2011年7月31日

ブラジルに新幹線はいらない?(その2)

ブラジルに新幹線はいらない?(その1)

日本のニュースをみるのに、あらたにすを使うのだが、日経と朝日で全く反対の記事があった。

ひとつは
「中国「新幹線」空席8~9割 急速に鉄道離れ
収入減、今後の整備計画に影響も」(2011/7/29 23:09 日本経済新聞Web)、
一方、
「中国高速鉄道、ほぼ満席 絶えぬ「速さ」求める人たち」(2011年7月30日22時8分 asahi.com)
ということである。

どちらが真実に近いのかはわからないが、取材した日時や調査対象の路線が異なっていたら、全く反対の結果が出るのかもしれない。

さて、ブラジルと中国の高速鉄道運賃の比較をしてみよう。

asahi.comによると、「温州永嘉駅-上海まで1等席が219元(1元は約12円)で、正規運賃だと千元を超える飛行機より大幅に安く、長距離バスと大差ない」。
そこでGoogle Earthを使い、両都市間の距離を求めてみた。
車で移動した場合の走行距離であるが、鉄道でも大差がないと仮定しよう。

温州永嘉-上海の距離は439km、運賃は219元、1元は約12円だから、2,628円である。
リオデジャネイロ-サンパウロの距離は442km、ブラジル政府が要求する最高運賃は200レアル、1ドル=77円=1.57レアルで計算すると、9,809円となる。

ブラジルは中国の3.7倍も高いではないか。
ブラジル政府の設定するリオデジャネイロ-サンパウロ高速鉄道運賃の上限200レアルは、ブラジル国内では高すぎるという声が多い。

リオデジャネイロ-サンパウロのバス運賃を調べてみた。
座席の大きさで異なるが68から114レアル、新幹線の三分の一から半分くらいに当たる。

中国の鉄道運賃は異常に安すぎる。
しかしブラジルでは同じ距離を走らせて3.7倍も収入が上がるのに、中国は応札しなかった。
よほどブラジル側の要件が法外なのだろう。

さらに気になるのは次の記事だ。
"The price of high-speed ambitions" (BBC 28 July 2011 Last updated at 11:41 GMT)

この記事によると、今回の事故で中国は米国への高速鉄道展開のチャンスをゼロにしてしまった。
それだけでなく、マレーシア、ベネズエラ、サウジアラビアは、中国の高速鉄道をコピーしたいが、計画は中断した。
とあるのだが、ブラジルはどこへ行った?
先日のブラジルの高速鉄道入札不調により、計画自体が消滅したのかと思ってしまうような記事だ。

ブラジルでの中国の高速鉄道事故の報道は極めて少なく、事故当初にテレビで流れたが、事故後の車両を埋めたり掘り返したりとか、遺族の補償とか報道管制とかの動きは表に出ていない。
経済紙には出ているのかもしれないが確認していないのでわからない。

高速鉄道建設に国民の興味があったなら、建設運営体になる可能性のある中国での事故に報道は無関心ではいられないと思うのだが、冷めている。
中国の高速鉄道事故の報道量は、
日本(朝日・日経・毎日サイト) >> BBCやReutersサイト >> ブラジルのTVやサイト
の順に少なくなる。

日本では全く出ていないニュースだと思うが、今ブラジル連邦政府の運輸省(Ministério dos Transportes)は汚職で揺れている。
入札不正で連邦政府資金が横流しされているとTribunal de Contas da União(会計検査院)から指摘されて、政府高官20名が罷免されている。
足元に火がついて新幹線入札どころではないのではないか。

当初は2014年ワールドカップまでに開通させると言っていた気がするが、このまま応札者なしだから仕方ないという形でうやむやに消えて行くような気がしてならない。

2013年8月12日追加

Leilão do trem-bala é adiado em um ano
Ministro dos Transportes e diretor-presidente da EPL anunciaram uma nova mudança na data para a concessão dos interessados na construção do trem de alta velocidade
iG São Paulo | 12/08/2013 13:21:23 - Atualizada às 12/08/2013 16:43:14
という記事が出た。

運輸相が高速鉄道入札の1年延期を発表した。
入札期限は2013年8月16日金曜日であるが、応札が1社に終わりそうだというのだ。
記事の中には「Japão, Alemanha, França e Coreia do Sul、つまり日本、ドイツ、フランス、韓国を含む、少なくとも7ヶ国の企業が興味を示した。」とあるのだが、その気配がみられない。

