2021年11月29日

ギリシャ文字三か国語対照

新型コロナウィルスで急に話題になって恐れられている変異株の名称は「オミクロン」となった。
ギリシャ文字の15番目という。
これを機会にギリシャ文字の三か国語対照をつくった。

ギリシャ文字は数学、物理学、化学、天文学などに登場する。
今度のコロナウィルスに関しては、ウィルスの変異型の区別にギリシャ文字が付けられることとなった。

0(ゼロとしておく)型 中国
α型 英国
β型 南アフリカ
γ型 ブラジル
δ型 インド
λ型 ペルー
μ型 コロンビア
ο型 ボツワナ

ギリシア文字Englishportuguêsラテン文字日本語慣用
1Ααalphaalfaaアルファ
2Ββbetabetabベータ
3Γγgammagamagガンマ
4Δδdeltadeltadデルタ
5Εεepsilonépsiloneエプシロン
6Ζζzetazetazゼータ
7Ηηetaetaēイータ
8Θθthetatetathシータ
9Ιιiotaiotai イオタ
10Κκkappakappakカッパ
11Λλlambdalambdalラムダ
12Μμmumimミュー
13Ννnuninニュー
14Ξξxicsiks, xクシー
15Οοomicronômicronoオミクロン
16Ππpipipパイ
17Ρρrhor, rhロー
18Σσςsigmasigmasシグマ
19Ττtautautタウ
20Υυupsilonúpsilonu, yウプシロン
21Φφphifiphファイ
22Χχchichikh, chカイ
23Ψψpsipsipsプシー
24Ωωomegaômegaōオメガ

上の表のポルトガル語は、ブラジル・ポルトガル語の表記である。
同じギリシャ文字を他の言語から呼ぶときは、読み方や書き方が一通りだけでない。
テレビニュースではμのことをミーとは呼ばず、ムーと呼んでいた。

ギリシャ文字には不思議な点がいくつかある。
ローマ字アルファベットで一番最後に来るzは、ギリシャ文字ではかなり最初の方に出てくる。
Σシグマは小文字を2つσς持つ。
オミクロンは小さいオー、オメガは大きなオーだと言うのだが、それが別文字となっている。

さて話題になっているのは、伝染力がデルタ株より強力と呼ばれる今回の変異株が、ギリシャ文字の13番めと14番目を飛ばして15番目のオミクロンとなったことである。
13番めのニューを飛ばしたのは英語のnewと混同する恐れがあるから、14番目のクシーを飛ばしたのはよくある人名を避けるためという。

何のことはない、よくある人名といっても、引っかかるのはどこにでもいる人でなく、共産党主席のあの人、シージンピンただ一人なのである。
こんな要らぬ忖度などしているから、WHOはこれだけ切羽詰まった状況になっても、多くの国はWHOを疑いの目で見ていて、そのために強いリーダーシップを発揮することが全くできない役立たず組織になっているのである。

オミクロン変異株についてはその有害性についてはまだよくわかっていないことが多いのだが、伝染力が強くなった代償に、病害性が弱くなっていることを期待したいものである。

2021年11月21日

伝統的なポルトガル語文法の性別不平等

中性ポルトガル語についての話を続けよう。
文法の中にある男女不平等である。

英語の場合には代名詞の三人称単数には男性・女性の区別があっても、複数形は we, you, they の中身がどういった性別構成かは全く気にしなくてよいはずだ。
スペイン語やポルトガル語のような、複数形においても男性形・女性形が異なる言語で、実際の性別構成によって語形がどう変化するかという問題である。

二人称複数形は教会の中でしか聞くことがないものとして除外すると、ポルトガル語では三人称複数(eles, elas)の場合に、スペイン語では一人称複数(nosotros, nosotras)と三人称複数の場合(ellos, ellas)にこの問題が出てくる。

100人の男性がいるときは男性形のeles、100人の女性がいるときは女性形のelasを使う。
ここまではすんなり納得できる。
これが男女混成のグループになると、否応なく男性形のelesを使うものだと習った。
たとえそのグループが99人の女性に1人の男性が入っただけの99%女性のグループであっても、使う代名詞はelesと男性形になる。

一般名詞でも同様である。
父はpai、母はmãeであるのに、両親はpais、教室に10人の女子生徒と2人の男子生徒がいる場合も、区別しないで全体を一語で呼ぶ場合には複数男性形のalunosになるといった具合である。

さてここで、今のところは誰も言い出していないようだが、中性ポルトガル語運動を推進する人たちがはたと気づいて、男女同権であるべきだから従って言語も、バイナリーでない人が含まれた場合はもちろん、含まれていなくても、男女混合したグループの複数形は複数中性形にすべきであると主張し始めることを密かに恐れている。

アメリカの中性英語

前回に続いて、最近のポルトガル語に起きつつある運動について。
バイナリーではないことを自認する人が自分を呼んでもらう代名詞、普通名詞、形容詞を、新たに作ろうという話である。
ここではポルトガル語からの類推で単に「中性英語」と呼ぶだけであって、英語でニュートラル・イングリッシュとかいう呼び方はしないと思う。
中性英語なんて勝手に変な名前をつけるなと、たくさんいそうなうるさ方から文句が来そうである。

次のような事例を見ると、英語を使うアメリカ合衆国、厳密に言えばその一部の地域や階層であると思われるが、それはそれは大変である。
これまで普通に使っていた慣用句が禁句となったり、代名詞の使い方がうまくできなければクビになったり罰金を取られたりするということで、ブラジルはゆるゆるで助かった。

言ってはいけない!現代アメリカのタブーな英語
第5回 Ladies and gentlemen! (紳士淑女のみなさま)

言ってはいけない!現代アメリカのタブーな英語
第6回 he/she (彼/彼女)

以上は極端な例であって、どこでも当てはまることではないだろうとだと思っても、アメリカでそれらしい場面にであったら、まあ次の内容くらいは心得ておかなければならないかもしれない。

Bringing Your Authentic Self to Work: Pronouns
22 NOV 2019

2021年11月19日

根付くか?中性ポルトガル語

世界に無数ある言語の中には、ドイツ語やロシア語のように、もともと中性の名詞を持つものがある。
でも正統なポルトガル語は、不定なものを指す、数少ないisto, essoのような中性代名詞を除けば、名詞や形容詞の文法上の性別は男性と女性、及びそれぞれの複数形のみである。

それが最近、「中性ポルトガル語」というものが出現している。

ブラジル空軍の士官選抜試験で、中性ポルトガル語についての設問があったという記事が数ヶ月前にあった。
現在のブラジル連邦政府ボルソナロ政権は右派であるから、言うまでもなく中性ポルトガル語が広まることを好ましく思っていない。

「万人を受け入れる言語は、それ自体が社会運動であるとみなすことができて、それは言語の発達を形作る」と主張する、サンパウロ大学の教授によって書かれた例文があるので、そのまま転写する。

下にあげる例文はすべて、
(新造で未公認の)中性ポルトガル語 = (正式文法)男性の場合 / 女性の場合
の順番で示している。

曰く、
Elu é muito atenciose. = Ele é muito atencioso. / Ela é muito atenciosa.
〇〇は〔彼は/彼女は〕とても思いやりがある。

Elu é minhe namorade. =  Ele é meu namorado. / Ela é minha namorada.
〇〇は〔彼は/彼女は〕私の恋人だ。

Ajude sue amigue. = Ajude seu amigo. / Ajude sua amiga.
あなたの友人〔中性/男性/女性〕を助けなさい。

Elu é bonite. = Ele é bonito. / Ela é bonita.
〇〇は〔彼は/彼女は〕美形だ。

Elu é sue colega. = Ele é seu colega. / Ela é sua colega.
〇〇は〔彼は/彼女は〕あなたの同僚〔中性/男性/女性〕だ。
colega はもともと男女同形である。

O trabalho delu ficou muito bom. = O trabalho dele ficou muito bom. / O trabalho dela ficou muito bom.
〇〇の〔彼の/彼女の〕仕事は良い出来だった。

日本語には中性の人間の代名詞はないので、しかたがないから〇〇と表記しておく。

一体この中性活用形はどのように使われるのか。

一つの考え方では、話の対象になる人間が男性であろうと女性であろうとそれ以外であろうとすべて、代名詞、それを修飾する形容詞、補語・目的語となる名詞などに中性の活用形を作って、なんでもそれで済まそうというのだ。
これからポルトガル語を新たに学ぼうとする人にとっては、男性形も女性形も覚える必要がなく、中性形だけで行けることになるから、覚えるのが楽になると感じられるかもしれない。
しかし、すでに生まれたときから、そうでなくてもポルトガル語に十分慣れた人からすれば、これまでの活用が全て変わってしまうことになるから、とてもだが受け入れられないだろう。
これまでに書かれたり、現在使われているポルトガル語の詩、小説、各種文書が一気に古文になってしまうことになる。
ポルトガル語という言語の伝統に対する冒涜と言われそうである。

もう一つの、より受け入れられやすいと思われる考えでは、中性代名詞、形容詞、名詞を使う対象は、その人が男性/女性のどちらにも当てはまらない(バイナリーではない)と感じている場合に、その人に限って使われるという使い方だ。
伝統的文法の男性形、女性形に新たに中性形が加わることになる。
これからポルトガル語を学ぼうとする人は、名詞や形容詞の性変化がより複雑になる。

だいぶ前から下書きをしていたこのテーマであるが、ここで出すことになったのは、ポルトガル語と同じロマンス語であるフランス語の辞典に、中性代名詞が登場することが物議を醸しているというニュースを見たからだ。

性差のない代名詞、仏語辞典「プチ・ロベール」に追加で物議
2021年11月18日 20:17 発信地:パリ/フランス>

中性語に対して、フランスもブラジルも同様な反応が起きている。
簡潔に言うと、言語の中にジェンダーの多様性を認めていこうという派と、言語の伝統を守る派が対立しているということである。

