなに真っ赤な顔をしているんだから、マナウスではどうなるか考えてみろ」
たしかにイタリアのほうが暑さに強そうだ。

イタリア
組み合わせは悪くない。
でも第1戦の対イングランドをマナウスでやるのはきつい。
やはりマナウスの高熱多湿を心配している。

ポルトガル
第1戦のドイツが難儀だ。
テレビやラジオのコメンテーターは、結論としては組み合わせは悪くはないと言っている。
2位抜けはできるだろう。
ただ、移動(サルバドル -> マナウス -> ブラジリア)距離は大変だ。
両国が勝ち進めば、歴史的大決戦ブラジル-ポルトガルをマラカナンで戦うことができるのは楽しみである。
もちろん昔の植民地-宗主国決戦というのを意識しているのだろう。

フランス
出場権をやっとのことで拾ったフランスである。
フランスのスポーツ新聞の「どのグループが一番楽勝グループになるか予想」は、スイス、エクアドル、イランだった。
フランスが当てたのは、スイス、エクアドル、ホンジュラスだ。
本当にこの組み合わせはついている、シャンパンと花火でお祝いだ。

2013年12月1日

ブラジルでは屋台もクレジットカード

2013年も12月に入り、ブラジルがワールドカップで注目される2014年はすぐ目の前にきている。
ブラジルを初めて旅行する人は、ブラジルのクレジットカード・デビットカード事情がどうなのか気になることだろう。

以前のインフレ時代のブラジルは、小切手で支払えば、小切手が自分の銀行に到着して決済されるまで1日でも2日でも運用利息が稼げるからと、たばこ一箱買うにも支払は小切手を使っていた記憶があるかも知れない。

1994年であったか、レアルプランにより、狂乱インフレが収まったのはFernando Henrique Cardoso元財務相・大統領の一番の功績である点は、現在の与党である労働者党も認めるところだと思うが、労働者党政権に代わってからの所得底上げ政策も力を加えて、ブラジル人の支払い方法には大きな変化が起きた。

小切手の使用場面はだんだん減ってきた。
景気が良くても不渡り小切手は出る。
景気が悪くなればなおさらである。
商店は小切手を嫌うようになってきた。
"Não aceitamos cheques" 「小切手受け付けません」という表示を掲げる商店やレストランが多い。

そのかわりに増えたのがカード利用である。
銀行に口座を開くと、銀行はなんとか顧客にクレジットカードを使ってもらおうとする。
クレジットカードを人生初めて使う人は多いだろうが、その中でどれだけのブラジル人がクレジットカードの仕組みを知っているだろうか。

クレジットカードは月に一回の支払日があり、多くのカードは支払日10日前に締切日がある。
だから、消費支払をクレジットカードで行うと、カード会社へ10日から40日の支払猶予ができるわけだ。
そして、分割払いやリボ払いをせずに、10日から40日後の最初の支払日に払えば利息は一切かからない。

支払期日はきちっと守らなければならない。
Bradesco Visaカードの、延滞利息は14.9%、延滞罰金は2%、利息は日割り、罰金は月ごとにかかる。
分割払いやリボ払いは、決して行ってはいけない。
クレジットカード会社による分割払い利息は4.7%、リボ払い利息は6.6%である。
この数字を見て年利と思った人は注意、全て月利である。

月利4.8%のキャッシングも避けたい。

ただひとつ行って構わないのは、クレジットカード会社によるものでなく、商店による分割払いが有利である場合だ。
多くの業種の商店は、売らんがために、例えば500レアルの商品を、50レアル10回分割にしている。
月インフレ率0.6%の仮定で、R$500を30日後一回払いで支払うということは、今日R$497支払いするのと同値である。
月インフレ率0.6%が1年続くとして、R$50を30日後から330日後まで10回分割で支払うことは、今日R$484支払いするのと同値である。
だから商店が、現金払いや一回払いで、上の金額以上の割引をしてくれないのなら、50レアル10回分割で買い物をするのが有利になる。
一括払いに割引をする店もあれば、「無利子」(sem juros)を標語に、決して割引しない店もあるので、しっかり確かめなければならない。
「無利子」が売り物でも、実際は利息分が値段に含まれているので、割引をしないと行って「無利子」であるはずはないのだが。

まあ以上冗長に述べた事項は、ブラジルのカード会社発行のクレジットカードについてのことであるから、ブラジル国外で発行されたカードをブラジルで使う際には、それぞれの国・会社の国外使用規則に従うのは当然である。

これはブラジルのフェイラ(feira)と呼ばれる露天市の野菜屋台である。
ここではしっかりクレジットカードが使える。



注目するのは足と腰回りの太さではない。
売り物と、Visaの表示板の対比である。



こちらの店では、American ExpressもDinnersも受け付けるようだ。

キロあたりR$1.99との表示があるから、野菜を取り混ぜて5キロ買った場合に10レアルの勘定になる。
カード使用の大衆化に伴い、現在のブラジルでは、このくらいの少額でも、クレジットカード・デビットカードが使える場所がどんどん増えている。

ただしブラジルに来る旅行者は、次の点に注意してほしい。
ICチップのついていない、磁気ストライプのみで承認はサインで行う、旧式のクレジットカードは使えない可能性が高い。
ICチップがついていて、支払承認を暗証番号でオンラインで行う新式のカードであっても、(ブラジルから見た)国外発行カードが、屋台で使えるかどうかは不明である。

近所にも最近流行の犯罪

突然、人生に迷うというのではないが、どうしてこんなところにいるのか? という疑問がふとわくことがある。
もっと別の人生もあったのではないか、そういう考えにとりつかれる人は結構いるのではないか。

おとといの場合は、どうしてこんな(に物騒な)ところに住んでいるのだろうか?
どうしてブラジルはこんな暴力に満ちたところなのだろうか?
という気持ちになったのだ。

現金をおろしに、近所のイタウ(Itaú)銀行の支店に行った。
いつもなら3台あるATMの前に10人くらいの待ち行列があるのが普通なのだが、おとといはそれがなかった。
ATMコーナーは工事のため閉鎖されていた。



もう珍しくもなくなった金属探知機付きの回転ドアを回して銀行の店内に入り、警備員に尋ねた。
工事が今日中に終わるかはわからないと言った。

「そうだね、この支店が爆破されたのは2回目だったね」と、なにげなく頷いたのだが、よく考えて見ればたった一回でも銀行支店が爆破されるのは尋常でない。

1回めの爆破は、犯人は爆発物の分量を多めに見誤ったのか、店舗のガラス前面がほとんど全部割れ、天井も全破の悲惨な状態だった。
修繕するまで、ガラスの代わりに前面全てベニヤ板で囲ってあった時期が、かなり長かった覚えがある。

2回めの爆破は、先の11月19日未明のことだった。
銀行から通りにほぼ沿って直線距離約350メートルの近所に住んでいる人が、2時半にまるで天井が崩れ落ちたような轟音を聞いて、子供部屋は大丈夫かと家の中を駆けまわった後、思いついたのが銀行爆破、爆音のしばらく後に大通りの車の往来が増えたという話をしていた。

当日の朝8時ころ通りかかったら、警察の車が銀行前に止まり現場検証、報道のテレビカメラが取材をしていた。
見た印象では、2回めの爆破はガラスの破損は一枚のみ、これは侵入時に割ったものであったら爆発にはよらず、天井板には破片が突き刺さっていたが崩落せず、爆発物の分量と配置がより的確で?あったと思われた。

店内の窓口の列は進みそうになく、ガラスの向こうで3台の破壊されたATMを相手に奮闘している修理員を横目に、金を下ろすのはあきらめて帰ってきた。

2013年11月13日

UFはブラジルの州

いろいろな場面で、ブラジルの住所を既定のフォームに記入する機会があるだろう。

その中で州名は通常、市名の次に来る項目である。
市名は、'Cidade'あるいは'Município'と書かれている。
州名は、'Estado'と書かれていることもあれば、'UF'とアルファベット2文字で表されることもある。

UFとは何か?
これは'Unidade Federativa'あるいは'Unidade de Federação'、訳すと、「連邦の構成単位」という意味だ。
その頭文字をとった略語がUFである。
ブラジルの正式国名はブラジル連邦共和国、po. República Federativa do Brasilであり、連邦を構成する単位とは、州のことである。

UFの記入欄が大きければ、州名を省略せず全体を(por extenso)書き込めるが、よく使われるのは2文字略号である。
アメリカ合衆国のニューヨーク州=NY、カリフォルニア州=CAというのと同様だ。
地方州名略号州都・観光地
Nアクレ AcreACリオブランコ Rio Branco
NEアラゴアス AlagoasALマセイオ Maceió
Nアマパ AmapáAPマカパ Macapá
Nアマゾナス AmazonasAM*マナウス Manaus
NEバイア BahiaBA*サルバドール Salvador
NEセアラ CearáCE*フォルタレザ Fortaleza
CW連邦区 Distrito FederalDF*ブラジリア Brasília
SEエスピリトサント Espírito SantoESヴィトリア Vitória
CWゴイアス GoiásGOゴイアニア Goiânia
NEマラニョン MaranhãoMAサンルイス São Luís
CWマットグロッソ Mato GrossoMT*クイアバ Cuiabá パンタナル
CWマットグロッソドスル Mato Grosso do SulMSカンポグランデ Campo Grande
SEミナスジェライス Minas GeraisMG*ベロオリゾンテ Belo Horizonte
Nパラ ParáPAベレン Belém
NEパライバ ParaíbaPBジョアンペッソア João Pessoa
Sパラナ ParanáPR*クリチーバ Curitibaイグアス滝
NEペルナンブコ PernambucoPE*レシフェ Recife
NEピアウイ PiauíPIテレジーナ Teresina
SEリオデジャネイロ Rio de JaneiroRJ*リオデジャネイロ
NEリオグランデドノルテ Rio Grande do NorteRN*ナタル Natal
Sリオグランデドスル Rio Grande do SulRS*ポルトアレグレ Porto Alegre
Nロンドニア RondôniaROポルトヴェーリョ Porto Velho
Nロライマ RoraimaRRボアヴィスタ Boa Vista
Sサンタカタリーナ Santa CatarinaSCフロリアノポリス Florianópolis
SEサンパウロ São PauloSP*サンパウロ
NEセルジペ SergipeSEアラカジュ Aracaju
Nトカンチンス TocantinsTOパルマス Palmas
*印の12都市はワールドカップ2014ブラジル大会の会場都市になっている。

ブラジル5地方区分
凡例地方Região州数
S南部Sul3
SE南東部Sudeste4
NE北東部Nordeste9
N北部Norte7
CW中西部Centro-Oeste3+連邦区
地方名凡例は、わかりやすいように英語の方角を使ってある。
方角の英語・ポルトガル語・スペイン語の対照は次のようになる。
north = norte = norte
south = sul = sur
east = leste = este
west = oeste = oeste


アメリカ合衆国の州名の略語と同様に、自分勝手に略してはいけない。

Rioと言えば通りが良いから、Cabo Frio - Rioとしてしまったり、Mato Grossoの州都に住んでいるから、頭文字を取ってCuiabá - MGとかするのは許されない。
上の表の2文字の略語に厳格に従わなければならない。

2013年11月10日

ブラジルの人口最小都市・最大都市ランキング

2017年版

http://g1.globo.com/brasil/noticia/2013/08/com-825-habitantes-cidade-mineira-e-menor-do-brasil.html
から引用する、2013年8月にInstituto Brasileiro de Geografia e Estatística (IBGE)が公表した2013年7月1日時点の推計値である。

Confira abaixo os 20 menores e maiores municípios do Brasil:
ブラジル小都市・大都市20位まではこうだ。

ブラジルの人口の少ないムニシピオ
Menores:

Serra da Saudade (MG) - 825
Borá (SP) -834
Araguainha (MT) -1.024
Anhanguera (GO) -1.082
Oliveira de Fátima (TO) -1.085
Nova Castilho (SP) -1.195
Cedro do Abaeté (MG) -1.227
Miguel Leão (PI) -1.244
Uru (SP) -1.252
André da Rocha (RS) -1.278
Lagoa Santa (GO) -1.377
Chapada de Areia (TO) -1.386
Grupiara (MG) -1.414
Santiago do Sul (SC) -1.414
Jardim Olinda (PR) -1.424
Cachoeira de Goiás (GO) -1.436
União da Serra (RS) -1.457
Engenho Velho (RS) -1.462
Serra Nova Dourada (MT) -1.463
Lajeado Grande (SC) -1.488

ミニ都市第1位は、「サウダージ山地」という名前で、ブラジルらしい名前だ。
第2位の「ボラー」も印象的な名前である。

ブラジルの人口の多いムニシピオ
Maiores:

São Paulo (SP) - 11.821.876
Rio de Janeiro (RJ) - 6.429.922
Salvador (BA) - 2.883.672
Brasília (DF) - 2.789.761
Fortaleza (CE) - 2.551.805
Belo Horizonte (MG) - 2.479.175
Manaus (AM) - 1.982.179
Curitiba (PR) - 1.848.943
Recife (PE) - 1.599.514
Porto Alegre (RS) 1.467.823
Belém (PA) - 1.425.923
Goiânia (GO) - 1.393.579
Guarulhos (SP) - 1.299.249
Campinas (SP) - 1.144.862
São Luís (MA) - 1.053.919
São Gonçalo (RJ) - 1.025.507
Maceió (AL) - 996.736
Duque de Caxias (RJ) - 873.921
Natal (RN) - 853.929
Teresina (PI) - 836.474

上の表13位と14位はサンパウロ州の州都以外の大都市で、16位と18位はリオデジャネイロ大都市圏にある州都以外の大都市である。
この4都市を除くトップ20は、ブラジリアは連邦の首都であり、他は全て州都である。
6位までは人口2百万以上、16位までが人口百万人以上である。

ブラジルの住所はこう読み解く

例としてミナス・ジェライス州の電力会社の所在地をとりあげる。

Av. Barbacena, 1200 - 17º Andar - Ala A1 - Santo Agostinho - Belo Horizonte - Minas Gerais - Cep. 30190-131

各要素のつなぎはハイフンが常用される。

第1要素 街路名(コンマ)番地 Av. Barbacena, 1200
第2要素 [この例では]階数(ハイフン)区画、[一般的には]室番号などその他補足 17º Andar - Ala A1
第3要素 区 Santo Agostinho
第4要素 市 Belo Horizonte
第5要素 州 Minas Gerais
第6要素 郵便番号 Cep. 30190-131

第1要素は通り名と番地なので、必須だ。
Av.はAvenida(大通り)で、Av.のところにはRua(通)、Alameda(街路)、Praça(広場)、Travessa(横丁)などが入り、これらはブラジル郵便システムではlogradouroといわれる。
しばしば、Av., R., Al.のように略される。

第2要素はcomplementoといわれ、必須でない。
この例では、17階A1ウィングである。
その番地が一軒家だったら、complementoは存在しない。
アパート建物一棟だったら、Ap. 302(302号室)、ひとつの敷地に多数のアパートがあるのなら、Bloco B - Ap. 302(B棟302号室)、一つの番地に複数の家があるときはFrente(表)、Fundo(奥)、Casa 1(1号屋)などがつく。

第3要素はbairroで、いちおう区と訳すが、普通は区役所がある行政区ではなく、地区を区別するのみの場合が多い。
例は、Bairro Santo Agostinhoということだ。
区の名前に'Brasil'とか'São Paulo'というのがあるが、混乱を避けるために、区名の場合にはBairro BrasilあるいはB. Brasilと明確にすることが多い。

この第3要素はかなり相対的でいい加減なことがある。
たとえば大きなAvenida上が区の境界になっているばあいは、大通りの左側と右側で属する区が異なることがある。
小さな市では、第3要素が欠けていたり、通常使わないことはあるが、同じ市の異なる区で同じ名前の通りがあることはないので、この要素がなくても混乱は少ない。
しかも発展途上の地区は、区名が定着するまでいくつもの名前がついたり、区名が固定してからも別称が使われたり、ひどい場合には隣の区名の方がイメージが良いとか地価が高いというので、その隣接地近辺が勝手に隣の区名を名乗る例があったりする。

第4要素は市、ブラジルではmunicípioという行政単位である。
municípioは大きくても小さくてもprefeito(市長)、vereador(es)(市会議員)、prefeitura municipal(市役所)を持つ。
サンパウロ市の北側にItaquaquecetuba イタクアケセトゥバといった一語で長い名前の市がある。
São José do Rio PretoとSão José dos Camposがサンパウロ州にあるから、長いといってSão Joséと略しては、スペイン語のSan Joséと混乱することはないだろうが、どちらを指しているのかわからなくなる。
長くても略さないほうがよさそうだ。

第5要素は州、Minas Geraisと書くこともでき、MGと略すこともできるが、第4要素と一体化(行分かちしない)してBelo Horizonte - MGと書くのが普通だ。

第6要素は郵便番号、Códigos de Endereçamento Postal通常略してCEPである。
Cep. 30190-131でも、CEP: 30190-131でも、30190-131だけでも良い。

しばしばCEPは、第3要素と第4要素の間に入り、

Av. Barbacena, 1200 - 17º Andar - Ala A1 - Santo Agostinho - Cep. 30190-131 - Belo Horizonte - Minas Gerais

と書かれることがある。

例は、一行で記述しているが、宛名書きでは数行で書くことが多い。

その場合多いのは、

Av. Barbacena, 1200 - 17º Andar - Ala A1
Santo Agostinho
Belo Horizonte - Minas Gerais
Cep. 30190-131

あるいは、

Av. Barbacena, 1200 - 17º Andar - Ala A1
Santo Agostinho
Cep. 30190-131 - Belo Horizonte - Minas Gerais

という書き方だ。
郵便局はポルトガル語でCorreiosであるが、そのサイトに手紙の表書きの方法が図解されている。

この例では
1行名 受取人名
2行目 第1要素(街路名(コンマ)番地)
3行目 第3要素(区)
4行目 第4要素(市)(ハイフン)第5要素(州)
5行目 第6要素 CEP

