2014年12月29日

消えたコインよ、現れよ

手品の話ではない。

現金を使って買い物をした時、店にお釣りがなくて困ることがある。
これは全国的な現象で、ニュースでも話題になる。
このブログに一度書いた「返ってこないお釣り 」は2011年10月の記事、それから3年余り経ち、状況はますますひどくなっている。
1センターボ硬貨を見ることはもはやなくなった。
センターボは百分の一レアルである。

街角のパン屋や雑貨屋など比較的少額の商品を扱う商店は、どうしているのだろうか。
例えば、1レアル97センターボ(R$1.97)の買い物をして、2レアル札でお釣りをもらう時だ。
考えられる方法をあげてみる。
  1. 店はしれっとお釣りを払わない。
  2. 3センターボ分の飴玉をお釣りの代わりに渡す。
  3. 近所の商店に、両替しに、あるいは借りに行く。
  4. 5センターボ硬貨をお釣りに渡す、5センターボ硬貨がなかったら10センターボ硬貨を渡す。
  5. センターボの金券を渡して、次の買い物時に使ってもらう。
  6. つけで売って後日精算する。。
  7. 現金ではなくデビットカードあるいはクレジットカードで支払ってもらう。

1は鷹揚な客ならお釣りがなくても文句を言わないかもしれないが、大多数の客は文句を言いそう。
2は上に同じで、飴玉なんかいらないと客は文句を言うだろう。
3は結構よくみられる解決法だが、運が悪いと外へ行った店員がなかなか戻ってこない。
何よりも最近は1センターボ硬貨自体がどこにも見あたらないから、探しに行っても無駄だ。
5と6は、近所のパン屋のように、よく行く店なら使える方法である。
7も正解であるが、客がカードを持っていなかったり、商店がカード読み取り機を持っていなかったりしたら無理である。
カードには手数料があるので、代金が少額の時はカード払いを嫌う商店もある。

消費者保護法(Código de Defesa do Consumidor)は、商店にお釣りがないときに販売代金を切り上げることを禁止している。
また、別の商品をお釣りにあてることも禁じている。
つまり、1と2は法律違反になる。
現金で支払いする場合の正解は4である。

「スウェディッシュ・ラウンディング」という言葉を最近知ったが、これがブラジルで現在起きている。
スウェーデンで1972年最小単位の硬貨が5オーレとなったため、端数処理のために考えられたという。
最近は1センターボ硬貨を見ることがなくなったので、最小単位硬貨が5センターボとなっている。
ちなみに現在流通している硬貨は、5, 10, 25, 50センターボ硬貨及び1レアル硬貨である。
紙幣は2, 5, 10, 20, 50, 100レアル紙幣がある。

上に書いたようにスウェディッシュ・ラウンディングは法律違反であり、消費者は堂々とお釣りを切り上げる(商品価格を切り下げる)要求をして良い。

ブラジル中央銀行の計算では、ブラジル国民ひとりあたり112枚のコインが出回っているはずである。
しかし市場に出回っているはずのコイン10枚中6枚しか日々流通していないという。
あとの4枚はどこへ行ってしまったのか。

思いつくのはブタの貯金箱や空き缶小銭貯金である。
蓋をハンダ付けしたペンキ空き缶で、1年間で500レアルを超える小銭貯金をした知人がいる。
買い物で釣りをもらうたびに、硬貨全部を空き缶に入れてきた。
クリスマス・年末はショッピングシーズン、これら貯金箱を壊す季節、死蔵されていた多くの小銭が再び出現するはずである。
硬貨不足が少しは解消されると思われる。

各家庭で死蔵されている硬貨を市場に戻す良い方法はあるか。
答えは簡単である。
硬貨を使う機会を作るだけでよい。
日本だったらあまりにも身近にあふれすぎていて、何だこんなことかと思うだろう。
硬貨だけで買える自動販売機を増やせばよいのだ。

言うは易く行うは難し、である。
ATMが爆破されるブラジルである。
無人自動販売機が無傷でいられるはずがない。
自動販売機も人の目のある場所と時間でなければ、中の現金や商品が手口の荒い泥棒に狙われること、まず間違いない。

商店主が考えだした苦肉の策、小銭をまとまった額持ち込んだ人に割引をしたり、クーポンやプレゼントをあげることくらいしかなさそうだ。

2014年12月25日

2015年のキリスト教移動祝日

キリスト教行事の中には、毎年、天体の月の動きに応じて移動するものがある。

年の後半にある、だれでも知っているクリスマスは12月25日、ブラジルでは死者の日(Finados)と呼ばれる万霊節は11月2日-これは日本ではハロウィン-万聖節-万霊節の一連としたほうがわかりやすいだろう-と決まっているが、年の前半にある宗教祝日は移動するものが多い。

2015年の移動宗教祝日を下に一覧表にしてみた。
復活祭の日、2015年ならば4月5日日曜日が、すべての移動祝日の基準になっていると言ってよい。
2015年の3月分点、つまり協定世界時(UTC)の春分の日は3月20日、その次の満月の日は4月4日だ。

ブラジルで国定祝日(feriado nacional - 下表ではFN)、任意休日(ponto facultativo - 下表ではPF)になっている日と、特に休日になっていない日がある。
任意休日というのは、職種組合や職場によって、休日とするか勤労日とするか異なるのだが、大部分の勤め人にとっては、普通の休日と変わらない。

行事日の決まり方2015年休日種類
カーニバルCarnaval週末から灰の水曜日前日4日間2月16-17日月火曜日PF
灰の水曜日Quarta-feira de Cinzas復活祭46日前の水曜日2月18日水曜日14時までPF
四旬節Quaresma灰の水曜日から復活祭前日
枝の主日Domingo de Ramos復活祭7日前の日曜日3月29日日曜日
聖週間Semana Santa枝の主日から復活祭前日
キリスト受難日Paixão de Cristo復活祭の2日前の金曜日4月3日金曜日FN
復活祭Páscoa北半球春分の次の満月の次の日曜日4月5日日曜日
ペンテコステPentecostes復活祭の49日後の日曜日5月24日日曜日
キリスト聖体の日Corpus Christi復活祭の60日後の木曜日6月4日木曜日PF

2015年のブラジルの祝祭日

2015年のブラジルの国定祝祭日及び任意休日を現在わかるかぎりあげておこう。

一連のキリスト教関連の移動休日は、2014年より15日早くなる。
たとえば2014年の灰の水曜日は、3月5日であった。

1月1日Confraternização Universal世界友好の日feriado nacional
2月16-17日月火Carnavalカーニバルponto facultativo
2月18日Quarta-feira de Cinzas灰の水曜日14時までponto facultativo
4月3日Paixão de Cristoキリスト受難の日feriado nacional
4月21日Tiradentesチラデンチスferiado nacional
5月1日Dia Mundial do Trabalho世界労働の日feriado nacional
6月4日Corpus Christiキリスト聖体の日ponto facultativo
9月7日Independência do Brasilブラジル独立の日feriado nacional
10月12日Nossa Senhora Aparecidaアパレシーダ聖母の日feriado nacional
11月2日Finados死者の日feriado nacional
11月15日Proclamação da República共和制宣言の日feriado nacional
12月24日Véspera do Natalクリスマスイブ14時以降ponto facultativo
12月25日Natalクリスマスferiado nacional
12月31日Véspera de Ano Novo大晦日14時以降ponto facultativo

上の表は、連邦政府が2014年1月6日に連邦の役所や公社向けの指針として発布したものの日付を、2015年のカレンダーへ移したものである。
毎年必ず日曜日に重なる復活祭は、日曜日であるがために連邦政府の祝日リストにはのっていないので、この表にものせない。
復活祭を含むキリスト教の一連の移動祝日はここにのせる。
公務員の日というのが10月28日にあるが、民間は休日でもなんでもないので、この表にはのせない。

feriado nacionalは国定休日であるが、ponto facultativoは任意出勤で、休日になったり勤務日になったりは職種・職場によって異なる任意休日のことだ。
任意だからといって、勤め人が職場の決まりを無視して勝手に休んで出勤扱いになることはない。

灰の水曜日の14時まで任意休日というのは、午前中は前夜火曜日のカーニバル大騒ぎの疲れを癒す時間となっており?、銀行・官公庁や商店などは午後2時から開店する習慣があるからである。

同様の習慣により、12月24日と31日は、それぞれクリスマスと新年のイブという理由で、半日で就業終了という職種が多い。
銀行は、24日は開店時間短縮、31日は年末決算のために就業するものの店舗は開かないので支払い・送金などに注意が必要である。

当表の連邦政府が定める全国一円の休日のほかに、各地で市と地方の記念日が数日定められていることが多い。

下のリンクで、月齢付き2015年(及び任意の将来年)カレンダーを閲覧・印刷できる(英語・ポルトガル語)。
http://www.timeanddate.com/calendar/?year=2015&country=33

「媛まどんな」とペラ・リオ

果物についてブログの記事にしたのは、これまで3回だったと思う。

ブラジルナッツ(castanha do Pará)
パッションフルーツ(maracujá)
バナップルとバナナ・マサン(banana maçã)

今日は「媛まどんな」

バナップルは果物の名前だといったら、バナナかアップルかどっちだろうか?と思うだろう。
では、媛まどんなと聞いて、果物の名前だと思うだろうか?
媛窓女ではない。
媛マドンナだろう。

マドンナと言うと歌手の名前がまず思い浮かぶが、昭和時代には寅さんのマドンナというのがあった。
Wikipediaを見ると、寅さんのマドンナは、寅さんの「憧れの対象となる美女」。
もっとずっと昔、多分日本で一番最初にこの単語を有名にしたと思われるのが、夏目漱石の小説『坊っちゃん』の登場人物のマドンナ。
マドンナとか赤シャツとか、遠い明治はずいぶんハイカラだったのだ。

クラシック音楽のインターネットラジオ、オッターヴァ(Ottava)では、プレゼンターがCDや書籍などにとどまらない、いろいろな商品を紹介してくれるコーナーがある。
今回は三線プレーヤー、ゲレン大嶋さんによる「媛まどんな」という製品だが、いったい何なのか。

音楽関連で言えば、マドンナには次のような意味がみつかる。
  • ただのマドンナは、古イタリア語 "ma donna"(「我が淑女」の意)。
  • プリマドンナ(Prima donna)は、オペラの主役となる女性歌手。イタリア語。

「媛まどんな」、原意は「媛(姫)+マドンナ」であろうが、字種がひらがなに変わっている。
やんごとなき麗しい女性ではない。
日本の冬の名物、こたつの友、みかんの品種だという。

みかんの産地愛媛の媛とマドンナの合成語であろう。
2005年に登録されたばかりの新しい品種で、まだ生産量は多くないという。
特徴は「酸味控えめ、甘みたっぷり、ゼリーのようなプルプル食感」と紹介されている。

こういうものを見ると、すぐにこちらの身近なものと値段の比較をしたくなる癖がある。
ブラジルはオレンジの大産地で、オレンジジュースは重要な農産輸出品である。

ブラジルの州都や大きな地方都市には、セアザ(ceasa)という中央市場がある。
うちではセアザで、オレンジを袋買いする。
ブラジルのオレンジで最も一般的な品種は、ペラ・リオ(pêra rio)で、果皮は平滑で薄く黄色で、果肉は果汁多く、甘く少し酸味がある、と書かれている。
「媛まどんな」と比較すると、「ときには酸味控えず、ときには甘みたっぷりとはいえず、ときには残念なことにスカスカだったりする」けれど、ハズレでなければ、甘み酸味の均整がとれた、うまさが爽やかな大衆的オレンジである。

月曜日に買ったのは、20kg袋入のペラ・リオで、10レアル払った。
小粒なので10レアルだったが、大粒だったら12レアルの値段がついていた。
1kgあたり50センターボである。
1レアル=44.6円のレートを使うと、22.3円だ。

サイトによると、媛まどんなの価格は3kgが3,900円する。
1kgあたり1,300円になる。

そこで価格比率、媛まどんな/ペラ・リオを求めると、58倍になる。

こういう比較をするといつも思うのだ。
一年に一度くらい贅沢をして、1キロ1,300円の媛まどんなをありがたく賞味するのと、1キロ22円のペラ・リオを一日5個も10個も飽きるまで食べるのと、どちらが幸せな食生活なのだろうか?

2014年11月30日

根気を試される携帯料金問い合わせ - 携帯事情三題その三

最後は、携帯を使うのに根気がいるという話である。

Operadoras de telefonia estão na mira do Ministério da Justiça
http://globotv.globo.com/rede-globo/jornal-hoje/t/edicoes/v/operadoras-de-telefonia-estao-na-mira-do-ministerio-da-justica/3780923/

Oi, Vivo, TIM、つまり4大携帯会社から Claro を除く3社はこのほど司法省により消費者保護の観点から警告を受けて、10日以内に回答を要求された。

主な消費者の苦情は次のものである。Principais reclamações
  • 使っていないサービス課金 Cobranças indevidas
  • 契約金額以上の課金 Cobranças acima do contrato
  • (電波の)信号不良 Sinal ruim
  • サービス不履行 Descumprimento de ofertas
資料はミナス・ジェライス州の消費者保護機関 Procon/MG による

請求書にいわれのない課金がされていたり、通常より請求金額が高いと思ったら、電話会社の顧客サービス番号に掛けて説明を求めるのだが、これが大仕事なのである。
録音音声や待合中音楽を延々聞かされたあげく、やっと人が出てきたと一生懸命説明しても、担当が違うとたらい回しされ、人が代わるとこれまで延々と説明した話をもう一度繰り返さなければならない。
下手すると通話中に電話が切れてしまったりする。
というか、必ずと言っていいほどこういう時に切れる。
顧客対応係がわざと通話を切っているのではないかと疑ってしまう。
こっちだって好きで時間をつぶしてまでこんな電話しているのではないぞ。
切れてしまうと、この壮大な時間の無駄を繰り返す元気はすでになく、仕方ない明日にしよう、ということになってしまい、なかなか解決に至らない。

ニュースの画面に登場した消費者は、苦情をいうたびに金額が異なって、9月の請求金額が5種類あったが、どれも自分の計算より高いとぼやいていた。
いったいどうしたらこうした滅茶苦茶な勘定が出てくるのだろうか、全く理解に苦しむ。
電話顧客対応係が、行き当たりばったり計算をしているのだろうか。
もちろんこの人は消費者保護機関へ解決をまかせた。

消費者保護機関(Procon)は、電話会社の対応時に渡される protocolo de atendimento と呼ばれる対応番号をしっかりメモしておくことをすすめている。
電話会社との交渉で一向にらちがあかず、消費者保護機関へ苦情を持ち込むときに、プロトコルを伝えると、消費者保護機関は電話会社へ録音音声を請求して、消費者と電話会社のやりとりを追跡することができる。

なお、ブラジルの電話サービスを管轄する役所はアナテル (Anatel - Agência Nacional de Telecomunicações)なので、こちらへ苦情を持ち込んでもよい。

うちで使っている携帯の一つはプリペイド式なので、請求書はこない。
しかし、いわれのないサービスによる課金をされたことはある。

あまり利用しないSMS ショート・メッセージ・サービスに、英語の問題が届くようになった。
一週間たったら、週利用料金ということでR$2.99クレジットから引かれていた。
なんか変わったメッセージが届くようになったと思っていたのだが、ただではなかったのか。
過去のメッセージをたどって解約方法が見つかったので即座に解約した。
しかし、クレジットから引かれた一週間の使用料金3レアルと、それを取り戻す労力とを比較して、これは悔しいが放っておくほうがよいと結論した。

わけのわからない手数料を取りたがる銀行や、このたび司法省から釈明を求められている電話会社は、「少額だから苦情を言うのは損」という消費者心理をうまくついてボロい商売をしているのだ。

強盗が携帯なら、店も携帯で対抗 - 携帯事情三題その二

次の話は、携帯を犯罪防止に使って効果を上げている例である。

Comerciantes de MG denunciam assaltos através de aplicativo
http://globotv.globo.com/rede-globo/jornal-hoje/t/edicoes/v/comerciantes-de-mg-denunciam-assaltos-atraves-de-aplicativo/3780909/

ベロ・オリゾンテのある商店街は、強盗や押し入りに悩まされていたが、携帯電話の aplicativo つまりアプリを商店街のすべての店が共有してメッセージを送り合うようにして強盗などの被害をなくすことに成功している。
アプリの名前は明らかにされなかったが、メッセージのグループと言っているから、携帯電話のSNSの一つで、フォローを相互にしあったり共通のハッシュタグを付けてグループ化して使っているようなものだと想像する。

自分の店に怪しい者が押し入って店員を脅しているとかのメッセージを送ると、近所の店はそのメッセージを即座に受け取る。
メッセージを受け取った近所の店の人がそっと覗いて、「包丁を持った二人組がパン屋に入っている」とか、「二人組がオートバイでどこどこの方へ逃げていった」とか、情報を付け加える。

メッセージを受け取るのは商店街の構成員だけではない。
警察まで通報は届く。
商店街グループのメッセージを警察もリアルタイムで共有しているので、複数の情報が届き、情報の信憑性が高い。
190番、これはブラジルの警察(軍警察 Polícia Militar)の番号であるが、イタズラ通報に悩まされてる警察にとっては、犯罪通報が信用できるものなら即座に行動することができるので大助かりである。

ある商店街では強盗などの犯罪を撲滅し、バス停や通りの安全も確保されたと喜んでいる。
警察はこの商店街のように近所の人達が協力して犯罪監視グループを作ることを推奨している。
ブラジルは監視カメラと個人通信機器(つまり携帯)のテクノロジー機器によらなければ安全が保証されない社会になったのだ。

銀行内では携帯使用禁止 - 携帯事情三題その一

ある日のニュースで携帯電話についての記事が3つ連続で続いたが、今日のブラジルの社会状況を垣間見ることができる。
ブラジル携帯事情三題として、ここでも3つ連続で載せてみる。

最初の話題は強盗犯罪に関してである。

Proibição de celular em agências bancárias não é respeitada
http://globotv.globo.com/rede-globo/jornal-hoje/t/edicoes/v/proibicao-de-celular-em-agencias-bancarias-nao-e-respeitada/3780906/

ブラジルの多くの州や市で、銀行支店内での携帯電話の使用は禁止されている。

なぜ禁止するか。
エチケットとか電子機器の干渉とかそういった問題ではない。
銀行支店内外に分かれて連絡を取り合う、強盗団仲間同士の携帯による通信を遮断するためである。

ATMでは引き出し不可能なほどの高額の現金を引き出したい人は、銀行の出納窓口で受け取ることになる。
ブラジルの銀行では窓口にたどり着くまでがまず大変である。

最近はどの銀行支店でも、金属探知機付き回転ドアを備え付けている。
金属製品を持っている人は、それが鍵の束であっても、携帯電話であっても、めがねの金属フレームや傘の骨であっても、金属探知機を通る前にその横にある、支店の外側に投入口、内側に取出口のある、透明な箱に入れる。
銀行警備員はその金属物体をチェックする。
自分の金属預け品を受け取ったら、整理券を取ったり、直接出納窓口への行列についたりする。

銀行支店に入るのには、別に支払いをしたり引き出しをしたりする人だけでない。
だれでも入れる。
そこが問題である。
強盗一味の、標的顧客の身なり連絡役は、本来の目的をごまかすために、窓口で何か質問したりするので、警備員の疑いを招くことは少ない。

最近の銀行支店内部の構造は、さすがに表の通りから現金を受け取っている人が、ガラス越しに丸見えになるようなところはない。
しかし、たいていの支店では、出納窓口で銀行員と現金や書類のやりとりをしている客が何をしていか、行列についている人はじっくり後ろから観察することが可能だ。
だから、強盗団は客のふりをして行列に入り、高額の現金を引き出している人を観察して、身なりを音声メッセージ、テキストメッセージ、あるいは直接画像で銀行支店の外で待ち受ける強盗仲間に伝えることが楽々できる。

ニュース画像では、窓口で一万レアルとかの高額を受け取っている顧客の後ろ姿と、行列の中でボイスメッセージやテキストメッセージを送っている強盗のひとりが同じショットの監視カメラに写されてる。
この客は支店を出てから500メートル、数分のうちに強盗一味に現金を強奪された。
ブラジルの有名な犯罪、Saidinha de bancoである。
幸い監視カメラのおかげで、この強盗団は摘発された。

この日、ニュース取材グループは、銀行名も支店名も公表されなかったが、リオデジャネイロ市の4つの支店内で携帯電話を使う実験をした。
結果は、4つのうち3つでは何も注意されることはなく、取材者やその他の善意の客達は平気で携帯を使って会話やメッセージを送受していた。
ただひとつの支店で、取材者は警備員に注意されて携帯の使用を中止した。