それから、こういった最近の事情もある。

男性でも女性でもない「性別X」のパスポート、米国務省が初発行
2021.10.28 Thu posted at 10:15 JST

2021年11月7日

2021年原油埋蔵量国別比較

 何年か前にブラジルの原油埋蔵量予想について、とても楽観的な予想があることを書いた。

最近見た世界の国々の埋蔵量についての記事をここに写しておこう。

ねとらぼ 2021年11月6日に公開されたものを写した。
調査発表したのはブリティッシュペトロリアム(British Petroleum)である。
一応公平な評価量が出ているのではないかと思う。

ほら見たことか、ブラジルは16位である。
「ブラジルは2020年に第4の産油国になる」なんてやはりハッタリに過ぎなかった。

しかし、化石燃料を敵視する今日このごろ、埋蔵量の多さが直接国の財産の豊かさに結びつくのかどうかは、これから注意して見ていかなければならない。

順位埋蔵量
1ベネズエラ3038億バレル
2サウジアラビア2975億バレル
3カナダ1681億バレル
4イラン1578億バレル
5イラク1450億バレル
6ロシア1078億バレル
7クウェート1015億バレル
8アラブ首長国連邦978億バレル
9アメリカ合衆国688億バレル
10リビア484億バレル
11ナイジェリア369億バレル
12カザフスタン300億バレル
13中国260億バレル
14カタール252億バレル
15アルジェリア122億バレル
16ブラジル119億バレル
17ノルウェー79億バレル
18アンゴラ78億バレル
19アゼルバイジャン70億バレル
20メキシコ61億バレル

3位カナダの埋蔵量の94%はオイルサンド(原油を含んだ砂岩)
1位ベネズエラの埋蔵原油はオリノコタール、その名からわかるように超重質油

2021年11月6日

ブラジル5Gのスケジュール

2021年10月4,5日に、携帯電話/インターネットの5G帯域の入札が行われた。
連邦政府の通信省、国家通信庁(アナテル-ANATEL)が実施したものである。
15の企業が、4つの周波数帯にわたる、全国区あるいは地域区の45帯域の、10年ないし20年使用権の入札に参加した。
入札総金額は467億レアルであった。 政府が当初予想していた496億レアルには届かなかったが、連邦政府は、原油鉱区プレサルの入札に次ぐ巨額の落札額を強調した。

入札した企業の施設供用義務スケジュールは次のようになっている。

  • 2022年7月 州都
  • 2025年7月 人口50万人以上の都市
  • 2026年7月 人口20万人以上の都市
  • 2027年7月 人口10万人以上の都市
  • 2029年7月 人口3万人以上の都市
  • 2029年12月 ブラジル全土

周波数帯区域種認可期間落札社
700MHz20年Winity II Telecom Ltda
2.3GHz地域20年Algar Telecom, Claro, Brisanet, Tim, Vivo
3.5GHz全国20年Claro, Tim, Vivo
3.5GHz地域20年Algar Telecom, Brisanet, Cloud2U, Consórcio 5G Sul, Sercomtel
26GHz全国20年Claro, Vivo
26GHz地域20年Tim, Algar Telecom, Fly Link
26GHz全国10年Tim
26GHz地域10年Tim, Neko

落札企業にはブラジルの携帯電話会社としてすでにおなじみの、Claro, Tim, Vivo(以上全国に展開)、Algar Telecom, Sercomtel(以上特定の地域に展開)が登場するが、これまでに聞いたことのない新しい会社も名を連ねている。
その新会社6社は、Winity II, Brisanet, Consórcio 5G Sul, Cloud2U, Fly Link, Neko 

連邦政府は各周波数帯落札の諸企業に、次の社会的義務を課す。

  • 700MHz帯 連邦道路3万1千キロ沿いにインターネットを施設する
  • 2.3GHz帯 現在サービスがない市域に4Gを施設する
  • 3.5GHz帯 連邦行政のため専用通信網、アマゾン地域にファイバー網の施設
  • 26GHz帯 基礎教育学校へインターネット接続を施設する

2021年11月9日発表報道によると、早速落札した物件を辞退する企業が現れた。
上に訂正線を付けたFly Link社である。
辞退理由は、より戦略的に欲しかったロットを落札できず、落札した唯一のロットではビジネスモデルが成り立たないと、出資予定者の一人が出資に難色を示したということである。
落札後の辞退に対する罰金として落札額の10%が課されるとされている。

Winity は700MHz帯の運用を断念したと、2023年12月に発表された。

2021年9月14日

気づけばすごい日本の予防接種

 もうこれは、数表を見ればすぐわかる。
新型コロナ予防接種を受けた人口の、日本とブラジルの国の総人口に対する割合である。

別々に発表された同じ指標を一つの表にした。
発表の日付は2021年9月13日である。

少なくとも1回接種2回接種完了
日本63%51%
ブラジル65%35%


これを見てすぐわかるのは、少なくとも1回接種した人の割合はブラジルも日本も大差ないのだが、2回完了した人の割合で大差がついている。
ブラジルは限りあるワクチン入荷量の中で、ある程度の免疫を獲得する人数を最大化する政策をとっている。
つまり1回目と2回めの間隔を、日本では疑惑の目で見られることの多い中国製のシノバック社のワクチンは規定通りの3週間としているが、アストラゼネカとファイザーのワクチンは3週間とか4週間ではなく、許容される最大の12週間で接種しているため、2回めの接種待ちの人が多い勘定になるのである。

遠くから眺めていて、ブラジルと比べても日本の予防接種の進捗の遅さに、一時はやきもきしていた。
時がたつにつれて、さすがにワクチン入手力の違いが出て、一時はワクチン不足などが言われていたものの、日本の挽回力がすごいことが分かった。

2021年6月9日

五輪やるなら壁作れ

前合衆国大統領トランプ氏は壁に固執していたが、今の日本政府が何を犠牲にしてもオリンピック大会を開きたいと固執するなら、強固な壁方式を採用すると良いのではないか。

大会を安全に開くために、関係者と外部の人的接触を遮断する「バブル」という考え方があるが、競技別大会クラスの規模ではうまくいっても、数万人が来日する世界最大規模のイベントであるオリンピックでも同様にうまくいくとは思わない。

出場選手に予防接種を行うという対策も、利点と欠点がある。
ブラジルの予防接種会場でのインタビューを聞くと、「これからも慢心しないでマスク使用や距離確保を続ける」という人よりも、「神様に感謝します、これで安心して以前のような生活ができる」と喜ぶ人が多い。

母国に留まっていたら来年になるまで、とても予防接種の順番が回ってきそうもない途上国の健康な選手が、ぎりぎりで出場権を手にしたような場合には、接種を受けられるだけで儲けもの、これでコロナ防御は鬼に金棒、マスクも要らないよと、予選落ちしても構わんが昼と夜の観光は欠かせぬと、自由時間の旅行の予定に気もそぞろ、といった危険な人続出となりそうな気がする。
選手に予防接種を行うことによって起きうる、感染拡大の危険である。

どれだけ日本に住む人がオリンピックなんて反対だと言っても、日本政府の立場としては国民の意見を無視してまで、どうしてもやり遂げなければならないというのなら、方法がないわけではない。

まず首都圏の緊急事態宣言は、会期中も徹底継続することだ。
その上で対策を執行しやすくするために、オリンピック大会緊急事態対策法を緊急立法する。
欧州の国々のロックダウンや中国の人民操縦に倣って、警察と自衛隊に武器使用まで含んだ強権を与える。

選手、スタッフ、報道などすべて外国から日本へ検疫免除で入国する者は、14日の検疫を免除するのではなく、オリンピック大会自体を検疫とするのである。
検疫であるからには、決められた場所つまり競技場と宿舎とオリンピック関係者専用車両以外の場所へ行くことは禁止である。

競技場や宿舎から逃げ出すことのないように、警察官、足りなければ自衛隊員をそれらの場所の周りに配置する。
本当はブラジルで、危険がないと判断され釈放されている受刑者や被疑者の行動を、遠隔監視するトルノゼレイラ(tornozeleira eletrônica)と呼ばれる機器をくるぶしに装着するのが確実だが、そんなものは日本にないし、さすがに人権問題になるだろうから無理だ。
簡単に言えば、今回の大会警備は大衆が悪さしないように警戒するのでなく、関係者が隔離を破ることがないように、閉じ込めておくために見張るのである。
これで日本の一般住人とオリンピック来日者の接触を最小限に抑え、バブル方式が成功する。

バブル方式ができなくても、より現実的な別の方法がある。
壁方式である。

感染拡大危険因子である来日者と接触が考えられる、すべての日本人を壁にする。
一番近いところでは大会の進行に携わる関係者である。
衣食住に関わる人や交通を担当する人、公安従事者である。
だからボランティアに予防接種を行うのは当然なことだ。
そうするとどこまでを壁とするかが問題になる。

最近の記事で日本の1日の接種数が百万に達したと読んだ。
やればできるではないか。
地方の予防接種は一旦中止して、関東地方の、あるいは首都圏全体の、それが無理なら一都三県と開催県の住民に、集中して予防接種する。
老若男女関わらず成年対象である。
1日百万なら、10日で1千万接種ができる。
今すぐ始めれば2回め接種プラス2週間がぎりぎりで間に合って、強固な壁で来日者を包囲することができるだろう。
この「予防接種人の壁」方法の利点は、経済を止めなくてよいから、関連業界が期待する経済効果が見込めることだ。

それだけ注意しても、陽性者が出てくるだろう。
陽性になったら即座に競技は失格、陽性者をすぐに飛行機に乗せて本国へ送り返すわけにもいかないから、隔離地の中でさらに隔離された区画で、陰性になるまで治療に専念してもらい、治れば速やかに帰国してもらう。