これを標準記法としてよいだろう。

徒歩や車で所在地のわかっている場所を訪ねるときはどうするか。
ブラジルの街路番地システムは、日本の丁目・番・号よりわかりやすいと思う。

番地の番号は、街の中心に近い端から始まる。
始端から終点に向かって、左側は奇数、右側は偶数になっている。
番号はおおむね始端からのメートル数になっている。
以上が基本ルールである。

だから、6番地の隣は7番地でも8番地でもなく、間口12メートルの宅地であれば、6番地の隣は18番地になる。
わが家の通りでは、6番地の向かいは7番地、18番地の向かいは19番地であったりする。
ブラジルの家に表札はないが、どこの家も塀や家の壁の、外から見えるところに番地を表示してあるので、番地が分かれば、通りの片側だけ注目しながら到着することができる。
2500番地を目指していて、自分の右側が2000番地だったなら、あと500m先だと見当がつく。

ニューヨークだったらAvenueとStreetが交差しているように、全てではないが多くの街で、AvenidaとRuaが交差して、普通はAvenidaが広く、自動車通行では優先道路であることが多い。
例外も多いから、運転する人は通りの名前だけで早合点しないように、慎重に標識に注意したい。

通りは線状のものだから、長大な通りだと街路名と番地ではどのあたりかよくわからないことがある。
そのばあい、面状である区名が役立つことがある。

リオデジャネイロ市にはAvenida Brasilという、上記郵便局のサイトによると56000番地があるので、56キロを超える長大な大通りがあるが、多くの区を貫通しているので、区名をつければ大通りのどのあたりか見当がつく利点がある。

2013年10月30日

2014年ワールドカップ時期の国内航空運賃は高騰

放送されてから少し時間がたってしまったが、ワールドカップ2014ブラジル大会に興味津々の人がいるだろうし、かなりおもしろい話だからここに書いてみよう。
今年のコンフェデレーションズカップの直前にも、ブラジリアのホテル宿泊料金が高騰したというニュースをのせたが、今回は航空運賃だ。

「ワールドカップ時期に航空運賃は高騰」
Preço de passagens aéreas dispara para o período da Copa do Mundo
http://g1.globo.com/jornal-hoje/noticia/2013/10/preco-de-passagens-aereas-dispara-para-o-periodo-da-copa-do-mundo.html

2014年のワールドカップを観戦したい人は、いまからサイフを大いに強化しなければならない。
ワールドカップ時期は航空運賃が高騰するからだ。

企業オーナーRenato Bahia氏は、過去4大会のワールドカップに応援参加した。
ブラジルで開催される今回も同様に参戦するために、観戦チケットの抽選に応募して、航空運賃の見積もりをしている。

「ブラジルの初戦からワールドカップの最終戦まで全部見ようとなると、ナタル(Natal)から出発する航空券を今日買ったとして、1万レアルほどかかるだろう。

サンパウロでの第1戦のための、ナタルからサンパウロ直通往復航空運賃は、1,570~2,173レアルだ。
フォルタレザ(Fortaleza)での第2戦には、ナタルから往復990~1,700レアルかかる。
ナタル発ブラジリア往復は、1,498~2,109レアルの出費だ。

4大会応援参戦制覇の彼の結論は次の通り、2010年に南アフリカで支払った額よりブラジルでの出費が多い。
「南アフリカは距離の利があった。
試合と試合の間は車で移動していた。
航空運賃の出費はなかった。
レンタカー料金とガソリン代を、友人3人と割り勘した。」

ブラジル大会は、広大な国土に開催都市が分散しているから移動は大問題だ。

国立民生航空庁(Anac - Agência Nacional de Aviação Civil)は、航空運賃については注視していくが、上限を設けることはできない。
航空運賃市場は自由価格制度をとるからだ。
国立民生航空庁は、12月の組み合わせ抽選の後、航空券の需給関係が変化すると予測している。

さて一方で、航空運賃高騰の現実に積極的に対抗していこうとするファンもいる。
エスピリト・サント(Espírito Santo)州の、熱狂的セレソン応援グループはその一つだ。
ひねり出したアイデアとは、バス一台を購入することだった。

この10人グループは、コンフェデレーションズカップ・ブラジル大会ではブラジル戦全てを応援した。
もちろんワールドカップも逃すはずがない。

「仲間と集まって相談して、3つの問題点があることがわかった。
入場料、宿泊料、運賃だ。
このエンジン付きハウスで問題点のうち、宿泊と移動の二つは解決だ。」
会社オーナーMárcio Castelo氏は語る。

「航空会社へ支払う運賃、ホテルへ支払う宿泊料を合算して、ワールドカップ期間の30日間で平均して、我々の出費と比べてみれば、間違いなく我々のほうが安くつく。」
会社オーナーGustavo Amorim氏は保証する。

彼らチームは、バスの改造には金を惜しまなかった。
シートのほとんどを取り外し、12人分のベッドを備え付け、キッチン、オーブン、冷蔵庫、バス・トイレを取り付けた。
「最高の出来で、わが家と呼べるものになったんだ。
ただのバスと呼んで侮るなよ。
だから、ここで至極快適に過ごし、ゆっくり休養して、ブラジル応援に備えるのさ。」
Gustavo氏は語る。

リンクのビデオ(ポルトガル語)では派手に塗装した豪華改造バスに注目してほしい。

アナウンサーの記事後のコメントがよい。
「バス、いや失礼、この車輪上の家は、皆さんご覧のように安いものではありませんが、後で売ることができるという利点がありますね。」

しかし、ブラジルの観客のうち5千人がこれを真似て10人グループを作り、改造バスでブラジルチームの後を追いかけたらどうなるか想像してみよう。
5千人の観客のために、スタジアム近辺に5百台の改造バスが駐車することになる。
壮観な眺めだろうがこれは大変だ。
幸い、改造バスはだれでも真似のできる解決法ではない。

ナタル-サンパウロ往復運賃を例にあげて、ワールドカップ2ヶ月前の同ルート運賃は上記のワールドカップ期間中運賃の3分の1という。
国立民生航空庁は、航空会社が需要に応じて臨時便を出せるよう助力していく、と表明している。

実際に大会が間際になったときに、運賃その他がどうなるのか注目していこう。

2013年10月27日

ブラジルは2020年に第4の産油国になる

ブラジルの将来にかかわることになる、今週の大きなニュースはこれだ。

ブラジル沖のプレサル層の油田の入札である。

プレサル pré-sal とは、海面から5千~7千メートルにあたる油層で、すぐ上に厚さ2千メートルの含塩層を持つためにこの名がある。
今回の入札対象は、サントス海盆(Bacia de Santos)の、リブラ油田(Campo de Libra)である。

リブラ油田は、リオデジャネイロ州東部海岸から南方170キロメートル沖の長さ35キロ、幅20キロの海域である。
この油田の推定埋蔵量は80~120億バレルとされている。
この埋蔵量は、今日までブラジルが生産してきた原油総量に匹敵する。

これまでの油田使用権についての契約は、regime de concessão 移譲制度といって、開発企業は政府に税金を支払う形である。
今回の新しい制度は、regime de partilha 利益分配制度といい、開発企業は、コスト分を引いた余剰(儲け)の原油(óleo excedente)の最低41.6%を政府に引き渡す形になる。

競争入札ではこの政府に引き渡すパーセンテージを競い、高いパーセントを提示した企業が落札することになる。

この2013年10月21日に、石油労働者、政党、中央労組、学生などの反対デモの中(警察発表で200名参加)、リオデジャネイロで行われた競争入札では、ただひとつのコンソーシアムが応札して、最低入札額、つまり上にある余剰原油41.6%を政府に渡す条件で、競争なしに落札した。
もともとブラジルの政府が過半数の株を保有するペトロブラス Petrobras が最低30%を保有することが条件になっていたのだが、落札したコンソーシアムの構成は次のようになった。
会社持分
Petrobras ペトロブラス40%
Shell シェル英・蘭20%
Total トタル20%
CNPC 中国石油天然気集団公司10%
CNOOC 中国海洋石油総公司10%

ペトロブラスについては、最低割当30%プラス任意分10%で40%になる。

元々エクソンなど米国の石油メジャーは参加しないとみられていたのだが、日米の不在及び中国の大きな存在感が注目される。

コンソーシアムは契約調印時にボーナス150億レアルをブラジル政府に支払うことになっているので、ペトロブラスは60億レアルの出金となる。
この巨額支払金について、Mantegaブラジル蔵相は、ペトロブラスの支払能力について心配はないとインタビューで語った。
生産開始まで5、6年かかるとみられているから、それまで多額の投資のみで収入のない状態が続くので、体力のある企業しか参加できないわけだ。

「最初の一滴」と記事に書かれている原油の生産開始は2018年から、生産の最盛期は現在から15年後とみられている。
Libra油田の日産量試算は140万バレルとされ、ブラジルの産油国ランキングは大きく上昇する原動力となる。
2012年の世界第13位から、2020年にはLibra油田その他プレサルの生産を見込むと世界第4位に躍進する。

以下のリストは2012年のブラジル13位までに及ぶ産油国世界ランキング
1サウジアラビア
2ロシア
3合衆国
4中国
5カナダ
6イラン
7アラブ首長国連邦
8クウェート
9イラク
10メキシコ
11ベネズエラ
12ナイジェリア
13ブラジル

ブラジルの原油生産量上昇や他産油国の生産量推移など、ランキング根拠の詳細はテレビ記事では不明である。
ブラジルの石油生産量の増大は喜ばしいが、そのころ人口動向や環境問題、原発問題、燃料や石油化学原料の代替が実用化されているかなど実に多くの未知数があり、石油は余っているか不足しているかも知れず、ブラジルが最盛期を迎えるのかどうか、正直わからない。

サンパウロ市は10年前より暴力事件が減っている?

Fraude com cartão de crédito cresce 327% em SP nos últimos dez anos
http://g1.globo.com/jornal-hoje/noticia/2013/10/fraude-com-cartao-de-credito-cresce-327-em-sp-nos-ultimos-dez-anos.html

Instituto de Ensino e Pesquisa (Insper)が発表した、サンパウロ市の犯罪の変遷は次のような結果だ。

サンパウロ市民の半数は、何らかの犯罪や暴力の被害者であった。
暴力を伴う犯罪(crimes violentos)はこの10年間で減少しているが、反対にコンピュータなど電子的犯罪(crimes eletrônicos)は増加した。
クレジットカード詐欺(fraude com cartão de crédito)は、最も増加した犯罪だ。

Nicolau Spohr氏は、クレジットカードを使おうとしたら、カード会社から停止処置がなされていて、支払いができなかった。
「カードがクローンされ、海外で買い物された。1400レアルを使われた。」

「犯罪者は、反撃を受けるおそれのある、被害者と直接接触のある暴力犯罪より、被害者と直接顔を合わすことのない、しかもより実入りの多く、より安全に実行できる電子的犯罪を好むようになった。」
調査担当コーディネーターのNaercio Menezes Filho氏は説明する。

クレジットカード詐欺は、過去10年間で+327,5%増加した。
空き巣のように被害者と直接接触のない窃盗をポルトガル語ではfurtoというが、これは過去10年間で+81,5%増加した。
被害者と直接接触のある強盗をrouboというが、こちらは10年間で-13,8%減少している。

窃盗は、「他人の財物をひそかに盗み取ること」と国語辞典にあり、英語ではtheftとなっている。
世界中で人気の、まあ日本では「洋ゲー」である GTA - Grand Theft Auto は、重窃盗ということで、運転手を銃で脅したりしないで、止めてある車をこっそりと盗むのか。
ゲーム内容となんか違う気がする。
grand theft 重窃盗とは、ただの窃盗より手口が荒っぽい窃盗を指すと思って調べてみたのだが、普通の窃盗より金額が多いものを重窃盗というようだ。
アメリカ合衆国では、自動車・家畜・銃器の窃盗の場合金額に関係なく重窃盗となる州が多いようである。
GTAの次に来るのはGTB - Grand Theft Bovine 牛泥棒 なんてゲームはできないだろうな。

強盗は、「暴力や脅迫などの手段で他人の金品を奪うこと」と国語辞典にあり、英語ではrobberyがあてられている。
スリの場合はどちらなのだるうか、被害者が気づいていないから、強盗とはいえないだろうが、被害者と直接接触はあるから、furtoともいえないようで、よくわからない。
日本には結構いそうな、天才的な技を持つスリは、荒っぽいブラジルにはまずいないから、相当する訳語がなくても困らないのだろう。

電子的犯罪では罰を受けることが少ない(impunidade)ことも、この種の犯罪が増加した要因となる。
インターネット犯罪は直接接触つまり暴力を伴わないため、罰が比較的軽くてすむ。
せいぜい1、2年で、うまく行けば刑務所入りを免れる。

10年に渡り1万1千人にインタビューした当調査は、警察で記録される事件統計を調査対象にしなかった。
だから被害者が警察に犯罪届を出さない事件も、当調査にはカウントされていることになる。

この記事での中に少し表現の食い違いがあるのだが、最後にNaercio氏はこう結んでいる。
「暴力事件が減少しているのにかかわらず、市民の間に安心感が増えていないのはなぜか。
サンパウロ市民の約半分は、"roubo"の被害者で、ひどいトラウマをもたらす状況を経験した。
トラウマは一生つきまとうことが多い。
暴力事件が少ない環境で育った若い世代が大多数になってこなければ、治安が改善したという実感はわかないだろう。」

記事の最初では、(市民の半数が)"já foi vítima de algum crime ou violência"「何らかの犯罪か暴力の被害者」と言っているのに、最後では、"já sofreu roubo e muitas vezes em situação traimática"「しばしばトラウマを伴う強盗(roubo)の被害者」となっているので、どうなのかわからない。

昔サンパウロ市内のバスターミナルで、ポケットに後ろから不意に手を突っ込まれて財布を取られそうになった私は、やはり「何らかの犯罪か暴力の被害者」に含まれるのだろうか。
路上に落ちたサイフをもし泥棒に持って行かれていたなら、肉体的接触があったのだから、rouboの被害者といえる。
トラウマとはいかなくても、忘れることはきっとないと思う。

まだある。
「カードを使って、航空券を買いましたか?」とクレジットカード会社から電話がきたことがあった。
買ってない。

「1200レアルの小切手を振り出しましたか?」と銀行から電話がきたこともあった。
その番号の振出小切手の金額は30レアルくらいだったと思う。
後で銀行に小切手のコピーを見せてもらったが、金額をうまく偽造してあった。

両方とも実損害はなかった。
今まで経済的損害はないといえ、私も犯罪の被害者といえる。

2013年10月18日

リオ・オリンピックのゴルフコースでワニとカピバラ観察

2016年リオデジャネイロ・オリンピックのゴルフコースでワニに噛まれる恐れなしとコースプランナーは語る
Rio 2016 Olympic Golf Course Planners Say Alligators Won't Bite
http://www.bloomberg.com/news/2013-10-17/rio-2016-olympic-golf-course-planners-say-alligators-won-t-bite.html

こういうニュースがあると、ブログのネタに事欠かない。
この見出しからして二つの驚きがある。
まず、ゴルフコースにワニがいるという第一の驚き、ゴルフがオリンピック種目となる第二の驚きである。
ゴルフの動向に詳しい人だったら、第二の驚きはなかっただろう。

ゴルフはブラジルでは珍しいスポーツである。
金がかかるスポーツだからだろう。

リオオリンピックのゴルフのオーガナイザーは、フェアウェイやグリーンをのたり歩くワニの危険はほとんど無いと表明した(there is little risk of alligator-like creatures)。

記事によると、ブラジル初めてのパブリックゴルフコースが作られ、2016年リオデジャネイロ・オリンピック大会で使用される。
コースが立地する、リオデジャネイロ市西部の下水の流れこむ潟湖(lagoon)には、アリゲーター(alligator)のなかまのカイマン(caiman)が6千匹あまり生息していると言われる。
カイマンは、クロコダイルよりはずっと小型でおとなしく(much smaller and more docile than crocodiles)、住宅域の増大による彼らの棲息地への人間の侵入によって、我々とのコンタクトは増えているが、危険は及ぼさないとみられている。

雨後の筍ならぬ、キノコのごとく近年増大する(have mushroomed in recent years)、Barra地区の住居コンドミニアムから出る下水に追いやられたワニの中には、ゴルフコースの池に引っ越しした連中がいる。

「ワニは夜行性であり、ゴルフプレーは昼間行われるから大丈夫」
国際ゴルフ連盟のエグゼクティブ・ディレクターのAnthony Scanlon氏は言う。
本当にそうだろうか。

ゴルフコースのグリーンに出てくる、水際に生息する動物はワニだけではない。
日本でけっこう人気者で、よく話題に出るカピバラ(en. capybara, po. capivara, es. carpincho)は、ワニより個体数は多く、遭遇する可能性は多いと思われる。
これは世界最大のげっ歯類であり、体は小型の豚くらい大きいが、草食でおとなしい。
カピバラが何十頭いたとしても、こいつらが群れになって追っかけてくるという事態はまず起こらないであろう。

しかし草食性であるために、土を掘り返したりグリーン荒らしをする危険があるらしい。
そういえばカピバラの鼻づらの上面は、土などを掘るためか、毛が生えていない固い部分がある。
というわけで、カピバラはワニより(ゴルフ実施への)リスクとみられている。

Bloomberg記事では触れてないが、野生カピバラには人にも感染る伝染病、紅斑熱(po. febre maculosa)を媒介するダニがついていることがあるので、かわい~となで回したりしないほうが良いと思う。

Scanlon氏は、ゴルフコースには野生動物は珍しくないと、フロリダのアリゲーターと、彼の生地オーストラリアのカンガルーを例にあげた。

“Where you have a natural green space like this it attracts wildlife, which is what you want,” Scanlon said.
“You want to create your own ecosystem.”
「自然のグリーンスペースがあれば、野生動物をひきつける。結構でないか。」Scanlon氏は言った。
「あなたはあなた独自のエコシステムを作りたいでしょう。」
わけのわからないことを言う人だ。