支店内の携帯電話使用のチェックは、銀行員と警備員が責任をもって行うことになっている。
なかなか決まり通りにできないのが実情である。

どうすれば強盗被害を防げるかであるが、行列についている人々と、出納窓口の列の間についたてがあって、出納員と対応している時には隣の出納窓口の客しか見ることができない、より安全な造りの支店が存在する。
ブラジルの銀行は、そのうち教会の懺悔室のように神父さんと懺悔する信者の二人に遮断される小部屋だらけの支店になってしまいそうだ。

2014年11月28日

君はサッカーに命を賭けるか

今週はブラジル南東部の内陸州、ミナス・ジェライスの州都、ベロ・オリゾンテを本拠とするフットボールチーム双頭が光り輝くできごとが続く。

昨日2014年11月26日、Copa do Brasil(ブラジル・カップ)の決勝第二戦があり、Clube Atlético Mineiro(アトレチコ・ミネイロ)が、Cruzeiro Esporte Clube(クルゼイロ)を二戦連続で撃破して優勝した。
3日前の11月23日日曜日には、クルゼイロがあと2節を残した段階で、Brasileirão(ブラジレイロン = ブラジル選手権一部リーグ Campeonato Brasileiro の愛称)の優勝を決めている。

ブラジレイロンは、一部リーグ20チームのホームアウェーの総当り戦で、年間通じての総合勝ち点で優勝が決まる。
1位から4位までは自動的に、南アメリカのクラブ大会であるリベルタドーレスに参加できる。
反対に17位から20位までは翌年2部リーグへ降下する。

コパ・ド・ブラジルは、調べてみたらけっこう複雑で、一州あたりの参加チーム数は州の規模によって、辺境州の1から、リオデジャネイロ州やサンパウロ州の5くらいの差が付けられているが、各州選手権の上位チーム、及びCBF(ブラジルフットボール連合)の選出基準による16チームなど、合わせて86チームが参加する勝ち抜き戦である。
2013年からは、他の80チームは勝ち抜き戦を下から戦って勝ち上がり、上位10チームまで絞られるのに対して、リベルタドーレスに参加している5チームプラスCBFランキング最上位の計6チームは、シードのような扱いで、初戦で oitavas de final(16チーム戦)段階に参加する特権が与えられている。
コパ・ド・ブラジルの優勝チームはリベルタドーレスに参加できる。

両大会を比較すると、ブラジレイロンがブラジルの最重要選手権とみられており、次に来るのがコパ・ド・ブラジルとなっている。
ブラジレイロンの優勝チームがクルゼイロであり、コパ・ド・ブラジルの優勝チームがアトレチコ・ミネイロとなったのだから、ミナス・ジェライス州は大変である。
永遠のライバルである、ベロ・オリゾンテの2チームの2014年の直接対決は、アトレチコ・ミネイロの4勝3分けの圧倒的優勢なので、いくら最も権威あるブラジレイロンの優勝をクルゼイロに譲ってしまっても、ライバルに勝つことに最大の喜びを見出すアトレチコ・ミネイロのサポーターは鼻高々になるのである。

昨晩ベロ・オリゾンテの中心街は、アトレチコ・ミネイロの優勝を祝う1万人の人出で大騒ぎだったようだ。

昼のニュースでさらっと報道されたのを聞いたが、走行中のバスの窓から体を乗り出してバスの屋根に登ろうとした馬鹿者サポーターが、街路樹に衝突、落下して死亡したそうである。
空から降ってきた便器に直撃されて死亡するのは、本人に全く過失がないので痛々しいが、バスの屋根に乗りそこねて死んでしまうのは、バカな真似をした報いで同情も少なそうである。

あと、どこかのバーで祝勝中のアトレチコのサポーターのグループに向かって、多分クルゼイロのサポーターが銃で乱射したというのもあって、軽いけが人が何人か出たようである。

フットボールのプレーヤーであったら、フットボールに命をかけて頑張るのは良い。
選手でもないのに、フットボールに命をかけて、本当に命を失ってしまうのは過激すぎていただけない。
ブラジルだから仕方ないか。

2014年10月27日

洪水の後はボリビア人になる

Cerca de três mil moradores do Acre podem virar bolivianos por culpa da natureza
アクレ州住民3千人が自然現象のためボリビア人になるかも
http://g1.globo.com/jornal-nacional/videos/t/edicoes/v/cerca-de-tres-mil-moradores-do-acre-podem-virar-bolivianos-por-culpa-da-natureza/3711910/

題名を聞いただけでは意味が全くわからない、日本国土にとっては全くありえない、興味深い記事である。

ブラジルの内陸部にあるアクレ州は隣国ボリビアと国境を接する。
アクレ州の国境の町ブラジレイア Brasiléia は、ボリビア側の町のコビジャ Cobija と、蛇行する泥色の水の流れるアクレ川をはさんで接している。
Google Earthで測ると、川の幅は40メートル位である。
アクレ川の蛇行が、巾着の形になっているところがあり、袋部分はサマウマ Samaúma という、約3千人の住民が住む地区である。
サマウマはブラジレイアの一地区であり、当然住民はアクレ州民、ブラジル国民である。

サマウマ地区の住民の心配は、アクレ川の巾着の口をしばる紐がついている、細くなっている部分である。
川の流れの浸食作用が大きく、1年前河岸から10メートルも離れていた川沿いに建つ家に、水の流れがすぐ迫っている。
数年前75メートルあった巾着の紐部分の幅は80%を失い、現在はわずか15メートルになっている。
念のために見たGoogle Earthの衛星写真の撮影年月は2013年9月であるが、計測すると半島狭窄部の幅は66メートルはあるようだ。

ストリートビューの年月は2012年6月となっている。
ストリートビューをみると、たった1本のサマウマへの連絡道路の片側には住宅や商店が建っているが、家々の間をよく探すと、両側の川を見ることのできる地点がある。

次のリンクで一番細いところを地図で見る
https://www.google.co.jp/maps/place/11%C2%B000'36.8%22S+68%C2%B045'25.1%22W/@-11.0102205,-68.7569791,17z/data=!3m1!4b1!4m2!3m1!1s0x0:0x0?hl=ja
Google Map入力座標 = -11.01022049292287,-68.75697905474479

ブラジル・ボリビア国境を定める取り決めが、この町のあたりでは、「アクレ川を国境とする」となっているのだろう。
アクレ川の流路が変わってしまう、つまり大雨・大洪水があってこの狭窄部分が決壊して、川の本流が短絡したらどうなるのだろうか。
サマウマ地区につながるただ1本の道路は流されるので、サマウマは一時的に島になるだろう。
それからどのくらいの時間がかかるかわからないが、アクレ川の蛇行したカーブが形作る巾着の袋部分は、堆積する土砂により、短絡した本流から取り残されて三日月湖となり、そうするとサマウマはボリビアのコビジャと陸続きになる。

ボリビア側も領土が増えると単純に喜ぶわけがない。
登場したコビジャ市長 Ana Lúcia Reis 氏は、暑い地方なのだろう、薄いワンピースを着た、街角の雑貨屋の太った商店主のおばさんのような人だが、そのような事態が起きないように両国で解決しなければならない問題だとインタビューで答えている。
市長によると、アクレ川短絡が起きると、その下流部分に当たるコビジャ市街が洪水にみまわれるという研究結果があるそうだ。

地図をみると、ブラジルのブラジレイアより、ボリビアのコビジャの方が、立派な空港を持ち市街地も広い大きな町のようである。
コビジャ市長はインタビューではポルトガル語で話していたし、苗字の Reis (王の複数形)はポルトガル系にみえる。
スペイン語だったら Reyes となるところだ。
ニュースのアナウンサーは Cobija をコビジャと読んでいるので、当ブログでもコビジャとしているが、スペイン語読みをするとコビハとなるはずである。
国境付近ではスペイン語とポルトガル語の境界があまりはっきりしていないようである。

「将来のサマウマの領土所属はとりあえず自然の思し召し」と、レポートはのんきに結んでいる。
川の護岸工事をするのか、先手を打って狭窄部分をトンネル水路にしたり橋をかけるのか、成り行きに任せて決壊短絡した時には両国の取り決めで国境の特別条項にするのか、いずれにしても国境の二つの小さな町の問題でなく、国境にかかわること、国際河川の治水にかかわることなので両国の政府レベルで解決しなければならないように思う。

2014年10月26日

母さん、あの酒は太っ腹だね

カヴァレリア・ルスティカーナ it. Cavalleria Rusticana
「田舎の騎士道」と訳される。
イタリアの小説家 、ジョヴァンニ・ヴェルガによる小説(1880年出版)、同人による戯曲(1884年初演)、およびピエトロ・マスカーニが同戯曲に基づいて作曲した1幕物のオペラ(1890年初演)とWikipediaにある。

見たことはないが、あらすじを調べてみる。
舞台はイタリア、シチリア島、季節は復活祭の頃、北半球は春である。

兵役中に人妻となった昔の恋人ローラ Lola を忘れられず、現在の恋人サントゥッツァ Santuzza を苦しめるトゥリッドゥ Turiddu 、彼は軽薄、薄情な男だったのか、それとも粘着質の妬み深い男だったのか、ここでは問わないが、ローラとトゥリッドゥのふしだらをサントゥッツァから聞いたローラの夫アルフィオ Alfio と決闘することになる。

アリアの一つに、「母さん、あの酒は強いね」がある。
イタリア語で歌われると、Mamma, quel vino è generoso, となる。
アルフィオと決闘するはめになったトゥリッドゥが、自分が死んだらサントゥッツァのことをよろしく頼むと、人生最後の義理を果たそうという誠実な別れの言葉を母親ルチア Lucia に歌う。
まちがいなくテノールの名アリアの一つである。

「あの酒は強いね」イタリア語では quel vino è generoso というところ、vino といったらワインだと思うが、generoso って(酒のアルコールが)強いという意味があるのか。

南半球は今春だが、復活祭は遠い。
なぜ急に季節外れなカヴァレリア・ルスティカーナがここで出てきたのか。

今日2014年10月26日は、トゥリッドゥとアルフィオの決闘ではないが、ブラジル連邦共和国大統領選挙の二次投票、つまり決選投票の日である。
一次投票で誰も過半数を取れず州知事が決しなかった州では、州知事の二次投票も同時に行われる。

ひとりの候補者が演説で使っていた言葉に、"Meu governo será de generosidade, ..."というのがあって、この場合 generoso という言葉は、私の政府は「寛大な、包容力のある」という意味である。
この単語の意味で一番普通に使われるのは、人の形容で「気前がよい、太っ腹な」といったものだろう。

「酒のアルコール度が強い」という意味は聞いたことがなかったので、辞書を見る。
現代ポルトガル語辞典によると、形容詞 generoso の項は、1.気前のよい 2.寛大な 3.高貴な 4.[土地が]肥沃な 5.[馬が]堂々とした 6.[ブドウ酒が]上質の、となっていて、ようやく6番目にこの意味がでてきた。
気前の良い馬とか、寛大なワインとか、5番目と6番目は知っていないと出てこない訳語だと思ったわけだ。

選挙の神様、いやキリスト教のだったら神様は一つ、大文字で始まる Deus か、運命の女神というのもあるが、これはギリシャのものか、とにかくくだんの候補者に「寛大な」未来を与えるのだろうか、結果は今夜判明する。

ブラジル連邦共和国大統領選挙二次投票結果

2014年10月26日ブラジリア夏時間20時30分
Dilma Rousseff (PT) 有効票の51,5% 再選
Aécio Nevas (PSDB) 有効票の48,5%
熱い戦いであった。

2014年10月25日

ブラジル驚愕高金利は踏み倒すが勝ち

不良支払い者ブラックリストへ登録する通知」から3年以上経つのだが、いまだにときどき支払請求書などがうちの住所に送られてくる。
今回送られてきた振込票にびっくりしたのでそれについて書いてみよう。

どういういきさつで、この馬の骨がうちの住所を騙ったのかは全くわからないが、ここではEさんとしておこう。
Eさんは衣料品中心のデパートメントストア、ペルナンブカーナス Pernambucanas で買い物をした。
いついくらの買い物をしたのかはよくわからないが、3年前のことだろう。

「前例なき好チャンス」Oportunidade excepcionalと払込票の表題にある。
本来の負債額 R$1,351.02
負債から割引額 R$1,219.88
提案する返済額 R$131.14

どんな計算をしたらこうなるのか。
わからないことばかりだが、確かなのは負債が膨らみR$1,351.02にも達したところが、90.3%を割引するから9.7%相当額の131.14レアルを10月22日までに支払えば後はちゃらにしますよ、ということなのだ。

いくら何でもこの数字はないだろう、これが何を意味するか。
支払いが滞って借金が膨らんだ場合には、その膨らんだ金額を請求されて馬鹿正直に支払うよりは、債権者、この場合は商店を焦らしまくり、ようやく折れて、このような「前例なき好機」を向こうから持ちかけてもらうのを待っていれば、借金額はタダ同然までまけてくれる、ということである。

ブラジルにもクレジットカードだけでなく、自動車その他担保のある物品購入への融資、返済金給料天引きの融資とかいろいろあるが、ブラジル中央銀行は融資の形態が異なっても、同一条件で金利を比較できるように、Custo Efetivo Total (CET)「総合実効コスト」を、各金融機関が消費者へ提示するよう命じている。

ブラジル中央銀行のサイトに、Q&A形式でCETの説明がある。
http://www.bcb.gov.br/?CETFAQ

簡単に結論を言うと、融資を受けた時に、名目借入金額から経費や税金を差し引いた正味借入金額を返済するために、毎月均等額返済その他方式での返済金額に含まれる実効年利のことである。

つい最近ビール売り場に賑やかな騒ぎを起こしたスーパーマーケットのCartão Carrefour カルフール・カードの請求書が手元にあるので、これを見てみる。
リボ払いCETの欄をみると、540%などと、とんでもない数字が書いてある。
今月した買い物を、多分ミニマム額だけ支払い続けたケースだと思うが、1年間の利息が元金の5.4倍になるというものすごい計算である。

日本での上限金利は現在年利20%であるから、これから話すのはその上限をはるかに超える世界になるので、理解を助けるために少しワークシートのお世話になる。

年利を月利に換算する。
ワークシートのセルB1に =EXP(LN(1+A1)/12)-1 と入力する。
すっきりしたのが良いなら =(1+A1)^(1/12)-1 である。
結果は同じだ。
A1に 5.4 を入力して月利を求めてみる。
0.167297793 と出る。
月利17%である。

リボ払いでミニマム額を支払わないと、延滞ということになる。
リボ払い延滞CETは、1,080%と書いてある。
上のセルに10.8を入力すると、
0.228353876
となり、月利23%になることがわかる。

これがいかに法外な青天井利息か?

CDI(Certificado de Depósito Interbancário) 訳すと銀行間預金証書となるが、資金運用金利のひとつの指標である。
2014年9月は月利0.9%だ。
大口預金、多分10万レアルを超えるような金額を銀行のCDB(Certificado de Depósito Bancário) 銀行預金証書、まあ定期預金のようなものだが、これで運用すると月利0.9%前後利息がつくということだ。

月利を年利に換算する。
ワークシートのセルB2に =EXP(LN(1+A2)*12)-1 と入力する。
すっきりした式なら =(1+A2)^12-1 である。
A2セルに0.009と入力する。
月利0.9%は年利11.4%である。

ここが大切。
手元の余裕資金を銀行で運用すると受取利息は年利11.4%である。
実際にはこれに所得税などかかるから、正味金利はこれから20%くらい低くなるだろう。
クレジットカードで買い物をしてリボ払いをした場合の月利に到底及ばない!

銀行は間違いなく消費者の無知、不注意、勘違いやだらしなさのために大儲けしているわけだ。
だから、3年分の元利合計から90%割引しても、銀行は大して損するわけではない。
借金額はタダ同然になる、といっても、借金額が馬鹿でかく膨らむ無謀利息だから、実際にはタダ同然ではなく、「タダ同然に見えてしまうがそれでも適正な利息がかかっている」と考えて良いだろう。

そこでこの記事の命題、「ブラジル驚愕高金利は踏み倒すが勝ち」となるのだが、副作用がある。
銀行あるいは商店は支払いが90日滞った時点で、消費者の名前をブラックリストへのせる。
そうすると他の店で分割払いで買物をしたり、新たなクレジットカードを作ったりなどはできなくなる。

この副作用が怖くなければ、堂々と踏み倒し、もっと品良く言えば、債権者と返済計画の交渉をして無謀金利と戦うことができる。
なぜブラジルに上限金利がないか、多分年間インフレが数十、数百パーセントに達したインフレ時代の引きずりだと思われるが、ここで文句行っても仕方がない。
法律による保護が当てに出来ないのなら、消費者は自衛しなければならない。

2014年10月15日

2014/15年のブラジル夏時間

14/10/2014 11h43 - Atualizado em 14/10/2014 12h52

今度の夏時間は(期間は昨年の夏時間より)1週間多いが、電気節約量は少ない見込み
Horário de verão terá uma semana a mais e menos economia de energia

http://g1.globo.com/distrito-federal/noticia/2014/10/horario-de-verao-tera-uma-semana-mais-e-menos-economia-de-energia.html

上のリンクを見れば、2014/2015年夏季のサマータイムが図解でよくわかる。
以下は要点である。

夏時間入りは2014年10月19日午前0時、つまり18日土曜日から19日日曜日になる深夜0時に、時計の針を1時間進めて午前1時にする。
夏時間明けは2015年2月22日午前0時、つまり21日土曜日から22日日曜日になる深夜0時に、時計の針を1時間戻して午後11時にする。

2014/15年ブラジル夏時間の終了日は、カーニバル事項が適用される。
つまり、2015年2月の第3日曜日は2月15日で、通常年だったら夏時間終了日となるのだが、この週末はカーニバルと重なるので、夏時間終了はさらに一週間先に延ばされて、第4日曜日の2月22日になる。
カーニバルと重ならない通常である2月第3日曜日が夏時間終了日であっても、カレンダーの曜日のずれにより夏時間期間が126日になる年はあるが、2014/15年ブラジル夏時間の期間は126日で、昨季、一昨季の119日より一週間長い。

夏時間入りする州は、2013/14年と同じで、10州と連邦区、
南部3州 = リオ・グランデ・ド・スル(Rio Grande do Sul)、サンタ・カタリーナ(Santa Catarina)、パラナ(Paraná)の3州
南東部4州 = サン・パウロ(São Paulo)、リオ・デ・ジャネイロ(Rio de Janeiro)、エスピリト・サント(Espírito Santo)、ミナス・ジェライス(Minas Gerais)
中西部3州と連邦区 = マット・グロッソ・ド・スル(Mato Grosso do Sul)、マット・グロッソ(Mato Grosso)、ゴイアス(Goiás)、連邦区(Distrito Federal)
である。

なぜ電気節約料が少なくなるか。

その名のごとく乾季は雨が少ないのだが、今年は特に南東部の一番人口の多い地方でダムの貯水量が危機的と言ってよいくらい少なく、貴重な水のストックは、ある程度水力発電用を犠牲にしてまで生活用水のために節約しなければならない。
そのためには各地の火力発電所を最大発電能力で運転している。
よく知られているように、火力発電のコストは水力発電より大きいため、2014年の乾季から2014/2015年の夏の平均発電コストは、当然昨年より高くなっている。
それが昨年夏季2013/14年と比較して、夏時間の期間は長いが、電力節約料が少なくなる理由だ。

ブラジルの原子力発電所は影が薄いが、リオ・デ・ジャネイロ州アングラ・ドス・レイス(Angra dos Reis)の一つだけである。

夏時間入り一週間を切ったので、ウィンドウズパソコンの「日付と時刻の調整」パネルはお知らせを出している。

2014年10月13日

朝鮮藻玉ジュース

近所の家の庭にタマリンドの木があり、かなり大きい木なので、枝は歩道まではみ出していて、よく実が落ちている。
早朝ウォーキングの帰り道にそこを通るのだが、風の強い夜から明けたある朝、新しく落ちた実が踏みつけられていないのを確かめて、いくつか拾ってきた。

タマリンド(英:tamarind、学名:Tamarindus indica)は、マメ科ジャケツイバラ亜科タマリンド属の常緑高木。
タマリンド属で唯一の種(しゅ)である。
果実が食用になる。
別名、チョウセンモダマ。
とWikipediaに書いてある。

朝鮮?藻玉?朝鮮のマリモ?
朝鮮藻玉と書くのだろうか。

「アフリカの熱帯が原産で、インド、東南アジア、アメリカ州などの亜熱帯および熱帯各地で栽培される。」
と書いてあるので、朝鮮は全く関係ないのに、なぜこんな別名があるのか。
きっと大陸から朝鮮半島を経て日本へ紹介されたこの植物の果実は、殻を取り除いた乾燥果肉だったのだろう。
上の写真に見られるように、薄いパリパリの皮をむくと、繊維質の筋がふんだんに見られるゼリーを固めたような、中心に種を含む果肉が現れる。
これを初めて見た日本人は「朝鮮から来た藻の玉」だと思って、チョウセンモダマ、つまり朝鮮藻玉と名づけたのだろう。
別名の起源はこんなところだろう。