本当はIOCが客船を借り切り、公海に停泊して隔離病院船として、陽性者は日本出国してからそこへ送るのが良いだろう。
公海ならば、医師その他の医療従事者の国籍を問題にする必要もないから、外国のボランティアだろうがなんだろうが、IOCが好きに連れてきてもらえば良い。
そうすれば逼迫している日本の医療に負担をかけることはない。

来日者も今大会は特別であり、緊急事態の東京でオリンピック大会を安全に開くための方策であることを理解して、好き勝手に歩き回ることはあきらめて、日本政府による公共衛生のための措置に絶対服従すると、宣誓書に署名しなければ入国できない。

まずは臨時立法と、首都圏最優先予防接種のための日本国民の説得である。
経済上昇と接種実績急進をオリンピック開催の利点として強調して、地方へは後で埋め合わせをしっかり行うと目標を定めて、首相その他が真摯な態度で国民に説明すれば、オリンピック開催への見方が劇的に変わって、歓迎される東京大会となるだろう。

日本政府に安全、安心な大会開催を行う気概があるのなら、これをやってみろ。

2021年5月24日

珍風景、アマゾンの水中都市

ともかくビデオを見ればわかる。

完全に水に浸かったアマゾナス州アナマンは、小舟の航行のために橋の建設要らず
Totalmente inundada, Anamã (AM) dispensa construção de pontes para liberar trânsito de canoas
動画2m33s 最初に宣伝あり

0:07 宝くじ売場前の混雑
0:21 警察と留置所
1:15 携帯電話アクセサリー店
1:51 モト・タクシーは乗り物を取り替えて水上タクシー
2:31 夕日の光景は美しい

水に浸かったアマゾナス州アナマン (Anamã)は、同様に水に浸かった他の町と異なり、板で作った橋と足場を町中にめぐらせる方法でなく、船を自由に航行させる方法を選んだ。
この町の人口は約1万4千人である。

町全体の建物の床面が、増水した川の水位より低いので、板で作った上げ床の上で生活が営まれている。
当然天井が低くなる。

アナマンを含めてアマゾナス全州の62の内58の市が、川の増水の影響を受けて、全州で41万4千人が被害を被っている。

ただしこのアナマンという町はかなり変わっていて、1年の半分近い増水期には、水没して船で行き来する生活を「自らの意思で」選んでいると、別ソースには書かれている。

最初から高床式とか2階建ての建物にすればよいかとも思うのだが、そういった機能第一の問題ではないらしい。
どうも川の水位の増減という季節の移り変わりに対応する中で、わざわざ面倒な方法にしていながら、風情を楽しんでいるように見受けられる。

潔癖症の人にとっては、なかなか住みにくい環境のようだ。
あれだけ周りに大量の水があるのに、一年中泥臭く濁り鉄分が多く、乾季に汚物抗に溜まった汚物は水没期になると水に浮かびだすし、増水期に水没しない場所を求めて蛇やサソリが家に入ってくるし、庭にはワニがやってくる。
リンクしたビデオでも男の人が、通りに面した縁台で鍋などを目の前の濁った水で洗っている。
飲料水は共同の掘り抜き井戸へ、水汲みに行っているらしい。

マナウスを観光旅行で訪れた人は、観光船でネグロ川とソリモンエス川の合流点へ行って、前者の黒いけれど透明な水と、後者の粘土が豊富で泥水そのものの水質の違いのため、数キロメートルに渡って水が混じり合わずに、境目を保ちながら並んで流れていく不思議な光景を見たことがあるだろう。
アナマンの町を覆う水はソリモンエス水系であるから、もともと泥でにごっているのは、汚いからではなく普通の姿なのである。

「アマゾンのベネチア」と自称?するこの町へ行ってみたいと思った奇特な人のためにアドバイスである。
Google Mapsで"Anamã AM"を検索ボックスにコピべして検索してほしい。
陸の孤島である。
アマゾナス州の州都マナウスから、あるいは途中にある、マナウスから道路が通じているマナカプルから川船の旅である。

Google Mapsでは、Rio Solimõesではなく、Rio Amazonasとなっているから、ソリモンエス川はアマゾン川の本流であり、ネグロ川が支流なのだろう。

ついでに調べたアマゾナス州の巨大さ
面積 1,559,147平方kmは、日本 377,975平方kmの4.1倍
州内の市の総数62で割った平均面積 25,148平方kmは、日本最大面積の高山市 2,178平方kmの11.5倍
人口密度は2.7人/平方km

2021年5月23日

がっかり日本、予防接種

 新型コロナ感染症(COVID-19)の予防接種について、日本とブラジルのそれぞれの進捗に注目しているのだが、日本の予防接種が遅々として進まないのは全く驚異である。
オリンピック東京大会が開催されると大勢の外国人が訪日するから、日本政府は当然大会前に日本国民の大半に2回接種を済ますようなスケジュールを立てて、予防接種をてきぱきと手際よく進めるだろうと、確信に近い予想をしていたのであるが、全く裏切られてしまった。

ブラジルで少なくとも1回接種済みとなった人の、総人口に対する割合は、昨日の時点で約20%、2回の接種が完了した人は、総人口の約10%となっている。
日本は少なくとも1回の接種済みの人が、5%前後に留まっているという。
いまブラジルで1日約70万人に接種、調子のいい日には100万人に達するのだが、きょうのオリンピック関連のニュースで、日本の1日接種人数は約8万人と言っていた。
ブラジルの九分の一である。
両国の人口を考慮して単位人口あたりにしても、九分の二である。
日本のように組織がしっかりしているはずの国で、なぜそんな残念な結果になるのだろうか。

ポータルサイトを見ると、日本では郵便で接種券が送れられてきてから、電話、インターネットサイト、あるいは市役所で対面で予約をするという形になっているようである。

電話は通話殺到のためずっと話し中、インターネットはやり方がよくわからない、そういった人がみな集まって密になるから対面対応は取りやめにするとか、なかなかうまく機能していない。

日本は何かと郵便で通知することが多いようである。
もちろんブラジルでも裁判所とか税務署などの通知は、受け取り証明付きの郵便で行われるが、最近はインターネットを使うことが多くなってきている。
特に情報のやり取りが迅速であることが必要な、今回の非常事態のような場合には、郵便は遅すぎる。

ブラジルの2020年の緊急援助金の支給のために、連邦政府はどういうやり方をしたか。
これまで自行他行に銀行口座が有る無しに関わらず、連邦貯蓄銀行は一律に各受取人名義のデジタル口座を開き振り込み、出金つまり支払い・振り込みと現金引き出しの操作を行えるのは、スマホのアプリのみとする単純な方法をとった。
現金引き出しに必要なコードをアプリで生成して、ATMや宝くじ売場で引き出すようになっているらしい。
一律に新規に口座を作るのだから、いろいろな個別的なチェックなど一切必要なく、迅速に行う目的にはかなっていた。

しかし受取人の便利などは全く考えていない。
アクセスが集中すると、何時間も何日も根気が必要な時期があった。
スマホがない人やガラケーの人は買え、買えなかったら家族や知人から借りろ、操作がわからなかったらデジタルに詳しい子供に手伝ってもらえ、といった突き放した冷たい対応で、どうにもならなかった人たちは、行くなと言われても構わず、銀行支店に密な大行列を作っていた。

今回の予防接種もわが市の場合、最初に市役所のインターネットサイトで登録しなければならず、そのときにパソコンかスマホが必須である。
ワクチンの供給が極めて不定期なため、私達の場合には接種日時場所を受け取ったのは接種日前日の午後であって、日時にしても場所にしても、こちらの希望など全く聞いてくれない。
「xx月xx日(明日)のxx時xx分にどこそこに指定」という強制的呼び出しの通知が送られるのは、携帯電話のショートメッセージサービスであるから、ガラケーでも受け取ることができる。
理屈ではもちろん、パソコンも携帯も持っていないという人でも、毎日ランハウス(LAN house)つまりインターネットカフェ様の施設へ行って、料金を払って市役所のサイトにアクセスして、自分の順番が来ているかチェックすることはできるが、これはめんどくさい。

基礎疾患を持つ人の区分ではさらにハードルが上がる。
市役所サイトから診断書定形フォームをダウンロードして印刷、普段かかっている医師に診察して記入してもらってから、その写真を撮って登録時にアップロードを行う。
市役所はその画像で可否判定を行う。
接種可となった人は接種指定日に原本を持参して、会場の受付でシステム内の画像と照合するだけにしておく。

日本政府は、高齢者はスマホが使えないとか持っていないとか、至れり尽くせりの気配りをしているのだが、もっと突っ放しても構わないのではないか。
日本はヨーロッパやアメリカ大陸諸国と比べてコロナ流行が抑えられているから、普通の年だったのならば、ゆっくり予防接種しても構わなかっただろう。
しかしオリンピック大会に間に合わせるためには、もう2ヶ月しかなく、予防接種はスピードが命である。
残った僅かな時間にスケジュール遅れを一気に挽回するためには、どうしたら良いだろうか。

  • 連絡は郵便ではなく、画像のやり取りも含めてインターネット(携帯電話、パソコン、タブレット等)で行う
  • そのために居住市町村で携帯番号と電子メールアドレスを登録させて、住民登録のある市町村で接種する
  • ワクチン輸送や保管を容易に、無駄を減少するため、市町村で体育館やスタジアムのような少数の大規模接種会場を用意
  • 接種日時や場所は住民が予約するのでなく、例えば高齢者を優先して接種する場合には、生年月日が早い住民から、順番を機械的に割り振る
  • 場所も同一市町村内なら遠近に関わらず割り振り、住民に選択などさせない
  • 密な行列ができないように指定時刻を細かく区切って設定する
  • 指定日時場所に行けない場合や遅刻などは、個別に対応するのではなく、何日か後に後回しにする
  • 企業に対して、従業員が予防接種のため指定日に半日あるいは全日欠勤をすることを認め、これを有給とするよう法令で保証する(ブラジルではそこまではしていない)