ゴルフがオリンピック種目となるのは実は初めてでなく、前回1904年大会から112年ぶりなんだそうだ。
男子女子それぞれ72ホールストロークプレーで行われる。

一つの国からは最多4名に制限されるが、世界のトッププレイヤー15人が無条件で参加して、それ以外の選手は、ひとつのフェデレーションは2名までの選手を推薦でき、60人のプレーヤーがトーナメントを競う。

庭園の池にワニが住みついた、リオのコンドミニアムがあるという話は、すでに聞いたことがある。
住民は注意して接しているからだろう、噛まれたという話は聞かない。

それよりも、ゴルフコースのような、景色のよく水場もある面積のまとまった、農業生産の行われていない遊休的な造成地は、オリンピックが終わってしまったら、ワニどころではなくもっとワイルドな、土地よこせ運動(Movimento Sem Terra = 土地なし運動、Movimento Sem Teto = 屋根なし運動)の格好の侵入地になるのではないかと心配してしまう。

土地よこせ運動の団体はいろいろあるが、一番有名なのは MST - Movimento dos trabalhadores rurais Sem Terra 土地なし農村労働者運動である。
今調べたら、http://www.mst.org.br/ という、予想通り色調は真っ赤だが、予想よりずっと立派なサイトがあるのにびっくりした。
活動資金は豊富そうである。

2013/14年ブラジル夏時間に波乱なし

この日曜日(20日)に夏時間が開始
Horário de Verão começa neste domingo (20)
http://g1.globo.com/jornal-nacional/videos/t/edicoes/v/horario-de-verao-comeca-neste-domingo-20/2893439/

2013/14年夏時間(サマー・タイム horário de verão)への移行がすぐ目の前に迫ってきた。
今週土曜日の深夜、日曜日の午前0時に、ブラジルの南部・南東部・中西部の諸州では、時計の針を1時間すすめて、夏時間へ入る。
2013/14年夏時間の期間は、2013年10月20日日曜日0時から、2014年2月16日日曜日0時までの119日である。

2013/14年夏時間を採用する地方は、ブラジル5地方のうち、南部(Sul)、南東部(Sudeste)、中西部(Centro-Oeste)の3地方である。
ブラジル南部は南側からリオ・グランデ・ド・スル(Rio Grande do Sul)、サンタ・カタリーナ(Santa Catarina)、パラナ(Paraná)の3州、南東部はサン・パウロ(São Paulo)、リオ・デ・ジャネイロ(Rio de Janeiro)、エスピリト・サント(Espírito Santo)、ミナス・ジェライス(Minas Gerais)の4州、中西部はマット・グロッソ・ド・スル(Mato Grosso do Sul)、マット・グロッソ(Mato Grosso)、ゴイアス(Goiás)の3つの州と、連邦区(Distrito Federal)、以上が夏時間に入る州である。
今年は、北部(Norte)、北東部 (Nordeste)の諸州は夏時間へ参加しない。

「今年は」というのにはわけがあって、2年前からブラジルの夏時間を注視してきたらわかるが、2011/12年夏時間には東北部からバイア州一州が、2012/13年夏時間には北部からトカンチンス州一州が、両方とも例外的に夏時間を採用した経緯があるからだ。
両州とも一回は夏時間に参加してはみたのだが、赤道に近い低緯度地方のため、夏になっても昼時間は大幅に増えず、夏時間のメリットは少なく、懲りてしまったのだろう。
もっとも地図をみると、夏時間実施州のマット・グロッソ州の北方は、夏時間を採用しないバイア州の州都サルバドルより緯度は低い。
2013/14年夏時間は実施州・非実施州が地方区分に一致してきれいに分かれ、例外的に参加というへそ曲がりな州はなくなった。

すでに過去ブログで書いたからここでは繰り返さないが、緯度が高い地方ほど、夏の昼時間はより長く、冬の昼時間はより短くなるからだ。
3週間ほど前にマイクロソフトが発表した、ブラジル夏時間のお知らせもみごとに裏をかかれ、トカンチンス州が夏時間採用州に入っているが、上記ニュースはこれを否定している。

連邦政府は、夏時間実施による電力節約額を全国で50億レアルと試算している。

2013年10月14日

トラッキング現象とブラジルのヤモリ現象

福岡・整形外科火災 「トラッキング現象」で発火の可能性
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20131014-00000766-fnn-soci

トラッキング現象というのを初めて聞いた。
日本では知っている人が大多数なのだろうか。

中部電力 http://www.chuden.co.jp/ryokin/information/use/plug/tracking/index.html
九州電力 http://www.kyuden.co.jp/life_living_safe_safe7.html

に説明がある。

ベランダの2つの電球を灯すスイッチが、部屋の壁にあるのだが、電球を点けようとすると、じりじり音がして煙が出た。
さすがにこれを放っておいたら危ないと思って、きのうスイッチを分解することにした。

表面のパネルをドライバーで外す。
中にある二つのスイッチを支える基板部のネジを外して、壁の凹んだ配線箱から取り出す。

2インチx4インチの配線箱に収まるスイッチの配線ネジ締め部の周りに、ヤモリの干からびた死体が6匹ほどからまっていた。
以前同様のできごとがあったのだが、昔みたときは、ヤモリ成獣・幼獣だけでなく、卵の殻まであったから、スイッチやコンセントの配線スペースを産卵場所に使うヤモリもいるのだろう。
気持ち悪いのですぐに片付けてしまい、写真を撮らなかったのが残念である。

ヤモリの死体と埃を払い落としてから、スイッチを入れてみたが、じりじりする音は止まない。
そこでさらに分解をすすめる。

スイッチの配線を外す。
スイッチを基部から外す。
スイッチの、指で押さえるプラスチック部品を外して、接点のシーソー金具を取り出す。
シーソー金具、固定接点を清掃し紙やすりをかけ、汚れていたプラスチック部品を洗剤で洗い、よく乾かす。
以上の逆順でスイッチを組み立てる。

無事解決して何よりだった。
一つ発見があった。
厚いゴム底の靴を履いて作業していたのだが、ゴム手袋を探したが見つからなかったため、電線に220Vの電圧がかかった状態で素手で扱っても、絶縁が完全なためかショックを感じることはなかった。
もちろん他の物に触れたり寄りかかったりせず、足元及び手指は完全に乾燥した状態だった。

ヤモリであるが、英語では Gecko と呼ばれる爬虫類の一群である。
ブラウザのレンダリングエンジンの一つにGeckoというのがあるが、ヤモリがインターネットと相性が良いわけではない。
ブラジルでは電気設備に入り込んで、漏電、短絡を起こす害獣ともいえよう。
Gekkonidae というラテン語はヤモリ科の学名、私の周りで使われるポルトガル語では、lagartixaラガルチッシャと呼ばれる。

ヤモリによって起きるこの現象は、福岡の火災の原因と思われるトラッキング現象と媒体は異なる(一方はヤモリ、他方は湿ったホコリ)ものの、原理的には似ていると思う。
Fenômeno Lagartixa ヤモリ現象と名づけておこう。

2013年10月8日

ブラジルのデジタルネイティブ人口世界4位

http://g1.globo.com/tecnologia/noticia/2013/10/brasil-possui-4-maior-populacao-de-nativos-digitais-do-mundo-diz-onu.html
こんな調査結果が出た。
国連の機関、国際電気通信連合 União Internacional das Telecomunicações (UIT) によるMeasuring the Information Societyである。

デジタルネイティブ(po. nativos digitais)の定義は、きっちり定まったものでない。
国際電気通信連合自体もそれを認めていて、調査結果を発表するのもこの10月7日が初めてである。
ここでは、15歳から24歳の若者で、5年以上webを使っている者、とされている。
15歳から24歳はともかく、どうやって、「5年以上webを使って」いるかきっちり調査できるのだろうか。

ともかく結果を見てみよう。
デジタルネイティブは現在世界人口の5.2%を占め、同世代若者の30%に相当し、インターネット使用が普及していない発展途上国の多い中では少数派である。
同調査は、インターネット自体が普及途上であり、2007年時点で世界人口の21%しかアクセスしていなかったと指摘している。

ブラジルはデジタルネイティブが2千万人以上いて、その数は世界4位という。
結果が興味深いので、ここにのせてみよう。
第1列 国名、第2列 (デジタルネイティブの)人口(百万人)、第3列 総人口中のデジタルネイティブ%、第4列 同世代若年中のデジタルネイティブ%

Brasil tem a 4ª maior população de jovens entre 15 e 24 anos com mais de cinco anos de uso da web, o 'nativos digitais'
PaísPopulação,
em milhões
Fatia de
'nativos digitais'
na população, em %
Fatia de
'nativos digitais'
entre os jovens, em %
1º) China
中国
75,25,634,7
2º) EUA
アメリカ合衆国
41,313,195,6
3º) Índia
インド
22,61,89,5
4º) Brasil
ブラジル
2010,160,2
5º) Japão
日本
12,29,699,5
6º) México
メキシコ
97,843,3
7º) Rússia
ロシア
8,96,349,6
8º) Alemanha
ドイツ
8,210,194,2
9º) Vietnã
ベトナム
7,58,443,6
10º) Reino Unido
連合王国
6,911,185,9
Fone:UIT/ONU

表に見るように、中国やインドなど、現在の普及率が低い(それぞれ同年代若者の34.7%, 9.5%)は、合衆国や日本(それぞれ同年代若者の95.6%, 99.5%)と比較すると、伸びしろは大きい。
ブラジルも同年代若者の60.5%だから、まだ増える余地は大きい。
「人口が多ければ多いほど良いわけではない」と、中国インドなど人口大国である発展途上国をさして言うことがあるが、一概にそうとも言えないようだ。
増加する余地は、希望と同義であるからだ。
いつの日か、実人口順位と、デジタルネイティブ人口の順位が一致する、デジタル平等時代が来るのだろうか。

しかし同調査は同時に、ブラジルの情報サービスが世界水準でみて高価なことも指摘する。

ブロードバンドモービル(banda larga móvel)、正確な定義はここには書かないが、ブラジルは1分が0.74米ドル、これは最安の韓国0.01米ドルとは比較にならない。
ブロードバンド定置接続(banda larga fixa)は、US$ 17.20、約40レアルで、安い方から世界55位である。
SMS (Short Message Service)のメッセージUS$ 0.23は、世界で2番めに高額である。
注釈を入れさせてもらうと、US$ 0.23にレアル/ドルレートR$2.20を掛けると、R$0.51、ある携帯プリペイドプランでは、SMSを使用した日にかかる定額料金で、同じ日に送れるメッセージ数に制限はない。
同じプリペイドプランでは、インターネット接続も使用した日にR$0.50課金となっているが、接続速度については、使ったことがないので分からない。

世界各国に多数の通信会社があり、それぞれが異なる接続サービスプランを持つから、このような調査は複雑であることは理解できる。
その分、結果の解釈には柔軟性が必要であろう。
元資料で付属4に詳細があるらしい。(*Annex 4 features the statistical tables of prices used to compute the ICT Price Basket. It includes detailed price data for 161 countries broken down by cost of fixed- telephone, mobile-cellular and fixed-broadband services, for the year 2012.)

2013年10月6日

露天売りの携帯SIMカード

この記事で取り上げるのは、ブラジル全国で一般的に使われている、プリペイド式、ポルトガル語でpré-pago(プレパーゴ)のSIMカードについてである。

サンパウロの中心地区(セントロ)を歩いていると、露天売りがさまざまなものを売っている。
ブラジルでchip(語源は英語チップと思われるがシッピと読む)と呼ばれる、携帯電話のSIMカードを売っている者がいる。
SIMカードは、通常クレジットカード大の台紙のような支持体に支えられている。
商品は全くかさばらない。
舗道に売り物を広げたり、屋台を持つ必要はない。
身一つで商売をしている。

売り子の声はこう言っている。
「Claro 2レアル」
「どの会社も5レアル」

ClaroのSIMカードを2レアルで売っている少年にきいたら、5レアル出せば、そのカード同士で無料通話ができるSIMカード2枚組セットが買えると言った。
「どの会社も5レアル」の女性は、VivoだったかOiだったか今思い出せないが、ある一つのキャリアだけは10レアルと言っていた。
料金のうちいくらがSIMカードそのものの値段で、いくらが通話に使える金額かは、面倒なので尋ねなかった。

露天売りで買ったSIMカードは、まともに使えるものだろうか?
最近のSIMカードの包装は簡素だが、破られたものでなく、ICチップ部分をクレジットカード大の支持部分に、不自然に接着した形跡がなくて、チップの接点に、携帯機器に装着したときにその接点とこすれた筋がなかったら多分大丈夫だろう。
SIMカード、つまり携帯電話番号が盗まれたものだったら、被害者が番号を盗難申告して無効化されるおそれがある。
自分で携帯電話機器を持っていて、売り子の目の前で装着して使用できるか確かめることができれば問題はないと思う。

ネット販売ではどうか?
ブラジルの大手ポータルの価格比較機能
http://shopping.uol.com.br/chip-pre-pago.html?dir=asc&ord=preco
では、
TIM R$2.99
Claro R$5.90
Vivo R$6.30
Oi R$9.60
から買える。
安いものは10レアルあれば買える、と言ってよいだろう。

サイトを見て気がついた、SIMカード購入の注意をあげてみよう。
  • SIMカードの携帯電話会社選択
    Vivo, TIM, Claro, Oiがブラジル全国で販売されている。
    かける相手と同じキャリアを選ぶのが賢明である。
    僻地を探検する人はカバーする地域を重視して選ぶ。
    Vivoは会社が古いだけあって、田舎でもよく通じると言われる。
  • SIMカードの物理的大きさ
    http://tecnologia.ig.com.br/especial/2013-07-03/vai-trocar-de-celular-fique-de-olho-no-tamanho-do-chip.html
    をみると、3種類あることがわかる。
    自分の機器に合うものでなければ買う意味が無い。
  • SIMカードのメモリ容量
    SIMカードに収める電話帳その他情報の記憶域の大きさである。
    128KBが現在の主流のようである。
    64KBでも不足した経験はない。
  • SIMカードの電話番号の属する地域
    自分が居住、あるいは長期滞在する地域の市外(地域)局番(2桁の番号 例 サンパウロ大都市圏11、リオデジャネイロ大都市圏21)を選ぶ。
  • SIMカードにあらかじめ入っている通話プランの種類
    インターネットでみつけた安いSIMカードには、以前主流だったが現在はあまり使われていない通話プランのものもあるようである。
    自分の用途にあったプランを選ぶ、例えば、通話だけしかしない人に、インターネット接続の含まれたプランは必要ない。
    インターネット接続やSMS(Short Message Service - ブラジルではよく torpedo 魚雷という物騒な呼び方が使われる)の機能は含まれているが、使った日だけ一日定額課金というようなプランがあるから、あまり心配する必要はないのかもしれない。
    もちろん、SIMカード購入後に変更することはできるが、面倒は最初から避けたほうが楽だろう。

値段が高いものでないし、どこでも買えるものであるから、あえて舗道の(移動する)売り子から買う必要はなく、どこの街角にもある、雑誌売り、パン屋、スーパーや、ブラジルの地方にはあまりないけれどコンビニで、各携帯電話会社の「chip販売」表示幕のある(常駐の)商店で購入したほうが安心できる。
同じように、ネット販売ではSIMカードがいくら安くても、SIMカードの付属しない機器と同時に購入するのでなければ、送料を考慮すると割高になるだろう。



以前(2004年)SIMカードを携帯電話会社の正式な販売店で購入したときは、25レアルを支払った記録が手元にある。
15レアル分のプリペイド・クレジットが付いてきたから、SIMカード分は10レアルであった。
金額は変わっていないが、インフレを計算すると安くなっているといえるだろう。

最後に一つ注意点、プリペイド式携帯電話を使用する場合、正式には氏名、納税者番号その他を登録する必要があるのだが、露天売りではその場で登録などできない。
最初から犯罪に使おうなどと不届きな入手する人は、このブログを読んだりしないだろうが、単に1週間の旅行中使えれば良い、というのではなくて、長期間正規に使うのだったら、やはり先に書いたように、常設の販売所で購入したほうがよさそうだ。

2013年9月28日

マイクロソフト、ブラジル夏時間を1ヶ月前予告

O Horário de verão entra em vigor no dia 20/10/2013. Prepare-se!‏
Microsoft Brasil (microsoft@e-mail.microsoft.com)

ということで、ブラジルサマー・タイム入りのちょうど30日前に、マイクロソフトは予告メールを発した。

Decreto nº 6.558 de 8 de setembro de 2008, 2008年9月8日第6,558号政令の定めるところにより、2013年10月20日午前0時にブラジル夏時間が開始し、2014年2月15日に終了する。
夏時間実施州は、リオ・グランデ・ド・スル Rio Grande do Sul, サンタ・カタリーナ Santa Catarina, パラナ Paraná, サン・パウロ São Paulo, リオ・デ・ジャネイロ Rio de Janeiro, エスピリト・サント Espírito Santo, ミナス・ジェライス Minas Gerais, ゴイアス Goiás, マット・グロッソ Mato Grosso, マット・グロッソ・ド・スル Mato Grosso do Sul, トカンチンス Tocantins 及び連邦区 Distrito Federalである。

2013年8月に配布した累積的更新に夏時間関連が含まれているので、Windows XP/2003より新しいバージョンでは容易に移行できるようになっている。

手順

問題が解決できない場合には、(いれば)システム責任者か、直接マイクロソフトのサポートにメールか電話で問い合わせる。
  • サンパウロ大都市圏は(11) 4706-0900
  • その他の地方からは0800 761 7454(ブラジルで0800 "zero oitocentos" は無料電話のプレフィックス)

上のサイトなど参考にせずズバッと要約してしまうと、ここ近年の例で見て、タイムゾーンの都市選択が正しければ、夏時間移行は自動的に行われる。

2013年9月14日

「あんたは間抜け」ではない

ポルトガル語でanta、読みは「アンタ」、もちろんこれはあなたという意味ではない。
動物のバク(獏)である。
日本では獏は夢を食べる動物、なんか神秘的な風格を持つ、謎めいた動物ととらえられている。
しかしブラジルで「アンタはアンタ」といったら、話し相手を馬鹿にしていることになる。
どういうわけか、antaは間抜けの代名詞なのである。

http://g1.globo.com/jornal-hoje/videos/t/edicoes/v/zoologicos-de-seis-estados-brasileiros-lancam-campanha-para-resgatar-a-dignidade-das-antas/2824421/
ブラジルの6つの州の動物園が共同で、アンタの名誉回復キャンペーンを始めた。

