2020年11月18日

BRICSでの新型コロナと環境問題の不和

 あまりよそでは報道されていないようだが、昨日2020/11/17に、BRICS首脳のオンライン会議があった。
最近はあまり注目されることが少なくなっているが、当初はBRICsであって、ブラジル、ロシア、インド、中国であったと思う。
現在は南アフリカ共和国が加わって5カ国となってBRICSとなったと認識している。
今回の議長はプーチン大統領、来期の議長国はインドである。

簡単な報道をさらに簡潔にして書いておく。
新型コロナウィルスについて、中国習主席はWHOを中心に各国は取り組むべきだと述べた。

インドと南アフリカは、国連安全保障理事会の改革を唱えた。
何気にBRICSには、国連安全保障理事会で拒否権を持つ5カ国のうち2カ国が入っている。
それも面倒くさい向きの2カ国である。
インド・ブラジル・ドイツ・日本が共同で常任理事国に向けて行っていた運動についても最近あまり聞かなくなった。
他の件が忙しくそれどころでないのだろうか。

4番目に発言したブラジルのボルソナロ大統領は、最初にブラジルはワクチンの速やかな開発を希望するというようなコロナ関係について述べたが、すぐに話題を変えた。

ブラジル国土のアマゾンその他の地域に蔓延した野焼きについて批判する国々は、一方でブラジルで不法伐採された木材を大量に購入していると述べた。
これを聞いて、南米のコカイン生産国が米国などから麻薬取締のゆるさを指摘されたときに、そんなことを言っても米国や欧州の需要が大きく、貧しい地方の現金収入となるから撲滅は無理だと反論することを連想した。

よく考えると麻薬と木材のケースは全く異なる。
麻薬の場合は売る方買う方両方が違法なことをしている意識があるはずだ。
木材の場合は売る方は違法であることを承知しているが、買う方は輸出入書類が偽装されているかどうかわからないのではないだろうか。
だからこれは無茶な言いがかりであると思う。

米国でもブラジルでもマスコミは右翼を目の敵にするが、今回の報道でも、全く証拠を示さずに環境破壊を人のせいにしていると、米国のトランプ大統領へ向けられたのと同じ論調(全く証拠を示さずに人のせいにする)であった。
全く証拠を示さずに人のせいにする強引さは、多分右翼の常套手段なのだろう。

最後にボルソナロ大統領は、WTOや中国が擁護するWHOを含む国連とその各組織は機能不全であり改革されるべきだと、安全保障理事会についてはインド・南アフリカに賛同、WHOについては中国に反対する立場をとった。

中国本体への直接の批判はさすがに避けたが、新型コロナウィルスについてトランプ大統領と同じ意見を持つボルソナロ大統領は、間接的に中国を批判する形になった。
中国は今やブラジルの輸出の最大顧客であって、精一杯の批判と言えるかも知れない。

ボルソナロ大統領は、サンパウロ州立大学ブタンタン研究所と共同して行われている中国シノヴァッキ(Sinovac)社の新型コロナウィルスワクチンの第3フェーズ試験に横槍を入れた。
ここでサンパウロ州のドリア知事は、2022年の大統領再選で対決する可能性のある、ボルソナロ大統領の政敵であることを忘れてはいけない。

報道の最後に、宣言か決議か忘れたが会議の共同書類の発表では、パリ会議の遵守などが唱えられて、環境対策についてはボルソナロ大統領の立場は受け入れられなかったようであった。
トランプ大統領の再選可能性が限りなく小さくなった今、環境問題でブラジル大統領の味方になってくれる仲間を見つけるのは不可能に近くなってきた。