こうしてみると、ブラジルの私が住む市の予防接種の段取りは悪くない。
ただしわが市はうまくやっているが、住民を行列させて密状態を作ってしまう、段取りが悪い市も少なくない。
単純機能のアプリを手早く作って、機械的に人々をさばいて、速い流れにのせることができた都市が、うまくできていると言って良さそうである。
日本では住民の知恵と努力にもっと寄りかかっても良いから、とにかく速くできる方法を取ることだ。
個人個人の都合など慮る必要など一切ない。

マイナンバーが言われだしてから、もう十年近く経ったのではないか。
息子が日本に留学した2015年に、マイナンバーカードを作成してきた。
それから6年経つのに、どうしてこれが未だに普及して使用されていないのか全く不思議である。
米国とかブラジルでは、いわゆる納税者番号が遠い昔から使用されていて、予防接種の接種希望者登録のようないろいろな場面で、個人識別番号として役立っている。

2021年5月9日

簡単にオリンピックをつぶす方法

毎日ブラジルだけでなく、日本の新型コロナ感染症による死亡数、正確に言うと、死亡数の7日間移動平均の変化も記録している。

これから見ると、日本は第3波が収まりそうになったのだが、その前に第4波に入ってしまったのでないか。
詳しく見ると、2021年2月6日に死亡数7日間移動平均の第3波ピーク100人に達してから、4月8日に20人まで降下したのであるが、一転して増加して、今は60を超えてしまった。
つまり、現在死者数は増加している。

最近の何日か前のニュースで、ブラジルも他所の国で発生している変異株の侵入を防ぐための方策をすべきでないかと言っていた。
その中で、日本在住の日系ブラジル人がブラジルへ入国するためには、72時間前以内のPCR検査が陰性であることを求められるだけであるのに対して、ブラジルから日本へ入国する場合には、3日の指定場所での隔離、ついで11日の自宅での隔離が必要だと言っていた。

当然の事実であるが、病気が未だ猖獗を極めない日本のような国は、病原体の侵入に対して神経質に備えるのが普通だろうが、反対にブラジルのように既に病気が蔓延している国は、入国者に対していろいろな面倒な制限を課すまでもなく、あえて入国したい観光客がほとんどいないということである。
今インドを放浪旅行したいという人もまずいないだろうし、いても周りが全力で止めるに決まっている。

あと2ヶ月後に、東京オリンピックは開催されるのだろうか?
2021年の初め、各国で新型コロナ予防接種が始まった頃、オリンピックのために外国から大勢訪日するのだから、日本政府の方針は、それに備えて日本国民の大半に予防接種を済ませてコロナ対策を万全にしてからオリンピックを迎えることになるだろう、と私は楽観的な予想をしていた。
ところが実際は、5月になったのだが、高齢者はおろか、医療従事者にも予防接種が行き渡っているとは言い難い状況のようなのだ。

ブラジルのように先進国とみなされることがない国でも、国民全体に対する予防接種を少なくとも1回受けた人の割合がようやく17%、2回完了が8%に達したブラジルと比較しても、日本は非常に遅れていると、これで大丈夫なのかと心配せざるを得ない。
それでいながら、オリンピックは何が何でも開催すると言っているから、まあ向こう見ずなことだ。

オリンピック関係者(選手と役員?)が来日する場合には、予防接種の有無を問わないとか、14日の隔離を免除するとか、日本に住む人が不安になるようなゆるゆるの規則を定めているようだ。
それだけでなく医療従事者や病床などの国民にとって大切な医療資源を、オリンピック専用に割り当てろと、できそうもない相談を持ちかけている。

日本に住む人達がこんな無理やりなオリンピック開催について、どのようにとらえているかは、もちろん肌で感じることはできないが、こんな状況の中で強行するだけの価値があるものと思っている人は、それほどいないようである。
こんなに歓迎されないオリンピック大会が、かって存在しただろうか。

歴史にたらればはないだろうが、もし2020年ないし2021年のオリンピックが東京でなく、時間が5年ずれて、リオデジャネイロで開催されることになっていたとしたらどうだろうか?

ブラジルの状況をざっと眺めてみる。
ようやく今になって、一日死亡数7日間移動平均が2,200程度に落ちてきているが、4月上旬にやってきた第2波のピークでは、これが3,100を超していた。
現在インドで新型コロナ感染症の流行が目も当てられない状況になっているが、ブラジルもわずか1ヶ月前には同様な惨状であった。
そして、単位人口あたりの死亡数を揃えようとすると、インドの人口がブラジルの6.5倍あることを考慮すると、人口2億1千万のブラジルの死亡数3千は、インドで19,500人死亡することに等しい。
ニュースでは、インドの1日死亡数が4千を超えたと言っている。

ブラジル国内の多くの地方で、インドで今起こっている酸素不足が1ヶ月前には頻発していた。
インドで火葬場が足りなくなっている代わりに、ブラジルでは墓地の墓穴掘りが追いつかず、墓地で霊柩車が列をなしていたところが続発していた。

実はブラジルの様子を観察すると、日本のようにコロナが蔓延していないのに医療が逼迫するという事態は全く理解できない。
ブラジルでは既に、コロナ以外の患者にとっては迷惑であろうが、緊急にしなくて良い手術などは延期して、コロナ患者を優先するするような措置が取られている。
病床占有率が常に90%を超えているのが常態になっているが、これは必要に応じて通常病床をコロナ病床へ切り替えたり、その逆を頻繁に行っているからである。
このような操作を指して、ブラジルでは医療崩壊とか呼ばないが、日本では少しでも日常と同じ治療ができないとなると、即医療崩壊とみなされるのだろう。
それでも病床占有率が100%になると、十分な治療を受けられずに死亡する人も少なくない。

集中治療病床に入っても、半分くらいは死亡しているようである。
人工呼吸器挿管の薬品が不足したり、医療スタッフがコロナに罹って人員補充ができず、治療ができなくなってやむなく病床を減少した病院もあった。
ここまで来るとさすがに医療崩壊状態と言えるだろう。
だから、今の日本で言う日本の医療崩壊状態は、ブラジルの見方では、まだまだ十分に余力を持っていて、とても崩壊からは程遠い、健全に近い状態であると言って良さそうである。

そんな医療状況のブラジルで、いくらブラジルのオリンピック委員会が大様(おおよう)に絶対大丈夫だからと、全世界へ呼びかけたところで、どの国が安心して選手団や応援客を送り出したいと思うだろうか。

実はここに解決法があって、東京オリンピックを忌避するためには、日本人は新型コロナへのガードを少しばかり緩めればよいのだ。
効果が出ているのかよくわからない営業時間制限を全部やめてみる。
緊急事態制限下でも歩き回りたい人がいくらでもいるのだから、放っておいても病気は広まってくれる。

何も別に現在のインドやブラジルと同じ、あるいはかってのイタリアのように病床占有率100%といった状況まで持っていかなくても良い。
医療が逼迫して、使い古された呼びかけだけでなく本当の緊急事態なんだ、国民や政府がオリンピックまで面倒見きれない、強行しようとしたら暴動が起きるぞという空気が醸成されて、大会のためにこのような国へ危険を冒してまで行きたくないという声が、多数の国から上がるようになれば十分だろう。

来日する選手や役員にワクチンを供給するとか言い出した。
ワクチンを受けるのは選手や役員なんかではなく、日本の住民が先だろう。
日本では多分2%くらいしか予防接種済みの人がいないだろう。

コロナに打ち勝った勝利のしるしのオリンピックなどと、無理な意地を張らずに、たわけたことを唱えるのはやめることだ。

コロナを流行らせてオリンピックを中止するという考えは本当に荒唐無稽だろうか?
絶対にそんなことはない。
本記事のタイトルのように簡単にできるかもしれないが、ある程度犠牲も出る辛い方法ではある。
でも無理してオリンピックを開催しても、準備不足のアスリートは万全のパフォーマンスを披露するのは無理な話で、けが続出、記録低迷の不完全燃焼オリンピックとなることが予想される。
競い合うのは各地から集った変異株で、残るレガシーは、オリンピック大会発の凶悪変異株の世界への蔓延という結果になるだろう。
どうせオリンピック後の変異株蔓延から逃れられないというのなら、日本が体を張ってオリンピックを中止したほうが、絶対人類のためになる。

オリンピックに関しては、開催都市がキャンセルを決定した場合には膨大な賠償金が発生するとか言われているが、本当だろうか。
疫病の蔓延という非常事態の考慮はされないのだろうか。

最近追い風が吹いているようだ。
米国のメディアが金権IOCを強烈に批判している。
開催都市から絞れるだけ絞るが、自身は絶対損しない組織である。
オリンピック大会の意義を思い出して初心に帰り、笑うのはずさんな運営で不正マージンを手にする開催国の一部の権力者とIOC役員だけの、現在の金権オリンピック方法を見直す良い機会になる。
ブラジルはリオデジャネイロ・オリンピック大会で、もう懲りたことと思う。

2021年4月30日

コロナワクチン第1回接種

ブラジルの新型コロナ感染症による1日あたり死亡数は、不名誉な世界第1位をしばらく続けている。
死亡数の過去7日の移動平均は、4月20日時点で約2,800人である。
4月前半には1日3千人を超える日があった。
4月27日になると、約2,340まで下がっていて、果てしない上昇は終わり、第2波の下降期へ入ったと判断して良いかもしれない。

そして4月21日のニュースによると、ブラジルで少なくとも第1回接種を受けた人の割合は、ようやく総人口の13%に届いたところである。
4月27日には約14%近くなっていたから、第1回接種の速度は、1週間で人口の1%のペースで進んできている。
しばしばワクチン供給が途絶えて、接種が中断されることも多く、50%上昇するのに50週間とは非常にもどかしい。

ブラジルの予防接種についての、各レベル行政府の役割分担はこうなっている。
連邦政府がワクチン原液輸入の交渉をして、 輸入された原液から国内の保健医療機関で調製された製品ワクチンは、各州に分配するため、それぞれの州都へ送られる。