研究者はどうして気の毒なアンタが「知能が足りない」代名詞になったのか、未だに解明していない。
一説には、ブラジルにやって来たポルトガル人が、アンタの家畜化を試みたが成功しなかったからだという。
別説では、アンタは驚くと頭を下げて走り、前の障害物などに注意しない習性からきたと説く。
ダチョウが馬鹿(それとも臆病?)と言われるのと似た理由だ。

アンタは、中南米に3種、Anta Centro-Americana(中米アンタ), Anta da Montanha(山アンタ), Anta Brasileira(ブラジルアンタ)、アジアに一種、Anta Asiática(アジアアンタ)の4種が存在するのだが、ブラジル以外で「アンタは馬鹿」という不名誉を被るところはない。
動物学者によると、アンタは、「(知能は)ほかの動物以上でも以下でもない」。
馬鹿ではないが、とりわけ賢いわけでもないのか。

研究者はこの被差別動物の生態学上の地位を説明する。
アンタは果実を主に食べ、(その外見に似ず)数キロメートルの移動をする。
ここで食べた果実の種をずっと遠くへ蒔く、「森林の庭師」なのだ。

アマゾナス 略称AM、パラ PA、バイア BA、サンパウロ SP、パラナ PR、サンタ・カタリーナ SCの6州にある20の動物園は共同で、Minha Amiga Uma Anta「私の友達アンタ」という児童用小冊子をつくり、アンタの名誉回復のキャンペーンを企画した。

インタビューが傑作だ。
レポーター:A anta é uma anta, não? 「アンタはアンタですか?」
(質問が誘導っぽいぞ)

10歳の女の子:Não não, ela é uma anta, né? mas ela não é burra assim. Ela é inteligente, né? A gente pensava errado.「いいえ、アンタはアンタだけどブッハではないよ。頭がいいんだよ。私たち考え違いしていたのよ。」

アンタと並ぶもう一つの間抜け動物の代表、ロバ(burra)ではないと答えているが、そうなるとロバは馬鹿なんだ。
笑ってしまった。
そのうちにどこかで、ロバの名誉回復キャンペーンが始まりそうだ。

土曜日の昼のニュースがアンタとブッハということは、まあ平穏な週末ということだ。
アンタにはテーマ曲もあるではないか。
「あんたのバラード」という歌があったことを思い出し、久しぶりに聞いた。
日本ではよく言ったものだ。
「アンタはエライ」

めばちこになりたくなかったら妊婦を避ける

ものもらいができた。
正式には麦粒腫である。
関西で言う、めばちことか言う呼び方は、関東人からみると新鮮でかわいらしく映る。

ポルトガル語では何と言うか?
terçol(テルソル)と書いてある。
しかし、俗称がおもしろい。
bonitinho (dos olhos)と言うそうである。
ブラジルの一部の地方でそう呼ばれるらしい。
(目の)かわいいやつ、という意味だろうか。
「めばちこ」も可愛らしいが、bonitinhoは一種の反語なのか。

それにまつわる俗話がまた不思議である。

あなたが何かおいしそうなものを食べているところを想像してもらいたい。
たとえば、暑い日に公園のベンチで、アイスクリームなどを味わっているといったところだ。
そのとき、その前を妊婦が通りかかって、彼女が「おいしそうだ、私も食べたい」と思ったら、すかさずその食べ物を「食べませんか」とすすめなければならない。
妊婦は当然女性であるが、アイスクリームを食べているあなたは、妊婦の家族・友人だろうが赤の他人だろうが、女だろうと男だろうと関係ない。
妊婦さんが「食べたいな」と思ったのに、あなたがその食べ物をあげなかったら、あなたはその報いにbonitinhoつまりものもらいを貰ってしまう、というのだ。

どうしてこんな言い伝えがあるのかわからない。
妊娠している女性は栄養を取る必要があるので、食欲を満たしてあげなければならないという教えなのだろうか。
あるいは、妊娠している女性の食欲は限りないので、食欲をそそるまねはするなという教訓なのだろうか。

しかし面倒である。
ものもらいをもらいたくなかったら、目の前を通るすべてのお腹の大きい女性に、「どうですか、食べませんか?」を声をかけなければならない。
声をかけなければ、妊娠している女性が食べたいと思ったかどうか、確認するすべがないからだ。
そうしなければ目が腫れるはめになる。
それが嫌だったら、おいしいものを食べるときは隠れて食べなければならないが、家族の女性が妊娠している場合に隠れるのは、これまた厄介である。

2013年8月29日

ブラジルの明星バーガーはA級グルメ

ポルトガル語で、少なくともブラジルのポルトガル語で、miojoといったら何か?
ポルトガル語で同じiの音価を持つyとiの交換が起こったものと思われるので、元はmyojoつまり日本語の明星である。
答えは、macarrão instantâneoつまりインスタントラーメンのことだ。

ブラジルでインスタントラーメンが製造されるようになったのはいつだろうか?
http://www.nissin.com.br/
によると、1965年サンパウロ市で"Miojo"マークの即席ラーメンの製造を開始した。
昔は明星食品と日清食品は別々の会社だったと思うが、どうして日清食品のインスタントラーメンがMiojoと呼ばれるようになったのかはよくわからない。
現在ブラジルでは、サイト主、joint-venture Nissin Foods Products Co. Ltd. e Ajinomoto CO. Inc.と説明される現地法人 Nissin Ajinomoto Alimentos Ltda.をはじめ、多くの食品会社が製造している。

さて、こんなレシピがあるサイトで紹介された。
http://receitas.ig.com.br/2013-08-25/hamburguer-de-miojo.html
題して、"Hambúrguer de miojo"「みおじょうのハンバーガー」インスタントラーメンのハンバーガーである。

本文にあるように、ブラジルでもインスタントラーメンは、「調理する気力が、飢えや怠惰に負けたとき」家で作る手軽な食事という位置づけが普通である。
普通の感覚に反して、Astolpho Burger Gourmet & TartaresのシェフGiuliano Garsodiと、レストラン名とシェフ名がのっているので、これは自信作なのだろう。
ニューヨークにはシマモトケイゾウというラーメンバーガーの発明者がいるそうだ(Keizo Shimamoto, criador do Ramen Burger, em Nova Iorque)。

サイトの写真を一見すると、インスタントラーメンの塊をそのままハンバーガーのバンズのあるべき場所に置き換えただけにみえるのだが、連続写真をみると、いったんゆでた麺を、丸い型に入れて焼いて整形している。
製法はともかく、写真を見てあまり食欲をそそられなかったので、日本にもこれは存在するのか気になり「ラーメンバーガー」で画像検索をしたら、かなり驚く事実があった。

ハンバーガーの必須要素であるバンとハンバーグのうち、バンをラーメンに置き換えたものとハンバーグをラーメンに置き換えたものの二通りのラーメンバーガーが存在するのだ。
いずれにせよ日本でのラーメンバーガーは、写真を見る限り堂々としたB級グルメなのである。

しかし、サンパウロのAstolpho Burger Gourmet & TartaresのFacebookページをみると、ハンバーガー店なのだが、価格帯5000円以上と書いてある。
いろいろ創作ハンバーガーの写真がのっているが、まあどんなハンバーガーにしろ5000円(といったら1レアル=42円換算で119レアルくらいなのだが)払う気は全く起こらない。

サンパウロ州の携帯番号が9桁になる

サンパウロ市及び近郊の、市外(地域)局番が11の携帯電話番号は、昨年(2012年)7月末より既に9桁になっていたが、このほど2013年8月25日より、サンパウロ州をカバーする、市外局番12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19の地域でも、携帯電話の8桁番号の先頭にさらに一桁、9が添加される。

そのため、ブラジル国内からこれら地域の携帯電話にかける完全な番号は、今までの 0+キャリア識別2桁+市外局番2桁+局番4桁+番号4桁 から、0+キャリア識別2桁+市外局番2桁+9+局番4桁+番号4桁となる。
0-xx-1x-9-xxxx-xxxx と、全部で14桁である。
発信者と受信者が同一市外局番地域内にいる場合には、9-xxxx-xxxxだけでかけられる。

なお、キャリア識別とは、発信者が、市外通話部分にどの電話会社を選択するかを指定するものである。
自分が契約している携帯電話会社を選択することが普通だと思うが、明示して指定する必要がある。
市外通話のキャリア選択は、固定電話から市外通話をする場合も同様に必要である。

2013年10月27日からは、リオ・デ・ジャネイロ(Rio de Janeiro)州(市外局番21, 22, 24地域)およびエスピリト・サント(Espírito Santo)州(市外局番27, 28地域)でも同様に9の添加が行われる予定である。

これら全ての変更が行われる地域、つまり市外局番12-19, 21-22, 24, 27-28の地域の、固定電話の番号には数字の増加はない。

国立テレコミュニケーションズ庁(ANATEL)の決議 Resolução n.º 553/2010その他によれば、8桁の携帯電話番号の先頭に9を付けて将来の番号増加に備える措置は、市外局番グループに順次行われ、2016年の12月末までにブラジル全国の携帯電話番号は先頭に9を持つ9桁に変更されることになっている。

2013年8月4日

2014年はW杯応援のついでにマリファナ体験旅行?

ウルグアイの下院が、マリファナ合法化案を可決したというニュースである。

来年のワールドカップでブラジル旅行を考えている向きには、ついでに隣国ウルグアイまで行っておおっぴらにマリファナを試してみようと、さっそく考える人がいそうなもので、新しもの好きな旅行社は、ブラジルワールドカップ応援旅行にオプションで、ウルグアイでのマリファナとカジノ体験旅行をつけるのでは、などと思ったのであるが、簡単にはいかないようである。

ウルグアイの下院は2013年7月31日夜、マリファナ(po. maconha 大麻)の栽培と売買をコントロールする政府機関の創設についての法案を可決した。
この法律により、ウルグアイ居住者は自宅や吸引者クラブでの大麻栽培や使用が可能となる。

ホセ・ムヒカ(José Mujica)大統領も支持する法案は、大麻の輸入、植付、栽培、収穫、精製、仕入れ、保管、販売、流通、つまり大麻のすべてを管理する政府機関の設立を定める。
法律によって、国立大麻院(Instituto Nacional de Canabis)を創設してドラッグの生産と流通を管理することになる。
違反者への罰則適用、大麻使用に伴うリスクについての教育ポリシー作成も行う。

  • 大麻を使用できるのは18歳以上のウルグアイ居住者で、登録(登録は公開されない)を行ったもの。
  • 一人一ヶ月40グラムまで薬局での購入、自宅での6株の大麻栽培が許可される。
  • 自分で植物の世話などできないという人には、45人までの会員で結成される吸引者クラブで99株までの共同栽培が認められる。
  • マリファナの宣伝、公共の場所での吸引は認められない。

13時間の議論に続く票決では、政府与党FA (Frente Ampla - 広大な前線党)の働きにより50名が賛成、46名が反対したが多数決で法案は通過した。
上院で与党は安定多数を確保しているため、法案の実現は確実視されている。

マリファナ合法案は2012年6月に、暴力犯罪対策の一連の法案の一つとして誕生した。
元左翼活動家のムヒカ大統領は、この法律によりマリファナの販売を厳しい方針のもとで統制すれば、密売組織を潰し、より些少な犯罪も減少できると期待している。
ウルグアイが麻薬観光地となることを避けるために、マリファナ使用はウルグアイ国民に限られる。
そう、これが大切な点だ。
ウルグアイ人と書いてある箇所もあれば、ウルグアイ居住者と書いてある箇所もあるが、多分後者であろう。

「国家による常習者へのマリファナ販売は、これまで世界のどこでもみられない画期的なものだ。」
フランスの薬物監視機関の研究者は言う。

他の国では、オランダ、スペイン、アメリカ合衆国のいくつかの州では、大麻の生産、クラブでの栽培、限定的使用がそれぞれ異なった形であるが認められている。

反対者はこのようなマリファナ合法化方針によって、ウルグアイ国民がより強力なドラッグ(コカインだろう)にのめり込むきっかけを与えるのではないか、また、ドラッグに関連する暴力対策に懸命になっているコロンビアやメキシコのような他のラテンアメリカの国々を刺激するだろう、と反論している。

ウルグアイはラテンアメリカで最も安全な国のひとつで、リベラルな法案の先駆者とみられている。
しかし最近の調査によるとウルグアイ国民の大半、63%はマリファナ合法化に反対している。

「私たちは火をもてあそんでいる。」法案反対派の保守政党Partido Nacionalの下院議員Gerardo Amarilla氏は言う。

「あなた達は(法律により大麻の)生産と販売を管理する。何か問題が起きればそれに対処することができる。
それともあなた達はいまの状態、つまりカオスが良いというのか?」
ムヒカ大統領与党側の法案賛成派下院議員Julio Bango氏は言った。

というのが記事のあらましなのだが、少し考えてみよう。

登録者一人につき自宅で6株栽培?
例えば、成人した子供が同居する4人家族は全員登録すれば24株の栽培が認められるのだろう。
栽培の違反はどうやってみつけるのだろうか。

ブラジルには熱帯病デング熱があって、その媒介体はやぶ蚊の一種であるので、カの撲滅のために市役所衛生課の見回り隊が各戸を訪問して、鉢植えの水皿、排水口、裏庭の空き缶や古タイヤ、手入れを怠ったプールなどにボウフラが湧いていないか、丹念に調べてまわる。
もちろん、住居の点検を拒否する住人もいるが、非協力が目にあまり、カの発生が非常に疑わしく、公共の安全を損なっていると考えられる場合には、司法の令状をとり、不在の場合には鍵を破壊してまで強制調査をすることもある。

この例にならうと、ウルグアイでは国立大麻院の職員が登録家屋を定期的に訪問して、既定株数を超過していないか検査するのであろう。
しかし、常用者登録をしていない家庭の場合はどうなのか。
やはり、未登録生産を防ぐために定期的に全戸訪問を行うのだろう。
国立大麻院は地方自治体に訪問検査を委託することになるだろう。

さて、栽培についてはこうしてしらみつぶし訪問で監視することはできる。
使用者についてはどうだろうか。

大麻使用者登録はウルグアイ居住者のみが可能だ。
しかしウルグアイ居住者への訪問者は?
これについては、大麻使用者一人ひとりに見張りをつけるわけにはいかない。

そこでこういった法くぐりは可能だろう。
「ウルグアイ・マリファナ体験旅行」ではなく、「ウルグアイ・ホームステイ」を募集するのだ。
もちろん、ホームステイ先の家族は、裏庭で合法的に大麻を植えている、正式な大麻使用登録者である。

2013年7月18日

夏=犯罪増?常夏のブラジルの立つ瀬がない

When Ice Cream Sales Rise, So Do Homicides. Coincidence, or Will Your Next Cone Murder You?
By Justin Peters | Posted Tuesday, July 9, 2013, at 2:59 PM
http://www.slate.com/blogs/crime/2013/07/09/warm_weather_homicide_rates_when_ice_cream_sales_rise_homicides_rise_coincidence.html

アイスクリームが売れる時期は犯罪が増える、だからアイスクリームが殺人事件を起こす、これでいいのか?
良いわけがない。
天才バカボンではないぞ。

AだからBだ。
BだからCだ。
ゆえに、AだからCだ。
これは正しい三段論法だろう。

AだからBだ。
AだからCだ。
だからといって、BだからCであるわけではない。
ここで、Aは「気温が高い」、Bは「アイスクリーム販売が増加」、Cは「殺人事件が増加」と当てはめれば答えは明白だ。

記事の中から抜粋する。
Summer is when people get together. More specifically, casual drinkers and drug users are more likely to go to bars or parties on weekends and evenings, as opposed to a Tuesday morning. These people in the social mix, flooding the city’s streets and neighborhood bars, feed the peak times for murder, experts say.

単語'Summer'を'Brazil'に取り替えてみよう。
Brazil is where people get together. More specifically, casual drinkers and drug users are more likely to go to bars or parties on weekends and evenings, as opposed to a Tuesday morning. These people in the social mix, flooding the city’s streets and neighborhood bars, feed the peak times for murder, experts say.