ポルトガル語ではtamarindoであるから、語幹は学名のラテン語と同じだ。
別名を使うと困ることもある。

タマリンドジュース -> エキゾチック、おいしそう
朝鮮藻玉ジュース -> 得体が知れない、まずそう

藻の玉のジュースなんてうまいわけがないと思うだろう。
おいしそうに聞こえても、実際のタマリンドジュースは酸っぱいもので、好みも分かれるかもしれない。

自分でタマリンドのジュースを作ったことはない。
インターネットで調べて作ってみることにした。
作り方をここに載せる。

タマリンドのジュース Suco de Tamarindo
材料
  • タマリンド 1kg
  • 水 1l
  • 砂糖好みの分量
作り方
  • タマリンドの皮をむく
  • タマリンドをお椀に入れて水を加えてふたをする
  • 冷蔵庫に一日おく
  • 少しずつミキサーにかけて種を分離してから濾して、冷凍する
  • ジュースにするときには果肉に水と好みの分量の砂糖を加えてミキサーでかき混ぜる
参考
  • 上の材料からジュース5リットルになる。
  • 種と果肉を分離しやすくするため水煮してもよい。

タマリンドと水が同量であるから、お椀に果実がひたひたより少し多めにかぶるくらいの水を加えて一日冷蔵庫でふやかした。
拾った時の写真のように、果皮はパリパリで剥がれている部分があって果実が露出していたので、犬の糞など落ちている歩道のことだから、消毒を兼ねて煮ることにした。
煮るとあら不思議、筋だらけに思えた果実がなめらかな、トマトピューレのようなペースト状になった。

これだったらミキサーにかける必要はないと思い、冷めてから網にスプーンで軽く押さえながら濾したら、種が残った。
種は種皮に包まれていて、指でひねると種がでてきた。

濾したタマリンドペーストはお椀7分目くらいになった。
テーブルスプーン3杯くらいをコップに入れ、冷水で満たしてかき混ぜてジュースのできあがりである。
酸っぱすぎると思ったら好みで砂糖を加える。
すぐ飲まないと果肉分が分離して沈殿する。

美味しい、私は好きだ。
まだ果実がかなり木に成っているから、また夜に大風が吹いたら行ってみよう。

2014年10月11日

高地と大気汚染とどっちが辛いか

2014年10月11日 中国北京から実況中継、試合前の会話である。
有利なのは何といっても勝負経験豊かなアルゼンチン
ワールドカップ2014ブラジル大会で準優勝のアルゼンチンチームの8人が今日もプレー
2008年この鳥の巣スタジアムでオリンピック優勝メンバーも何人もいる(ブラジルは3位だった)
ブラジルはぺちゃんこ状態から出直したばかりの若いチーム
実況アナウンサーや解説者は「負けても恥ずかしくない」言い訳をこれでもかと探していた。
ネイマール自身が数日前「完璧な状態のメッシには当たりたくないね」とインタビューで勝負師らしからぬ弱気?発言したらしい。

通常の親善試合だったら、何人も交代できるのだが、交代はチーム3人に制限されるばかりか、同点の場合はPK合戦で勝敗を決めるとの本気モード。
なぜなら、この試合はスーペルクラシコ・ダス・アメリカス2014、スペイン語ならばスーペルクラシコ・デ・ラス・アメリカス2014であるからだ。

気の毒なネイマールは膝に怪我しているそうでときどき脚を引きずる痛々しさだ。
前半途中まではアルゼンチンに圧倒されてボールを持たせてもらえなかったブラジルセレソンだが、ボールを奪いパスが通るようになってきた。

今日のヒーローはミナス・ジェライス州のベロ・オリゾンテのAtlético Mineiroでプレーする国内組Diego Tardelliで、1点目はアルゼンチン守備の乱れのこぼれ球をボレー、2点目はコーナーキックをヘディングでゴールした。

ネイマールはアルゼンチンキーパーRomeroと一対一の好チャンスを逃した。
メッシはペナルティキックをブラジルキーパーJefferson(この人も国内組、リオ・デ・ジャネイロのBotafogoの選手)に阻まれた。
カカは最後の15分、ロビーニョは最後の1分ほど交代して元気な顔を見せてくれた。

試合についてはこれくらいにしておき、中継で少し面白かった部分を紹介しよう。

視聴者の質問コーナーでこんな質問が出た。
「高地のプレーと大気汚染地のプレーとどちらが辛いか?」
元選手だった解説者2人は口々に「高地」と言った。

ワールドカップの南アメリカ予選は、ホームアウェー2試合の参加国総当り戦である。
ボリビアやエクアドルと当たると、ラパス(3,593 m)とかキト(2,850 m)とかで、嫌でもプレーしなければならなかったつらい思い出があるのだろう。
実況アナウンサーは、
「でも今までこんな汚染のひどいところで誰も試合したことがないでしょう?
しゃべるのには大気汚染の方がこたえますよ。」
確かにそうだ。
走るためには酸素不足は致命的だが、しゃべる商売では喉を大切にしなければならない。

北京は2008年オリンピックとは違って、わざわざブラジル-アルゼンチン試合のために数日前から交通規制や工場操業停止など命じて汚染大気浄化などしなかったからだ。
ロビーニョは数日前のインタビューで「空気がとても悪くて苦しい、まるで煙を呼吸しているようだ」と言った。
北京の大気汚染の酷さはブラジルでも広く知られることになった。

ブラジルセレソンは気温18度、快適な温度だが大気が極端に汚染された北京から、気温30度、湿度60%の高温湿潤気候、しかし大気汚染はないシンガポールへ駆け足で移動し、14日の日本戦に備える。

ここで予想しておこう。
ブラジル不利の大方の予想を見事に裏切り、スーペルクラシコ・ダス・アメリカスで宿敵アルゼンチンを大破した。
他の国相手だったら5勝するくらいの価値がある。
一応うるさ方も文句を言えない勝ち方をした。
ネイマールは悪くはなかったが膝の故障で万全でない。
シンガポールでの日本戦では、ドゥンガ監督は盟友カカやロビーニョをもっと長時間使うのではないか、先発もありうると思う。

一応データも載せておく。
Superclássico das Américas 2014

FICHA TÉCNICA

Brasil 2 x 0 Argentina

Estádio: Ninho do Pássaro (Pequim)
Árbitro: Fan Qi (China)
Gols: Diego Tardelli (27' do 1ºT e aos 19' do 2ºT)
Cartão Amarelo: David Luiz (BRA, 18' do 1ºT), Danilo (BRA, 39' do 1ºT) e Mascherano (ARG, 1' do 2ºT)
Cartão Vermelho: nenhum

Brasil: Jefferson, Danilo, Miranda, David Luiz (Gil, aos 44' do 2ºT) e Filipe Luís; Luiz Gustavo, Elias, Oscar e Willian; Neymar (Robinho, aos 49' do 2ºT) e Diego Tardelli (Kaká, aos 36' do 2ºT). Técnico: Dunga.

Argentina: Romero; Zabaleta, Demichelis, Fede Fernández, Rojo; Mascherano, Roberto Pereyra (Enzo Pérez, aos 31' do 2ºT), Lamela (Pastore, aos 14' do 2ºT), Di María; Agüero (Higuaín, aos 14' do 2ºT) e Messi. Técnico: Gerardo Martino.

まずは全額支払え、後から半額返すから

この表題はいったい何か。
借金融通のお願いだろうか。
滞った借金返済の脅し文句か。
質(たち)の悪い詐欺のたぐいだろうか。

「最強の(不屈の)金曜日」sexta imbatívelと書かれたスーパーのチラシが郵便受けに入っていた。
金曜日一日だけの特売である。
「すべてのビールCarrefourカードの利用で50%割引」
Carrefourカードとは、スーパーが顧客囲い込みのために発行するクレジットカードである。
ここだけ見れば、普段2レアルで売っている缶ビールが1レアル支払えば買えると誰もが思ってしまうだろう。
甘い。

大書した宣伝文句の横に、小さい字でこう書いてある。
「70日以内に請求書にクレジットを付与」
これはどういうことだろうか、考えてみよう。

このカードは私も持っている。
MasterCardのクレジットカードなので、カルフール以外の店でも当然使える。
普通のクレジットカードと同じように、買い物をした日から最短10日、最長40日目に支払日が来る。
わかりやすくするために、締切日直後に買い物をして、支払猶予最長の40日を得たものとしよう。
2レアルの値札がついた缶ビールを10ダース、120本今日買うとなると、通常価格の240レアルの勘定を40日後の11月20日に支払う。
そして、細かい字で横に書いてある「70日以内に請求書にクレジットを付与」というのは、40日プラス30日であるから、120レアルのクレジットは、240レアル支払った11月20日のさらに30日後の12月20日支払いの勘定請求書にようやく受け取ることができる。

40日後に240レアルまず支払え、払ったならその30日後に、120レアル分の買い物に使えるクレジットを請求書にのせることにより返還する、ということなのだ。
通常価格を支払ってビールを買えば、30日後に半額分のクーポン券をくれると言い換えてもよさそうだ。
でもこのスーパー以外の店で買い物してもクレジットは有効だから、当店のみ有効のクーポン券よりは使い勝手は格段に良い。
どうして40日後の支払い時に即座に半額分のクレジットをしないのか、お客を混乱させてまで、半額分を一か月手元で回すことができること以外にスーパーにとってのメリットがあるのか。

まず10月は「カードの利用で50%割引」の宣伝で売りまくる。
11月は注意深い客が「12月になると50%分返ってくるので11月の買い物が安くなる」心理で売りまくる。
12月は忘れっぽい客が思いがけず12月支払い時にクレジットが付いたために「おっ今月の支払いは安かった」心理で売りまくる。
スーパー経営者は「1粒で3度おいしい」を夢見ているようだが、疑い深い消費者はそうはいかないと思う。

ニュースで見るブラジルの最近の気候は、北部アマゾン河流域は毎日午後スコール、南部は前線の影響で大雨、南東部や中西部は高気圧勢力下で前線が近寄れず日照り続きである。
乾季の終わりにあたる10月は、この辺りでは1年で最も平均気温が高い月である。
高温乾燥の気候のもとではビールを飲みたくなる人は当然多い。

半額セールのビール売り場は、買い物客と買い物カートでごった返していた。
各製品の値札は、通常価格とCarrefourカード価格の二つが並んで、同じ字の大きさで書いてある。

しかし、買い物客全部が支払い方法について熟知しているわけではない。
耳を澄まして会話を聞いてみる。

まず、現金でも半額で買えると思っている人がいる。
Carrefourカードでない普通のクレジットカードで買っても半額になると思っている人がいる。
次のクレジットカード支払日に半額分を支払っておしまいと思っている人がいる。
70日後にクレジットという小さい字を見つけて、ビールの代金請求は70日後だ、30日支払猶予だと勝手に自分に都合よい解釈をしている人がいる。
よくわからないから値札の写真を撮って、話が違っていたら弁護士に駆け込むと息巻いている女性がいる。
カート一杯のビールを買って持って帰って良いものか、奥さんとか家族に携帯で相談している人がたくさんいる。
ビール売り場に群がっている客の大多数は男性だ。

今から70日といったら、ちょうどクリスマス直前だから、戻ってくるクレジットは思わぬクリスマスプレゼントだろう、と言ったら、いやきっとギリシャ人のプレゼント(presente de grego)に違いないと返された。
ギリシャ人のプレゼントという表現は、多分トロイの木馬から来ているのだろう。
もらって困るプレゼントという意味だ。
もらっても困らないよ。

控えめに説明を試みながら、したたかにCarrefourカード勧誘を怠らない店員をよそに、支払いがああだこうだと言っている人々の一人が言った。
「(35キロほど離れた)隣町から現金2千レアル持ってビールを買いに来た人がいたけれど、どうしたのだろうかね」

結局私は店の巧みな戦略に負けて、12本パックを12個都合144本を買ってしまった。

2014年10月8日

2014年スペルクラシコはワールドワイド一本勝負

スペルクラシコ・ダス・アメリカス po. Superclássico das Américas, es. Superclásico de las Américas

スペルクラシコについては2011年2012年に記事にした。
それだけ話の種があったのだ。
なぜ2013年スペルクラシコがないのか。
Wikipediaをみると、時のブラジルセレソン監督フェリポン、本名Luiz Felipe Scolariの要望によって中止したと書いてある。
ワールドカップの前年であり、2012年のような余計な面倒を背負い込みたくなかったのだろう。

2011年と2012年のスペルクラシコでは、ブラジルとアルゼンチンのチームに所属するプレーヤーのみが、ブラジル国籍チームとアルゼンチン国籍チームに分かれ、それぞれの国で1試合づつ計2試合で勝敗を決めたものだった。
今回記事にしたのは、そのやり方が変わったからであり、2011年や2012年のようなおもしろい話があるわけではない。
少なくとも今のところは、である。

数日後となった2014年10月11日、北京オリンピックメイン会場であり、その不思議なデザインで有名な「鳥の巣」スタジアムで、ブラジル-アルゼンチン親善試合が行われる。
これは全世界でFIFAが指定した日であり、クラブチームは選手の属する国籍国からの招集要請に応えて、選手をクラブの活動から解放する日である。
ワールドカップブラジル大会終了後には、10月にアルゼンチン及び日本と親善試合があることが発表されていたのだが、このアルゼンチン戦がスペルクラシコであるとの話は聞いていない。

最近の報道では、このブラジル-アルゼンチン親善試合が2014年のスペルクラシコになったようである。
そのため、2014年版スペルクラシコは、ホームとアウェーの2試合ではなく、11日の1試合だけになった。
そして、FIFAの指定日であることから、ブラジルとアルゼンチンのチームに所属する選手に限定されず世界中から招集される。

2011年と2012年のスペルクラシコには、当時まだブラジルのサントスでプレーしていたNeymarは、「ローカル版ブラジルセレソン」の一員でブラジル優勝に貢献した。
当時から世界のトッププレーヤーだったMessiはスペインBarcelonaにいたので、呼ぶことはできなかった。
現在はチームメイトであるこの二人、ネイマールとメッシであるが、2014年スペルクラシコではそれぞれのナショナルチームに分かれて対戦することになるのだ。

今回だけが変則的開催なのか、これからこうなっていくのかは全くわからない。
そして2014年スペルクラシコの3日後には、シンガポールでブラジル-日本親善試合が行われる。
二度目のドゥンガ監督率いる、カカとかロビーニョのいるドゥンガ同窓会風チームと、アギーレに率いられるメキシコ風味新生日本チームの対決、W杯までの不調どん底からミランで好調に舞い上がった本田の転身ぶりも見逃せない。

2014年9月23日

似て非なるユーロ貨とレアル貨

BBCのホームページを見たら、おなじみの硬貨の写真がある。
ブラジルの経済が最近湿っているとかの記事だろうか、と思ってよく見たら、1ユーロ硬貨だった。
背景の地図はマドリーとの地名が読める。



私はヨーロッパへ行ったことは一度もない。
だからユーロ硬貨や紙幣を手にしたこともない。

どんなに1レアル硬貨と似ているか確かめてみたく、欧州中央銀行とブラジル中央銀行のサイト、
http://www.ecb.europa.eu/euro/coins/common/html/index.en.html
http://www.bcb.gov.br/?MOEDAFAM2
を見た。



ユーロ硬貨で面白いのは、コモンサイドつまり共通面と、ナショナルサイドつまり各国面があり、ナショナルサイドは加盟国がルールにのっとった上で好きなデザインを付けて、ユーロ硬貨のバラエティを増やしている。

1ユーロのコモンサイドと1レアル、両方の硬貨で似ている点は、外側が金色の輪、内側が銀色面の嵌めこみ仕上げであること、1の数字の形と傾きぐあいである。
しかし似ているのはそこまでだ。

1ユーロ硬貨1レアル硬貨
直径23.25mm27.00mm
厚み2.33mm1.95mm
重量7.50g7.00g
組成(心)銅ニッケル
(輪)ニッケル真鍮
(心)ステンレス鋼
(輪)青銅被覆鉄鋼

1レアル硬貨の方が大型だが薄く軽いことがわかる。
特筆すべきは、その素材の違いである。

ブラジルでは銅の盗難が多発する。
人気(ひとけ)のないところにある電線・電話線などが、電柱や地下からごっそり盗まれることがあるので油断できない。
ユーロ硬貨に使用される銅がレアル硬貨には使われず、単価の安いと思われる鋼を使う理由は、きっと銅泥棒対策だと思う。
昔のインフレ時代だったら、死蔵した硬貨の金属としての価値が、日々下がる額面価値を上回れば、鋳溶かして地金にして売れば儲かったことになる。
本当にそうした人がいたかどうかは知らない。

ブラジルに現在流通する最高額面硬貨はこの1レアルであるが、ユーロ硬貨には2ユーロ硬貨がある。
realの複数形はreaisなので、2レアル紙幣には"2 REAIS"と印刷してある。
2ユーロ硬貨に刻印されているのは"2 EURO"であって、"2 EUROS"ではない。
今までeuroの複数形はeurosだと思っていたのだが、これは間違いだったのか。

欧州連合は、euro と cent について単複同形と定めているそうだ。
これによって各国語で異なる複数形の作り方によってユーロ及びセントの複数形が異なってしまうことが避けられる。
でもポルトガル語Wikiをみると、常用の呼び方では各国語の文法に従って良いとしている。
ということはeuroの複数形はeurosでも間違っていないことになる。

そして、centの単数及び複数形はポルトガル語でcêntimo, cêntimosとなり、ブラジルレアルのcentavo, centavosにはならない。
表記法もブラジルレアルとは異なり、レアルだったら R$ 1.234,50 となるところが、ユーロだと 1 234,50 € と表記する。
ポルトガル語と日本語では数字の小数点と桁区切り点が逆になる、つまり小数点=コンマ、桁区切り=ピリオドとなって、パソコンで両言語を使うときにけっこう面倒である。
そしてユーロのポルトガル語表記では、桁区切りのピリオドは使わず、スペースとなる。

1ユーロ硬貨と1レアル硬貨の違いは、大きさや複数形や百分の一補助通貨だけではない。
肝心の両硬貨の価値比較であるが、今日現在1 euro = 3,089 reais(ポルトガル語数字表記のため、三千八十九でなく、三点〇八九)となっている。

写真でいくら似ているからといって、日本で昔一時期問題になった500ウォン硬貨を使った偽造500円硬貨事件のように、レアル硬貨をユーロ硬貨の自動販売機で使うことなど絶対に無理だ。
寸法と重さが著しく違いすぎる。
ヨーロッパのど田舎を旅行して、爺さんが一人でやっているような雑貨店で、レアル硬貨を掴ませようなどとケチでさもしい馬鹿げた悪事は試さないほうが身のためである。

2014年9月19日

これは下着か、いや危ないものか

勝負用?それとも実用?超セクシーな“貼る”パンティー
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140918-00010008-dime-prod

「はかないパンティー」がイタリアより日本上陸という話である。

記事の写真を注視すると、へその左側の腰のあたりに透明なシリコンの帯があって、それが前張りを支えているようで、見えないだけで普通のfio dentalという「はくパンティー」の一種ではないだろうかと見えるのだが、そうではないのか。

「はかないパンティー」の動画が見つかった。

これを見ると、透明なシリコンの帯などはないようだ。

フィオ・デンタルとは、日本語で言うと、記事内にある「Tバック」あるいは「紐パン」を意味するブラジル・ポルトガル語である。
ポルトガルでこの用法があるかどうか不明なので、ブラジル・ポルトガル語としておく。
何しろ、フィオ・デンタルの原義は「歯の糸」つまりデンタルフロスであるからだ。

www.google.com.br
で"fio dental"を検索すると、一番上はさすがにColgate コルゲート、ご存じ歯磨きの会社だが、2番め、3番めにはさっそくLingerie - Moda Íntima(ランジェリー - 肌着)の店のショーケースが現れる。

イタリアより上陸というが、本当に左右の腰骨に支えの全くない、力学的にきわめて不安定と思われる原型は、ブラジルではカーニバルでおなじみだ。

こういうのならブラジルに任せなさい!
ということで、単純にリンクを載せよう。

https://www.google.com.br/search?q=tapa-sexo

出てきたページの検索語ボックスの下にある、"Imagens"をクリックすれば画像がたくさん出てくるので、どんなものかよく分かる。
多少閲覧注意気味であるので人通りに気をつけて。