州都にある州政府が州内各市への配布をするときには、まず各地方の中核都市へ送られ(ここまでは概ね空路)、近隣各市の担当者がそこまで自動車で取りに行く、といった形である。
国土が広い国で考えられる、ごく自然なやり方といえる。

そのワクチン流通の最終部である、ミナス・ジェライス州のわが町のワクチン接種システムについて書く。

まず市民である接種希望者は、市のサイトで登録をする。
識別の一意キーは、ブラジルの「マイナンバー」にあたるCPFが使われる。
つまり少なくとも現在は、わが町でワクチン接種を希望しない人は、ここで登録しなければ、決して呼ばれることはないと思われる。

もしも接種希望者が非常に少なくて、ワクチンが余るのに集団免疫ができない恐れがある、といった場合には、半強制的な招集が行われることになるのかもしれないが、今のところワクチン供給が遅く、コロナ流行は最盛に近い勢いのため、予防接種を望む人が大勢であるから、その心配はまずいらないだろう。

しばしばワクチン供給が途絶えて、接種が中断されることが多いため、市保健局は一週間先のワクチン受領の予想すらできない。
そのため、携帯電話のSMS(ショートメッセージサービス)によって、 ⽇時場所の指定を受け取ったのは接種前日の午後になってであった。

ワクチンの種類はおろか、時間も場所も選ぶことができない。
市内に3箇所ある接種会場の中で、セントロにある一番遠いところに割り当てられてしまった。
車で行って適当なところに駐車して、少し歩くことになる。
持参するよう指示されたものは、写真付き身分証明書と予防接種カードであった。

市保健局は密を避けるために、指定時刻よりずっと前に会場に行くなと念を押している。
5分前に着いた。

こうして書き出してみると、わが市のシステムは、下に書くような他の市と比較してかなりしっかりしたものと思われる。
日時場所を自分で指定できないのは少し不満だが、雑な指定のため待ち時間が多くなるのも嫌だ。

日時場所を自分で指定できるようにするとなると、システムは非常に複雑になるだろうし、米国や日本で行われるような街の医院や薬局でも受けられるようにすることは、ワクチンが余ったときに無駄になるし、データ集計も時間や漏れの心配が出てくるだろう。

会場入口でまず、係員が口頭で接種予約のない人をチェックして、会場に入れさせない。
会場は市のスポーツ施設の一つ、テニスクラブの体育館で、大スペースを2つに分けて、接種場と、急性の副反応に備えて、間隔を開けて椅子が並べられた接種後休憩場となっている。
アーチ型大天井だけで、壁がない部分が多く、換気は非常に良好だ。

コンピュータ端末のある登録チェック窓口が、3つ並んで通路に設置されている。
本人と写真付き身分証明書とシステムに記録された接種予約を正式に照合する。
行列は3人のみだった。

接種員がいる接種テーブルが12ほどある接種場への行列は待ちがなく、すぐに空いていたテーブルへ行くよう指示された。

各テーブルにはワクチンの入った保冷ボックス、接種済み登録入力用のパソコン、注射器やアルコール綿などが置いてあり、看護師が一人で担当している。

予防接種開始当初ときどき起きた「ワクチン空打ち事件」を防ぐためだろう、決められたプロトコル(手続き)がある。
  • 薬瓶を見せて、「あなたが受けるワクチンはxxxxで、nミリリットルです」と宣言する
  • 目の前で注射器に薬液を吸引して、「nミリリットルです」と復唱する
  • 注射する
  • ピストンが押されて空になった注射器を見せる

といったものである。

そして、テレビのニュースでみた接種風景と同じように、ほとんどの人が付添人か本人がスマホで接種場面の写真や動画を撮影している。
いちおう担当看護師さんに、写真や動画を撮ってよいか聞いたら、すぐに肯定したことからわかるように、プロトコルの一つになっている。

現在ブラジルで承認された上に流通している2種類のワクチンは、中国シノバック社の商品名「コロナヴァッキ」と、アストラゼネカであるが、1回め接種時にどちらが当たるかは指定された会場に行ってみないとわからない。
当日会場に着いて、ワクチンの種類を見て「これは打ちたくないから、今回はキャンセルしてもう一回予約する」というわがままを聞いてくれるかどうかは定かでないし、そのような人が今までいたかどうかも不明である。

この日この時間この会場では、アストラゼネカであった。

注射後、あたりを観察しながら休憩場の椅子に座って、しばらく休んでから帰路についた。

副反応であるが、当日翌日くらいに、腕を動かしたとき接種部分に軽い痛みを感じたくらいで、インフルエンザの予防注射と大差ないと思えた。
しかし同じワクチンで、 発熱したり体がだるくなったと訴えた知人もいた。
アストラゼネカとジョンソン&ジョンソンのワクチンに起きうるという血栓症は、接種後2週目に多発するというから、今その時期にあたっているが、宝くじの確率だろう。

接種翌日、市役所のサイトで照会したら、1回め接種済みとしっかり記録されていた。
アストラゼネカの2回め接種は4週間から12週間の間に行われるというから、2回めの日時場所指定が携帯電話のSMSに届くのをじっと待つことになる。

隣市の予防接種システムはもっと雑で、x月x日には、yyyy年生まれの氏名アルファベットAからLの人はA会場で、MからZの人はB会場で、といった具合である。

リオデジャネイロ都市圏のある市のシステムは極めて雑で、x月x日には65歳から67歳までの人ですから来てください、と広報するだけであったという。
それですら既に手持ちのワクチンが不足する人数を軽く超えている上に、住所確認が求められなかったため、近隣のよその町からも話を聞いた人が集まってしまい、密になりながら半日待ったのに、ワクチンがなくなったというので無駄足で帰っていった人も多く出た。

リオデジャネイロ都市圏には、治安に問題がある市が多いのだが、このような運営が滅茶苦茶な市に住んでいなくてよかったとは思う。

2021年3月23日

フランスもブラジルも「寒う」

 
いや全く大したことはないのだが、気がついて面白いと思ったので書こう。

現在ブラジルは、あのグダグダのWHOにすらも世界の脅威になると心配されるくらい、Covid-19の感染者と死亡者の増加がひどく、もっと力を合わせろと警告を受けている。

テレビのニュースで、フランスでも再び市民の外出制限が敷かれると、パリの街の情景が流れた。
パリの救急車の車体にも"SAMU"と書いてあるのを見て、あっブラジルと一緒だ!と思ったので調べてみた。

ブラジルでは「サムー」と後ろの音節に強勢がある。
長音ではないが心持ち長くなるようである。
"Sam"と混同しないようにサムーとここでは書き表わそう。
フランスでどのように発音するのかは不明だ。

フランスのサムー = Service d'aide médicale urgente
その英語訳 = Urgent Medical Aid Service
その日本語訳 = 緊急医療援助サービス

ブラジルのサムー = Serviço de Atendimento Móvel de Urgência
その日本語訳 = 緊急モバイルケアサービス
病院に着くまでに車内で緊急処置を進められる設備を備えた救急車のことである。

ブラジルのサムーをフランス語に訳したら = Service de soins mobiles d'urgence
略語(頭文字)は一緒でも、元の語は確かに少し違いがある。

さらにわかったことは、サムーには国際シンボルがある。
そのためブラジルの救急車もフランスの救急車も、車体にSAMUと大書してある上に、六角アスタリスクを背景に、杖に巻き付く蛇のマークをつけているから、遠目には全く区別がつかないのだ。

2021年3月7日

二部落ちしたデング熱

感染の心配の少ない、食事を用意したり会食することができる、三方の風通しが良く開放した広いスペースが田園地域にあるので、ときどき週末に会うほぼ唯一の親戚家族がある。
その者と一緒に働くトラック運転手が体調不良になった。
2週間前のことだ。
風邪のような症状と聞いて、まず恐れるのは当然新型コロナ感染症である。
これは検査結果がわかるまで会わないほうが良いかなと、一週間考えていた。

結果がすぐにわかる簡易検査は陽性だったので、PCR検査の結果を待った。
こちらは陰性だった。

最近町で問題になっていることに、簡易検査、つまり抗体検査キットの精度が悪く、これで陰性と出たので普通の生活に戻ったところ、実はPCR検査の結果は陽性であり、それが判明するまで周りの人にウィルスをばらまいてしまうという困った状況が出ていることである。
市の衛生当局は、キットを配布した保健省へ返却するとか言っていた。
まあこんなゆるゆるだから、日本の人の目から見ればブラジルでコロナが蔓延するのも当然だと思われるかもしれない。
うん、その通り、確かに返す言葉はない。

このトラック運転手の場合は通常問題になるケースと逆で、抗体検査では陽性、PCR検査では陰性となったところが異なる。
他の病気の検査もしたところ、デング熱であったことが判明した。
みんなの口々で異口同音に聞かれたのが、「ああ、デング熱で良かった」という言葉だった。

6年前の昔、「デング熱とソファと女性の関連性」という題の記事を書いたが、その頃に恐れられていたデング熱が、「なーんだ、デング熱か、安心した」と言われるようになってしまった。

デング熱は、病気のチャンピオンシップで二部リーグ落ちしたようなものだ。

2021年3月6日

ブラジルがコロナ死亡数1位になる日

米国はワクチン入手と接種に全力で取り組んでいる。
国内に複数のワクチン開発生産メーカーがある上に、政府の呼びかけに応えてライバル会社も巻き込んで協力して、ワクチン生産能力を上げている。
バイデン大統領は約3ヶ月先の5月末までに、米国の成人にワクチン接種を終えるつもりだと発言した。
そして現在の1日あたり接種人数は約2百万人で、これまで人口の15%が接種済みだという。

一方ブラジルはどうか。
本ブログの一つ前の記事で、ブラジル連邦政府はワクチンの購入交渉が下手で、ワクチン入手が非常に困難なことを書いた。
今日(2021/3/5)のニュースは、保健省の3月ワクチン購入予定数が4千5百万から3千7百万台まで下がったと言った。
それもまだ未契約だったり未承認だったりするワクチンを含んでいるという、不確実な数字である。