ブラジルは人々が集うところである。特に、酒飲みやクスリの常用者が(火曜日の朝とは反対に)週末とか晩にバーへ繰りだすことが多い。こんな連中が人々と交わい、通りや近所のバーにあふれると、殺人事件のピークを盛りあげることになる、と専門家は言う。

ブラジルの日常風景そのものではないか。
「火曜日の朝」うんぬんの箇所だって、日本で平日の昼前からパチンコしている人がいるように、ブラジルでも昼前から街かどのバール(bar)でビールを飲んでる人は珍しくない。

ブラジルは北部・東北部に常夏の場所が多い。
どうしたものだろうか。

次に書くのは、南東部・南部など、ブラジルでも冬に多少温度の下がる地方でのことだ。
アカデミア(academia)というと、学会とか学校という意味だが、スポーツジムもアカデミアだ。
今の時期、つまり冬には、アカデミアは人が減りガラガラになるという。
ブラジルでは南部の一部の地域を除き、大した寒さでないのだが、寒さにくじけてトレーニングをやめる人が多いらしい、と最近のローカルニュースで言っていた。

アカデミアの季節的繁忙・閑散の繰り返しは、寒さのせいだけでなく、別の説明がつく。
冬は体のラインが衣服に隠される季節だ。
しかも日本の秋のような気候だから、食欲はさかんになる。
薄着になる季節の春がめぐってくると、飽食と運動不足の結果に驚いた人々は、再びアカデミアに戻ってくる。
対策を怠ると、すぐ目の前に来た夏の水着姿に自信がなくなるからだ。
すべてのブラジル人に当てはまるとは言わないが、人に見られる体形、いや進んで見せる体形を気にする人が多く、酒や薬物のせいだけでなく夏に開放的になるのは当然といえる。

2013年7月14日

ブラジルの牛の降るまちを

フランスの作曲家ダリウス・ミヨー(Darius Milhaud)の作品に、バレエ音楽「屋根の上の牛」(Le Boeuf sur le toit)というのがある。
Wikipediaをみると、「ブラジルの大衆音楽や舞曲に強く影響されており(たとえば「屋根の上の牛」という題名は、ブラジルの古いタンゴに由来する)」と書いてある。
聞いてみると、ふわふわ、うきうきするような、浮遊感のある曲だ。
しかし現代ブラジルでは、昔より屋根が薄くなったからだろうか、牛は屋根をぶち破って家の中に落ちる。

13 July 2013 Last updated at 23:05 GMT
Brazilian man killed in his bed by falling cow
http://www.bbc.co.uk/news/world-latin-america-23303998
「ブラジルでベッドに落ちてきた牛により男性死亡」

ミナス・ジェライス州カラチンガ(Caratinga)の小さな家で、裏の牧草地で草を食んでいた体重1トンの雌牛が、アスベストの屋根を踏み抜き、ベッドで寝ていたJoão Maria de Souzaさん, 45歳の上に落下した。

ソウザさんは病院に運ばれたときは意識がはっきりしていて、一見して危険な徴候はなかったのに、医者に診てもらうまで長時間待たされた、と親族は語った。

ここで一つの問題が提起される。
ブラジルの公共医療の問題である。
病院に運ばれても医師不足、ベッド不足、機器・薬品不足などのため満足な医療が受けられないことがあるのだ。
それについては、先日のコンフェデレーションズカップ時期に合わせて起きた、全国の抗議デモの要求の一つとなったので、現在連邦政府は、医学部の就学年数を6年から8年に延長、最終2年を公共病院で実習してもらうという案や、連邦政府が月給1万レアルを負担して、医療過疎地に医師を雇い、地方自治体は住居食糧の負担をするという案が検討されている。

外国人医師の導入については、ブラジル人医師で医療過疎地の定員が埋まらない場合のみ、それを行う、ブラジルの医学部相当以上の教育の質が保証される国で医師資格を取得した者だけにブラジルでの医師就業を認める、ポルトガル語は必修と、連邦政府は提案している。
ということで、ブラジルのニュースでは、ポルトガルとスペインを想定していると解説した。
スペイン語でのコミュニケーションで苦労する必要はないが、スペイン語訛り・ポルトガル訛りのポルトガル語で会話することになりそうだ。
ブラジルの医師会は既得権が侵されると感じるのだろう、当然のように連邦政府の医療改革案に反対している。
これは全世界で普通に見られる反応だろう。

空から降ってきた牛の話に戻ろう。
地元メディアによると、この地方で同様の事件が起きたのは過去3年で今回が3回めという。
もっとも過去2回では死傷者は出ていない。

1回めには、屋根の下には誰もいなかった。
2回めの事件では、牛が落下した地点のすぐそばに赤ん坊と幼児が寝ていたが、奇跡的に無事だった。

BBC記事は、カラチンガは、ブラジルの伝統的酪農地域であるミナス・ジェライス州の丘陵地に立地すると結んでいる。
そんな断定をされても困る。
酪農の盛んな丘陵地だからといって、毎年のように牛が降ってくる場所は多くない。
家の裏の丘と家の屋根の位置関係は不明なので、草を食べている牛がどうして屋根の上へジャンプするのかも謎である。

そういえば、日本には「雪の降るまちを」という歌があったな。

2013年7月13日

ロナウジーニョのお辞儀

ブラジルのフットボール選手でロナウジーニョというと、二人思いつく。
二人が同時に現役で活躍していたころは、区別するために、後からでてきた方をその出身地リオ・グランデ・ド・スル(Rio Grande do Sul)の形容詞をつけて、ロナウジーニョ・ガウショ(Ronaldinho Gaúcho)と呼んでいた。

最初でてきたロナウジーニョだが、ただのロナウジーニョ、あるいはあだ名フェノメノをつけて、Ronaldinho Fenômenoは選手引退をして、現在はワールドカップ組織委員のため、よくニュースに登場する。
現役のロナウジーニョ・ガウショは、区別する必要がなくなったので、最近はガウショが取れて、ただのロナウジーニョと呼ばれることも多い。

ロナウジーニョ・ガウショは、現在ミナス・ジェライス州ベロ・オリゾンテのアトレチコ・ミネイロ(CAM - Clube Atlético Mineiro)でプレーしている。
先の水曜日2013年7月10日、アトレチコ・ミネイロは、コパ・リベルタドーレス(Copa Libertadores)の準決勝で、アルゼンチンのNewells Old Boysと2戦後、通算引き分けとなったため、PK戦に決定が持ち越された。
アトレチコ・ミネイロは5人目のキッカーに今やベテランの貫禄のキャプテン、ロナウジーニョ・ガウショを任じた。
3巡目と4巡目の両チームのキッカーが4人連続でゴール外に外すという、かなり珍しいできごとのあとで2-2の同点、ロナウジーニョ・ガウショは確実に決めて3-2とした後、NOBのMaxi Rodriguezによる最後のシュートをアトレチコのキーパーVictorは予期した動きでパンチして、劇的な決勝進出を決めた。

さて、ロナウジーニョだが、PK均衡を崩して勝利を引き寄せたシュート成功後、ゴールの方に向かって日本式のお辞儀をした。
ロナウジーニョは何を思ったのだろうか。
Newells Old Boysのキーパーにお礼を言っているのではない。
熱狂する応援団にお礼を言いたかったのだろうか。
サッカーの神様(それが存在するのなら)へのお礼だろうか。

いや、リベルタドーレス杯で優勝してクラブ・ワールドカップで日本へ行った時の、ゴール・パフォーマンスの練習をしたのではないか?
と思ったのだが、2013年のクラブ・ワールドカップの開催地は北アフリカのモロッコだから、そうでもないようだ。

ビデオでは1:02でそのシーンがある。

それほどサッカーファンでない私は、ロナウジーニョがお辞儀をしたのが初めてかどうかわからない。
長友がゴール・パフォーマンスでおじぎをする(した)というのも、聞いただけで見たことはない。
ほかにお辞儀をする(した)選手がいるのだろうか?

2013年7月9日

ブラジルにはトラック野郎でなくトラック宣教師

トラック野郎という映画のシリーズがあった。
今も満艦飾デコトラは、日本の国道を走っているのだろうか。
にぎにぎしくて懐かしい昭和の風景になってしまっただろうか。
最近、トラック運転手の高齢化が進み、トラック野郎はトラック爺さんになってしまった、という記事を読んだ覚えがある。

ブラジルにはトラックを飾る風習はない。
後ろのバンパーや荷台に、格言や冗談を書くことはよくある。
トラック運転手の哲学(filosofia de caminhoneiro)なんて呼ばれたりする。
でも、今日書くのはそれについてではない。

今日近所の通りで見たトラックの、前面の屋根上の、バスなら行先表示板にあたるところに、こう書いてあった。
"SALMO 127"
乗合バスだったら、サルモ127(通りあるいは番地)行き、ということになろうが、これはトラックだ。

ポルトガル語で(Livro de) Salmos、英語では(Book of) Psalmsといったら、旧約聖書の詩篇のことだ。
「詩篇127篇」と書いてあるのだ。
ブラジルはカトリックが最大勢力であるキリスト教国だ。
だから、トラックが聖書を引用することもあるのか?
これは宣教トラックなのか?

それにしても、聖書の内容を直接書くのでなく、その目次項目を書かれると、好奇心が湧き中身を知りたくなる。
手っ取り早くWikisourceからコピーしてみる。

127:1
主が家を建てられるのでなければ、建てる者の勤労はむなしい。主が町を守られるのでなければ、守る者のさめているのはむなしい。

127:2
あなたがたが早く起き、おそく休み、辛苦のかてを食べることは、むなしいことである。主はその愛する者に、眠っている時にも、なくてならぬものを与えられるからである。

127:3
見よ、子供たちは神から賜わった嗣業であり、胎の実は報いの賜物である。

127:4
壮年の時の子供は勇士の手にある矢のようだ。

127:5
矢の満ちた矢筒を持つ人はさいわいである。彼は門で敵と物言うとき恥じることはない。

いったいこの詩篇127篇(詩編127編)のどこが、トラック野郎というかトラック宣教師の琴線にふれたのだろうか。
127:1と2では、主の意志にそわなければ、労働も節制も虚しいという。
127:3から5では、子どもたちは神から賜ったもので、多ければ良いという。
私の解釈が正しいのか、よくわからない。

もうひとつ気になったことがある。
ときどきみられることなのだが、日本語訳と英語訳で、意味が異なっているように思う。
127:4で、日本語で「壮年」と言っているが、英語ではyouth、ポルトガル語ではmocidadeと書いてある。
「壮年」は「心身ともに成熟して働き盛り」と辞書に書いてあるが、youthとかmocidadeとか言ったら、「若年・若造」ではないのか。
壮年と若年では、意味が微妙に違ってくる。

聖書の解釈はしばしば非常に難しい。
疑問を解くためには、教会に行って神父さんか牧師さんに尋ねるか、詩篇127篇のトラック運転手に聞くしかないか。

2013年6月28日

世界遺産富士山へ自転車で逢い引き

近所に自転車屋があるのだが、そのウインドウガラスに、Fujiのマークが貼られた。
Fuji自転車は、ブラジルでも有名ブランドのようだ。

今月は他でもない日本の象徴、霊峰富士と神聖視される富士山の、世界遺産(Patrimônio Mundial)登録のニュースがあった。
富士山は、間違いなく外国人に最も知られる日本の映像の一つだ。
登山者の増加で環境破壊が心配されているが、まずはめでたいことである。
これをきっかけに環境浄化に努めてほしいものだ。
勢いづいて休眠から醒めて噴火などしてもらっては困る。

二つのフジから、急に思い出したことがある。

かなり昔にブラジリアへ行った。
ブラジリア近郊を走っていたら、"Motel Fujiyama"の文字が見えた。
ポルトガル語では、アクセントは「テ」にある。
だから、モーテルでなく、どちらかと言うとモテールである。

同乗者が説明してくれた。
"Foge e ama"
なるほどね。

fugirは逃げるという動詞、amarは愛するという動詞だ。
日本語に訳すと、逢引? 密会? 逃避行? まあどうでもよい。
「逃げて愛する」、その三人称単数現在形が"Foge e ama"というわけだ。
二人称命令形も同じ形だから、そう解釈すると、「逃げて愛せよ」だ。

ポルトガル語のアクセントのないeの音価はしばしばiとなり、geとjiは等しく、またiとyは両方ともiの音価を持つので、
Fujiyama -> Foge e ama
と変化したのだろうが、本当にそうなのかはわからない。

google検索すると、モテル・フジヤマはひとつだけでない。
そして、Fujiyamaでなく、Fujiamaという綴りが多い。
先に書いたように、iもyもiの音価を持つから、一つにつづまったのだろう。

Brasília - DF 連邦区ブラジリア
Candangolândia - DF 連邦区カンダンゴランジア
Belém - PA パラ州ベレン
Petrópolis - RJ リオデジャネイロ州ペトロポリス
Miranorte - TO トカンチンス州ミラノルテ

チェーン店ではないようだから、富士山の名前を逢引モテルの名前に拝借するアイデアを思いついた人が、各地に複数いたのだろう。

google.co.jpで"fujiama"と入力して、
「次の検索結果を表示しています: fujiyama
元の検索キーワード: fujiama」
と表示されたら、元の検索キーワードである"fujiama"をクリックする。
一番上に出るのが"Fujiama - Wikipedia"、これはsicilianu シチリア語の見出し語だ。
すぐ下に「fujiama の画像検索結果」が出るのだが、まぎれもない富士山の写真である。

富士山で逢い引きなら、怪しげだがまだ危険はない。
禁断の恋に悩み、果てに樹海で心中、なんてことにならないように。
ブラジルならその心配はないか。

2013年6月23日

サッカーと抗議デモとどちらが大事?

サンパウロ市のバス代値上げ反対のデモと警官隊との衝突を発端とした抗議活動(protesto)は、燎火のように全国に広がり、抗議デモの舞台になった各都市で公共交通料金の値下げが発表された後も、今のところ収まるところを知らない。

ミナス・ジェライス州の地方都市に住む私達家族も、この激流から逃れることは不可能だった。
フェイスブックで勧誘があったのかどうか、息子も木曜日の夕方、セントロから市役所前まで約2キロの街頭デモに出かけた。
心配と興味半々の母親、つまり私の妻だが、一緒に出かけていったのであるが、息子の故意か偶然か、途中で別れわかれになってしまった。
妻は市役所そばのスーパーマーケットをのぞいたが、混乱を恐れたスーパーは早くもシャッターをおろしてしまって、人気なく暗い駐車場に恐れをなして早々と帰って来てしまった。
息子はもっと遅くなってから何事もなく帰ってきた。

わが町の抗議活動は、市役所のガラスが2,3枚割れたくらいで混乱なく、組織側代表は市長と面会を達して、無事散会したようだ。
それでも息子の話では、建物にスプレーで落書きをしていたグループと、止めようとした平和的行動グループと合わせて5,6人が殴り合いをしていた。
爆竹の音が鳴り止むことはなかったという。
4万人規模のデモだったとニュースで発表された。

2013年6月21日金曜日の報道では、全国100都市以上で総数120万人が抗議活動に参加したという。
サンパウロ市だけで10万人以上が街頭を歩いた。

日本の報道では、ワールドカップ反対デモといわれることがあるが、これは少し違う。
コンフェデレーションズカップの土壇場になって、ようやく新鋭スタジアムが次々に完工するという、連日の熱が高まる報道で、FIFAの求めるスタジアム水準が過剰に豪奢とみたブラジル一般国民が、それだけ金があるのに、民衆が直接受ける教育や保健がなぜよくならないのか、という至極当然な理由からの抗議メッセージだ。
"EDUCAÇÃO PADRÃO FIFA"(FIFA水準の教育を)
"HOSPITAL PADRÃO FIFA"(FIFA水準の病院を)
というプラカードがそれを物語っている。
ワールドカップ反対のビデオを制作発表したブラジル人もいるから、一概には言えないが、大多数はワールドカップ自体に反対してはいない。
ワールドカップも良いが、その前にやることがあるだろ、ということだ。

ここ数年いや数十年来の大規模といわれる、今回の広域抗議デモの特徴といえば、まず、ソーシャルネットワークで結集した、特に活動家でない大学生/高校生などの学生が中心であること、それは、デモのプロの作る横断幕などでなく、手作り即席の紙製プラカードが多いことにみられる。
直近のニュースを見ると、若者だけでなく、その親世代、つまり労働市場の現役から、一線を引退した祖父母世代まで参加者が広がり、明らかに中産階級、バスなど使うことのないような人々も大勢参加している。
「娘がデモに参加すると言い心配になったので、いっそのこと私も参加することにした」と、瀟洒なアパートメントの部屋でプラカードを作りながら、ある母親はインタビューに答えた。
ノリの良いブラジル人の面目躍如である。
ブラジルには勤労学生は多いのだが、全日制大学生の出身家庭は、教育に金をつぎ込むことのできる中流以上が多いのは事実である。

プロテストのメッセージの中心は、公共交通運賃の値上げ反対であったのだが、社会保障や教育、貧困・犯罪対策、汚職追放などテーマが広範囲に拡散したこと、「旗はブラジル国旗のみ」と組織者グループが言うように、政党あるいは労働組合色が薄いことも、今回の抗議活動の特徴だ。
サンパウロ市のデモで赤い政党旗や労働組合旗を掲げたグループが、普通の参加者から日和見主義者(oportunista)とやじを浴びたり、旗を奪われ燃やされたりの小競り合いがあった。
サンパウロ市政と連邦政府は労働者党(PT - Partido dos Trabalhadores)が政権党であるが、PTの旗がデモにみられたのは奇妙なことだった。
日和見となじられるのは当然だ。
Dilma共和国大統領は、自らの所属政党のデモ参加分子の行動に不快感を示したという。

さらに、大多数の平穏なデモ参加者の中に、少数の過激分子や略奪目的のならず者がまぎれ混んで、大多数の穏健な参加者が解散してから、残った過激者が破壊活動に走ったり、商店略奪をどさくさに紛れて犯すケースが多いことがあげられる。
「最初は平和的行進だったが、夜になり残った少数が暴徒化して警察力と衝突した」という報道が多い。
この狼藉だけをみて、暴力に席巻されるブラジルと誤解されたくないので、多様なブラジル社会の表現形であることをここでぜひ強調しておきたい。

2013年6月21日の夜9時、テレビの全チャンネルを専有して、Dilma Rousseff共和国大統領は国民への呼びかけを行った。
内容は次のとおりだった。

民主主義の表現である平和的抗議運動は、いつでも受け入れる姿勢である。
しかし暴力沙汰は、規律を持って対処しなければならない。

コンフェデレーションズカップとワールドカップの資金であるが、融資であり、将来の使用者つまり州や民間が返済するものであり、税金の無駄遣いではない。

要求への返答は次のとおりだった。
  1. 公共交通の諮問機関をつくり、その改良につくす。
  2. 原油採掘のロイヤリティ(採掘者が油田の地元政府あるいは連邦など上位政府に支払う金-現在その分配のやりかた、どれだけ非生産州へ回すかをめぐり国会審議中)を全て教育予算に回す。
  3. 保健については、外国人医師を数千人単位で受け入れて、公共病院で働いてもらう。
2番めと3番めは、国会の立法が必要とニュース解説は言っていた。
病院に行ったら、ポルトガル訛りのポルトガル語や、スペイン語を話す医師に診てもらうことになるのか。
けっこう大胆な対策を打ち出したものだと思う。

PTのDilma政府は、最近まで継続した高支持率にあぐらをかいて、最高裁で有罪判決を受けたPT主体の汚職元議員をかばうような姿勢にみられる、民衆の心が離反するような慢心政治に陥っていたのではないか。

国民の直接選挙で選ばれた、強大な権力を持つ大統領制を敷くブラジルである。
国民の広域な抗議活動が、大統領の言質をとった形になったわけだ。
抗議活動の結果が、良い方向へ向かうことを強く期待する。