検索語は"tapa-sexo"
一応語義など説明しておく。
ハイフンがあったりなかったりするが、複合語であるので、ハイフンを付けておく。
guarda-chuva = 雨から守る => 傘
guarda-roupa = 服をしまう => たんす
といった用法だ。

tapa-sexo = セクスを隠す => 陰部隠し、秘所覆い
となるのだが、訳語はいかがか。
よく使われる単語なら「前張り」である。
下品であることは否めないが、原語だって下品だし、ものがものだ、しかたない。

最初に引用した記事にはもうひとつ突っ込みどころがある。
「ちなみに、男性は使用できない。念のため。」

男性が使用できない理由は、物理的スペースの問題だろうか、それとも社会通念上の問題だろうか。
念のためと明記しておかないと、これを着てみたいという男性が続出する心配があるのだろうか。

tapa-sexoの画像の中に散見されるように、ひとつ突き抜けた世界のもののようだが、形状の違う男性用は存在する。

2014年9月18日

三才児よ、君はどの音を聞く

2014年9月の一ヶ月間は、第二の開局をめざすクラシック音楽のインターネットラジオ局
OTTAVA(オッターヴァ)
の試験放送が、日本標準時の午後7時から9時、ブラジリア標準時では午前7時から9時と、ちょうど12時間遅れの時差で聞くことができる。

最初の週は新しい機材でおっかなびっくりだったのであろう。
パソコンのボリュームスライダーを最大にあげても、貧弱な内蔵スピーカでは耳を近づけてようやく聞こえるような音量なので、庭で犬が吠えたり、斜め上空にある着陸航路を降下中の飛行機が通過したりすると、もうなんだかわからなくなる。

ヘッドフォンはワイヤードなので、じっくり聞こうと思ったらパソコンから離れられない、これぞ聞きたいタイミングで悪運と遭遇すると、便意と格闘という情けない状態になったりする。
Bluetoothのヘッドフォンやスピーカーなど購入する手もあるのだが、即効薬はない。

第二週になるとたゆまぬシステムの改良、機材の調整も進んだのだろう。
音圧がほかのインターネットラジオ局とだいたい同じくらいになったので、チャンネルを換えるときにあわててボリュームスライダーをいじることが少なくなった。

そういった送出音圧と音質の調整場面において、プレゼンター/ディレクターである斎藤茂氏がある日、
「今日は聞こえるでしょうか、専門的なことですが、コンプレスをかけました」
コンプレスだったかコンプレッションだったかよく思い出せないが、まあどっちでも良い。
要するに送出出力において、最大音圧と最小音圧の差を小さくなるように圧縮しているのだ。
やはり様々に異なる条件のもとで聴取しているすべてのリスナーの、可聴条件の最大公約数をとるとなると、録音された音源に何らかの加工を施さなければならないのだろう。

ダイナミック・レンジ、つまりピアニシモとフォルテシモの差が大きいクラシック音楽では、聞き方や聞く場所を選ぶものである。

私の頭で想像できる理想的環境は、犬が吠えたり飛行機が通過したりの雑音から遮音され、静音の空調装置が温度湿度を完全に制御したオーディオ専門ルームで、オーディオシステムを前にして、ロッキング・チェアとかソファでくつろぎながら聞くことであるが、かなりの人に同調してもらえるだろう。
これにはまあ人によっては、立ち上がらなくても手の届くところにビール満載の冷蔵庫や、その日の気分で選べるだけのコレクションの揃ったワインセラーや、ウィスキーボトル数本がのっかったワゴンとかが絶対欠かせないと言うかもしれない。
こんな理想的オーディオルームなら、何の手も加えずにダイナミックレンジ最大にしたままの音源でも聞こえなかったりビリビリ割れたりすることなく、快適に聞こえることだろう。

しかしこの理想的環境は、サイフの体力不足の人や、移動中にスマホなどで聴取している人に不可能であるだけでなく、全然肉体に負荷を与えずメタボ養成に最適の条件であるうえに、環境維持のためにかなり電気エネルギーを使うので、ヘルスとかエコとかロハスとかを信条にしている人には耐えられないかもしれない。

いつも疑問に思いながら誰に質問してよいかわからないことがある。
といってもインターネットの知恵袋にようなところへ投げるほどのものでもない。

昔くだんのOttavaで、正式名は忘れたが、「ペットと聞くクラシック」というのがあった。
犬猫だけでなく、インコでもニワトリでもハムスターでもイグアナでもなんでも良いのだが、ペットが喜ぶクラシックは何かという、正解を教えてよとペットに質問しても決して答えの帰ってこない難問であった。

「子犬のワルツ」や「ワルツを踊る猫」を聞かせると、この永遠の三歳児どもが「あー僕たちの曲をかけてくれた」と言って喜ぶわけではない。
犬や猫は確か高音成分の多いモーツアルトの曲によく反応する、と言われていた。
よく反応すると言っても、喜んでいるのか怒っているのか傍目にわかるものだろうか、まあ飼い主にはちゃんとわかっているのだろう。

動物の感覚は人のものとは異なる。
当然だ。
犬は通りの車のエンジン音を聞いて、誰が来たかわかって好きな人だと喜ぶ。
腕の良いメカニックもエンジン音を聞いてその好不調を判断できるとは思うが。

うるさい若者避けに、モスキート音という高音域を使うという話を聞いたことがある。
老人と若者の可聴周波数域は異なるということだ。
イヌの可聴周波数はヒトのものより高いという。
そうすると、2万ヘルツより高い、ヒトに聞こえない音、私たちが超音波と呼ぶ領域を聞いているはずだ。

録音再生技術がいくら優れていても、ヒトに全く聞こえない周波数まで録音媒体にすべて記録することなどありえない。
逆に、デジタルオーディオ技術は、そんな普通の人には聞こえないため無駄な音声情報を削除することによって、ファイル容量を小さくしている。
そうすると、盲導犬以外そんな機会はないと思うが、犬をオーケストラの前に連れて行って聞かせる音、アナログレコードを聞かせる音、デジタルCDを聞かせる音、犬にとっては全然別な音に聞こえているのではないか。

だからいつもインターネットラジオの音声をヒト以外の動物に聞かせて、どんな反応をするか観察しようとしても、彼らにとって大好きな、あるいは大嫌いな周波数帯の音がバッサリ切られている可能性はある。
犬猫をコンサートホールへ無理やり連れて行って、周波数カット無しの生音オーケストラやソプラノの肉声を聞かせたらどんなに喜ぶか、あるいは怒ったり怯えたりするか想像だにできない。

牛舎でクラシック音楽、それもモーツァルトをかけると乳牛の乳の出が良くなると言われている。
これも高音域の影響だろうか。
CD音源をスピーカーで流すのではなく、オーケストラは人数が多すぎるからカルテットのような室内楽団に牛舎で生演奏してもらったらどうなるだろうか。
高音域に集中するなら、バイオリニスト一人に来てもらっても良いかもしれない。
牛乳生産が劇的に増加してミュージシャンのギャラを支払ってなおまだお釣りが来る、なんて想像するが、さすがにこれはないだろう。

私も犬猫並みの広い可聴周波数域を持っている、サイフ容量も大きい、だからどんな環境でも聞きやすいように加工された音源でなく、できるだけオリジナル音源に近いものがほしい、という向きには、Ottavaで近い将来利用可能となる有料高音質チャンネルに期待したいものである。

複数の聴取環境、例えば家では上に書いたようなオーディオルーム、職場では役員室デスクの小型スピーカー、通勤は光岡ビュートのOttava特別仕様カーオーディオシステム、出張時にはiPhoneにノイズキャンセルヘッドフォンといったようなケースがあるだろう。
もちろん私の勝手な想像だ。

高音質チャンネルには専用イコライザーをつけて各環境で最適の設定をしてセーブして、各環境で好みの設定を使えるようになる、となったら便利でマニア心をくすぐりそうだが、技術的にかなり複雑になりそうな気がする。

そこまで音質を極めない人は、相対的低ビットレートの無料チャンネルならば、ペットと一緒に聞いていても、この気まぐれな永遠の三歳児どもが急に暴れだして困ることはあるまい。

2017年2月25日追加

その後
OTTAVA(オッターヴァ)
の高音質化は、勝手な予想と少しだけ違う方向へ進んだ。

当初高音質化として供用したニコニコ動画は、運用の仕組みのため、聴取者の多いときには帯域に合わせる調整が行われて、音質の低下が起きるらしい。
双方向性コミュニケーションとオンデマンドに存在意義を見いだす。

一方で、PrimeSeatとの同時放送では、最高でDSD 5.6MHz、別の表記をするとDSD128、つまりCDの128倍の精度で、無料で聴取することが可能になっている。

残念ながら当方の環境では、PrimeSeatが推薦する環境パラメータの、安定通信速度12Mbpsがネックになっていて、デジタル・アナログコンバーターがあったとしても、本来送出されるハイレゾリューションを楽しむことができない。

ハイレゾ音源をハイレゾ対応オーディオで、生楽器と同じ音量で再生して、ペットに聞かせたときの反応を知りたいものである。

2014年9月17日

女子高生フィルター

何日か前に見てメモしてあったのを公表したい。

危なげなゲームについての記事があって、グーグル翻訳にかけたらすごい。
なぜ翻訳したかって?
ゲームがいかにも日本的に見えたから、こういうのを翻訳するとどうなるのか、という単純な疑問からである。
グーグルのトップレベルドメインがブラジルのbrであるが、どこであっても関係ないだろう。

https://translate.google.com.br/#ja/en/%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%81%AA%E5%A5%B3%E5%AD%90%E9%AB%98%E7%94%9F%E3%81%A8%E8%A7%A6%E3%82%8C%E3%81%82%E3%81%88%E3%82%8B%E6%AC%A1%E4%B8%96%E4%BB%A3%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%80%8C%E3%82%B5%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%B9%E3%83%B3%E3%80%8D%E3%80%81%E2%80%9C%E6%83%B3%E5%AE%9A%E3%82%92%E9%81%99%E3%81%8B%E3%81%AB%E8%B6%85%E3%81%88%E3%82%8B%E5%8F%8D%E9%9F%BF%E2%80%9D%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8A%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%82%A6%E3%81%A7%E3%81%AE%E8%A9%A6%E9%81%8A%E3%82%92%E4%B8%AD%E6%AD%A2%E3%81%AB

[入力した日本語原文]
リアルな女子高生と触れあえる次世代バーチャルゲーム「サマーレッスン」、“想定を遙かに超える反響”により東京ゲームショウでの試遊を中止に
[読み方をローマ字で]
Riaruna mesukōsei to fureaeru jisedai bācharugēmu `samāressun',“sōtei o Haruka ni koeru hankyō” ni yori Tōkyō gēmushou de no shiyū o chūshi ni
「めすこうせい」って何だ。
[原文を英訳]
To stop 試遊 in Tokyo Game Show by "echo far beyond the expected" and schoolgirl real Fureaeru next-generation virtual game "Summer lessons",
「Fureaeru」は大文字で始まっているから「めすこうせい」の名前と解釈されたのだろう。
日本語ですごいのは、初めて見た「試遊」なんて同音異義語の多そうな単語も意味は一目瞭然であることだ。
漢字の特徴であるから、きっと中国語も同様だろう。
だから「試遊」は、読みは多分合っているのに律儀な機械にとっては翻訳不能なのか。

そこで簡単な実験をしてみた。

[日本語原文]女子高生 -> [読み方をローマ字で]Mesukōsei -> [英訳]High school girls
[日本語原文]女子 -> [読み方をローマ字で]Joshi -> [英訳]The girls

隠された事実を勝手に想像してみる。

実は、「女子高生」は取り扱い注意語なのである。
通常女子高生は未成年者であることが関係しているのだろう。
この語が入力されると危険物取扱フィルターがかかって、すけべな好奇心旺盛で日本語を勉強中の外国人の目から、「じょしこうせい」という正しい発音を隠匿している。
魅力的で脆い「じょしこうせい」という日本特有種を、変態外国人の毒牙から守ろうとする試みだろう。
それにしても、「女子」を「メス」と読ませるのは飛躍し過ぎではないか。
考え過ぎだろうか。
多分考え過ぎだろう。

ソニーのプレイステーションには「ぼくのなつやすみ」というシリーズがあって、子供が夏休みに田舎で一夏を過ごして少し大人に近づくという、仮想空間の少し切ないストーリーなのだが、取扱要注意の「女子高生」が登場する「サマーレッスン」は、このアダルト版ということで良いのだろうか?

2014年9月12日

英語を話すと計算下手になるぞ

タイトルは大げさ過ぎるが、そのわけは最後にわかる。

英語は「算数に不向き」 日本語など有利と米紙が分析記事 2014/9/11 10:25
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG1100D_R10C14A9CR0000/

上記記事にある例を上げてみる。

「11」は英語では「イレブン」というひとつの単語だが、日本語、中国語、韓国語、トルコ語などでは「10と1」で表す。
なるほど、これは直感的にわかりやすい。

英語で「17」は「セブンティーン」で、「7」を表す「セブン」が語頭にあるため、子供たちは「71」と取り違えやすいという研究結果がある。
そんな馬鹿な。
しかしこの点では、ポルトガル語は有利だ。
下に比較表を入れてみよう。

日本語portuguêsEnglish
umone
doistwo
trêsthree
quatrofour
cincofive
seissix
seteseven
oitoeight
novenine
dezten
十一onzeeleven
十二dozetwelve
十三trezethirteen
十四quatorzefourteen
十五quinzefifteen
十六dezesseissixteen
十七dezesseteseventeen
十八dezoitoeighteen
十九dezenovenineteen
二十vintetwenty

確かに日本語が最も論理的に、二桁の数のしくみ、つまり例えば「11は10プラス1」に忠実に従っている。

ポルトガル語の数字のしくみをみると、十五進法なのか?と思ってしまうが、英語と異なるのは16から19までで、10(dez) e 7(sete)と、十の位が先になるから、英語圏の子供のように、17を71と取り違えるということはないだろう。
その点、ポルトガル語は英語より有利なはずだ。

英語はほぼ確実に十二進法のようで、13から十進法の繰り返しが登場するが、記事に指摘してあるように、10(teen)と7(seven)が逆転してしまう。

九九を覚えるのに日本語では、例えば、ににんがしにさんがろくにしがはち、といったようにお経か歌のように軽快に記憶することができるのは、日本人一般の計算力の高さに貢献しているかもしれない。

ブラジルでもお釣りの渡し方は、例えば3レアル75センターボの買い物で5レアル出したとき、店員はお釣りを渡しながら、
80, 90, 4レアル、5レアル
と勘定する。
引き算が苦手かどうかはわからないが、足し算のみで解決しようとする。
しかしこの場合など、引き算を知らなくても困ることはない。

だからといって、英語圏の人達に優秀な数学者がいないかというと事実は全く逆の気がする。
記事にあるように、子供の計算能力にとっては、英語は多少ハンディがあるかも知れないが、こんな欠点などすぐに慣れるものだ。
そんな初歩の段階の言語の欠点を乗り越えたならば、論理で構成される数学にとって、論理的な言語であるほど有利になっていくだろう。
引用した記事でも、「子供が算数を学ぶ上では不向き」と限定付きの肯定になっている。
「学者が数学思考するのに不向き」かどうかは記事には書いてない。

とにかく、「英語を話すと貧乏になる」というわけのわからないショッキングな命題と比べて、今回のはインパクトが小さいのが残念だ。

2014年9月11日

カタランについて語らん

今日はあの9.11、日本語ならキュウテンイチイチ、ポルトガル語で言えば普通にonze de setembroから13年目の記念日である。
あの頃から比べて世界はより平和になったかというとそんなことはなく、オサマ・ビン・ラディンなき今日には、IS などという新たな脅威が、これもポルトガル語では語順が逆でestado islamicoとなるが、勃発しており、憎しみの連鎖とはたやすく消えるものでないと実感させられる。

それはともかく、今朝Ottava試験放送を聞いていたら、バルセロナ(Barcelona)にお住まいのゆかさんだったと思うが、9月11日は「カタルーニャの日」でもあると言っていた。
ポルトガル語でカタルーニャ Catalunhaの形容詞形はcatalão、カタラン(あるいはカタロン)というが、カタルーニャについて語るのにカタランとは、なんてくだらないことを言っていると、かのOttavaプレゼンター本田聖嗣氏、ダジャレ好きのピアニストに馬鹿にされそうである。

先月末スペイン留学から帰ってきた姪が、数日前、家に寄っていった。

カタルーニャ州のタラゴナ(Tarragona)は、州の最大都市で知名度も最大のバルセロナから西方へ約80キロ位にある。
東京から小田原くらいの距離だ。
ローマ帝国時代からの古い歴史のある街で、水道橋、円形劇場などその時代の遺跡は、2000年にタラゴナの考古遺跡群としてユネスコの世界遺産に登録された、とWikipediaに書いてある。
姪は観光に行ったのではなく、タラゴナの大学に1年間留学をしていた。

ブラジルとカタルーニャでの授業の難易度は、予想外に向こうのほうが、スケジュールに余裕があったようで、授業は相対的に楽だったと言った。
また予想外であるが、苦労したのは言語だったという。
彼女が悩まされたのはスペイン語ではなく、カタルーニャ語である。
カタルーニャはスペインの一部ではないか?という声が聞こえそうなので、ここではスペイン語(es. español)と呼ばず、スペイン中心部カスティーリャ地方の言語、カスティーリャ語つまりカステリャーノ(es. castellano)と呼んでおこう。
そう、「日本」の形容詞形es. japonésが、同時に「日本語」を意味するように、カタルーニャの形容詞形es. Catalánは、カタルーニャ語のことだ。
今度こそ、カタランについて語らん。

日常会話とか学校の授業までカタランが使われるので、最初の頃は何を言っているのかよくわからず、カステリャーノに言い換えてもらったそうだ。
そのうち慣れてきてだんだん話すことがわかるようになってきたというが、流暢に話せるようにはならなかったという。
「だって、カタランってあの辺でしか話さないでしょう」と彼女は言ったが、まあそんなものだろう。

カタルーニャ語の話者は約322万人(2005年)、大阪市人口266.5万 (2010年)より多い。
けっこういるものだが、話される地域は、スペイン東岸からフランスの国境付近の地中海沿岸部の一地域にまとまっている。
関東の人間が関西の大学に入って、コテコテの関西弁がわかるようになっても、だからといって話せるようになるわけでない。
大阪とか京都とかより狭く区切ればなおさら違いにうるさい関西弁であるが、あの辺でしか話さない言語をうまく話せるようになるのは労多く益少ないのと同じようなものだろう。

方言レベルと言語レベルの違いがあるではないかと言うが、カスティーリャ語、ポルトガル語、カタルーニャ語の違いなどは日本のある地方の方言と共通語の違いより小さいと思ったりするのだが、どうだろうか。
イベリア半島の地図をみると、真ん中にでんと居座るスペインであるが、カスティーリャと付随する地方を中心とすると、西側の一片はポルトガル語を話すポルトガル、東側の一片がカタルーニャ語を話すカタルーニャとバレンシア、北側にはバスク語のバスクと、カスティーリャ語以外の言語を使う地帯に囲まれれている。

今日11日からちょうど一週間後の2014年9月18日には、スコットランドの連合王国からの独立の賛否を問う国民投票が行われる。
どうもこれまでと様相が異なり、独立推進が過半数を取りそうになっているので、中央政府はスコットランド詣でに慌てふためいている最中だ。

バスクは最近は平静になっているようだが、過激な独立運動がよく起きたし、カタルーニャもカスティーリャを中心とする(こう呼んでよいかわからないが)スペイン本体に、フットボールでのブラジルとアルゼンチンに匹敵する強烈な対抗意識を持つ。

連合王国内だけでなく、ヨーロッパ各地にあるこれら独立の意気軒昂な地方は、18日の結果次第では大きな独立の波を引き起こす可能性があり、成り行きが注目される。

2014年9月7日

スペイン語は赤ちゃん言葉、なわけがない

昨夜、新生ブラジル・セレソンの対コロンビア親善試合があった。

夜、外出から、そろそろ深夜12時に近いころ帰ってきて、ああ今夜ブラジルの試合があった、と思い出してテレビをつけたら、後半42分位だったと思う。
それまで緊迫の守り合いか、気の抜けたダレ試合かはわからなかったが、0-0のスコアから、ワールドカップブラジル大会コロンビア戦で骨折したブラジル唯一のスター、ネイマールの因縁のフリーキックで、コロンビアの壁の上空をクリアしたボールはコロンビアゴールの右上隅に突き刺さった。
再登場のDunga監督とか、昔の名前で出ています状態のRobinhoとかのため、新生セレソン・ブラジレイラという気分には遠いのではあるが、再起に向け、着実なスタートを切った。

さて、日本ではどうかというと、
アギーレ監督激怒!長友&本田にも容赦なし「もう忘れたのか」
http://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2014/09/08/kiji/K20140908008891030.html
を見た。