毎日発表される24時間の接種数を見ているが、一日あたり25万から30万くらいである。
それも連邦政府の五月雨式供給が途絶えると、接種も中断する。
2021年3月5日現在人口の3.75%が少なくとも1回、1.2%が2回めの接種を完了している。

以上の数字と国連発表の人口統計から計算してみた。
2020年推計で米国の人口は3億3100万、ブラジルの人口は2億1256万である。

米国もブラジルも一番優先順位が高いグループは医療従事者、とりわけコロナ患者に直接接触する人たちであるが、その人数は不明なため、高齢者から接種が始まったものと仮定する。
そして接種のペースは上の数字がこれからも続き、接種を拒否する人はいないとした。

65歳以上の人口と接種が終わる予定日
米国 55,049千人(総人口の17%)2021/3/7
ブラジル 20,389千人(総人口の10%)2021/4/15

18歳以上の人口と接種が終わる予定日
米国 257,510千人(総人口の78%)2021/6/16
ブラジル 158,962千人(総人口の75%)2022/7/21

確かにバイデン大統領の掲げた目標は、少し頑張れば半月早めて達成できそうだ。
しかしブラジルでは同じ結果となるまで、1年以上も余計に年月を要するということだ。
最初に接種した人たちの免疫が切れてしまい、次の接種サイクルに入ってしまうだろう。
永遠のワクチン接種キャンペーンになる。

現在までの新型コロナ死亡数
米国 520千人(世界1位)人口10万人あたり157人
ブラジル 261千人(世界2位)人口10万人あたり123人

まだ今のところは単位人口あたり死亡数で比べると、米国の状況はブラジルより深刻だといえる。
しかし米国はあと3ヶ月もすれば18歳以上の国民皆接種、つまり国民の78%がワクチンによる免疫を得て、国全体が集団免疫獲得のレベルに達する。
そうすれば死亡数増加もおのずからゼロに近くなってくるだろう。

かたやブラジルの単位人口あたり死亡数は米国とかなり近くなっているし、ワクチン接種が進むまでブラジルの死亡数減少は減速しないとなると、実数でも米国に追いつくことは間違いない。
ブラジルの接種速度が一日100万であったとしたら、2021/8/2に18歳以上の人口に接種が完了するのであるが、奇跡を妄想してもしかたがない。

米国は科学無視のトランプ大統領が、科学重視のバイデン大統領に代わり、流れが一気に変わった。
ブラジルはトランプ大統領に薫陶されたボルソナロ大統領が、思想を変えない限り2022年末まで相変わらず科学軽視・無視を続ける見込みであることが、両国の科学力・生産力の差を、さらに拡大していく未来が心配される。

しかし2022年下旬の大統領選挙で再選を目指すとなると、急速に方向転換する可能性は非常に大きい。
現実に、連邦政府がワクチン入手にもっと力を入れないと、地方政府が共同でワクチンを直接購入する動きが急速に形成されていて、連邦政府は保健政策の主導権と国民の称賛を持っていかれる可能性があり、大統領はそれを望まないだろう。
だらだら長びくコロナ流行のもとで、経済を止めたり緩めたりを繰り返しながら補助金を小出しにする消耗戦より、流行を一気に停止してから経済全開にするほうが政府の税収を増やし出費を減少するという認識が、もっと広まり力を得ると良いのにと思う。

2021年3月2日

富者のワクチン、貧者のワクチン

 各国の新型コロナ感染症対策は、その国で利用可能なリソースによって決まるから、ある国の治療法は、必ずしも隣の国の治療法と同じだとは限らない。
新型コロナのワクチンであっても事情は同様だ。

下の表は全ての認可されたりその候補のワクチンを上げたのではなく、現在ブラジルで話題に上がるものだけである。

番号開発者名称商品名開発国種別特徴
1AstraZenecaウィルスベクター2回接種、冷蔵保管
2Johnson & Johnson蘭/米ウィルスベクター1回接種、冷蔵保管
3ModernaRNA2回接種、冷凍保管
4Pfizer/BioNTech米/独RNA2回接種、冷凍保管
5Bharat BiotechCovaxin不活化ウィルス
6Gamaleya研究所Sputnik Vウィルスベクター
7SinovacCoronaVac不活化ウィルス2回接種、冷蔵保管


現在ブラジルで認可を受けているワクチンは3種である。
いずれも昨年からブラジル国内で第3フェーズ試験を行ったため、以前の法規に則って、ブラジル衛生監視庁(アンヴィザ ANVISA - Agência Nacional de VIgilância SAnitária)より認可された。

  • 1.アストラゼネカ(英国)
  • 4.ファイザー/ビオンテッキ(米国・ドイツ)
  • 7.シノバック(中国)


1.アストラゼネカは、ブラジルの医学衛生分野で権威実績のある、オズワルド・クルス財団(フィオクルス FIOCRUZ)と提携して、年内の国内生産を目指している。
現在は緊急使用許可で、フィオクルスが生産を開始するまでは、中国工場からのワクチン原液の輸入と、インド工場からの製品ワクチンの輸入に頼っている。

4.ファイザー/ビオンテッキは、初めてブラジル国内で完全使用許可を得たワクチンであるが、連邦政府は商談に手こずっていて、契約に至っていない。
2020年半ばにファイザーブラジルがブラジル連邦政府に契約を打診したのだが、副反応が出たときの免責条項にブラジル政府が同意しなかったので、提案はそのまま放置された。
免責条件に同意しなかった国は、ブラジルの他にはベネズエラとアルゼンチンだけだったというのだが、ニュースで一回聞いた限りで、以降確認していない。

7.シノバックは、サンパウロ州立の医学衛生研究機関ブタンタン研究所(Instituto Butantan)が第3フェーズ試験を行った。
ブラジルで権威のある研究所をパートナーとしたので、情報開示に問題がありがちな共産圏ワクチンであるが、検証はしっかり行われたと信じたい。
現在は緊急使用許可で、もちろん原料は中国に頼っている。

1.アストラゼネカも7.シノバックも中国頼みであるが、ブラジル大統領派の議員や大臣が中国批判ばかりするので、ブラジルへのワクチン原料が妨害されて遅れているのではないかと噂されていた。
中国の返答は事務手続きに時間がかかるという理由であったが、外交のことであるから隠れた本心はわからない。

ブラジルで第3フェーズ試験が行われているものはあと一つ、2.ジョンソン&ジョンソン(米国)があるが、ANVISAへの承認申請が行われていない。

これまでの法規は、ブラジルで治験が行われたワクチンでないと国内使用は認可されなかったのであるが、あまりにもワクチン入手に困難があるため、連邦議会は認可条件を緩和する立法に取り組んでいる。
例えば、科学的に信用のおける国の保健機関が認可したワクチンについては、試験結果を引用して簡略に許可するといった方策である。

そのような流れで未だブラジル衛生監視庁から認可されていないが、連邦政府が契約しようとしているのが次のワクチンだ。

  • 5.商品名コバクシン Covaxin(インド)
  • 6.商品名スプートニク・ブイ Sputnik V(ロシア)


米国は自国で複数のワクチンの開発が行われているので、全く比較対象にはならないだろうが、現在まで3種のワクチンが認可されている。

  • 2.ジョンソン&ジョンソン(米国)
  • 3.モデルナ(米国)
  • 4.ファイザー/ビオンテッキ(米国・ドイツ)


ブラジルのワクチンリストと米国のワクチンリストを比較すると、ワクチン生産国のコントラストがくっきりしている。

ブラジルにはブラジル独自の事情がある。
インディオはこれまで他の文明から隔離されてきたため、いろいろな感染症に免疫を持っていない。
インディオが、医療従事者や高齢者と並ぶ予防接種優先順位に位置づけられる理由である。

アマゾナス州の保健部門で働く人がインタビューで言っていた。
インディオ部落へワクチンを届けるのは並大抵でない。
川船で6日川をさかのぼってから、小さいボートに乗り換えてさらに1日かかるというような辺鄙で不便な場所がある。
辺境地では電力事情が悪いだけでなく、電気自体が通っていない場所もある。
国土が広いため空路でも陸路でも、冷凍輸送するには機材や燃料が高くつくし、時間が足りない。
マイナス20度冷凍保存のワクチンなど持っていけるわけがない。

そのような事情で、90%を超える有効性を誇っても、取り扱いが非常に面倒なワクチンは、手元にあっても十分に役に立ってくれない可能性は大きいのだ。
日本のようにワクチン全量がファイザーであるような国を羨ましがっても仕方がない。
接種を受けるのは無料だし、地元にあるワクチンで満足しなければバチがあたる。

ブラジルは、規則に従って国内で第3フェーズ試験が行われて、50.38%という際どい数値ながら、WHOが基準と定める必要な数字を叩き出したから許可したのである。
中国製ワクチンを闇雲に入手するのとは違う。

今のところブラジルで入手可能なワクチンの中で、唯一の西側先進国製のアストラゼネカにしても、政治的事情はあるもののEU諸国では不利な情報があふれて、できるなら避けたいワクチンナンバーワンになっているようなのだ。
ブラジルなら打ちたいワクチンナンバーワンになれるぞ。

インフルエンザワクチンと同じようなもので、発病しても入院して重症に至る確率が低くなれば、個人にとっては儲けものだし、医療機関が機能不全に陥ることはないから、社会全体が安心できる。

まあそれにしても、BRICSの中でもワクチンを生産しているのは中国、ロシア、インドががんばっているのに、熱帯病研究に強いはずのブラジルが、治験と生産の提携に過ぎないのは残念である。
計画と信念、何よりも予算が足りないのだろう。