2013年6月17日

コンフェデ杯の影にもう一つのブラジル

発端はサンパウロ市の、市内バス代の値上げに対する抗議だった。
当初の抗議対象はそれだけだった。

デモ隊の一部が尖鋭化して破壊行為に走ったことから、警察隊との暴力を伴う対立に激化した。
デモ隊の過激分子は、警察隊へ石や火炎瓶を投げるだけでなく、街かどの建物のガラスや、地下鉄などの施設を破壊したり、道路上で物を燃やす騒擾活動を行った。
警察隊は唐辛子スプレー、催涙ガス、ゴム弾などで弾圧を試みた。
破壊の張本人は逮捕され、双方にけが人が出た。

続いて、デモの質・量の変化が起きた。
プロテスト内容は、バス代値上げに留まらなくなった。
社会現状への不満のあれこれ、つまり発端となったバス代値上げを含む公共交通の不備、社会保障、教育その他社会資本の不足、貧富の絶望的な格差、重税のくせに見返りのない税制度、現体制の汚職や司法制度の欠陥による犯罪処罰の欠如への不満まで対象は広がっている。

そのおり、コンフェデレーションズカップが始まった。
デモ隊は、さまざまな社会不備が手付かずにもかかわらず、ブラジル政府がコンフェデレーションズカップや来年のワールドカップに大金をつぎ込んでいることを批判する。

そして、サンパウロのデモ隊弾圧に反発して各地で起こっている協調デモは、他の会場都市に飛び火している。
抗議デモ活動が最も尖鋭化したサンパウロ市は、コンフェデレーションズカップの会場になっていない。
現在(2013年6月17日夜)デモ隊がブラジル国会(Congresso Nacional)の屋上に登り、平和的占拠を行なっているブラジリアは、ブラジル-日本の開幕戦のみなので、もう大会スケジュールは終了している。

きょうナイジェリア-タヒチ戦(結果は6-1)のあった、ミナス・ジェライス州の州都ベロ・オリゾンテ(Belo Horizonte)では、ワールドカップへの浪費に反対するデモ隊が、試合時間前に会場であるミネイロン(Mineirão)スタジアムへ向かおうとして、警官隊と衝突した。
大きな混乱はなかったようなのが幸いだ。

サンパウロでは、パウリスタやファリア・リマ、ピニェイロスなどの市内の重要道路でのデモが展開するため、車の通行ができなくなる。
リオデジャネイロでは、抗議デモ参加者の中のほんの一部の暴力分子が道路で物を燃やしたり、州議会の建物へ侵入している。
ベロオリゾンテでは、デモ隊はコンフェデ杯会場スタジアムをめざした。
ブラジルセレソン(代表チーム)があさってのメキシコ戦に備える、セアラ州の州都フォルタレザ(Fortaleza)では、デモ隊はセレソン滞在のホテル前で気勢を上げた。
これは文句をいう相手がお門違いのような気がするが。

各州政府は、その管轄する警察に、デモ隊規制にゴム弾を使用しないことを申し渡した。
サンパウロ市のように、デモ隊組織と警察の間に「紳士協定」が結ばれた都市もある。
Dilma共和国大統領は、暴力に訴えない平和的抗議デモは適法で国民の権利であることを改めて表明した。
どこでも精一杯最悪の事態を避けようとする努力がみられる。

この一連の抗議デモ活動が、コンフェデ杯報道に湧く世界のメディアに、どれだけ露出しているのかはよくわからない。
しかし、ワールドカップ本番まで1年をきった今日、大会の警備体制をみなおすきっかけになることは間違いない。

ワールドカップ2014ブラジル大会のスローガンは、 「みんな一つのリズム」である。
しかし全国民が大会バンザイとなびく、みんな右を向けの挙国一致体制とはおよそ正反対の、意見が対立しあい、まとまらないブラジルであり続けるであろう。
抗議活動が過熱して暴力に流れることは戒めなければならないが、国外の評価を気にするあまり、警察力や体制側の強権弾圧にエスカレートすることのないよう、ブラジルの良識はその名誉にかけて見守っていかなければならない。

2013年6月13日

北海道観光夏時間の提案

ついこの前の記事「コンフェデ杯 / 開催都市の半分は夏」に書いたのだが、北海道ではこの時期、昼間が15時間を越している。
しかし、日本標準時(Japan Standard Time, JST, UTC+9)の基準地明石、東経135度からずっと東側にある北海道では、この長い昼間時間は朝側にシフトしている。
極端な例を見たく、根室を調べた。
根室は、国立天文台のサイトを見ると、緯度:(北緯)43.3333° 経度:(東経)145.5833°である。
2013年6月21日の夏至の日、根室の日の出は3時37分、日の入りは19時2分である。

昔、夏の道東を旅行したとき、なぜか早起きして海岸を歩いたら、空気は涼しいのにすでに昼のように日が高かったのを思い出す。
あの不思議な時空を超えたような感覚は、まあ早起きしなくても多少は味わえるが、早起きという、若年のときには苦行である行いを成しとげたとき、よけいその尊さが増す気がする。
旅と言ったら土地の食い物と旨い酒、ということで、前の晩たらふく飲み食いした旅人が早起きするのは辛かろう。
そんなわけで、こんな貴重な感情を味わえる旅人がどれだけいるのかわからない。

そんなことを考えていたおり、この記事を見た。
日本の標準時「2時間前倒し」は可能なのか? 「標準時の専門家」に聞いた
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130613-00000469-bengocom-soci

元記事の主旨は、世界経済における日本市場の価値を高めるのが目的であるが、日本標準時を2時間進めるというのは面白い発想だと思う。
そうすれば、根室では夏至の日の出は5時37分、日の入りは21時2分になる。
しかし冬はどうなるか。
2013年12月21日の冬至には、根室の日の出は8時47分、日の入りは17時45分になる。
通勤通学時間は、真冬の夜明け前の一番凍えるときにあたってしまう。
これはつらい。

そこでだ、北海道だけで5月から8月にかけて時計の針を2時間進める「北海道夏時間」を採用したらどうか。
UTC+9の日本標準時(JST)から、UTC+11の北海道夏時間(HST)になるのだ。
4月から5月、8月から9月の切替時に一気に2時間調整するのはつらいが、それは置いておく。
観光に与える影響は絶大であると思う。
どうせ旅人で早起きする人は少ないだろうから、朝の気持ちの良さは犠牲にして、かわりに夜の訪れが遅い、北緯45度前後の北海道よりさらに高緯度地方の、簡単にいえば北欧気分を国内で味わえるというのが最大の売り物になる。

今の人は知らないだろうが、知床に白夜などないと、知床旅情がヒットしていたころ話題になったと思う。
北海道観光夏時間を採用すると、白夜にはならなくとも、より白夜らしい雰囲気になるのは間違いない。
日の入が午後9時にもなれば、観光客を含め人々は遅くまでそぞろ歩き、のどが渇けば北国の爽快な夏の明るさのおかげでビールもよけいに売れて、腹が減れば北海道のうまいものも売れて、飲食業も潤うだろう。

農牧業に従事する人は、もともと植物と動物のリズム、つまり太陽のリズムに従っているから、人間社会の時間がずれてもあまり問題がないだろう。
日本本土、いわゆる「内地」の時間と2時間ずれるということは、それだけ内地と共通する営業時間が2時間短くなることを意味するが、北海道の人は夏の間は6時間は中身を濃く働き、アフターファイブ(内地は午後3時以降)は楽をするか、割りきってその時期は2時間残業すれば良いと無責任に言ってみる。

ブラジルで夏時間を採用するかしないか決定権を持つのは、州政府(たぶん州議会も)となっている。
日本も地方分権を標榜するのならば、都道府県にその権利を与えて、北海道は堂々と「北海道夏時間」UTC+11を実施すれば良い。

これは「夏の夜の夢」ならぬ、「夏の夜の妄想」だろうか。

2013年6月8日

コンフェデ杯 / 開催都市の半分は夏

6月になると、ブラジルでは6月祭(festa junina)が各地で行われる。
日本の運動会の万国旗のような素朴に飾りつけられた広場で、焚き火を囲んだ踊りと、疲れたら熱い飲み物や甘菓子を、田舎風に着込んだ人々が、数少ない寒気を楽しむ行事である。
北半球では夏至祭が行われる季節である。
そうすると、ブラジルでは冬至の祭りということになるのだが、火が使われる点が共通しているのが興味深い。

さて2013年の6月のブラジルは周知のごとく、コンフェデレーションズカップという大行事、まあ来年のワールドカップ本番に比較すると小行事となってしまうが、ともかく、あるバレーボールのブラジルセレソン選手が、「バレーボールはブラジル最大のスポーツだ。フットボールはスポーツでなく宗教だからね」と発言する国であるから、だんだん注目度は高まってきている。

6月の日本、それも高緯度の北海道では、昼間の時間が15時間を越している。
さすがにこんにちこの時期に日本からブラジルを旅行する人は、ブラジルも夏だからやはり暑いだろうと思い込んでいる脳天気な人はいないであろう。
南半球だからブラジルは冬だ、少しは涼しいだろうと考える人が多いと思う。

だがちょっと待ってほしい。
コンフェデ杯が開催される6都市の分布は、ブラジルの地図を見ると、かなり北の方、つまり赤道に近い側に偏っていることがわかる。
一番赤道から遠いリオデジャネイロでも、南緯23度であるから、南回帰線より赤道側に位置している。

だから、日本の冬を想像して、南半球のブラジルにある開催都市の6月には、日の出は遅く夕方はすぐに真っ暗になると思っていると、拍子抜けするほど明るい。

6都市のうち、半分の3都市は常夏の気候といって良い。
下の表に開催6都市の緯度・経度、6月至点(2013年6月21日)の日の出・日の入り時刻、昼時間、6月最高・最低気温・降水量を表にした。
都市名は赤道に近い順に並べてある。

都市名緯度経度日出日入昼時間最高気温最低気温降水量
フォルタレザ
Fortaleza
3°45'S
38°35'W
05:3917:3311h54m20s29.622.8141.8
レシフェ
Recife
8°06'S
34°53'W
05:3217:1111h39m08s27.921.6377.9
サルバドル
Salvador
12°58'S
38°29'W
05:5517:1711h21m44s26.522.0243.7
ブラジリア
Brasília
15°48'S
47°53'W
06:3817:4911h11m20s25.213.38.7
ベロオリゾンテ
Belo Horizonte
19°45'S
43°54'W
06:2917:2610h56m15s25.013.411.5
リオデジャネイロ
Rio de Janeiro
22°58'S
43°11'W
06:3317:1610h43m24s25.218.742.7

2013年6月1日

コンフェデ杯 / ブラジリアではホテルのぶったくり覚悟で

Edição do dia 31/05/2013
31/05/2013 21h28 - Atualizado em 31/05/2013 21h28
Hotéis em Brasília custam até 4 vezes mais na Copa das Confederações
http://g1.globo.com/jornal-nacional/noticia/2013/05/hoteis-em-brasilia-custam-ate-4-vezes-mais-na-copa-das-confederacoes.html

こんなことが起きそうだと心配していたことが、現実になったようである。
ブラジリアでコンフェデレーションズカップを観戦したい人にとっては、悪いニュースである。
宿泊料金が平常の4倍にまで達しているという。

ブラジリアのマネ・ガリンシャ・ナシオナル・スタジアム(Estádio Nacional de Brasília Mané Garrincha)が完工して二週間になり、コンフェデ杯開幕戦を待つばかりである。
ブラジリアのホテルの予約率は80%になっている。

マネ・ガリンシャ・スタジアムの利点の一つは、ブラジリア中心部から近いことがある。
ブラジリア中心部には連邦区(distrito federal)のホテルの60%が集中している。
一番遠いホテルでも2.5kmであり、歩いてスタジアムへ行ける距離だ。
ただこの利便さは安くはない。

大会期間の週末の宿泊料金は、その前の週末の4倍にまで達している。

ある三つ星ホテルのデラックススイート2人宿泊(suíte dupla de luxo)が、6月7日から9日までで700レアルするのだが、コンフェデ杯開幕の週末は2千レアル以上となっている。

ある五つ星ホテルは平常期週末に696レアルする部屋が、2,646レアルに上がる。

別の五つ星ホテルのスーパーデラックス(suíte superluxo dupla)二人宿泊は大会期間に1,263レアルと、これは前の週の60%増しの宿泊料だ。

「大きな行事があるとき私たちは通常料金より割増の特別料金を設定します。」
Ivana Rebouçasホテルの支配人は語る。

Salete Soares支配人は、宿泊料の高下は需要と供給の法則に従う、と言う。
「需要の動きに反応します。
需要が大きければ値段は上がるでしょう。
需要による市場の価格調整ということです。」

政府観光省の公団、ブラジル観光院(Embratur - Instituto Brasileiro de Turismo - 略称と正式名が対照していないが、「昔の名前で出ています」ということだろう)は、宿泊料高騰を批判する。
「私たちは宿泊料一晩1千レアルを超すホテルをマークしています。
わが国の現実にも、国際的にみても、この値段は法外です。
なによりも、行事終了後の観光事業の促進にマイナスの影響を与えます。」
エンブラツール総裁Flávio Dino氏は語る。

あと二週間のうちにエンブラツールかどこかの役所が動いて、無謀な値上げを止めることができるのだろうか。
残念ながら、それは不可能に思う。

2013年5月25日

ブラジルでは大卒の給料はそうでない人の3倍

2013年6月5日 誤ったタイトル変更

なぜなら、大卒(院を含む)でない人には、高等学校卒業だけでなく基礎教育課程未修了(つまり小学校未卒)まで含むからである。

わかりやすく整理すると、ブラジルの学校はそれぞれ、
大学=高等教育(ensino superior, 18+)
高等学校=中等教育(ensino médio, 15-17)
小中学校(分離していない)=基礎教育(ensino fundamental, 6-14)
に相当する。

IBGE divulga números do mercado de trabalho no Brasil
http://g1.globo.com/jornal-nacional/videos/t/edicoes/v/ibge-divulga-numeros-do-mercado-de-trabalho-no-brasil/2594955/

今日ブラジル地理統計院(IBGE)が発表した、労働市場についての調査結果が興味深い。

ブラジルでは大学卒業者はそうでない人の3倍以上の給料をもらっているという。
IBGEによると、高等教育課程未修了者(sem nível superior)の平均給与が1,295レアルに対して、高等教育課程修了者(com nível superior)の平均給与は4,135レアルであった。

1ドル=100円=2レアルの簡易換算を行うと、1,295レアルと4,135レアルは、それぞれ64,750円と206,750円になる。

さて、興味から、この給料を購買力平価でみるとしたらどうなるのだろうか気になり、Big Mac価格で変換してみた。
日本は330-360円の平均をとり345円、ブラジルはR$11.25を使った。
R$1,295とR$4,135は、それぞれ39,713円と126,806円になる。
つまり、レアル安BigMac高、円高BigMac安の作用が働いている。

簡単に説明すると、ブラジルではMcDonaldはまだまだ大都会のショッピングセンターの花形店のステータス、日本ではファストフード企業間競争に揉まれたスリムな値段ということだ。

ニュース報道では、ある匿名企業の例をあげている。
中等教育(ensino médio)、つまり高校過程卒業者であったら、この会社でencarregadoまで出世できて、給料は5千レアルにまでなる。
encarregarというと、辞書には委ねる、負わせるという意味の動詞と出ている。
その過去分詞形だから、(責任を)委ねられたもの、負わせられたものという意味で、まあ責任者という意味である。

いい給料であるが、これより上に上がるには高等教育課程つまり大学卒業の学位が必要である。
そうすると、給料は2万レアルまで届くことが可能になる。
役職名は報道では明らかにされなかったが、この給料だったら役員クラスである。
現実には、大卒が誰でも役員になれるわけがないのは、世界のどこも同じだ。

サンパウロ大学経済経営会計学部(FEA-USP Faculdade de Economia, Administração e Contabilidade da Universidade de São Paulo)のHélio Zylberstajn教授は次のように説明する。
「ブラジルでは良い労働者、質の高い労働力が不足している。
(労働)市場は教育の価値を認め、市場は教育へ対価を支払う。
ブラジル人はそれを知っているから、親たちは子供を大学へ入れたがる。
教育は、社会における出世の原動力である。」

大学課程修了者の全就業者に対する割合は年々上昇している。
2010年に大学卒業者は全体の16.5%であったが、2011年には17.1%まで増加した。
でも82.9%が大学卒業に達していない。
大ざっぱに計算して大卒者は6人に1人だ。

昔から日本人移民や日系ブラジル人は教育熱心で、子供を大学へ入れるのを人生の目標であるごとく、そのためにはなんでも犠牲にするとか言われてきた。
自分が言語などで苦労を味わったから、子供には苦労の少ない良い生活を送ってもらいたいという親心である。
実際に、大学生の中の日系人比率は、住民全体の日系人比率と比較してかなり高いことはよく知られている。
先の教授は、ブラジル人一般が大学教育の価値を重要に捉えていることを指摘したが、昔から子弟の教育を第一に置く日本人移民には、自分自身の苦労した私的体験が基になっているとはいえ、やはり先見性があったと言うべきである。

2013年5月18日

コンフェデ杯 / ブラジル-日本開幕戦の舞台が完工

http://g1.globo.com/jornal-hoje/videos/t/edicoes/v/estadio-nacional-mane-garrincha-e-inaugurado-em-brasilia/2582403/

ブラジリアのマネ・ガリンシャ・ナシオナル・スタジアム(Estádio Nacional Mané Garrincha)が、今日2013年5月18日完工式を迎えた。
と言っても、報道によると進捗度は97%、なにか仕上げが欠けているらしい。
Dilma大統領が参席し、始球キックを行うオフィシャルセレモニーが行われた。

今ブラジルは各州の選手権(campeonato estadual)のたけなわであるが、連邦区選手権のブラジリア対ブラジリエンセの試合が、きょう午後行われる皮切り試合だ。
まだ100%完成していないからだろうか、30%の観客定員で行われることになっている。