しかし、この記事は惜しい表現がある。

「練習中は「バババ(行け)」「べべべ(見ろ)」。
絶えずスペイン語で大声の指示が飛ぶ」

メキシコ人監督であるから、スペイン語を話して当然だ。
でもこれは、
Va! Va! Va!
Ve! Ve! Ve!
だろうから、
「バババ(行け、行け、行け)」
「べべべ(見ろ、見ろ、見ろ)」
と書いてくれないと、
バババ = 行け
べべべ = 見ろ
何だ、スペイン語は赤ん坊言葉ではないかと勘違いする人が出そうである。

さて、確か二代前のの日本代表監督はブラジル人のジッコ、この名前もZicoであるからズイッコといったほうが原語に近いと思う。
日本人にとってジッコのインタビューは、「アシュケー」が印象に残っているようだったが、これは当然
"Acho que ..." = "I think that ..."
で、使用頻度の高い表現である。

しかし、彼が監督の時代には、アギーレ風に、でもスペイン語ではなくポルトガル語で、
Vai! Vai! Vai!
とか
Vê! Vê! Vê!
とか、ただの一回も叫ばなかったのだろうか。

それとも、日本人は元監督の口癖を、「もう忘れたのか」

2014年8月30日

ブラジルではTOEFL 660点もらくらく

少し調子の良すぎるタイトルで始まるこの記事は、最初に断っておくが、息子の自慢話ではない。
親馬鹿の鼻持ちならない記事にみえるかもしれないが、純粋に英語学習環境について考えようとした結果である。

ブラジルの連邦大学の一つに学ぶ工学部の学生の息子が、大学でTOEFL ITPの試験を受けた。
TOEFL ITPとは、ETSという団体が運営する、英語圏の学校へ留学を希望する学生の英語力を測る試験であるTOEFLの一種で、教育機関や企業など団体がその構成員つまり学生や従業員などにまとめて受けてもらう試験だという。
TOEFL PBTの過去問を利用しているので、初見で挑めば難易度は同じはずである。

TOEFL ITP Score Reportという成績表を見た。
トータルスコア663点とプリントしてある。



調べてみると、677点が満点であるから、高得点であることは間違いない。
TOEFLのサイトを見ると、Common European Framework of Reference for Languagesという基準でC1, Proficient User — Effective Operational Proficiencyとなっている。
巷の換算表を見ると、英検1級、TOEIC Aレベル860-990点、国連英検A級以上に相当するようである。

正直な話、息子がどんなふうに英語を習っているかはあまり注意してみたことはなかったので、生まれて初めて受けた公的な英語試験で一気に最高クラスの点を取れるものだろうか。
そこで、はるか昔に中学生の時に英検3級を取って以来、公的な英語検定を受けたことのない親つまり私が、二世代間の英語学習環境の違いを考えてみた。
この比較では、二つの独立要因、次の表の1-時代と2-国があって、これは分離できないが、公式な分析ではないから仕方がない。

項目親の環境子の環境
1 時代昭和平成
2 国日本ブラジル
3 母語日本語ポルトガル語
4 学校での英語履修中学・高等学校の6年間基礎教育5-8年、中等教育1-2年の計6年間
5 学校外での英語履修英語塾・英語教室・受験予備校英語塾・英語教室・受験予備校
6 音声学習教材テープ・レコード・ラジオCD, DVD
7 学習機器テープレコーダー・ラジオパソコン
8 副教材英語の本を購入か借用インターネットからダウンロード
9 教材以外の英語音声洋楽のレコード、CD、洋画のビデオを買うか借りるインターネットからダウンロード・再生

1 時代について
昭和といっても長いが、1970年台と言い換えても良い。
もちろんブラジルには年号はないのだが、2000年代後半から現在に至るくらいの期間、英語の勉強をしている。

2 国について
生まれ育ち英語を学んだ土地がどこであるか、である。

3 母語について
母語が何であるかは、英語学習において極めて影響が大きい。
これを今読んでいる人は、日本語が母語である可能性大だから、日本語の発音特性についてはよくお分かりだろう。
ポルトガル語であるが、簡単に言ってしまうと、lとrの区別がある、bとvの区別がある、cとsの区別がある、d, g, j, zの区別がある、そんなところだろうか。
これらポルトガル語子音の体系は、英語のリスニングを容易にしてくれると思われる。
英語のthにあたる子音はポルトガル語にはないが、日本語話者が苦手とするlとrを難なく区別できるのは大きい。
ポルトガル語はインド・ヨーロッパ語族のイタリック語派、英語は同語族のゲルマン語派ということで、まずまず近縁な言語といえる。
英語の文法はポルトガル語より単純であり、読み方・綴りは違っても両言語で似た単語は非常に多い。

4 学校での英語履修について
公立学校での英語の履修年数が同じ6年間というのは、なんとなく感じていた予想に反していておもしろい。
日本の学校教育における英語への入れ込みと対比して、ブラジルの英語履修年数はもっと少ないような気がしていたからだ。

5 学校外での英語履修について
学校外で英語履修ができる場所といえば、時代と国を超えて英語教室が栄えている。

6 音声学習教材と7 学習機器について
繰り返して聞きたいとき、テープでも少しだけ巻き戻せるが、もっと飛ばして前のポイントにアクセスをするときなど、テープとCDではその操作性の違いは大きい。
ブラジルでもテレビの教育番組はあるのだが、日本の放送の大きな特色としてかなり多数の言語に〇〇語教室があって、印刷テキストも出ていた(いる)ことは特筆ものである。

8 副教材と9 教材以外の英語音声について
これについては、国の違いより時代の違いが大きな要因である。
つまり、図書館では継続して借用できないので、本やレコードを購入するしかなかった昔と、たいていのものはダウンロードやストリーミングで無尽蔵に近く手に入る現在との差は絶大である。

以上は日本育ちの親とブラジル育ちの子の英語学習環境の違いである。
ブラジルでは、子供を放っておいても英語ができるようのなるのかと、読者は早とちりされるかもしれないので、息子の英語学習の個人的要因を書いておこう。

ブラジル公立校の英語教育に一抹の不安を持っていた親は、いつか子供を英語教室に行かせようと思っていた。
無理やり英語教室へ通わせるのは効果がなさそうに思えたので、子供が自発的に興味を持ってくれるのを待った。
12歳のころ、ゲームをやるのに英語が必要だとの訴えで、動機としてはあまりまともに思えないがまあよかろう、好きなことに絡めて興味を持ってくれて幸いだ、と英語教室に入れた。

親は何を思ったか自分が小学生の時に、英語教室へ通い始めたのであるが、家から遠かったので何ヶ月かでやめてしまった。
そこでもちろん数十年前の親自身の挫折を反省して、すぐに歩いていける距離のところにした。
1時間授業週2回であり、日本の学校の英語授業週間コマ数と比較して少ないように思えたのだが、結局4年間通ってIntermediateを経てAdvancedまで進んだ。
英語教室の授業料として4年間に4千5百レアル支払ったのが唯一の教育費用(書籍学用品費を除く)だった。

ここで重要な環境の違いを指摘したい。
日本は周知の通り、ゲーム機やパソコンのゲームの一大生産地であり、そのために日本語で遊べるゲームがふんだんにあるから、あえて英語のゲームを求める必要などない。
ブラジルは今日でこそスマートフォンなどで遊べるゲームが量産されているが、当時は国産の、つまりポルトガル語原語のゲームなどほとんどなかった。
そのため子供がゲームをするために英語を習得したいという、非常に強い動機を形成することができたといえる。

英語への興味は衰えず、ゲームより広範に渡っていった。
その一つがロックである。
ポルトガル語で歌うブラジルのバンドにはあまり興味を示さず、ロックといえば英語ということで、ギター弾きと両翼でインターネットを探求していった。

大学へはいってからは、数学・物理・専門科目のテキストをインターネットに求めると、必然的に英語の文献にたどりつく。
合法か違法かは判断できないが、ずいぶん専門文献をダウンロードしているようである。
最近、講義を公開している欧米の有力大学が増えてきている。
彼は英語で話される講義をよくパソコンで聞いている。

ここでも先のゲームに似た環境の特異性がみられる。
自国語ポルトガル語で満足できるコンテンツが少ないので、インターネットで容易に入手できる英語の講義を聞くことになる。

忘れてはならないのが、ビデオコンテンツである。
日本制作のアニメなどは、日本語会話に英語字幕がついたものなどが出回っている。

こうしてみるとブラジルで母語コンテンツが少ない環境のため、必然的に英語コンテンツに親しむようになったことが彼の英語上達に役立った。
まあぼんやりインターネットでさまよっているだけでは、英語の上達も覚束なかったと思われ、興味を継続することがいかに大切かわかる。

結論に進もう。

現代ブラジルの、インターネットのある環境は、子供の英語教育に最適な場所である。
ポルトガル語の発音体系が日本語のものより、英語のリスニング・スピーキングに有利である。
ポルトガル語コンテンツがあまり充実していない状況で、英語コンテンツを必然的に求めるようになる。

英語を学ぶなら英語を話す国、というのは当然の結論であるが、それが唯一の道であるわけではないのだ。

最後に息子の言葉を、
Graças a internet = 「(好成績は)インターネットのおかげ」

2014年8月15日

航空機事故と大統領選挙

久しぶりのブログエントリーが、航空機事故であるのは悲しいことだ。

2014年のブラジルで、ワールドカップの次の山といえば、10月の総選挙である。
投票は任意でなく、ブラジル国民の義務である。
だから誰もが投票で意思表示をしなければならない。

注目の中心は、なんといっても共和国大統領選挙である。
ブラジル連邦共和国大統領は、国民の直接選挙で選ばれる。
アメリカ合衆国のような複雑なしくみの選挙ではない。
ブラジル全土で過半数をとった候補者が大統領になるというだけだ。
非常に単純である。

大統領選挙と言っても、大統領と副大統領はセットになって(chapa シャパ=候補者団)、別々に選ぶのではない。
その点はアメリカ合衆国と同様だ。
その大統領選挙レースの現在まで、いや昨日までのポジションは、
  1. Dilma Rousseff (PT 労働者党)現職共和国大統領 40%台
  2. Aécio Neves (PSDB ブラジル民主社会党) 上院議員 30%台
  3. Eduardo Campos (PSB ブラジル社会党) ペルナンブコ州知事 20%台
  4. 以下まだ数名いるが略す
得票率は非常に大雑把な数字で書いてある。
一次投票で過半数を得る候補者がいない場合には、上位二者で決選投票が行われる。

一昨日火曜日の夜8時半のニュースで、大統領候補者インタビューがあって、3位につけているエドワルド・カンポス候補者の日だった。
彼はブラジルの北東地方(nordeste)の有力州ペルナンブコ州(Pernambuco 略称PE)の州知事で、支持率実に80%を誇る、評判の良い政治家であった。
ペルナンブコ州レシフェといえば、6月のワールドカップで、コートジボワールとの日本の初戦があった州都である。
ペルナンブコ州や北東地方ではよく知られた人気政治家であっても、南東地方(sudeste)をはじめとする他の地方での知名度は今ひとつであるのが、3位に留まっていた理由の一つであろう。

選挙に容姿を持ち出すのは良いか悪いかはともかく、大統領となれば貫禄というか、やはり格好良いほうが国際会議など列国代表が一列に並んで記念撮影というような場面で注目を集めるから、邪道と言うかも知れないがけっこう役に立つ特質と言ってよいだろう。
その点エドワルド・カンポス氏はほんの少し太めではあるが、申し分ない好男子であり、わが妻などこれまで名前すら知らなかったのが、インタビューの好印象もありいっぺんに気に入ったようだった。
夫人は美人で、晩餐会に出たら夫妻ともども容姿が映えると思われた。

ここまでエドワルド・カンポス氏についての記述が全部過去形になってしまうのは、昨日の航空機事故のためだ。

昨日、2014年8月13日10時ころ、リオデジャネイロからサンパウロ州の港町サントスのサントス空軍基地-46.298889,-23.929167,0へチャーター機で移動中のエドワルド・カンポス候補者、秘書2名、カメラマン2名(スチルカメラとビデオカメラ - 前者のカメラマンはfotógrafo、後者のカメラマンはcinegrafistaとポルトガル語で呼ぶ)、操縦士及び副操縦士合計7名を載せたセスナ機(Cessna 560 XL)は、悪天候のために着陸せず滑走路上空を再上昇して左転回した後に、住宅・商業地域に墜落、爆発した。
墜落する前にすでに火を吹いていたという複数の証言がある。
搭乗していた7名は即死、地上にいた人は10人ほどけがをした。
地上の人に重傷者はいないようである。

事故発生2時間後までは情報が錯綜して、死者については未確認で、搭乗者が救急車で運ばれているという楽観的な印象だったが、その後搭乗者全員死亡が確認されてからは一気に重大さが増した。

情報がスムーズに出てこない事故直後には、頭のおかしな自称証人が出てきた。
あるニュースにインタビューされた証人は、estivadorと称したから沖仲士、「爆音を聞きつけて私の建物から出て駆けつけた」というので、港町だから沖仲士の建物があるのか、地図では港から少し離れているようだが、と思ったが、まあここまではよかった。
「現場につくと直にエドワルド・カンポスをみつけたがもう事切れていた、まぶたを開けたらあの緑色の目が見えたから間違いない」というくだりで、これはおかしいぞ、と感じたら、レポーターもおかしいと思ったのか、あるいはディレクターが差し止めたのかは分からないが、すぐにその証人のほら話は切り上げられた。
ネルソン・マンデラの葬儀のめちゃくちゃな手話通訳を思い出してしまった。
出たがり・目立ちたがりの病気なのだろう。

その後、墜落・爆発は非常に凄まじかったと報道されている。
報道サイトg1.globo.comで中心地とされている地点は、-46.32643709169344,-23.95924228840778,0であり、Google Earthをみると建物が密集している地域である。
爆発のためだろう、深さ3mの大穴が地面に開いたという。
機体の破片や遺品がみつかるのが15軒ほどの地域にわたり、連邦警察の鑑識官、空軍や民間航空の事故の専門家50名余りが消防と共に現場に入り、機体や遺品を収集しているが、搭乗者の遺体は散乱して身元確認が困難で、現地に向かった候補者のかかりつけ歯医者による従来法の鑑定だけでなく、結局親族のDNA鑑定を使うという。
ブラックボックスは回収され、ブラジリアで解析に回される。

Dilma共和国大統領は3日間の喪を宣言し、選挙運動は一時中断されて、他の候補者もサンパウロに向かった。
通夜と葬儀は候補者の地元レシフェで行われるというが、まだ遺体の収容と身元確認に手間取っている異常な状態が続いている。

副大統領候補のMarina Silva氏(この人は女性)も、エドワルド・カンポス氏と共に政治集会に参加するために、サントスへ移動する必要があった。
当初エドワルドと同じチャーター機で移動する予定もあったのだが、実際は通常の商用便を利用したので今回の難を免れることができた。

アメリカ合衆国の大統領と副大統領は、出発地と目的地が同一であっても決して同じ便を利用しないと聞いたことがある。
不慮の事故やテロに備えた危機管理である。
今回のブラジルの事故であるが、まだ大統領候補者の段階だったので、そこまでの厳密さは誰も求めなかったのだろう。

簡単にブラジルの大統領選挙のゆくえを見よう。
日本の選挙管理委員会にあたる組織はブラジルでは選挙裁判所(Justiça Eleitoral)であるが、エドワルド・カンポスの属するPSBを中心とする政党団(coligação)は、候補者死亡のため別の候補者団を結成するのに10日の猶予を与える、という決定をした。

  1. 副大統領候補であるマリナ・シルバ氏を大統領候補として、組になる副大統領候補を選定する
  2. 副大統領候補であるマリナ・シルバ氏はそのままに副大統領候補にとどめて、組になる大統領候補を選定する
  3. 立候補を断念する

ニュースでは以上の3つの選択があると言っていた。
PSBを中心とする政党団は8つほど独立政党が集まっているが、政党団の合意によればどの党も候補を出せるという。
マリナ・シルバが立候補を断念して、全く新たな大統領候補・副大統領候補を出すというオプションもあるのかもしれないが、触れられなかった。

実はブラジルの全国的知名度では、エドワルド・カンポス氏より、マリナ・シルバ氏のほうがずっと高いのだ。
彼女はDilma共和国大統領の前任であり同じく労働者党のLula大統領時代に環境大臣を経験しており、メディアでの露出度は非常に高く、言動が注目される存在だった。
しかも、前回の大統領選挙ではルラやジルマと決別して立候補して、決選投票には進めなかったものの、20%位も得票した。

しかし、マリナ・シルバ氏の知名度を活かした候補者団にすんなり決まるかどうかは未知数である。
マリナ・シルバ氏本人が立候補継続意思発表をしていないことがまずひとつである。
マリナ・シルバ氏は、今回のエドワルド・カンポス氏とのペアを組むに当たり、昨年11月にPSBに入党したばかりの、いわば党では新参者である。
外様のマリナ・シルバ氏の大統領候補者への昇格をよく思わない、うるさい古株にあたるような勢力がPSB内部にあるかどうかは知らないが、撹乱要因ではある。

とにかく、日本だと、「弔い合戦」という言葉が使われる状況である。
選挙の行方がますます予知不能な局面にはいった。

エドワルド・カンポス氏は1965年8月10日生まれ、4日前の日曜日は父の日で、家族に誕生日と父の日を同時に祝ってもらったばかりである。
その日に49歳になったばかりで、頂点に立とうという政治家としては若い。
9年前の8月13日には、同じくペルナンブコ州知事であった彼の祖父が死去している。

最後に事故の被害者とその家族にはお悔やみ申し上げる。

2014年7月12日

ブラジル人は決勝どちらを応援?