2021年2月27日

コロナ禁酒と外出禁止令

lei seca - 禁酒法
toque de recolher - 外出禁止令

よその州や市で、夜間外出禁止令やアルコール販売禁止令などが出ているというニュースは、最近よく耳に入る。
お気の毒なことに、と人ごとのように感じていたものの、わが町も強力な規制がかかった。
病床を増やしてもすぐに足りなくなる医療崩壊状態だから、しかたない。

2021年2月23日から少なくとも一週間、20時から翌朝5時までの、緊急要件に当たらない外出と、24時間つまり少なくとも7日間ぶっ続けのアルコール飲料販売禁止が、市条例で施行されている。

ニュース記事の見出しが、"Lei seca e Toque de recolher"となっていた。

Lei seca は、文字通りだと「干上がる法律」ということだろうが、通常アルコール販売が禁止されている状態を表している。
米国の「禁酒法」は簡単に調べてみる(Wikipedia)と、合衆国憲法修正18条のもとで、アルコールの製造、販売、輸送を、1920年から1933年もの長期間禁止した法律である。
原語は"Prohibition"と簡潔である。

今回のアルコール販売禁止は、立法府による法律ではなく、行政府である市役所によるから、適用地域は市域に限られている。

Toque de recolher をポルトガル語辞書で調べると、「晩鐘、消灯の鐘」と書いてある。
toqueは鐘などの鳴る音のことで、recolherは帰宅するという動詞であるから、トッキ・ジ・レコリェルとは元々は、現在もあるかどうか知らないが、日本の学校で鳴る下校チャイムのことであろう。
toqueには楽器の演奏の意味もあるから、下校時刻を知らせるための、ドヴォルザークの「家路」のような、聞いたら自然と家に帰りたくなる音楽のことを toque de recolher と呼んでもよいだろう。

しかし帰宅時刻である20時だけでなく、20時から5時までの間に toque de recolher という言葉を当てるのなら、その時間帯に外出するなということだから、外出禁止令としておこう。

今晩のニュースを見ていたら、サンパウロ州政府は、全州で金曜日の2月26日から3月初めまで、23時から翌朝5時までの外出禁止を行うそうである。
23時からと20時からをくらべると、特にレストランやバーのような外食業種にとっては、全く大違いである。

先週2月17日から、熱心な信徒が節制を行う四旬節に入っているため、アルコールなど販売禁止にしても、市民の抵抗が少ないとでも思ったのだろうか。
レイ・セカ前日は、駆け込み酒類購入のため、スーパーなどが密状態になる逆効果がみられた。

夜8時を回ると、これまでの深夜のごとく辺りが静まり返るのは、新鮮な感覚だ。
バスも夜8時には終点に着いているし、通りを走る自家用車も商用車もない。

特筆すべきは2021年2月25日の夜だ。
コロナのために2021年までずれ込んだフットボールのブラジル選手権(Brasileirão)の最終節で、人気クラブの一つ、フラメンゴが2年連続優勝した。
花火は打ち上げられたが、普通の年だったら熱心なファンが通りに繰り出して、クラクションを鳴らしながら走り回る、にぎやかな自発的優勝パレード(というか馬鹿騒ぎ)が全くないので、静かすぎてしまらない、奇妙な優勝の夜だった。
この静寂さは通常のときはなかなか得られない、とても貴重な時間だ。

2021年2月23日

コロナ気になる薬

「コロナ治療」で広がる輸入 未承認薬、厚労省「安易な服用控えて」
時事ドットコムニュース 2021年02月21日07時05分

ニュースに接したときにすぐ理解できるように、最近ニュースで見ることのあるコロナ治療薬、あるいはその候補をここに書いておく。

当記事による、日本で承認されているコロナ治療薬-医師の処方が必要

  • レムデシビル - en. Remdesivir - po. Remdesivir  抗ウィルス薬
  • デキサメタゾン - en. Dexamethasone - po. Dexametasona ステロイド系抗炎症薬

ブラジルで承認されたことのある・されているコロナ治療薬
  • ヒドロキシクロロキン - en. Hydroxychloroquine - po. Hidroxicloroquina 抗マラリア剤
  • アジスロマイシン - en. Azithromycin - po. Azitromicina 抗生物質
  • イベルメクチン - en. Ivermectin - po. Ivermectina 駆虫薬

以上が全てではないと思われるが、ブラジルのボルソナロ大統領、米国トランプ前大統領の思い込みなどから強力に推すものも含め、ブラジル保健省が「初期治療」"tratamento precoce"に使用できるとみなしたもの。
報道によると薬効の科学的裏付けが存在しないものは、現在は保健省の正式文書からその記述は抹消されているらしい。

注目されているが日本では承認されていない薬剤-つまり使ってみたくなる薬
  1. ファビピラビル - en. Favipiravir - po. Favipiravir RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤
  2. イベルメクチン - en. Ivermectin - po. Ivermectina 駆虫薬

1番目は商品名アビガン Aviganとしてよく知られているものである。
RNAウィルスである新型コロナウィルス (SARS-CoV-2) の増殖を阻害する働きが期待されるが、まだ決定的な効力は持たないようであって、そのためコロナ治療薬として承認されないのだろう。
想像である。
この薬についてブラジルでコメントされたのを聞いたことがない。
当然だが、ブラジルでこれまで使われていて、そのため入手しやすい薬剤がよく話題に上がる。

2番目であるが、報道記事によると日本人が個人輸入を行って自己処方して服用した例がある。

ブラジルの話である。
ある知人は予防と称して、毎月1回服用している。
他の友人は、風邪をひいたかなと思ったら、ということは何らかの症状が出ているということだが、重症化しないように服用するという。
これについて、ある日公共診療所の内科医に聞いたことがある。
予防のため月一で服用することは意味がないが、罹り初めのときに服用することは肯定した。

果たして効果があるのかはわからない。
実証が行われていないからだ。
ブラジルでイベルメクチンが、新型コロナ感染症患者の内どのくらいの割合で処方されているのかはわからないが、これを服用したら全く重症化しない、という仮説が正しかったとしたら、ブラジルでコロナによる死者数がこれほど伸び続けるということはないのではないか。
科学的な実証が待たれる。

2021年2月14日

垂直に深く刺す筋肉注射

「コロナワクチン投与法の動画公開 厚労省、筋肉注射で」
という見出しの記事を見た。(2021/02/12 共同通信)
一節を抜き出す。

「日本のワクチンは皮下注射が多く、浅く斜めに針をさす。筋肉注射は、皮下組織の下にある筋肉まで針をまっすぐに深く刺すのが特徴だ。」

へーそんな違いがあったなんて、全く気づかなかった。
ブラジルでも、もう何回もいろいろな注射をしてもらったが、注射のやり方の違いが気になったことなどない。
実は怖いから自分の腕に針が刺さるのを見たくないので、いつも注射の腕の反対側を向いているか、目をつぶっていたりして、どんなふうに注射をしているのか、全く気をつけてみたことがない。

最近のニュースではブラジル各地のワクチン注射の光景がよく流れるが、注射シーンのクローズアップも多い。
そうして注目してみると、いかにも筋肉注射である。
皮下注射とは様相が違う。

接種者は被接種者の腕を、肉が盛り上がるようにつかんで、皮膚面と垂直な角度で、短い針の場合には根元の太い基部が膚にくっつくくらいまで、容赦なく深く刺す。
針が腕の骨に刺さるのではないかと、心配すらしてしまう。

今回順番が回ってきて、これまでのワクチン開発の歴史の通例を破って、わずか1年足らずで作られた新型コロナウィルスワクチンを自分が打たれることになったとしても、目をつぶっていればよいだろうと思っていたのだが、そうもいかない事件があった。

ゴイアス州ゴイアニアで起きたことだ。
順番が来た年配の女性が注射を受けた。
付き添いの娘さんがスマホで、記念すべき接種シーンの撮影をした。
あとからビデオを見たら、腕に針を刺しただけで薬液を注入しないまま針を抜いたという、手抜きというか、接種詐欺というか、そんな目にあったと言って警察に訴えた。
撮影されたビデオがテレビニュースで流されたが、本当に刺しただけでピストンを押さないまま抜いてしまったのかはよくわからなかった。

これは貴重なワクチンの窃盗だろうか。
接種詐欺だとして、いったい誰が得をするのか。
刺すだけで注射したふりをして、ワクチンが一人分入った注射器を捨てないで、隠して外へ持ち出そうとしているのか。
ずいぶん手間のかかる盗み方だ。

誰がワクチンを欲しているか。
医療関係者や高齢者でなく、優先順位がついていない普通の人だろう。
予防注射がまだ公式に始まっていない日本で、偽物の疑いすらある中国製ワクチンを、闇市場から入手する金持ちがいるとか聞くから、ブラジルでも自分の順番が回って来るのは何ヶ月も先のことだから、いくら金をかけてもいち早く予防接種を受けて安心したいという人がいるのだろう。

いやしかし、一刻も早くワクチンが欲しくても、一度見知らぬ誰かの腕に刺した針を、自分の腕に刺してもらっても平気だという人が一体いるのだろうか。
ただでもらえると言われても、御免こうむる。

訴えがあったため、警察は接種担当者を捜査することになっているが、こんな事件が頻繁に起こるとは考えられない。
だがそうではない場合に、接種詐欺の被害者にならないためには、同行者に証拠ビデオを撮影してもらうか、それができなかったら、確かに薬液が腕の中に注入されているか、自分の目ではっきり確認しなければならない。

ああ怖い、ああいやだ。

2021年2月9日

行きは寝台、帰りは椅子が理想な旅行

アマゾナス州の州都マナウスから、18人のCovid-19中・重症者が、ブラジル空軍輸送機でミナス・ジェライス州西部の町ウベラバへ搬送された。
3週間前のローカルニュースである。
2名の医師、数名の看護師も同行した。

Google Mapsで計測する、ウベラバ-マナウス間の直線距離は2,270キロである。
ニュースでは3千キロと大雑把に言っていたが、いささか大げさではないか。
と思ったのだが、経路検索をしたら、自動車で陸路移動するとなると3,570キロもある。
鉄道というオプションはない。