次のテスト?試合は、5月26日のブラジル選手権(campeonato brasileiro)の開幕戦フラメンゴ-サントス(Flamengo - Santos)、これは7万1千人のフル観衆定員で行われる。

しかしなんといってもブラジル中が待望するのは6月15日、コンフェデレーションズカップの開幕戦ブラジル-日本戦である。
リンクの動画を見れば、少なくとも遠目からは、非常に素晴らしいスタジアムであるのが実感できる。
FIFAスタッフとスタジアム訪問したロナウドが、別の報道で、世界のどのスタジアムにも負けないと絶賛していた。

本当に大会間際になってようやくスタジアムが完成する、きわどいブラジル工程が続く。

献血と肌の色の関係

献血 Doação de sangue

久しぶりに献血をした。
これまで数回行ったことのある献血は全て日本で、200ml時代のものだったので、400mlをいっぺんに抜かれるのは初めて、しかもブラジルで献血も初めてであった。
かなり期待と不安の混じるできごとだ。

献血の動機であるが、大学生の息子のある教授が、献血したら6点加算という取引?があったので、息子とその友人を血液センターへ連れて行くことになり、それだったらブラジルでも献血してみようという気になったからだ。

献血人登録は、係員と対面し、氏名・住所・身分証明書番号などのごく通常の項目を読み上げ、係員が直接コンピュータへ入力するのだが、目の前に一枚カードが置いてある。
それには次のように書いてある。

「あなたの色はどれですか?」Qual é a sua cor? という質問に対し、次の選択肢がある。
1 黒色 negra
2 褐色 parda
3 白色 branca
4 黄色 amarela
5 インディオ(色) indígena
6 表明したくない não quer identificar

国勢調査用語では、黒色を表現するのはpretaであるが、この場面ではnegraを使っている。
インディオって色の名前か?と思うのだが、選択肢1から4まで全て、色(cor 女性名詞)にかかわる女性名詞あるいは修飾する形容詞だから、インディオのような色ということだろう。

そして、この項目だけはカードを見て、係員には番号で回答するようになっている。
もちろん係員もカードを目の前にしているのだから、黙って指で指し示しても良いわけだ。
回答が周りの人にさとられにくいこと、さらに選択肢6があることからみると、この質問はある人にとっては答えるのに抵抗を感じる、微妙な性質であるのだろう。
献血(血液)と肌の色の関係の医学的な意味は、私には全くわからないのだが、この設問と回答法は、ブラジルの人種問題の複雑さと根強さを感じさせるできごとではある。

採血前に軽食が出て、400ml血を取られてもふらふらしたりすることなく採血は平穏に終わり、再び軽食が出て終了である。

息子の血液検査結果が先に郵便で届いた。

(ABO)血液型 Grupo sanguineo, Rh因子の他に、肝炎 Hepatite, ヒト免疫不全ウイルス Hiv, シャーガス病 Chagas, 梅毒 Sifilis, ヒトTリンパ好性ウイルス Htlvについての結果が書かれている。

人種調査といっても献血者の自己申告であるし、混血が進めばどこで色の違いの線引きをすればよいのかが曖昧になってくる。
その厳密さの程度は、同じく自己申告である国勢調査と同様である。
献血人の肌の色聞き取りから、先にあげた病気の疫学的調査を関連させて、なにか有効な結果が出るのだろうか?
しかもそれが公表されるのだろうか?
けっこう疑問が残る。

もう一つ日本の献血と異なることであるが、ブラジルでは上記の通り、献血人はHIVの検査結果を文書で受け取る。

2013年5月15日

真似するな、路上ドリブル

US man dies dribbling football to Brazil World Cup
http://www.bbc.co.uk/news/world-us-canada-22537627

この表題を見て、また外国人観光客がブラジルで強盗か何かの犯罪の犠牲になったのか?と思ったが、それは早とちりだった。

Richard Swansonという42歳のアメリカ人が、オレゴン州から中米・南米を経て、2014年ワールドカップブラジル大会に合わせてブラジルへ至る旅を計画した。
普通の旅でないのは、ボールをドリブルしながら移動することだ。
その奇妙な旅行は2週間たらずで終了してしまった。
オレゴン州リンカーンシティ Lincoln City, Oregonで、トラックにはねられて死亡したからだ。
彼のボールは事故現場に転がっていたという。

彼はOne World Futbol Projectの寄付金を得るためにこのドリブル旅行を計画し、5月1日にシアトルを出発した。
One World Futbol Projectは、発展途上国に丈夫なボールを寄付する活動をしている。

彼は、グアテマラ、メキシコ、コロンビアを含む11カ国を旅行する予定だった。
旅の抱負をサイト Breakaway Brazil websiteに述べている。

彼は private investigator(私立探偵)からグラフィックデザイナーに転身したが職を失い、職探しに苦労して、自分がこの人生で何をしたいか考えたという。
ローンなくキャリアなく成長した子供二人、今が旅立ちの時と決心した。
「この旅に出るよう運命づけられている」"I felt destined that I should go on this trip,"と言っている。

交通事故の詳細は分からないが、記事の最後にこう書いてある。
「トラック運転手は起訴されなかった。」

ドリブルを続けながら、どれだけ周囲の車に注意することができるのだろうか?
交通量の多いハイウェイを、ボールをドリブルしながら走るのは、まあ普通の人はやらないだろうが、極めて危険なことに違いない。
トラック運転手にしてみれば、ドリブルにしくじって車道へはみ出た酔狂なおっさんを運悪く跳ねてしまった運命に泣いているかもしれない。
彼の旅行目的は崇高かもしれないが、真似しないほうが賢明だろう。

でもリチャードが旅行の終盤になって、ワールドカップカップの期待で沸騰するブラジルに到達していたなら、きっとブラジル人は喜び、大歓迎を受けていただろうと想像する。

2013年4月14日

バナップルとリンゴバナナ

最初に書いておくが、これはステマではない。

巷には、バナップルという果物があると聞いた。
調べたら、スミフル Sumifru のサイトにこれをみつけた。
http://www.sumifru.co.jp/line_up/banana/banapple.html
「まるでリンゴのようなさわやかな甘さ。極麗 バナップル Banapple」というのだ。

フィリピンにあるバナナ研究所で開発された新品種で、見た目はバナナだが、初めての味だと紹介されている。
「キウイのようでもあり、なんとなくパッションフルーツのようでもあり、一瞬、梨のようでもあり、はたまた パイナップルのようでもあり。でもなんだかんだと一番近い味はりんご」というので、このふざけたような名前になったという。
結局、いろいろな果物に似ているが、バナナには似ていないバナナである、ということか。

ここで思い出した。
ブラジルにはその名も'maçã' マサンというバナナがある。
maçãの意味は、リンゴである。
この辺でよく見るバナナの種類は、banana nanica, banana prata, banana maçã, この生食用の3種類が多い。
無理して訳すと、それぞれ、「矮性バナナ」、「銀バナナ」、「リンゴバナナ」となる。
調理用バナナには、banana da terraというのがある。

写真で見るバナップルと実物で見るバナナ・マサンを比較すると、両方とも果実は短くずんぐりしているし、サイトによるとバナップルは皮が薄く傷みやすいというから、その点もバナナ・マサンによく似ている。
ブラジルで一番美味なバナナという声も多いバナナ・マサンが輸出されないのは、傷みやすく保存性が低いからと聞いたことがある。
農業番組で見たが、バナナ・マサンは、他の品種と比べてパナマ病という病気に非常に弱い欠点があるという。
果実が小さく収量が低いのと、病害のためか、バナナ・マサンは他の生食用品種より単価が高い。
どれだけ高いかみてみよう。

バナナ・ナニカは、Carrefourの特売でキロR$1.75する。
バナナ・マサンは、同じCarrefourの特売でキロR$3.59の値がついている。
マサンはナニカの倍以上だ。
1レアル50円として、マサンはキロあたり180円する。
もちろん生食農産品であるから、天候などの要因で値段は激しく上下する。

バナップルは、楽天市場で、400g袋が1,280円で売られている。
キロあたり3,200円だ。
バナナ・マサンとスミフルのバナップルは価格差18倍、別物であると結論しよう。

アクレ州に違法移民警報

Brazilian state of Acre in illegal immigration alert
http://www.bbc.co.uk/news/world-latin-america-22106284

アクレ州はブラジル内陸、アマゾンの上流域にある新しい州(1962年)である。
どんな州か、簡単に調べてみた。

ブラジルの広大で超有名な州、アマゾナス(Amazonas)州の南西端に付属するように接している、いびつな逆三角形を2つ並べたような形の州である。
州都はリオ・ブランコ(Rio Branco, 9°58'27.03"S 67°48'27.56"W)
隣接するのは、北側にアマゾナス州、南側の大部分はペルー、南東側はボリビアで、東端ほんの22キロばかりブラジルのロンドニア州(Rondônia)とも接している。
いかにも人口密度が薄そうにみえて、1平方キロメートルあたり4.80人であるが、ブラジル27州の中で23番目で、より人口密度が少ない州が4つもあるから、やはりブラジルは広いものだ。

当初ボリビア領だったこの地へ、ようやく19世紀末にブラジル北東部からゴムを求めたブラジル人の入植が始まり、一時独立してアクレ独立国(Estado Independente do Acre)を宣言したものの、ブラジル政府の介入占領があり、そのためブラジル・ボリビア両政府の交渉が行われ、結局ブラジルがボリビアからアクレを購入した。
直線距離で見ると大西洋より太平洋に近い内陸なのだが、標高は200メートル程度にすぎず、アマゾン川の多くの支流が流れている。

言ってみれば僻地であるが、そこが違法移民で騒がれている。
なぜこんな所へ遠くから移民がやってくるのか。
ブラジルの国内でもニュースになっているが、BBCの記事をみた。

ブラジルの入国管理官(元記事には書かれていないが、ブラジルの連邦警察が出入国管理を行う)によると、そのほとんどはハイチからであるが、バングラデシュ、セネガル、ナイジェリアからの移民もいる。
最近2週間で1700人の不法入国者が記録された。
アクレ州政府は、連邦政府に不法移民対策用の緊急資金を求めている。

2010年から総計5千人以上のハイチ移民がアクレ州へ到着しているが、最近数ヶ月はセネガル、ナイジェリア、ドミニカ共和国、バングラデシュからの移民が増加してきた。
彼らは、アクレ州と陸続きのペルー・ボリビアの濃密で広大なアマゾン上流森林地帯を利用して国境警察の取締りを逃れながら活動する越境請負人(en. people smugglers)に頼って、不法入国する。

なるほど、やっとわかった。
外洋である大西洋の海岸線へ直接船で到着するより、いわばブラジルの裏側である内陸国境を越境するほうが容易というのが、アクレを入国地に選ぶ理由なのだろう。

"Dangerous odyssey"である。
拘束された不法移民は、州都リオ・ブランコから南西280kmのボリビアと国境を接する町ブラジレイア(Brasileia 11°0'25.69"S 68°44'33.76"W)の移民収容所に入れられる。
ブラジレイアの2万強の人口の10%は、この2年内に到着した移民と推定される。
そのほとんどは、2010年の大地震で壊滅的被害にあったハイチからである。
町の住民によると、警察は不法移民に住居と食物を与えるのに精一杯で町はカオスだという。

どの道を通って、カリブ海のハイチからブラジル内陸のアクレまでやってくるのか?

ハイチの首都ポルトープランス(Port-au-Prince)から空路でまずパナマへ着く。
続いてエクアドル(Ecuador)まで行き、こんどは陸路をとってペルーかボリビアへゆく。
そこからブラジルのアクレ州をめざし横断するのだが、しばしば「コヨーテ」、つまり越境請負人に金を払ってお世話になる。

セネガル人は、モロッコまで行き、スペインに入り、そこから空路でエクアドル入りしたと言った。
エクアドルからの道筋はハイチ人と同じだ。

多くの移民にとって、アクレは最終目的地ではない。
サンパウロやリオデジャネイロのようなブラジルの大都市へ行きたいのだが、生活できればどこの町でもよいとも言う。

ブラジル警察は昨年ブラジリアやサンパウロで、ボリビア・パキスタンの不法移民を、劣悪な給料あるいはタダ働きで雇用している衣料工場(en. sweatshops)を摘発した。

身分証明のない違法移民にとって、多大な金と苦労と危険を冒して、彼らが想像する人生の希望である大都市にようやくたどり着いても、違法であるがゆえ、搾取される場所になっていることが多い、悲惨な物語である。
それでも地震のため全てを失ったハイチ人に混じって、アフリカやアジアからの移民が増加している事実は何を意味するのか。
アクレへの入国はリスクが少なく比較的容易なことが全世界的に知られてきた、よほど本国の生活の環境が悪い、ブラジルの大都市が移民にとって魅力があることなどがその原因としてあげられよう。

2013年3月29日

アマゾンの透明な天空の河

Amazon's 'invisible flying rivers'
http://www.bbc.com/future/story/20130326-amazons-invisible-flying-rivers
アマゾンの「見えない飛ぶ河」・「透明な天空の河」
Flying Dutchman(さまよえるオランダ人)か、天空の城ラピュタか、空に浮かぶものにはロマンを感じる。

天空の城ラピュタは、英語では'Castle in the Sky'、ポルトガル語では'O Castelo no Céu'と、Laputaが抜けている。
うがった見方かも知れないが、puta プータはポルトガル語やスペイン語では売春婦のことなので、タイトルには避けたのかもしれない。
la putaといったらスペイン語では、売春婦(単数)に定冠詞をつけた形だ。

ともかく、天空の河である。
アマゾン河が世界の淡水のかなりの部分をかかえていることは、皆よく知っている。
しかし、樹冠の上方に飛ぶ河があって、下のアマゾン河と同様に力強く、重要であることはほとんど知られていない。

アマゾン流域の広大な森林が吸収する水分量は膨大で、一日に200億トンの水蒸気が空中の河へ放出されるといわれる。
この巨大な水蒸気の流れは、雨の源である雲となり、アマゾンの熱帯林だけでなくラテン・アメリカ全体に雨となって還流する。

ブラジルの天気予報を見ると、私たちにとってこの天空の河は、おなじみの天候現象であることがわかる。
この現象は、天気予報では、別のいかめしくそっけない名前で知られている。
'zona de convergência do Atlântico Sul'、英語では'South Atlantic convergence zone'、つまり、「南大西洋収束帯」と呼ばれるものだ。
ごく簡単に説明すると、南アメリカの地図をみて、Manaus マナウスから南東へ向かって、Rio de Janeiro リオデジャネイロへ引いた線に沿う、湿った空気の流れが南大西洋収束帯で、アマゾン流域の水分をブラジル南東部へ運ぶ、地球スケールの巨大な、大気中の目に見えない水循環メカニズムである。
その流れが目に見えないといっても、衛星写真では、南大西洋収束帯は雲の帯となって現れ、その下は雨が降っていることが多い。

もちろん日本の梅雨前線のように周りの大気条件によって南北へ揺れたり、強くなったり弱くなったりするので、ひとところに何ヶ月も停滞するわけではない。
日本の河川は短く流域面積も小さいので、河から雨のもとになる水分が供給されることなどあまり想像できないが、ブラジル南東部では、少なくともこの南大西洋収束帯の現象では、大西洋でなく、アマゾン流域から雨雲のもとがやってくるのである。
スケールの大きな話だ。

この影響下に入ると、雷を伴う大雨にみまわれることがある。
近年のブラジル国内のニュースでの、サンパウロ州やリオデジャネイロ州の大雨による洪水やがけ崩れは、発達した南大西洋収束帯の影響によってもたらされたものが多い。
日本では、台風はあまりに強すぎると災害を起こすものだが、全くなかったら日照りで農業や生活・工業用水に不便をきたすので、やはり困る。

ブラジルの飛ぶ河も、その影響で災害も出ているくらい強い雨を降らせていると思いがちだが、ブラジルの電力の源であるダムの水量は、一番貯水量が大きいはずの雨季の終わりにもにかかわらず、各地方で50%に満たない状態で、現在から火力発電が稼働している。
人間の立場からみると、降ってほしい場所に雨は降ってくれないのはもどかしいものだが、しかたがない。

2013年3月17日

日本ではカモ、ブラジルはゾウアザラシ

Balneário Camboriú バルネアリオ・カンボリウは、Santa Catarina サンタ・カタリーナ州の有名な海水浴場だ。
バルネアリオは海水浴場という意味だ。
調べてみると、"Balneário Camboriú"市は、隣接するただの"Camboriú"市から1964年に独立した。
そこでのニュースだ。

この写真を見て、一見トドが住民にいじめられているのではないかと思った。
トドがぐったりしているような気がしたからだ。
そこのVascoのシャツを着ているおじさん、あんただよ、ブラジルの浦島太郎は亀でなく、トドをいじめるのかい?