ブラジル人でも覚めた人もいれば浮かれた人もいて、人によって反応は異なるが、一種の熱病の流行のようなワールドカップは3位決定戦と決勝を残すところとなった。

決勝の組み合わせは、ブラジルを完膚なきまで打ちのめして休養十分のドイツと、120分プラスPK戦を戦いぬき、休養日が一日少ないアルゼンチンである。
リオデジャネイロ市のマラカナンスタジアム(Estádio Maracanã)には、7万4千人の観客動員が予想されている。
7万4千人のうち中立の人をのぞいたら、どれだけがドイツ側でどれだけがアルゼンチン側なのだろうか。

報道をみると、2014年7月13日、日曜日のリオデジャネイロ州内には、州観光局によると10万人のアルゼンチン人が滞在すると予想されている。
そのうちどれだけの人がホテル・ペンション・ユースホステルなどの屋根のあるところに泊まるのか、キャンプサイトでキャンピングカーやテントで夜を過ごすのか、それともなんの準備もせずにやってきて、バーの前の舗道上とか海岸とかで、野宿というか明け方の仮眠をするのかはわからない。
ちなみに別報道では、ドイツ人は2万人とのことだ。

砂糖をめざすアリの大行進のように、陸路を運転して集結してくるアルゼンチンサポーターを収めるため、州観光局はいろいろな手を打っている。
フットボールと同様ブラジルの華である、カーニバル、それもリオのカーニバルの会場であるサンボドロモ(Sambódromo)が、キャンプ用に解放された。
キャンプだけでなくパブリック・ビューイングも行われるようで、7万人が集まる予想と報道された。

Petrópolis, Niterói, Cabo Frioなどの近隣の観光地へ客受け入れを依頼している、と記事は述べている。
Buenos Aires - Rio de Janeiro間は、2,687km、35時間のドライブと、Google Earthは示している。
金曜日の夜にブエノスアイレスを発ち、交代で運転しながら走れば、日曜の早朝にリオデジャネイロに着く計算だが、勢いに任せなければくじけそうな強行軍だ。
アルゼンチン国境の町ウルグアイアナ(Uruguaiana)では、入国するアルゼンチン人が国境のブラジル入国管理で行列を作っている。
すでに何人かのフーリガンが入国拒否されている。

昨日のニュースでドイツの、確か選手だと思ったが、ブラジルにエールを送っていた。
当然だろう。
ブラジルが百年忘れられないのと同じで、ドイツからしてみれば百年は思い出しては得意になれる貴重な経験を、ブラジルチームからもらったのだ。
要するに、
「ブラジルの皆さん、私たちはあなたたちと連帯します。あなたたちの永遠のライバル、アルゼンチンを(『こんなにいい目をみさせてもらったあなた達と同様に、そうすれば南米二巨塔制覇なのだ』と本当は言いたいのがここはじっとこらえて)叩いてやりますから、アルゼンチンの大応援団に負けない応援お願いね。」
と言いたいのだ、と想像する。

アルゼンチン-オランダ戦では多数のブラジル人がオレンジ色のシャツでオランダを応援して、アルゼンチンと比較して圧倒的に少ないオランダ本国のサポーターを助けていた。
敵の敵は味方ということで、アルゼンチンの対戦相手ならどこでも無条件で応援する、最大のライバルに優勝トロフィーを持っていかれるのだけは絶対許せない、と思うブラジル人は多いだろう。
リオデジャネイロで大騒ぎしているアルゼンチン人集団がしゃくにさわる、本当は自分たちがここで楽しむはずだったのに、という理由でドイツを応援しようとする人がいても当然だろう。

TVニュースで最新のNeymarインタビューがあった。
彼はFC Barcelonaの僚友MessiとMascheranoのよしみでアルゼンチンを応援すると発言した。
ネイマールがそう言うのだったら、私も普段のライバル意識は横においといて、今回だけはアルゼンチンを応援しようか、と思う人がいるかもしれない。

アルゼンチンのサポーターの一人はこう言った。
「(決勝の相手が)ブラジルだったら最高だった。南米決戦だ。でもあなた達(ブラジル人)は出られなかったからね。すべてのラテン・アメリカ人の復讐をするぞ。」
ポルトガル語に書かれた文章で読んだので、口調が同情混じりか、皮肉混じりか、淡々としていたのかは不明だ。

南米開催のワールドカップで欧州勢に優勝されてしまうという初記録は作りたくない、という感情を持つ人もいるだろう。
普段はライバルでも、優勝トロフィーを海の向こうへ持っていかれるより、陸続きのところにある方が近くて良いと思うかもしれない。

というわけで、ブラジル人がどちらの応援に回るのかは予言できない状態だ。
アルゼンチンのライバル視は、ペレとマラドーナの舌戦が続くように伝統的な習性であることを重視して、ドイツ応援8割アルゼンチン応援2割とみるが、実際はどうなるだろうか。

神よ見応えのある決勝戦に祝福させ給え!
と祈るのも少しはばかられるかもしれない。
ローマ法王 Papa Francisco はアルゼンチン人である。

2014年7月9日

歴史に記憶される夜

2014年7月8日、ミナス・ジェライス州ベロ・オリゾンテ、ミネイロン・スタジアム(Estádio Mineirão)におけるブラジルの歴史的大敗(1-7)から一晩過ぎた。
昨日のテレビ中継解説やニュースで、どのような表現をしていたのか、書き出してみた。
以下がすべてではないだろうが、思い出す限りこのような単語が使われていた。
動詞・形容詞で使われる場面もあったのだが、全部名詞形にしてある。
訳は現代ポルトガル語辞典から抜き出した。

tristeza 悲しみ・悲哀(寂しさ・消沈・陰気)
decepção 失望・期待はずれ・幻滅・落胆(不愉快)
humilhação 屈辱・恥・不面目
vexame 屈辱・不面目
colapso 崩壊・危機
sofrimento 苦痛・痛み・苦悩(忍耐・あきらめ・不幸・災難)
massacre 惨殺・虐殺
vergonha 恥・羞恥・恥辱・不面目
mágoa 悲しみ・苦痛(不愉快・不満)
atropelo 踏みつけ・押し倒し・苦痛


試合中に花火を上げるのは自チームが得点した時であるが、怒涛の10分間が過ぎるころからは、もうどうでもよくなったのか、このままでは花火が余ってしまうと思ったのか、ドイツのゴールでも花火が炸裂していた。
テレビ中継では、後半ブラジルサポーターもドイツのゴールに拍手していた。

試合後に1.5キロほどのところにあるスーパーマーケットまで歩いて出かけた。
通りのバーはもちろん祝勝の大騒ぎとは程遠かったが、そうかといって沈痛の重い雰囲気からも異なり、いつものように音楽がかかって一見普通の夜のような感じで、報道によるとサンパウロやクリチバでみられたらしい放火略奪のような物騒な事件は、この地方都市では起きることもなかった。

その仏系スーパーマーケットで見たのが次の写真である。

verde e amarelo 緑と黄色の飾りはあちこちにみられるが、トイレットペーパーの特別バージョンが出ていた。
トイレで用を足すたびにブラジルの応援をするためか、本来の用途とは違うがデコレーションに使うためかはわからない。

よく見ると下半分はきれいに国旗のデザインになっているのだが、上半分が崩れている。
店員が売れた分を補充するときに、デザイン通りに並べるのが面倒になったのだろう。

これからワールドカップ関連商品の売れ行きはどうなるのだろうか。
まあトイレットペーパーなら、セレソン敗退でも不良在庫になってしまう心配はないだろう。

一夜たってみると、あの敗戦の現実感が薄いのだが、インターネットやテレビをみると、歴史的事件(と言ってよいだろう)は重い現実である。
たぶん多くのブラジル人が感じているだろう、あれは夢ではなかったのかという非現実感は、徐々に数十年たっても語り継がれる事実に固まってくるのだろう。

セレソンの優勝をブラジルで一番切望していたのは、共和国大統領を筆頭とする現在の政権であったと思う。
ワールドカップで無駄金を浪費しているため保健・教育の予算が少ないという政権批判を一気にかわせるからだ。
デモはどこへ行った?というテーマで書こうと思っていたのだが、書くまでもなくすぐに戻ってくるかもしれない。

個人的には抗議運動デモに同感するところが多いので、理想的には決勝でアルゼンチンとあたって2-1で惜敗して現実に戻るというパターンが最善の未来と思っていたのだが、実現した現在は全く異なってしまった。
記事アップ後に起こる準決勝のもう一戦の結果で、6月12日の3位決定戦の相手が決まる。

心配なのは当の選手たちの精神状態である。
このわずか3日間の精神ケアと休養で復帰できるだろうか。
ここはショック療法、ライバル意識を利用するのだ。
アルゼンチンとあたり、永遠の、宿命の、その他無数の最大級の形容詞をつけたライバルとの一戦になり、一矢を報いて、これまでの数十年の不運を一気に集めた昨夜の後遺症から早く立ち直ってほしいものだ。
負けたら傷口に塩を塗ることになる危険は承知であるが、3位決定戦の相手はアルゼンチンであるべきだ。

ああそれでも、クラシック音楽番組でハイドン「神よ、皇帝フランツを守り給え」弦楽四重奏曲第77番『皇帝』第2楽章がかかるたびに、これからはF1のシューマッハと共に、セレソン・アレマン(ドイツ選抜)を思い出すことになるのだろう。

2014年7月8日

W杯国旗路上ペイントと車デコ

2014年ワールドカップブラジル大会もあと4試合を残すところまできた。
ここまで残っている4チーム、ブラジル、ドイツ、アルゼンチン、オランダと欧州2、南米2と分けているが、すべての国はあと2試合を戦い、その勝負結果で、
勝勝 優勝
勝負 準優勝
負勝 3位
負負 4位
と順位が決まる。

準決勝(Semifinal)でブラジルは、Neymar及びThiago Silvaという攻守の要をけがとイエローカードで欠き、欠員なしのドイツに挑むことになってしまった。
絶対的強さを感じさせない今回のセレソンは、これまでもチリとのPK戦とか、ネイマールの負傷退場とか苦しみながらすれすれで勝ち残ってきている。
安心して見ることができないのがこのセレソンの特徴といえようか。

少し写真をのせてみよう。


Bar do Japão? 日本のバー?
近所の街角のバーなのだが、日系ブラジル人の経営かもしれないが、多分主人のあだ名がJapão(読みはジャパンあるいはジャポン)というのだろう。
Japãoというあだ名のブラジル人であるが、あちこちにいて、血筋が全然日本と関係なくても目が細いとか、あるいは全く不可解ではあるのだが、外見が日本人に似ていないのにJapãoと呼ばれている人もいる。
そしてこれらのJapãoさんであるが、多分このあだ名が気に入っているのだろう。
Japãoと呼ばれることが嫌だったらわざわざ商売の屋号に使うことはないからだ。
もちろん、商売で誠実であることは、日系ブラジル人の多く住む地域では知られていることで、そのイメージにあやかろうという商売気も入っているだろう。

店の前の舗道のペイントまで念が入っているが、残念ながら絵が下手である。
2014年6月8日撮影


特に変哲もない普通の住宅の、塀とガレージの扉に描かれた、ブラジル国旗を背にする大会マスコット Fuleco(フレコ)である。
前のより絵がうまいなあと思ったが、写真に写っていない玄関入口横の看板を見たら、ペンキ塗り職人の家であった。
2014年6月8日撮影


ブラジル国旗の色といえば、verde e amarela 緑と黄色、さらに2色付け加えるのなら天球の青と標語の書かれた帯の白である。
簡略して国旗を描くときは、真ん中の天球部分がただの青い丸になったりする。
この写真を撮ったのは6月13日、開幕戦ブラジル-クロアチアの翌日である。
黄色の部分が塗ってない。
開幕まで塗るのが間に合わなかったのか、金が尽きて黄色のペンキが買えなかったのか、その原因は不明だ。
撮影以来この通りを歩いていないので分からないが、以後黄色部分が塗られているのかもしれない。


写真の撮り方がうまくないのも原因だが、十字路にあるキノコに似たわけのわからない形は、ワールドカップの優勝トロフィーに違いない。
2014年6月25日撮影



優勝トロフィーの上方にあるブラジル国旗は、南十字も帯も描かれている。
帯の標語はないが、塗りかけで放り投げてなく、完成形である。
2014年6月25日撮影


ボンネットと両側のドアミラーの、ブラジル国旗乗用車デコ3点セットである。
左右のドアウィンドウ上端に取り付ける国旗がつくと5点セットになる。
普通よく見るのはボンネットの大ピース一点である。
2014年6月25日撮影

どこの国でもこれをやるのかと思っていたのだが、きのうのニュースで見たアルゼンチンの留学生が車のブラジル国旗デコを珍しがっているところを見ると、隣国ではあまり一般的でないようである。

2014年7月6日

ブラジルの外国人身分証明書

友人の依頼があったのでインターネットでわかる限り、少し調べてみた。
できるだけ公式なサイト、ブラジル法務省の外国人関連のページで調べた。
http://portal.mj.gov.br/data/Pages/MJ33FCEB63PTBRNN.htmリンク切れとなっていて、後継ページは、
http://www.justica.gov.br/seus-direitos/migracoes/permanencia/permanencia-1
のようである。
法務省のサイトはリンク切れや手数料金額などの改定が遅れているという問題があるので、実務を行う管轄である連邦警察のサイトのほうが更新が的確である。
でも法令に基づく原則などは法務省のほうが体系だっているようである。

Permanência (永久)滞在

ブラジル国内にいる外国人が永住ビザを得る資格

観光ビザの場合を除くと、本来はブラジル入国前に一時ビザか永住ビザをもっているはずであるから、どうやって永住ビザを取るのかはここでは触れない。
法的根拠
Lei nº 6.815/80
Resoluções Normativas do Conselho Nacional de Imigração – CNIg
  • 難民・亡命
  • ブラジル人の配偶者あるいはブラジル人の親
  • 21歳以上のブラジル人、永住・一時ブラジル居住の外国人の扶養家族
  • ブラジル人あるいは永住外国人の同居(同棲)者(性は問わず)
  • 教師、高レベルの技術者・研究者あるいは科学者の資格で一時滞在ビザを持つ外国人
  • 人身売買の被害者
  • 2年を超える期間ブラジル不在のため永住資格を失った外国人

ブラジル不在のケースでは、偶然の原因あるいは不可抗力の場合、例外的に、法務省は外国人の永住資格復帰さらに(外国人)登録抹消の取り消しを許可できる。

1988年ブラジル連邦共和国憲法の定めるところにより、ブラジル国内の永住外国人には、国籍に固有の事項を除いて、ブラジル人に与えられるすべての権利が保証される。

手続き中の外国人は住所の変更があった場合は30日以内に連邦警察署にその旨を届ける義務がある。

法務省のページには上の記述以降に、ケースごとのリンクが張られている。
さて、ここで知りたいのは最後のケースである。

解説

駐在員などでブラジルに滞在したことがある人の中には、技術者や、日本資本によるブラジル現地法人の資本金に応じてその管理者とかの要因で、永住ビザを保持している人がいる。
よほどブラジルが気に入って退職後にはブラジルに移住したいという人も、多いか少ないかは分からないがきっといるだろう。
その人たちにとっては、このブラジル不在2年で永住資格喪失という縛りがけっこう大変である。

法務省サイトのページ、
2年以上の期間ブラジルを留守にしていたため永住権を失った外国人の永住権-永住権の再確立
の要件をみる。
明確、限定的である。
  • 永住者として登録済みである
  • 以下を実施するためにブラジル領土に2年間を超す期間不在であった:
  • 科学技術省により認定された団体での大学学士過程あるいは学士卒業後過程の就学;あるいは
  • 職業訓練;あるいは
  • 研究活動;あるいは
  • ブラジル政府の任務での職業活動
というわけで、まあ当然ではあるが「日本からブラジルに行く金と時間がなかったので2年を超えてしまいました」という言い訳では永住権回復はできないということである。

外国人登録

ブラジル入国の目的が観光、商用、スポーツ及び芸術活動の場合には、連邦警察での登録及び外国人身分証明書は必要とされない。
この場合入国時に即時登録がなされる。
一時資格でブラジル国で雇用採用された外国人、永住・難民・亡命滞在資格の外国人は連邦警察で、入国あるいは亡命・難民資格認可から30日以内に指紋採取を含む登録を必要とする。
外交・公用ビザ所有者及び取り決めによりビザ免除されたものは、ブラジル国滞在期間が90日を超える場合には外務省で登録する必要がある。

外国人登録に必要な書類

  1. 有効な旅行書類
    原本及びその認証コピー(コピー機によるコピーを原本と同時に登記所で見せて同一証明を受ける)
    普通はパスポート、メルコスル(アルゼンチン・ウルグアイ・パラグアイ・チリ・ボリビア・ペルー・コロンビア・エクアドル)人国籍の場合には身分証明書
  2. 領事によるビザ及びビザ申請原本
  3. 大きさ3x4cmの最近の写真2枚
    カラー背景白
  4. 連邦納付票(Guia de Recolhimento da União - GRU )下に説明するようにプリントして銀行で支払う手数料納入証明書
    コード 140120 外国人登録証明書1通目手数料 R$ 204.77
    コード 140082 外国人登録・登録回復手数料 R$ 106.45
  5. 下に説明する手続きで得るインターネットによる申請登録書

注意
登録の期限に注意、期限内に面接日時を指定できない場合は、速やかに居住予定地管轄の連邦警察署に出頭すること。

外国人身分証明書 (Carteira de identidade de estrangeiro)


  1. 一時滞在・永住・亡命あるいは難民資格の外国人で連邦警察で登録したものには外国人身分証明書が与えられる。
  2. ブラジル入国の目的が観光、商用、スポーツ及び芸術活動の場合には、連邦警察での登録及び外国人身分証明書は必要とされず、この場合入国時に即時登録がなされる。
  3. 外国人身分証明書の発行申請は、申請者本人の最寄りの連邦警察署出頭によってのみ行われる。

どのように申請?

  1. https://servicos.dpf.gov.br/sincreWeb/ で“Requerer Registro, Emissão/Renovação de Cédula de Identidade de Estrangeiro, e Anistia - Agendamento”で電子フォームに必要事項を入力する。
  2. 電子フォーム記入後システムへ、連邦警察署での手続き応対の日時を指定する。
  3. フォームをシステムにセーブし、連邦税納入票と共に印刷をする。
  4. 指定した日時に指定した連邦警察署へ、日時指定ができなかった場合は居住予定地最寄りの連邦警察署へ、必要書類を持参して手続きを行う。
注意
登録の期限に注意、期限内に面接日時を指定できない場合は、速やかに居住予定地管轄の連邦警察署に出頭すること。

初発行手数料

記入する連邦歳入庁コードは140120 (1ª via de CIE CIE初発行)、金額はR$204.77(2016年12月現在)。
https://www2.dpf.gov.br/gru/gru?nac=1 へアクセス

再発行手数料

証明書の紛失、盗難の場合には、
記入する連邦歳入庁コードは140139 (CIE – outras vias CIE再発行)、金額はR$502.78(2016年12月現在)。

更新

外国人身分証明書の有効期限は9年であり、期限終了前に更新手続きが必要。

と、以上法務省のサイトからであるが、機能しないリンクがあるし金額は古いし、少し噛み砕いて説明しよう。

申請方法を少しだけ親切に説明-外国人登録/外国人身分証明書初回・更新手続きの流れ

持参する必要書類が異なるが、手続きは初回も更新も同じである。
  1. 連邦警察の関連ページはこちら
    "Requerer Registro / Emissão / Renovação / Segunda Via de CIE"というページが出る。
  2. ページ内の番号1の中のclique aquiをクリックすると申請書入力フォーム(154フォーム)が出てくる。
    記入のためいくつか簡単な注意を。
    • Unidade Polícia Federal
      左のリストボックス中でまず州の2文字略号を探してから、右のリストボックスで最寄りの都市の連邦警察署の地名を探す
    • 父親、母親の氏名を入力する欄がある
    • 出生国と国籍を選択する欄がある
    • 主な職業をルーペのアイコンをクリックして選択するのだが、ポルトガル語がわからないと面倒そう。何を選んでも問題はないとは思うが。
    • ブラジルへ入国(中を見てないが入国日と入国地)のデータ入力タブがある
    • 自宅と勤務先と二つの住所の入力のためそれぞれのタブがある
  3. 番号2の中のGerar a GRUをクリックすると"Imigração / Estrangeiros"と書かれる連邦納入票発行のページへ飛ぶ
  4. 3. Pessoas e entidades estrangeirasをクリックすると入力フォームが出てくる
    先のフォームとほぼ同様である
    • Unidade Arrecadadora 納入連邦警察署は、先のフォーム同様担当する連邦警察署を選択する
      リストボックス中でまず州の2文字略号を探してから、最寄りの連邦警察署の地名を探す
    • Código da Receita STN 連邦歳入コードは、ルーペのアイコンをクリックして出てくるリストからコードを選択するのだが、
      最初の身分証明書、または期限が来たために更新の場合のコードは140120、金額はR$ 204.77、
      身分証明書紛失・盗難の場合の再発行の場合のコードは140139、金額はR$ 502.78
  5. 電子フォーム記入後システムへ(連邦警察署で手続きの)日時を指定する。
  6. フォームをシステムにセーブし、連邦納入票と共に印刷をする。
  7. 連邦納入票を銀行へ持っていき支払いをする
  8. 指定した日時に連邦警察署へ必要書類を持参して手続を行う

備考

  • ブラジル国領土に継続して2年を超える期間不在の永住資格外国人は永住資格を喪失して、外国人登録と外国人身分証明書は失効する。
    この項だけ原文を載せておく。
    O estrangeiro permanente que se ausentar do Território Nacional, por mais de 02 (dois) anos ininterruptos perderá a permanência, tendo o seu registro e sua Cédula de Identidade de Estrangeiro cancelados.
  • 未成年の外国人は、親あるいは法的責任者に同伴で手続きする。
  • 証明書更新の申請は、有効期限内に行わななければ罰金の対象となる。
  • 永住資格のある外国人の外国人身分証明書の更新は、有効期限が切れた後でも、既に外国人登録してあれば、有効期限日までに60歳に達した場合あるいは身体障害を得た場合に免除される。

連邦警察サイトの外国人身分証明書に関するQ&A

9 - 国外にいてCIEを更新できますか?
外国人身分証明書の更新は、有効期限前に本人によってのみ可能です。
(訳注)在外公館で可能との記述はなく、連邦警察作成の書類であるから、連邦警察に本人出頭が必要という意味だろう。

10 - 外国人身分証明書の期限が切れました。更新するために罰金を支払わなければなりませんか?
有効期限切れのCIEの更新は罰金があり、GRU(前述した連邦税課金納付票)で連邦歳入庁コード140490、金額はR$165.55です。

11- いつから外国人身分証明書の更新ができますか?
規則ではCIEの更新手続きは連邦警察で有効期限の3カ月前から始められます。

解説

友人の疑問は、2年以内のブラジル国領土に不在期間中に、外国人身分証明書の期限が切れてしまうのだが、切れる前にブラジルへ入国しなければならないのか、切れるままにして1年12カ月目になるのを待ってからブラジルへ入国しても良いのか、というものだ。

「ブラジル国領土に継続して2年を超える期間不在の永住資格外国人は永住資格を喪失して、外国人登録と外国人身分証明書は失効する。」と書いてあるから、2年を越して2年1ヶ月目になると永住資格を失ってしまう。

外国人身分証明書の期限切れ後、最後のブラジル出国から1年12ヶ月目までにブラジルへ入国した場合は、R$165.55の罰金を払ってから、ブラジル滞在中にR$204.77の手数料を支払って外国人身分証明書を更新することになる。