2021年2月5日の報道によると、アマゾナス州から全国16州へ、合計503人の患者が搬送されたそうだ。

北地方(3)-アクレ AC、パラ PA(この2州はいちおうアマゾナス州の隣)、トカンチンス TO
北東地方(6)-マラニョン MA、ピアウイ PI、リオ・グランデ・ド・ノルテ RN、パライバ PB、ペルナンブコ PE、アラゴアス AL
南東地方(3)-ミナス・ジェライス MG、エスピリト・サント ES、リオ・デ・ジャネイロ RJ
南地方(3)-パラナ PR、サンタ・カタリナ SC、リオ・グランデ・ド・スル RS
中西地方(1)-連邦区 DF

患者受入地はブラジルの全地方に広がっているが、距離はどうか。
以下距離は州都同士の直線距離で比較をする。
患者輸送は全部空路なので適当であろう。

まず近そうな隣接州をみてみる。
マナウス-リオ・ブランコ AC 1,150キロ
マナウス-ベレン PA 1,280キロ
隣接州と言っても、千キロ以上ある。

北東地方だったらどうか。
マナウス-ジョアン・ペッソア PB 2,860キロ
ブラジル最東端の州都である。

南東地方
マナウス-リオ・デ・ジャネイロ RJ 2,850キロ

一番遠そうな南地方
マナウス-ポルト・アレグレ RS 3,140キロ

さて、ポルトガルも大変なことになっていて、ドイツから医療団を送ったり、オーストリアが患者を受け入れると表明した。
リスボン-ウィーン 2,300キロ
なかなか遠い。
でもこれは3つか4つ向こうにある、遠い別の国である。

第1波のときには、北イタリアからドイツへ患者空輸が行われた。
ミラノ-ミュンヘン 350キロ
イタリアとドイツは国境を接していないが、これまでの例と比べるととても近い。

マナウスの医療資源不足のため空輸された患者たちは、見知らぬ土地の病院でどうなったか。
2月5日報道によると、503名中153名が退院してマナウスへ帰還した。
37名は治療の甲斐なく死亡した。
残りは入院治療中である。

ウベラバの町へ着いた18名の行方は、6名退院帰還、5名入院治療中、7名死亡ということだ。

アマゾナス州都マナウスは、人口約220万人の、ブラジル第7番目の大都市であるが、ブラジルの都市集中部からは、大地と大河に阻まれる隔絶地である。
空輸された患者たちの中には、これが人生最初の州外への旅行である人も少なくないと思われる。
アマゾン川を直線距離で600キロ下れば、隣州パラの大都市サンタレンだから、きっと船で州外旅行をしたことはあるという人もいるだろう。
今調べたら、川下り30時間、川上り42時間かかるそうだ。

退院となって病院から空港へ運ばれ、帰りの便まで一切自由時間がない、一風変わった初めての州外旅行であっても、生きて帰るものは幸いである。
帰り便も横になって、しかし棺の中なんていうのは辛い。

2021年1月27日

2021年のキリスト教移動祝日

 ブラジル各地の2021年のカーニバルは軒並み中止になってしまったが、当然暦の上では例年のようにカーニバルは存在する。

米国のカーニバルで有名なニューオーリンズのサイトがあって、2056年までのMardi Gras(マルディ・グラ)の日付がここでわかる。
Mardi Grasとはフランス語で確か「肥えた火曜日」と言う意味だったと思うが、ブラジルでは普通にTerça-feira de Carnaval「カーニバルの火曜日」と呼ぶ日である。

世界2大コロナ猖獗国である米国とブラジルである。
ニューオーリンズのマルディ・グラのパレードも中止となってしまった。
暦のけじめがつかないではないか、憎きコロナよ。

カーニバルがキリスト教行事かというと巨大な疑問であるが、少なくとも日付の決め方だけは教会に従っている。
有り体に言えば、謝肉祭というくらいだから、カーニバルで現世の喜びを十分に満悦してから、心置きなく襟を正して四旬節の節制に臨む、という意味をつけられる。
とにかく、キリスト教行事の中には、毎年、天体の月の動きに応じて日付が移動するものがある。

年の後半にある、知らない人はいないクリスマスは12月25日(ブラジルの祝日)、ブラジルでは死者の日(Finados)と呼ばれる万霊節は11月2日(ブラジルの祝日)―これはハロウィン(10/31)-万聖節(11/1)-万霊節(11/2)と続く―と、毎年同じ日付に決まっているが、年の前半にある宗教祝日は移動するものが多い。

2021年の移動宗教祝日を下に一覧表にした。
復活祭の日、2021年ならば4月4日日曜日が、一連の移動祝日の基準になっていると言ってよい。
2020年より8日早い。

復活祭の日付の決定方法について過去の記事に説明した。

待降節(Advento)は、クリスマスに備える期間であるが、その第一日は日曜日に決まっていて、11月30日の「聖アンデレ(Santo André)の日」に最も近い日曜日からクリスマスイブまでの約4週間で、最も早い年で11月27日、遅い年でも12月3日に始まる。
アドベント期間には必ず4つの日曜日が含まれる。
つまり年の前半の移動祝日とは、その決め方が全く異なる。

行事日の決まり方2021年休日種類
カーニバル
Carnaval
週末から灰の
水曜日前日4日間
2月15-16日
月火曜日
PF
灰の水曜日
Quarta-feira de Cinzas
復活祭46日前の水曜日2月17日水曜日14時までPF
四旬節Quaresma灰の水曜日から復活祭前日
枝の主日
Domingo de Ramos
復活祭7日前の日曜日3月28日日曜日
聖週間Semana Santa枝の主日から復活祭前日
キリスト受難日
Paixão de Cristo
復活祭の2日前の金曜日4月2日金曜日FN
復活祭Páscoa北半球春分の次の
満月の次の日曜日
4月4日日曜日
ペンテコステPentecostes復活祭の49日後の日曜日5月23日日曜日
キリスト聖体の日
Corpus Christi
復活祭の60日後の木曜日6月3日木曜日PF
ぽつんと年末に孤立
待降節初日
Início do Advento
11月30日に最も近い日曜日11月28日日曜日


ブラジルで国定祝日(feriado nacional - 上表ではFN)、任意出勤(ponto facultativo - 下表ではPF)になっている日と、特に休日になっていない日がある。
任意出勤というのは、条例や労使協定によって、地方自治体、職種組合や職場ごとに、休日とするか勤労日とするか決められる。
大部分の勤め人にとっては、普通の休日となることが多いが、商店は営業するところと休むところがある。

2021年1月25日

2021年のブラジルの祝祭日

ブラジルの2020年の暦は、カーニバルが終わるまでは、コロナなどよその惑星のできごとであるかのような能天気だったが、患者第1号が出てからはもう有無を言わさずコロナ対応に引き込まれた。
そのため、花火打ち上げやクラブの年越しパーティーのような年末年始行事だけでなく、来月2月のカーニバルはおろか、それを7月に延期した時期外れカーニバルも、開催時期未定のまま再延期になったりして、いささか暦感覚がない2021年になろうとしている。
そんなわけで毎年年末の、来る年の祝日チェックを放ってしまっていた。
コロナ疲れの一種である。
でも来月は何も公式行事がなくても、カーニバルはやってくる。
そこで政府による祝日関係の発表を検索した。

連邦政府の経済省は、2021年の祝日と任意出勤についての通達PORTARIA Nº 430, DE 30 DE DEZEMBRO DE 2020を2020年12月30日付官報に掲載した。
下の表はこれに準ずる。
条文に断っているように、本来の目的は連邦行政官庁や国営企業の休日を定めたものである。

一連のキリスト教関連の移動休日は、2020年より8日早くなる。
たとえば2020年のキリスト受難金曜日は4月10日、2021年は4月2日である。

1 1月1日 Confraternização Universal 世界友好の日 FN
2,3 2月15-16日 月火 Carnaval カーニバル PF
4 2月17日 quarta-feira de cinzas 灰の水曜日 14時までPF
5 4月2日 Paixão de Cristo キリスト受難の日 FN
6 4月21日 Tiradentes チラデンチス FN
7 5月1日 Dia Mundial do Trabalho 世界労働の日 FN
8 6月3日 Corpus Christi キリスト聖体の日 PF
9 9月7日 Independência do Brasil ブラジル独立の日 FN
10 10月12日 Nossa Senhora Aparecida アパレシーダ聖母の日 FN
11 11月1日 Dia do Servidor Público 公務員の日 PF
12 11月2日 Finados 死者の日 FN
13 11月15日 Proclamação da República 共和制宣言の日 FN
14 12月24日 véspera de natal クリスマスイブ 14時以降PF
15 12月25日 Natal クリスマス FN
16 12月31日 véspera de ano novo 大晦日 14時以降PF

注:FN = Feriado Nacional 国定祝日、PF = Ponto Facultativo 任意出勤
任意出勤とは、職種や企業や自治体によって働くか休むかが決められる日である。
各人が勝手に自分の都合で出勤したり欠勤したりして良いという意味ではない。

11月1日(月)は10月28日(木)の「公務員の日」(Dia do Servidor Público)の振替であり、民間は通常日であるが、(連邦の)官庁は任意出勤となる。
2019年のこの日には、市の消費者保護機関は通常通りに仕事をしていたが、州の裁判所は閉まっていた。
国営銀行とみなされるブラジル銀行(Banco do Brasil)と連邦貯蓄銀行(Caixa Econônica Federal)について、この日に営業するかは確実でなく、注意する必要がある。
当表の連邦政府が定める全国一円の休日のほかに、各地で市、地方あるいは州の記念日が数日定められていることが多い。

次のサイトで、任意の過去・将来年の、任意の国の休日が入った月齢付きカレンダーを閲覧・印刷できる(英語・ドイツ語・当国語-ブラジルならポルトガル語)。
このリンクはブラジルの2021年