記事を読んだら、写真を一見した印象が全く間違っていることがわかった。
まずこの動物はトドではない、ゾウアザラシ(elefante-marinho)であった。
ゾウアザラシはいじめられているのではなく、自分の意志で散歩というか、休憩のために陸に上がったそうだ。

時と場所は、2013年3月16日土曜日午後、バルネアリオ・カンボリウ市のAvenida Atlântica (座標は26°59'21.73"S 48°37'48.42"W)
市警察によると、上陸時刻は17時20分、ゾウアザラシはアトランチカ大通りの横断歩道を渡って、一番賑やかな地区に行った。
警察は道路を通行止めにした。

商店街でゾウアザラシが買い物をしたり、バーでビールを飲んだりするわけがない。
体が乾くと苦しむと思ったのだろうか、通行人が水をかけてやったりしたが、しばらくしてゾウアザラシは自分から海に戻ったという。
体長2から3メートル(きっかりの数字でないのは、体が伸び縮みするからだろうか)、重さ500キログラムと推定された。

(http://g1.globo.com/sc/santa-catarina/noticia/2013/03/aninal-marinho-atravessa-avenida-atlantica-em-balneario-camboriu.htmlを参考した)

ポルトガル語の動物の名前で「海の~」というのがよくあって、その違いがけっこうわかりにくい。
これを機に、いくつか整理しておこう。

elefante-marinho - 海のゾウ - ゾウアザラシ
leão-marinho - 海のライオン - アシカ
lobo-marinho - 海のオオカミ - オットセイ
cavalo-marinho - 海のウマ - タツノオトシゴ
estrela-do-mar - 海の星 - ヒトデ

ヒトデだけ語形が違うが、今のところ思いついたのはこれくらいだ。

2013年3月15日

アルゼンチン・ウルグアイ旅行に注意

親戚の者が観光旅行をした。
独身男が恋人と二人で行く、気楽な旅行だった。

日本では「海外旅行」英語にすると'overseas'だろうが、ブラジルは実に10ヶ国と陸続き(橋でつなぐことができるので、川を国境とするのを含む)国境を接する。
これはoverseasと言っていいのか?
英和辞典には「海外の、外国の」と書いてはある。
島国英国の言語だから、overseas=外国で良いのか?
イングランドがスコットランドやウェールズと分離している時代はどうだったのか?
ウルグアイやボリビアとブラジルの国境など、間に川すらない国境では、overseasはいささか大げさではないか。

ともかく、目的地はウルグアイだった。
スペイン語ではUruguayだが、ポルトガル語ではUruguaiだ。

ブラジル人の外国旅行先で、一番多いのはアルゼンチン、次はUSAと言われるが、ウルグアイというのはあまり聞かない。
試しに、サンパウロからブエノス・アイレスへGoogle Earthで陸上ルートをひかせると、ウルグアイを通過しない。
全長2,255kmになるのだが、その一部分になっていないのだ。
つまり、素通りすらしていない。

ウルグアイの観光地で最も有名なのは、Punta del Este(プンタ・デル・エステ 意味は東の岬)だろう。
Google Earthで計測すると、首都モンテビデオから東に向かって、直線距離110キロ、道路で移動すると138キロにある、海岸リゾートである。
モンテビデオから車で行くのに、てごろな距離といえよう。

彼が旅行から帰ってきて、ウルグアイにはブラジル人に対する偏見(discriminação)があると憤慨して言った。
とあるレストランに二人で入って、テーブルについたのだった。
テーブルには、店員に案内されてついたのか、景観の良い観光地によくある、屋外のテラスに並ぶテーブルに自分で空きを見つけたのか、そこは尋ねなかった。
どんな店に、どんな服装で入ったのかも聞かなかったので、詳しい状況はわからない。

合図をしてもウェイターが注文を聞きにこない。
20分待ってもウェイターは来ない。
頭に来て席を立ち、ほかの店に移ったという。

彼は、ポルトガル語でしゃべっていて、スペイン語を話さなかったからではないかと言った。
英語あるいはフランス語など、つまり南アメリカ外の観光客だったらどういう反応だっただろうか、気にはなる。
同行の彼女は、アルゼンチンにも行ったことがあるのだが、アルゼンチンではブラジル人差別はもっとひどいと言っていた。

アルゼンチンとウルグアイは、南アメリカ大陸の南方に位置する地理的要因、つまり寒いためなのか、近代のヨーロッパ、多くはスペインとイタリアからの移民が多い地域だ。
あまり先住民との混血が進んでいなく、人々も町並みも、一見ヨーロッパのコピーのような情景だ。
混血度については、ポルトガル人とスペイン人の性格の違いだけから説明はできない。
同じスペインを旧宗主国とする国で、パラグアイのように混血化の進んだ国もあるからだ。

「近代のヨーロッパからの移民」がキーワードだ。
明日の命も知らぬ荒くれ男だけが到達できた大航海時代と異なり、人々の行き来が自由になっているので、当然女性の移民も多いわけで、下卑た言い方をするなら、「現地であえて異民族の相手と結婚する必要性は少ない」からだろう。

ウルグアイ統計院による2011年調査では、 93.9%がヨーロッパ人を祖先に持ち(reported a predominant European ancestry)、4.9%が黒人・アフリカン(black or African)、1.1%がインディオ(indigenous)、そして0.1%がアジア・黄色人(Asian or Amarillo ("yellow"))だった。
前世紀初め、つまりヨーロッパが全盛を誇った時代のヨーロッパ人気質をアルゼンチンやウルグアイに持ち込んだ、混血の進んでいないヨーロッパ人が、それから長い停滞時代に入って、その血統と気質が脈々と維持あるいは強化されたのだったら、大勢の羽振り良いパッパラパーブラジル人をみて、こいつら成金馬鹿じゃないかと思うかもしれない。

ブラジルは広く知られているように、先住民や、奴隷として連れて来られたアフリカから連れて来られた黒人との混血が、相当容易に行われた。
動物愛護観点で物議を醸すことの多い、スペインやメキシコにある闘牛は、ポルトガルやブラジルにはない。
スペインはインカやアステカを抹殺する道を選んだ。
ポルトガル人が殺戮をしなかったわけはないのだが、なぜかポルトガル人は柔和にやってきたようだ。
そんなことからポルトガル人は、スペイン人より血気(けっき)少なく、融和を好むからと思うが、どうだろうか。
もっとも、現在ブラジルの犯罪の多さを見ると、「融和を好む」なんてのんきなことを言っている場合ではないという感じもあるのだが。

昔ブラジル国内旅行中、中国人のグループと同乗したが、3,4人だったから団体とはいえない数だったが、話し声がうるさかった。
昼間の航空便だったから、酒は大量には入っていなかったと思う。
熱に憑かれたように、延々と討論していたのだ。
その声量は、ブラジル人の比ではなかった。

ブラジルのバーやピッツァリアで、大衆的で繁盛している店に行くと、話し声がとにかくうるさい。
周りのテーブルの騒音や音楽にかき消されないように、さらに大声で、話好きな連中が次々に話し、笑いあうのだから、アルコールの効果も加わり、相乗的に音量は高くなる。
ブラジル人も中国人ほどではないだろうが、アルゼンチンやウルグアイの人からみたら、うるさく野蛮に映るのかもしれない。

日中・日韓のように騒がれてはいないが、Wikipediaによると、ブラジルとウルグアイの間には国境問題も存在する。
これがウルグアイ国民にどうとらえられているのかは想像できない。
あいにくウルグアイには行ったことはないし、知り合いにウルグアイ人はいない。
ましてや、フラジル人団体とウルグアイ人団体を並べて、どちらがうるさく傍若無人か比較する機会などないから、なんとも判断できない。

親戚の男には、「きっと入る店を間違えたか、不運なウェイターに当たったのだろうよ」と言っておいた。
バミューダパンツとHavaianasのゴム草履(chinelos)のブラジル人カップルが海水浴の後、気楽に席をみつけた海辺リゾートにある古ぼけたレストランは、もしかしたら創業100年を誇り毎夜地元の名士で賑わう店で、ドレスコードが合っていなかっただけかもしれないからだ。

面倒なラ・プラタ人たち

2013年3月14日

神様はブラジル人でも教皇はアルゼンチン人

英語 Pope Francis
ポルトガル語 Papa Francisco

719年ぶりに自分の自由意志で生前退位した前ローマ教皇はBento XVI(ポルトガル語 ベント16世)、その前任はJoão Paulo II(ポルトガル語 ジョアン・パウロ2世)であった。
教皇の名前に~世がつかないと、日本語で座りが悪いような気がするのは私だけだろうか。

極めて安易なダジャレ、根比べ(こんくらべ)を生み出した原語は、Wikipediaポルトガル語をみると、最初にConclave (do latim cum clave, que significa com chave)とある。
つまり、ラテン語ではcum claveと書き、意味は「鍵を掛けて」というそうだ。
過去最長のコンクラーベは2年10か月を費やしたというが、今回は2日で終了した。
根が続かなかったようである。

でもそのために、四旬節入り直前、カーニバル最中の突然のベント(ベネディクト)16世の退位表明から、コンクラーベを経た新教皇選出までの過程が、四旬節に収まり、きたる3月31日の復活祭が新教皇のもと、新鮮な気分で迎えられることになったのはよかった。

カトリック信徒が大多数を占めるブラジルでの、バチカンのニュースは日本と全く比較にならぬほど大量に流される。
毎日コンクラーベの速報が流れ、ニュースのトップは枢機卿たちの動向が解説される。
「鍵を掛けて」外界と遮断した密室で枢機卿たちはどうやって次期教皇を決めるのだろうか。

ニュースで神父が解説してくれた。
「コンクラーベは精霊の導きによって成される」
なるほど、復活祭49日後の日曜日、2013年の場合は5月19日にあたる、ペンテコステ(Pentecostes) 聖霊降臨と同じような神の導きがあるというのだ。
教会の起源となったといわれるペンテコステが、教皇を選ぶたびに繰り返されるという説明はもっともだ。
しかし実際「鍵を掛けて」だから、これを確認するすべはなく、新しい教皇の言動に注目していくしかない。

イエスの最古の使徒ペドロ(ポルトガル語読み)の直系とされる最新の266代ローマ教皇の本名は、Jorge Mario Bergoglio、スペイン語ではホルヘ、ポルトガル語ではジョルジェ、ファミリーネームをみるとイタリア系のようで、ブエノス・アイレス大司教である。

最初の新世界(novo mundo)から、アメリカ大陸(Américas アメリカの複数形)から、ラテン・アメリカからの教皇選出である。
教皇自身は、新世界の、それも一番南端にある出身国アルゼンチンを指して、「世界の終端(fim do mundo)」からと言ったそうだ。
"It seems my brother cardinals went almost to the end of the world"と、http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-21777141には書いてある。

また、最初のイエズス会(jesuíta)出身の教皇でもある。
イエズス会というと、歴史を学ぶ中学生が絶対に覚えなければならない名前、フランシスコ・ザビエルが思いうかぶだろう。
Francisco Xavier、苗字はポルトガル語ではシャヴィエルと読むのだが、当時ナヴァラ王国、現在スペインのヴァスコ地方出身であった。
ポルトガル王の意を受けてインド、さらに日本まで宣教をしたので、後世日本の受験生に名前を覚えられることとなったのだ。

イエズス会が積極的な宣教を行ったのは、アジア方面だけではない。
南アメリカにも、開拓者と先を争うように進出して、グアラニー族の原住民にキリスト教を広めるため、時にはスペイン政府と対立しながらも理想郷をめざした。
現在のアルゼンチン・パラグアイ国境近辺には、イエズス会が作ったグアラニーミッションの廃墟が各地に見られる。
アルゼンチン・パラグアイ両国に、"Misiones"という名の州・県があるのが、その歴史を物語っている。
ミッション The Mission (1986)という映画もあった。

そういったわけで、新教皇のキーワードは、南アメリカと地理的、歴史的に重要な関係を持っているので、フットボールのライバル意識を横においといて、ブラジル人も歓迎しているようである。
もっとも、サンパウロ大司教(Arcebispo metropolitano)であるCardeal Dom Odilo Pedro Scherer 枢機卿が、俗界の下馬評で次期教皇の有力候補だったようだから、新教皇がブラジル人でなかったため、内心残念に思っているブラジル人も多いだろうことは、想像に難くない。
標題の「神様はブラジル人でも教皇はアルゼンチン人」というのは、楽天的で何事も自分に都合良いように考えがちなブラジル人が時々ふざけて言う、「実は神様はブラジル人なんだよ」という戯言から取った。

さて、教皇になると教皇名が決められる。
どうもこれは、教皇本人の洗礼名と全く関係ないようだ。
なぜなら、教皇に選出されてから決められる順番になっているからだ。

当初の報道では、Francisco I フランシスコ1世と言われていた。
最新の報道では、ただのFranciscoとされている。

どうしてフランシスコになったのだろうか。
フランシスコと言って有名な聖人には、フランシスコ・ザビエルのほかにもう一人大物、というか、こちらのほうがブラジルでは有名と思えるのだが、アシジのフランチェスコ(イタリア語読み Francesco d'Assisi)、ポルトガル語ではアシスのフランシスコ Francisco de Assisがある。
12世紀から13世紀に生きたイタリアの聖人である。

報道によると、新教皇の名前フランシスコは、このアシスのフランシスコからとられたと言っている。
この聖人の「謙虚で、質素で、貧しい人々にも平易な言葉で説教した」ところが、現在のカトリックのめざす方向に合致しているというのだ。
相手は人間だけでない。
フランツ・リストの曲に「小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ」というのがあるが、この人は動物と会話ができたというから、ドリトル先生(Doctor Dolittle)の元祖のような人で、現在は動物たちの守護聖人となっている。

ブラジルでコンフェデレーションズカップの熱も冷めぬ2013年7月23-28日に、リオデジャネイロでカトリック教会が計画しているのが、XXVIII Jornada Mundial da Juventude 第28回青年世界ツアーという行事だ。
この大会でブラジルカトリック教会は2百万人の参加者を集め、フランシスコ新教皇も参加することになっていていて、新教皇の最初の大きな外遊とされているので、その言動が注目を集めるだろう。

2013年2月23日

英語を話すと貧乏になるぞ

Why speaking English can make you poor when you retire
By Tim Bowler
Business reporter, BBC News
http://www.bbc.co.uk/news/business-21518574

ななめ読みしたのだが、ツッコミどころの多い記事である。

要点だが、文法的に現在時制と未来時制が強く区別される言語(その例が英語)を話す人は、両時制の区別が弱い言語(その例が中国語)の話者と比較して、老後の蓄えが少ないという、トンデモ学説なのである。
このほら話を発表したのは、堂々たる有名大学エール大学の行動経済学者キース・チェン氏(Yale University behavioural economist, Keith Chen)である。

時制区別の弱い言語話者が、時制区別の強い言語話者と比較して、どれだけ差がつくのか。
  • 退職するとき39%貯金が多い
  • 年間貯金額が31%多い
  • 喫煙癖が24%少ない
  • 運動習慣が29%多い
  • 肥満が13%少ない

どうして使用言語の時制が習慣に影響するのか。
現在時制と未来時制を使い分ける言語で、自分の将来のことを話す場合、時制が異なるので「現在と未来の間にわずかな乖離」を起こすというのだ。
記事原文は"If your language separates the future and the present in its grammar, that seems to lead you to slightly disassociate the future from the present"とある。
つまり現在の自分と未来の自分の関連付けが小さい、現在の意志が未来の自分に及ぶという信念が小さいということなのだろう。

例があげられている。
午後のミーティングに出られない理由を言うとき、
英語では 'I will go, am going, or have to go to a seminar'
中国語(の英語訳)では 'I go listen seminar'
という違いがあると説明している。
同じ西ゲルマン語群でも
英語 'it will rain tomorrow'
ドイツ語(とその英語訳)'morgen regnet es' - it rains tomorrow
と明確な差があるという。

調査は英語と中国語で行ったわけでなく、文化・社会・経済環境が似通った、つまりは教育水準、所得水準、宗教と、他の要因が十分に同一であるような隣人が異なる言語を使うバイリンガルな国で話されている複数の言語の文法構造と、その隣人たちの行動を比較したのだ。
その国々とは、Belgium, Burkina Faso, Ethiopia, Estonia, DR Congo, Nigeria, Malaysia, Singapore, and Switzerlandの9カ国だ。
例えばナイジェリアでは時制強区別言語Hausaの話者と、時制弱区別言語Yorubaの話者を比較したという。

もちろん、経済学者、言語学者両サイドから反論も十分に出ている。

"It's a tempting idea that simply doesn't make any sense."
「奇をてらうだけの何の意味もない与太だ」
私もそう思う。
が、この与太話が万が一真実だったとしたらどうしよう。

日本語 明日は雨だろう。明日は雨だ。どちらでもよさそうだ。
ポルトガル語 Amanhã vai chover. Choverá amanhã. 両方とも未来時制だ。後者は文語的だが。Chove amanhã.(現在時制)とは言わないだろう。

結論:
ブラジルでより金持ちになり、健康的に暮らすには、ポルトガル語でなくできるだけ日本語を使うようにしよう。
そのためには日系社会のど真ん中で、日本語を話す人達に囲まれて生活しなければならない。
残念ながら、私の環境ではまず無理だ。

日本では英語教育など忘れてしまうこと。
徹底して日本語だけで暮らすこと。

最近の流行犯罪現場を見た

犯罪にも流行り廃り(はやりすたり)がある。

例えば、誘拐部門だ。
一時期、大金持ち対象の誘拐事件が流行った。
電撃誘拐ではなく、誘拐の王道(と言っていいのかわからないが)だ。
本格的、つまり被害者を長期間、少なくとも数日、人目から隠れた場所に隔離して、家族に数十万から数百万レアルという莫大な身代金を請求する犯罪だ。
金持ちがボディーガードを雇ったり、防弾車とかで自衛するようになったため、被害者は中流階級に変わり、身代金も数万レアル程度に下がってきた。
多分、手間労力と実入りのパフォーマンスが悪いためか、この犯罪も廃った。

最近は電撃誘拐だ。
被害者は数時間しか拘束されない。
隠れ家も必要ない、手軽な誘拐だ。
まあ犯罪者にとっては手軽であっても、被害者のトラウマは軽いわけではないのだが。

銀行強盗部門ではどうか。
かなりのどかだった時期、つまり、銀行に回転ドア、武装ガードマンなどがなかった時代に、昼間の営業時間中に多人数で堂々と押し入る正統的(またもや、こう言っていいのかわからないが)強盗が続発した。
銀行が要塞化してからは、近所に家を借りて、そこからトンネルを掘って、誰もいない週末に銀行に侵入する、コツコツと地道な、でも労力のかかる強盗になった。

最近は、誘拐部門と同様、手っ取り早い方法が好まれる。
ダイナマイトでATMを爆破して、中の金を盗む方法だ。
ブラジルは砂利や石の採掘場や鉱山が多いが、ダイナマイトの管理はかなりいい加減なようだ。
そうでなければ、街角で売っているわけではない爆発物を、犯罪者がこんなに簡単に手に入れることはできないだろう。
今日たまたま行った、ブラジル銀行(Banco do Brasil)の支店のATMコーナーがこんな状況だった。

左の機械だけ爆破を免れた。

ATMコーナーと店内を分ける強化ガラス仕切りも、粉々になったのでベニヤ板で緊急修理してあった。