外国人身分証明書の期限が切れる前にブラジル入国して更新手続きすることができる場合は、ブラジル滞在中にR$204.77の手数料を支払って外国人身分証明書を更新することになる。

2014年6月21日

ブラジル・バケツ・プリン

インターネットラジオOttavaを聞いていたら、大阪のりりぃさんというリスナーから、「ブラジルプリン」という商品があることを知らされた。
ブラジルにもプリンはある。
プリンはプディング(pudding)が日本語化したものだと思う。
対応するポルトガル語はプジン(pudim)である。
しかし、pudim brasileiro、つまりブラジルプリンという呼び方は全く聞いたことはない。

ブラジルプリンを検索すると、日本の二つのメーカーが別々の製品を出していることがわかる。
一つは協同乳業の「ブラジルプリン 練乳カスタード」、もう一つは雪印メグミルクの「プジン ブラジル風カスタードプリン」というのが商品名だ。
雪印の製品には、ポルトガル語プジンが名前に使われている。
発売日をみると、前者が2014年5月、後者が2014年3月なので、両製品の包装にみられる緑と黄色のブラジルカラーから連想されるように、間違いなくワールドカップ2014ブラジル大会に便乗した商品と断定してよい。

しかし、便乗したかしないかはともかく、ブラジルプリンと名乗るからには、ブラジル的特徴を備えていなければ看板倒れ、あるいは偽装商品だ。
プリンの原料はどこにもあるものだから、ブラジルプリンがブラジルから輸入されることはないだろう。
日本国産であるが、ブルガリアの国名使用許可を得たブルガリアヨーグルトというのと同じだ。
だからこの偽装は、産地偽装でなく、特徴偽装ということだ。
プリンがブラジルの国名使用許可を得ているかどうかは知らない。

ブラジルプリンのブラジル的特徴とはなにか。
ブラジルプリンという呼称は聞いたことはなかったが、ブラジルのプリンは食べたことがある、というか家でも作る。
そして探求を始めたのだった。

プディング(pudding)とは、一般に蒸して固めた食品の総称という。
語源が気色悪い。
「pudding の原型は古英語の puduc で、元来は腫れ物を指す語であったとされる」と
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0
に書いてある。
膿のことをポルトガル語でpusというのだが、これとは関係ないと思いたい。
プリンを食べるとき、腫れ物や膿など連想しないように努めよう。

カスタードプリン(en. custard pudding)はプディングのひとつで、牛乳・卵・砂糖を固めた洋菓子と定義されている。
固めるメカニズムであるが、卵を加熱するとたんぱく質が固まる性質を利用している。
加熱が必要なく、溶かして型に入れて冷蔵庫に入れるだけというインスタントプリンは、ゼラチンなどを利用しているので、ケミカル・プリンと言われる。
ケミカルなんて言われると、なんか胡散臭くなるが、ゼラチンは動物由来のタンパク質だからそんなに気持ち悪がることもないようだ。

さて、英語版・ポルトガル語版のWikipediaをみると、日本語版にない記述があった。
カスタードプリンのラテンアメリカ・バリエーションというのがあって、その中で、ベネスエラとブラジルでは上にあげた通常の材料に加えて、コンデンスミルクを使うと書いてある。
なるほど、コンデンスミルク(加糖練乳)の利用が、ブラジルプリンの特徴であることが一応第三者の記述で検証されたわけだ。

ここまでわかったのであるから、ブラジルプリン、プジン、練乳カスタード、呼び方はなんでも良いが、作り方を書いておこう。
宣伝するわけではないが、ブラジルで一番良く知られている加糖練乳はNestle社のLeite Moça(レイチ・モッサ)であるので、そのサイトから写させてもらった。

材料
[シロップ]
  • 砂糖カップ1杯
  • 水カップ1/2杯
[プジン]
  • 加糖練乳 1缶(約400グラム)
  • 牛乳 上の缶で2缶分
  • 卵 3個

作り方
[シロップ]
  • 鍋で砂糖を金色になるまで加熱して溶かす
  • 1/2カップの湯を加え、かき混ぜる
  • 砂糖が溶けて粘りが出るまで加熱する
  • プリン型(穴あき直径19cm)の底に敷きこむ

[プジン]
  • ミキサーで材料を良くかき混ぜて、シロップを敷いた型に入れこむ
  • 型を湯煎にしてアルミ箔の蓋をかぶせ、オーブン180℃で1時間半焼く
  • 冷めたら冷蔵庫で6時間冷やす
  • 型から外してできあがり

プジンの材料だけで卵1個を50gとして1.35kg、シロップを加えると1.5kgになるだろう。
甘い、あまーい、あま~いブラジルプリンを自作すれば腹いっぱい食べられる。
ブラジルバケツプリンを作ったら、一人で一気に全部食べるのは拷問に近いのではないか。
拷問でなくても、カロリー過剰と高血糖高コレステロールの隠れ罠が待っているから、健康に注意して子供のときの夢をかなえてほしい。

2014年6月20日

南米諸国はみなホーム

36年ぶりの南アメリカ大陸でのワールドカップ開催なので、ブラジル近隣諸国のサポーター観光客が大挙押しかけている。
36年前というと1978年になるが、アルゼンチン大会であった。

ワールドカップ2014ブラジル大会は、南アメリカの観光客の集合地となっている。
なにしろウルグアイ、アルゼンチン、チリ、エクアドル、コロンビアに加え開催国ブラジルの6カ国が参加している。
チリとエクアドルはブラジルと直接国境を接していないが、全部地続きだ。

FIFAによると、南アメリカから大会全期間に観戦にやって来るのは15万4千人と予想されている。
一番多いのはアルゼンチンで61,021人、2位はコロンビア54,477人、3位はチリで38,638人と発表された。
FIFAによる、この端数まである集計値は、チケット購入ベースなのだろう。

15日にリオ・デ・ジャネイロのマラカナン・スタジアムでボスニア・ヘルツェゴヴィナ戦に勝ち、意気上がるアルゼンチン応援団はリオの街角や海岸で観光を楽しんでいたようだが、次のイラン戦のため、この19日からベロ・オリゾンテに大移動を開始している。
21日の土曜日までに、アルゼンチン代表のキャンプ地であるベロ・オリゾンテにいる同国人と合流して、同市に2万5千人のアルゼンチン人が集結するとみられている。

中には暴発する連中もいる。
http://g1.globo.com/rio-de-janeiro/noticia/2014/06/chilenos-que-invadiram-maracana-terao-que-deixar-o-pais-diz-ministerio.html
18日にリオ・マラカナンで前大会チャンピオン・スペインに引導を渡したチリであるが、チケットを入手できなかったチリ人サポーターの集団が、警備の薄いプレス・センターの防護柵とガラス扉を突破してスタジアム侵入を図り、プレス・センターの仕切り壁などの施設が破壊された事件があった。
85人のチリ人が逮捕され、72時間以内の国外退去を条件に釈放となった。
Chi chi chi le le le VIVA CHILE チケットなければ花と散れ、と散ってしまったチリ人だ。

ブラジルと道路交通のある国は多いが、その行き来が一番容易で交通量も多いのはアルゼンチンだろう。
そのアルゼンチンやその他の国からキャンピングカー、軽トラック、普通の乗用車などでやって来た連中の中には、相対的に物価の高くなっているブラジル大都市の駐車場料金を払うのを惜しんで、通りに無断駐車の壮大な列を作っている。

ピックアップトラックの荷台で寝ていたら雨でびしょぬれとか、朝起きたらバール(バー、飲み屋)の前の舗道だったというホームレス生活状態とかの外国人が、ニュース画面に登場した。
警察もそんなことでは逮捕もできず、しかも大勢いるので、説得を試みるくらいしかできないようだ。
まあこの連中は祖国のチームを追って5日も経てばいなくなるし、別の国の連中がやってきてもワールドカップが終われば誰もいなくなるだろうし、そのときになったら、けっこう連中は付近のバールやレストランで金を落としてくれたなあ、と懐かしがられるかもしれない、なんて思う。

というわけで、南アメリカの国々は、もちろんブラジル戦を除いたらではあるが、ホーム状態である。
第2戦を見どころのない(sem espetáculo)と評された試合で10人のギリシャと引き分けた日本は、グループ2位の座をグループステージ最終戦のコロンビア戦勝利と他の2チームの結果に依存する極めてわずかな可能性にかける。
これまでの日本戦の日本サポーターは6千ないし7千とみられているが、クイアバのパンタナル・スタジアムで行われるコロンビア戦は間違いなく、強敵である上に日本のアウェーだ。
もう無理ゲームなんだから負けても完全燃焼、後味のすっきりした試合をしてほしいものだ。

http://g1.globo.com/distrito-federal/noticia/2014/06/torcedores-dos-eua-foram-os-mais-barrados-no-pais-desde-inicio-da-copa.html
ついでに入国審査ではねられた外国人リストだ。
2014年6月12日から18日までにブラジルへの入国を拒否された外国人は79人と発表された。
主催者側はワールドカップ大会前に、札付きフーリガンのブラックリストを作っていたと聞いているが、この79人が全てフーリガンのリストにのっていたため拒否されたかどうかは不明だ。
出場国以外の国籍もみられるからだ。

24人:米国
18人:ナイジェリア
15人:アルゼンチン
2人:ブルガリア、チリ、フィリピン、イラク、メキシコ、ポルトガル
1人:アンゴラ、サウジアラビア、オーストラリア、コロンビア、スペイン、ハイチ、ジャマイカ、ペルー、連合王国、モンテネグロ
合計79人

2014年6月19日

国歌を礼拝堂で力一杯歌う

今日までワールドカップ2014ブラジル大会で、ホスト国ブラジルの登場は12日開幕戦と昨日17日の2試合があった。
テレビの報道を見ると、ブラジル応援団が、"cantou (o hino nacional) a capela"と言っていた。
国歌を礼拝堂ふうに歌った?

ポルトガル語capelaに対応する、英語のchapelチャペルは日本語にもなっているだろうが、辞書を見ると小教会、小聖堂、礼拝堂と書いてある。
普段は無人のこじんまりとした教会や、病院の中にある礼拝室などがカペラと呼ばれているようだ。
そう、こちらでは大きな病院の中に礼拝室が備わっていることが多い。
患者だけでなく見舞い客も心の支えを求めてお祈りするのだろう、小さいが教会の中にいるような落ち着ける空間を作っている。

そして、日本語でも音楽用語だろうか、無伴奏の歌唱は「アカペラ」という。
音楽用語というとイタリア語であるから、"a cappella"というのが原語であり、ポルトガル語でも意味と発音は同じようである。
国語辞典には、《礼拝堂ふうに、の意》楽器の伴奏を伴わない合唱曲、と書いてある。
語の区切りを意識すると、「ア・カペラ」だ。

開幕戦の最初は見損なったので、第2戦直前の国歌演奏を少し注意深く見た。

メキシコ国歌が終わったあと、ブラジル国歌の番だ。
セレソン(代表)の選手たちは、音程は分からないが、大きく口を開けて歌っている。
国歌をしっかり歌うのは、心を力づけ決意を固める意味もあるのだろう。
歌詞の意味するのは国家独立の由来と祖国の誇りであるからだ。

国歌には短いものも長いものもある。
長い上に2番以降の歌詞、つまり繰り返しのあるものもある。
ブラジル国歌は長いし2番がある。
歌詞には普段聞かないようないかめしい単語が出てくる。

会場に流される国歌演奏は真中部分をカットした短縮版だった。
大多数を占めるブラジル応援団観客はどうしたか。
テープ(テープではないのだろうが慣習なので)で流れる短縮版演奏を全く無視して、演奏が終わってからもスタジアムをうめる大観衆は、短縮版でない本来の歌詞全部を、勝手に、といってもバラバラでなく斉唱で力いっぱい、一番だけであるが最後まで歌っていた。

ワールドカップ大会ホスト国であることの利点はいろいろあるだろうが、観衆が長い国歌を全部おもいっきり歌えるというのもその一つなんだと認識させられた。

自国民や近所の国が何かと言ってケチつけること無く、精一杯歌ってもらったり、スポーツ選手に誇らしく掲げてもらったり、ブラジル国歌やブラジル国旗は、無生物だから何もうれしくも悲しくも思うわけはないのだが、幸せな国歌であり、国旗であると思う。

2014年6月7日

幻のクイアバ電車

Em Cuiabá, obras prometidas para a Copa estão longe de terminar
クイアバのW杯関連工事、完成から程遠い

Edição do dia 06/06/2014
06/06/2014 21h56 - Atualizado em 06/06/2014 22h11
http://g1.globo.com/jornal-nacional/noticia/2014/06/em-cuiaba-obras-prometidas-para-copa-estao-longe-de-terminar.html
ブラジル中西部のマット・グロッソ州は、南アメリカ大陸の内陸中央部に位置して、平坦で高生産性の穀倉地帯であり、その州都クイアバは、エコツーリズムの地、広大なパンタナル湿原への入口でもある。

Arena Pantanalの工事は終了、ワールドカップ2014ブラジル大会の4つの試合を待つばかりとなっている。
その中には現地時間6月24日16時日本-コロンビア戦があるので、日本人の注目度も高いはずだ。
しかしスタジアムの外側をみると、工事現場そのもののところが多い。
クイアバ都市圏の交通インフラは、56件の工事が予定されていたが、そのうち完成したものは19しかない。

クイアバのVLT(Veículo Leve sobre Trilhos)、つまりライトレール車両(Light rail vehicle, LRV)の計画では、空港から都心部(セントロ)で分岐して二つの地区までの総長22キロメートルが建設されることになっていた。
編成定員400人の車両40両購入は既に済んで、車両基地に並んでいる。
この工事は当地方の交通インフラ投資で一番高額なもので、予算15億レアルである。
予定ではワールドカップまで開通していたはずだが、路線工事は50%しか進捗していない。

計画では大通りの中央分離帯部分に線路が敷かれることになっていたが、現在多くの作業員の足の下にあるのはただの土である。
広い中央分離帯で現在行われている工事は、なんと、遅れている工事を応援観光客の目から隠すための芝張りというから驚く。

今週になってOAB(ブラジル弁護士会)、CREA(工学・農学地域審議会)とCRC(会計学地域審議会)は、SECOPA(クイアバ州政府ワールドカップ特設局)がすべての契約書・領収書・工程表を公開するよう訴えを州裁判所へ起こした。
賄賂支払い、不正入札、資金横流しなどの重大な密告が多数あるからというのが理由である。

報道時点で、州政府は工事遅延の原因は用地取得と計画変更であると弁明、裁判所は訴えで要求されている書類の72時間以内の公開を命ずる判決、VLT工事担当コンソーシアムはコメントを発表していない。

ということだ。
どれだけの日本人サポーターがクイアバを訪問するのかは知らない。
空港から都心へ行くバスやタクシーで、大通りの中央分離帯を見てほしい。
真新しい継ぎ目も明らかな芝ブロックが見られるだろう。
そうしたら「本当は真新しい新交通システムの車両に乗って、この芝生のあるところを通っていたはずなのだ」と想像してほしい。

そしてクイアバの住民には、横流しや賄賂で消えかかっている資金を取り戻し、工事がうやむやになって、投資された連邦資金がまるまる消えてしまうことの無いよう監視してほしいものだ。
その意味でワールドカップ期間中会場都市で頻発するだろう抗議運動には同感しているので、平和に活動してもらいたいものだ。

2014年6月5日

ナタル新空港は旅の鬼門か醍醐味か

Novo aeroporto de Natal começa a funcionar com dois meses de atraso

http://g1.globo.com/jornal-nacional/noticia/2014/06/novo-aeroporto-de-natal-comeca-funcionar-com-dois-meses-de-atraso.html

ナタル(Natal)はポルトガル語でクリスマス、というのもこの語は「生まれた」という意味で、場所などの名詞を修飾する形容詞でもあるから、この世で一番著名な人物というか神の子イエスの生まれた日ならクリスマスだ。
そしてブラジルでこの名を持つ都市は、ブラジル北東部リオ・グランデ・ド・ノルテ州の州都であり、現在の話題を追うと、この6月19日19時(現地時間)に日本-ギリシャ戦が行われるところである。

ナタルの新空港がまあ大変なのだ。
既に2カ月前に完成しているはずだったのに、ようやくこの週末、5月31日に2カ月遅れで運用を開始した。

当然予想されるように最初から混乱続きである。
運用3日目の6月2日、ポルトガル行きの便が新空港から出発すると聞いてやってきたグループは、飛行機の影すら見ず大慌てだった。
パルナミリン(Parnamirim)にある旧来のアウグスト・セヴェロ国際空港(Aeroporto Internacional Augusto Severo)は運用を停止して、すべて新しいサン・ゴンサロ・ド・アマランテス空港(Aeroporto de São Gonçalo do Amarantes)へ移転するはずだったのに、国際線だけは旧空港に残されたからだ。

まだいくつも未完成な部分がある。
例えば防犯カメラが取り付けられていない。
税関システムがまだ完成していない。
管轄する連邦税庁(Receita Federal)は、今週にも完成する予定と言っている。

インターネットでの情報照会システムがまだできていない。
リオ・グランデ・ド・ノルテ発着便のデータは、 インフラエロ(Infraero、空港インフラ公団 Empresa Brasileira de Infraestrutura Aeroportuária)のサイトで見ると空白になっている。

空港の標識もまだできていないので混乱を招いている。
別の(旧)空港を指示されていたのでそっちへ行ったら、新空港だと言われた。
あわててこっちへ向かったのだが、新空港に到着したのは2時間遅れだったという気の毒な人がいる。
テレビ画面を見ると、更地に囲まれた何も標識のない分岐点が写っている。

民間航空担当相によると正式な開港式は6月9日、連邦税庁税関システム運用開始は6月4日に予定している。
開港は日本-ギリシャ戦のわずか10日前である。

以上は3日前、6月2日の報道である。
10日でテストがうまくいって問題なく空港業務ができていればいいのだが、そうでなかったらどうするか。
ただでさえ待ち時間中の搭乗ゲート変更など当たり前に起こるブラジルの空港である。
情報システムに不備があると、アナウンスと表示に食い違いがあったりして困惑することなどが予想される。

空港にはたくさんのボランティアがいるはずである。
ボランティア募集はかなり時間に余裕を持って行われた。
FIFAが募集したものと、ブラジル連邦政府スポーツ省が募集したものがあるが、いずれも訓練はしっかりしていると思われる。

ブラジル人は、ナタル空港の例をみると、計画性無く大雑把でいい加減であるかもしれないが、ボランティアの人たちは、当時の報道をみると志を持って全世界からブラジルにやって来る人たちを暖かく迎えて、困難が起きても親身になって解決してくれる熱い心のある人たちだと信じたい。

このブログを見ると犯罪の多い暴力社会の側面だけが強調されるきらいがあって、それはそれで特に世界一安全な日本からやってくる人には注意し過ぎるほど注意してもらいたいものだ。
しかしブラジルの一番の魅力といえば、海山川平原湿原乾燥地いずれも(まあ高い山や冬の雪景色などは求められないが)壮大で豊かな大自然でも、南半球最大の経済を具現した都会でも、高度な生産性を誇る農牧地域でもなく、ここはブラジル人そのものと言っておこう。

困ったらボランティアを大いに頼りにしてほしい。
そして、ナタルの空港だけでもなくどこでも時間には余裕を持ち、ボランティアその他からデモやストの情報を得て、運悪く強盗などにあった時のイメージトレーニングをして危険に備えておけばブラジル旅行も無事に終わるだろう。

2014年6月1日

W杯スタジアム観戦ルール

W杯、して良いこといけないこと冊子
Cartilha diz o que pode e o que não pode durante a Copa do Mundo

http://g1.globo.com/jornal-hoje/noticia/2014/05/cartilha-diz-o-que-pode-e-o-que-nao-pode-durante-copa-do-mundo.html

こんな間近になって、消費者保護機関からワールドカップブラジル大会のスタジアム観戦マニュアルがでてきた。
スタジアムに入るときには、食料・飲料の持ち込みは禁止、かさばる荷物の持ち込みはできない。
荷物の大きさは(たぶん一辺)最大25cmまで。

FIFAの指針で、次のこと・ものは禁止される。
  • 大きさを問わず楽器、もちろんブブゼラを含む
  • 2m x 1.5mを超える幕・旗
  • 旗竿は柔軟性のあるプラスチック製であること
  • 盲導犬を除く動物(動物を持ち込む人なんているのか?)
  • 花火、発煙筒、爆竹その他煙を出すもの(ブラジルっぽい)
  • 大型の傘・日傘、ガラスのビン・コップなど投げるとけがをする危険のあるもの
  • スプレー缶、ライター(喫煙者はどうするのか?)

政府はまた、ブラジルの消費者保護法を説明する観光客向けの小冊子を配布する。
ポルトガル語、英語、スペイン語で書かれている。
ホテル・レストラン、飛行機やバスの遅れなどで困ったときに相談・苦情を受け付ける機関を示している。
迅速な対処ができるよう、消費者保護統合センターが現地に特設された。

もう縦5メートル横10メートルの巨大応援旗を作ったし、特製ブブゼラも買ってしまったし、いまさらそんなこといわれても困るよ、というサポーターもいるかもしれない。
ブラジルだからいい加減にというか、臨機応変にできるような気もするが、持ち込めない可能性は大きいので没収される覚悟でいてほしい。

2014年5月26日

ブラジル大学入試もAKB握手会もこれで解決

エネンのすべての試験場に金属探知機を採用
Enem terá uso de detector de metais em todos os locais de provas

http://g1.globo.com/jornal-nacional/noticia/2014/05/enem-tera-uso-de-detector-de-metais-em-todos-os-locais-de-provas.html

先週の金曜日、2014年5月23日にエネン ENEM(Exame Nacional do Ensino Médio)全国中等教育試験の応募が締め切られた。
今回のエネンでは、より一層の安全措置が採用される。
それは金属探知機(detector de metais)で、すべての試験場に設置される。

今年の志願者数約952万(9,519,827)人は、昨年と比べて22%の増加である。
そして今年初めて、すべての受験者は試験場に入場する前に金属探知機を通らなければならない。

なぜか?
昨年のエネンでは、実に1千4百人!の受験生が退室処分、もちろん試験は失格になったからだ。
その大部分は、カンニングにつながるので禁止されている、試験場での携帯電話禁止に違反したからだ。

今年のエネンの試験日は、2014年11月8・9日に実施される。
受験希望者は次の水曜日5月28日までに受験料を支払わなければ応募は有効とならない。

このニュースを少し考察してみよう。

まずエネンである。
エネンの規模は半端なく大きい。
2013年1月末に行われた日本のセンター試験の志願者数は57万3千人であるので、エネンはその16.6倍の規模である。
金属探知機ですべての受験者を検査するのは、たやすいことではないだろう。

どういうタイプの金属探知機だろうか。
空港だったら日本でもブラジルでも金属探知機があるのは当たり前だ。
しかし銀行となると話が違う。
銃器の持ち込みを防止するために、どの銀行支店もガラス張りの回転ドアがあって、ドアを押して回して入るときに金属探知機が働く。
携帯電話だけでなく、鍵束やめがねの金属フレームなんかでも感知されて、ドアがロックされ閉じ込められてしまうので煩わしい。

入場者をロックする機能は必要とされないだろうから、回転ドアタイプは大げさすぎるだろう。
空港にあるようなアーチを人がくぐるものだろうか。
それとも、係員が手に持って使うような携帯タイプだろうか。
受験者数からみると人がくぐるタイプでないと人の流れが滞ると思う。
入場時刻を早める必要があるかもしれない。
あのタイプの金属探知機が一台いくらするかわからないが、安いものではなさそうだ。

電子投票を行なうので、各投票所に特製の電子投票機(urna eletrônica)を何台も設置するブラジルである。
試験場が全国で何ヶ所になるかは分からないが、なんとか台数を調達するだろう。

そんなところで日本では次のニュースだ。
AKB握手会、川栄さんや入山さん襲われる 指や頭けが
http://www.asahi.com/articles/ASG5T5VXFG5TUJUB009.html

会場内にいた男が突然50cmののこぎりを取り出してAKBのメンバー2人とスタッフ1人がけがをした事件だ。

そのビジネスモデルの可否はともかく、AKBは選挙とか握手会という新しい分野を切り拓き、社会現象となったのは間違いない。
ファンとアイドルの関係を両方向に緊密にして、特に握手会は、運の良い数人だけでなく誰でも確実に、大げさに言えば肉体の接触ができる画期的な行事だ。
私はAKBのメンバーも歌も知らないが、ブラジルで同様な催しをするならハグくらいはして欲しいものだ。

ブラジルは四捨五入して一千万人が同日同時刻に、つまり時差のある地域でもブラジリア標準時に合わせて実施されるエネンのために、全員を金属探知機に通すという計画だ。
金属探知機はブラジルが本場?とはいえ、技術大国日本である。
金属探知機を数台備えることなど大したコストではないだろう。
AKBの握手会って何人人が集まる?
仮に5万人だったとしても、全員を金属探知機に通すことなどたやすいことだ。
大切なファンを罪人と疑うとはけしからんという抵抗意見に対して、こういった事件が起きた後だから、熱烈なファンに混じっている危険な狂人をチェックする動機になる。

離れてアメリカ(合衆国)では、大学生の銃乱射事件が起きたばかりだ。
ノコギリと銃では殺傷力は段違いに異なるが、いずれも金属探知機には引っかかる。

握手会の延期などせず、金属探知機を調達して堂々と行っていけば何の問題もない。

2014年5月22日

W杯間近のリオやサンパウロに山猫出没

ブラジルにいる野生ネコ科は、gato-do-mato、直訳すると森ネコという小型のから、オセロット(en. ocelot)という名で知られる少し大きいjaguatirica、大きい方になるとsuçuaranaススアラナ(=ピューマ en. cougar/puma)とかonçaオンサ(=ジャガー en. jaguar)といった大型のまで全8種あるという。
リオやサンパウロに出没するのは、野生のものではない。

山猫スト、辞書には、「労働組合の一部の組合員が、中央指導部の承認なしに行うストライキ。山猫争議。」と書いてある。
山猫というと、宮沢賢治の「注文の多い料理店」を想像してしまい、山猫ストの語源は日本語の童話的悪者のイメージかと思ったりするのだが、goo辞書をみると、英語でも"a wildcat [an unofficial] strike"となっている。
ワイルドキャット・ストライク?山猫の一撃なのか。
ピューマやジャガーの一撃は強烈だろうが、ブラジルの野生ネコも、ツシマヤマネコやイリオモテヤマネコのような日本の野生ネコも、ストライキなどは打ちそうな顔をしていない。

最近の日本ではストライキ自体が珍しいものになっている。
はるか昔国鉄時代には、電車車体に下手な文字でスローガンを書きなぐった醜い電車の画面がテレビニュースに流れたものだった。
ある日突然教室に先生が来ない。
別の先生がやって来て「今日は〇〇先生用事で欠席なので自習」なんて言うと、喜び騒ぐ大勢の声の中に、「〇〇先生は日教組なんだ」と知ったかぶりしている子が言ったりしたものだ。

ブラジルの労働組合は職種単位である。
バスの場合は運転手・車掌(cobradorつまり金を集収する人)が地域で労働組合を結成する。
通常毎年一回決まった月に、雇用者の組合(sindicato de empresas)と労働者の組合(sindicato de trabalhadores)が団体交渉をして、単なるインフレ補填だったり実質ベースアップだったりするがその年の給料調整とか、福利厚生の現状維持か拡充とか、従業員の利益参加つまり業績ボーナスとか、その他労働契約に関連した事項に合意して労働協約を結ぶ。

労働者側の要求と雇用者側の回答が極めて遠く交渉が難航して、労働省(Ministério do Trabalho)の調停も功を奏しないと、労働組合はストライキを打つことがある。
これは労働者の権利、今調べたら団体行動権である。
しかし、ストライキに入る前に予告するとか、公共サービス部門ではストライキ中でも最低限のサービスを保証するとか、いろいろな条件が付けられる。
ストライキが不正な疑いがあると、雇用者側や市民保護局(Defensoria Pública)などが労働裁判所(Justiça do Trabalho)に訴え、ストが非合法である裁定が出ると、スト終結まで労働組合へ一日あたり5万レアル(金額は単なる例)とかの罰金を科すことがある。
あくまでも雇用者組合と労働者組合の二極の対立が想定されている。

最近のリオとサンパウロのバスのストライキは二極対立ではない。
両都市のストライキに共通してみられるのは、雇用者組合と労働者組合が合意に達してあとは労働協約を成文化するだけと、普通ならここで一件落着となる段階で、合意内容に不満がある労働者の一部が、組合の方針から全く離れて勝手なストライキを実行したことである。

不満労働者は、労働組合指導部が勝手に総会を一日早めて我々の参加なしに雇用者側と合意してしまった、という言い分で、労働組合指導部は、正規な手続で開催した総会で組合員7千人の参加をみた承認である、と反論している。

サンパウロ市の労使交渉の場合、給料調整10%で合意していたのだが、不満労働者は給料調整40%と、食事代補助チケットの金額の増額その他を求めて労使合意に反抗、社会に全く予告することなくストライキ入りした。
先般リオデジャネイロで起きたバスのストライキも同様な構図だ。

雇用者組合と労働者組合の対立であったなら、労働裁判所は非のあった方、つまりこの場合であったら予告なしにスト入りした労働側を罰するのであるが、今回のストライキでは当事者の特定ができないので、罰する相手がいない。
現在のところ警察がストライキ主導者の特定にかかっている。

リオは既に終結しているが、サンパウロ市の場合は労働裁判所が48時間後の職場復帰を命じているため、スト3日目にあたる5月22日ストライキは終結しているはずだ。
22日昼、労働省で労使調停が行われている。
一度合意に達した交渉の調停が行われているというのもおかしな話で、労働側の誰が交渉の場に臨んでいるのかもニュースをみただけではよくわからなかった。
調停不調の場合は、労働裁判所が裁定を下す次の段階に達する。

このようなワールドカップブラジル大会間際を狙ったストライキ作戦、先のペルナンブコ州の軍警察官ストライキがそのタイミングを狙ってきたかどうかは不明だが、きっといろいろな分野で頻発することと思う。
一昨日ニュースで言っていたように、バス運転手・車掌の山猫ストによるサンパウロ市の渋滞総キロ数が二百数十キロの新記録とかで、そうなると市内バスを使わないW杯サポーター観光客への影響も少なくない。
今回のバスストでは、組合指導部に従わない山猫と、組合指導部と同意見の家猫?の対立による暴力沙汰や、バスが止まっているので腹を立てた荒っぽい一般乗客が投石や放火をしていないだけマシであるが、こういう事態に慣れていない外国人観光客が騒ぎに巻き込まれたら、国内事件では収まらない。

くれぐれも山猫に調理されて食べられないように気をつけてほしい。

2014年5月19日

戒厳下のW杯となっても大丈夫

「戒厳」は、辞書を見ると厳密な意味では「非常事態の際、立法・行政・司法の事務の全部または一部を軍隊の手にゆだねること」とあるから、いささか過激すぎるのであるが、まあタイトルくらい多少大げさであってもかまわないだろう。
あくまでもこんな感じがするかもしれない、ということである。

「非常事態(宣言)」にあたるブラジルポルトガル語は、estado de emergênciaであるが、共和国大統領が公布して24時間内に国会が承認する手続きが必要で、法律上ではestado de defesa (30日)→estado de defesa (30日延長)→estado de sítio (30日)→estado de sítio (30日延長)という順序をたどることになっているそうだ。

ブラジルの地方で大雨や土砂崩れなどが起きた時のニュースを見ると、災害時に被災地に宣言される「非常災害宣言」は、estado de calamidadeと呼ばれて、地方自治体長が宣言するもののようである。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM16010_W4A510C1EAF000/
ブラジル各地でW杯反対デモ 一部暴徒化、警官ストも
2014/5/16 10:28

もう一か月も切った6月14日に、日本-コートジボワール戦が行われるペルナンブコ州都レシフェでは、州軍警察のストライキがあり、警察力の減少した商店街で略奪騒ぎも起こった。

日本のマスコミにも以上のようなニュースが流れたわけだが、その後どうなったか。

このニュースに既視感があるのは当然、昨年のコンフェデレーションズ・カップの時期にも今回以上の大規模な抗議デモはあったし、ブラジルでは警察官のストも起きる。
公共サービス部門ではもちろん無制限のストライキが認められることはなく、司法権の労働裁判所(justiça do trabalho)が、例えば路線バス便数の40%は運行しなければならない、といったような条件をつけるのが普通である。

しかし警察官のストライキに関する労働裁判所の裁定が出るまでの時間に警察力の空白が起き、必要な場合には国軍力に頼ることになる。
連邦政府及び州政府は陸軍部隊を治安維持のために出動させて、町中に迷彩服をまとい軽銃器で武装した兵隊たちがトラックで散開している画面が流れた。
陸軍は撤収時不定でレシフェの街に駐留するそうだ。

スト入りしていたペルナンブコ州軍警察であるが、ストライキを中止して職務へ戻った。
しばらくは略奪が続いたようだが、警察力の復帰とともに終息した。

昨日テレビニュースを見ていたら、商店から電気製品などを略奪したならず者が、後から反省して商品を返還している場面が出た。

ある略奪者は言った。
「人生で初めてこんなことをしてしまったが、後からやましい気持ちになったので返すことにした。」
別の略奪者の母親が言った。
「息子が略奪品を家に持ち帰ったのでとんでもない、こんなものプレゼントされてもうれしいどころか情けなくなるから、返してこいと言った。」
いろいろな家族の会話があったのだろう。

レシフェ市内の警察署は返却された略奪品で部屋も廊下も一杯になっていた。
商店連盟の人は、返却された商品は10%ぐらいしかないよ、と言っていたが、実際のところどのくらい戻ってきたのかはわからない。
嵐が過ぎ去って台風一過といった感じであった。

さて、肝心のワールドカップが始まったらどうなるのか予想してみよう。
今から一年前、ワールドカップ本番になったら抗議運動対策はどうなっているだろうか、と懸念したものだ。

今回の抗議運動の様子が昨年のコンフェデレーションズ・カップのときと異なる点がいくつかある。

昨年の抗議運動は、公共交通機関の運賃値上げが発端となり、抗議内容が徐々に拡大してきたのだが、今年は最初からメインでワールドカップ反対を訴えている。
昨年の参加者の大部分は、SNSなどでかなり自発的に集結した大学生や高校生であり、その後いろいろな参加者が集合したのだが、政党色はほとんど見られなかった。
今年の参加者は、画面を見たところ「家よこせ運動」や労働組合が主体となっており、去年と全く違うのは赤旗が大々的に目立っていることだ。

昨年はコンフェデレーションズカップのために6つのスタジアムが完成したのだが、現在さらに残る6つのスタジアムが相次いで完成していることから、「こんな豪奢なスタジアムを建設する金があるのなら、家も土地もない我々に家を建ててくれ、という声がより大きくなっているのだ。

町や州や地方などの個別状況に注目せず、一般論を言うと、一年間の社会改善の成果はほとんど実感できない。
外国人医師の導入で無医地区の診療など多少の改善は見られたと思われるが、都市部の公共医療の劣悪さは改善からほど遠く、インフレは収まらないから(年6.5%程度)生活費は上昇していて、去年と比べてなにか良くなったかと聞かれたら、即答に詰まるような状況だ。

“EDUCAÇÃO PADRÃO FIFA”(FIFA水準の教育を)
“HOSPITAL PADRÃO FIFA”(FIFA水準の病院を)
と言った、去年見たスローガンが倍加しても当然な状況である。

最近Dilma共和国大統領が頻繁にテレビに出て、去年も言ってたように「スタジアムなど建設費用はチームとか地方自治体の受益者が負担するもので、連邦政府は融資しているだけだ」と繰り返してはいるが、真実だとしても政治家が言うことなので素直に信用する人は少ないだろう。
救いなのは、現在でも昨年と同じように、平和的抗議活動は市民の権利でこれは尊重されるものであるという政府見解が不変なことである。
この見解が守られる限りは国政がおかしな方を向くことはないと思う。

抗議アピール活動の主催側とすれば、昨年の8カ国参加のコンフェデレーションズカップに比べて、今年本番のワールドカップの参加国は32ヶ国で世界の注目度は格段に大きい。
この時期にストライキを打って大幅ベアを勝ち取ろうと目論んでいる労働組合も、ペルナンブコ州軍警察の例に留まらず、きっとメジロ押しであろう。
というわけで、抗議デモの頻発は避けられない状況となっている。

政府および大会実行委は、実効的な抗議活動デモ予防対策もできずに開幕一か月を切ってしまった。
そのうえで、ワールドカップ開催組織はどう対応するか。

幸い、と言えるが、政府は平和的抗議デモは弾圧しないはずである。
しかし、実際のデモは、大多数の平和的参加者の中に、騒擾を目的とした尖鋭派や略奪を目的としたならず者などの少数不穏分子が混じり込んでいるので、政府の抗議活動公安対策を複雑なものにしている。

この土壇場まで来てしまったら、デモ隊と観光客の動線を徹底的に分断する作戦に出るであろう。
「陸軍は撤収時不定で駐留する」というのが本当ならば、レシフェやリオデジャネイロの町中に、迷彩服を着て軽銃器を抱えた兵士がごく普通にみられる。

兵法というと言葉が古臭いが、スタジアム、観光地とホテル地区を結ぶ「守備線」を設定して部隊を配置して、デモ隊の動きを予想して部隊を移動させて、デモ隊の守備線突破を許さないような用兵をするのだろう。
空港と観光地区を結ぶ主要道路がファベラの横を通っているようなところにも守備線が設定され、警察と犯罪組織の衝突による銃撃戦の絶えないスラム街を観光客動線から隔離することも大事な使命である。

軽銃器といっても軍隊の装備である。
警察官の短銃と異なり、銃身の長い目立つ武器である。
こういったものを持った本物の兵士が、町中にうじゃうじゃ駐留することになるのだ。
日本で迷彩服を着た兵士は災害時でなければ見られないだろうから、珍しい風景だろう。
許可を乞えば記念写真撮影を許してくれるかもしれない。
作戦中だからだめと断られるのが落ちか。

というのが私の予想なので、外国から来たサポーター応援観光客は、空港からホテルに着くまでや繁華街に、平時にかかわらず大勢の作戦執行中の陸軍部隊を見ることになるだろうが、こういったいきさつがあるので、驚かないで普通に行動すれば何も怖くない。

2014年5月11日

8か80は良いが18と88はだめ?

<ヒトラー賛美の隠語>洗剤宣伝のはずが…ドイツで出荷停止

毎日新聞 5月11日(日)20時20分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140511-00000051-mai-eurp

こういう見出しを見ると、問題の隠語とはなにか非常に気になって思わずクリックしてしまうものだ。
何しろ、南米というとナチス残党の隠れ家といわれて、ひっそり世を忍んでいた者の正体がときどき不意に明らかになってニュースになることがある。
今はみな老人なので、まあ放っておいても自然に忘れられ消えていく運命とは言えようが。

記事を見ると、アルファベットの8番目がHのため、88がハイル・ヒトラー(Heil Hitler=ヒトラー万歳)、18がアドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)を示すとされている。
隠語というから、なにか単語かフレーズなのかと思ったら、数字ではないか。
15, 16, 17と数を数えてきて、18となったらドイツ人は胸がドキドキするのだろうか。
出席番号が、まあそういうものがドイツの学校にあったならばだが、18にあたる生徒は嫌な思いをして一年を過ごすのか。

洗剤に88とか18とかの数字が書かれているのは、その製品の総量で88回あるいは18回洗濯ができるという、ごく当然な理由なのだがやはりアウトなのか。
「ナチス賛美につながる宣伝が刑法で禁じられている」というから、禁じられているのは賛美につながる禁句を宣伝に使うことであり、製品の包装に堂々とこの数字を書くことは避けるべきなのだろう。
87回とか19回だったら問題なかったわけだ。

ポルトガル語Wikipediaには、
"Normalmente, o número 88 é associado à saudação utilizada pelos Nazis, "Heil Hitler". Visto que H é a oitava letra do alfabeto, 88 torna-se HH."
と書いてあるから、88がハイル・ヒトラーを意味することは一部では知られているようである。

ブラジルに「8か80」(Oito ou Oitenta)という表現がある。
http://www.significados.com.br/oito-ou-oitenta/

"Oito ou oitenta significa extremos, tudo ou nada."
と説明されているので、"all or nothing"、両極端で中庸は無し、という意味だ。

漢字の「八」は末広がりの形だ。
十八番とは、最も得意な芸や技である。
米寿は88歳の長寿お祝いである。
八十八夜とか四国八十八箇所とか88はかなり良いイメージの数字である。

8は中国人にとっては縁起の良い数字という。
ナンバープレートの入札で8888など超高価になると聞いたことがある。

ブラジルでは88というとすぐに思い出すイメージが二つある。
さっそく見てもらおう。


八十八蝶 Borboleta Oitenta e oito (学名Diaethria clymena)


オイルサーディン缶

オイルサーディンの宣伝文句は、
「8でもない80でもない、88だ」Nem oito nem oitenta, é oitenta e oito
「8か80」のもじりとみた。

オイルサーディンのマークがなぜ88というのかは不明である。
ましてや蝶の羽の88はなぜかといわれても、創造の偶然あるいは進化の気まぐれというしかない。