ブラジル政府は、そのうち安くなるだろうからと、永遠に延期を繰り返すつもりだろうか。
投げやり感満々である。

2011年7月29日

北は暗いから脳が大きくなった

http://www.reuters.com/article/2011/07/27/us-brains-north-idUSTRE76Q1HD20110727
という記事だ。
世界各地の原住民の頭蓋骨の比較研究をしたところ、高緯度地方に住む人ほど、脳と眼球が有意に大きいことがわかった。

誰もが知りたがるだろうが、研究者は脳が大きいから頭が良いとは言っていない。
高緯度地方は曇りがちで日光も弱いので、生きるためには暗い環境で物を見る視力、つまり大きな眼球と信号処理をする脳が必要だという。

こういった話が出ると、ヨーロッパのような寒い地方に住む人間は生活のための知恵が必要だから文明が発達したのだ、熱帯地方では頭を使わなくても生きていけるから遅れたままなのだ、などという人が出てきて、だからブラジル人は……、とお決まりの文句になりがちだ。

研究対象になったグループはイングランド、オーストラリア、カナリー諸島、中国、フランス、インド、ケニア、ミクロネシア、スカンジナビア、ソマリア、ウガンダ、米国の原住民で、1800年代からの頭蓋骨が調査された。
一番脳と眼球の大きいグループはスカンジナビアで、一番小さかったのはミクロネシアだった。

現代人で比較実験したら、スカンジナビア人はミクロネシア人より夜目が効くはずであるが、そういう研究はないのだろうか。

2011年7月27日

デング熱対策に一日22杯の水

今日はブラジルに旅行で来る人にも役立つ情報だ。

ブラジルの大部分の州には、熱帯病であるデング熱がある。
Dengueと書かれ、デンギと発音される。

病原体はウィルスで、ウィルス病の常として特効薬がない。
さらに悪いことに、ワクチンもない。

媒介するのはデング蚊(mosquito da dengue 学名はAedes (Stegomyia) aegypti-"エジプトの憎き奴"という意味なんだそうだ)外見は薮蚊の一種だ。
予防は蚊に刺されるのを防ぐこと、そのためにボウフラのわく水たまりを撲滅するために市役所の見回り人が各家を訪問して排水口、冷蔵庫の霜解け水蒸発皿、植木鉢の受け皿、裏庭に転がっている空き瓶や古タイヤの水たまりなどを丹念に点検する。

潜伏期は約7日、症状は頭痛、眼球の奥の痛み、高熱から始まる。
熱は3、4日で治まるが、その時期が要注意だ。
嘔吐、腹痛、失神などを症状とする重症の出血性デング熱に進行すると、血管から出血が起き、肝臓・脾臓・肺・骨髄・脳・心臓に及び、生命に関わる。

さて今日のニュースだが、上に書いた症状があってデング熱にかかったかなと思ったら、水を多量に飲むのが良いそうだ。
どのくらい多量かというと、体重1kg1日当たり60から80ml、体重70kgの人なら1日に最低4.2リットル、180mlコップだったら22杯だ。
水に限らず、お茶でもジュースでも良いからとにかくたくさん水分を取ることが大事だ。
発症してから最初の24時間に十分な水分を補給すると、症状を軽くして、出血性に達し難くするという。

この日のニュースでは触れなかったが、デング熱の場合、アスピリンを服用してはいけない。
デング熱には、水分大量摂取、アスピリンは禁物、ぜひ覚えておこう。

(2011年7月26日Globo Jornal Hojeより)

2011年7月22日

外国の医学部で金をかけずに医師になる

ブラジルの公立大学は授業料が無料である。
連邦立・州立・市立全部が無料かは確認できないが、少なくとも連邦立大学は無料だ。
だから特に医学部などは狭き門である。
普通に倍率100倍を超す。
しかしこの高倍率の理由は、もしかしたら受かるかもという楽観的受験者が多いというブラジル事情があるのだが。

難関の公立大学に入れないが、さりとて私立は授業料が高すぎるという向きには、留学という方法がある。
留学が安くつく?

アルゼンチンの103の大学の85%は公立で、大部分は首都ブエノスアイレスにある。
入学試験はなく、全員が入学できる。
全国150万人の大学生のうち、少なくとも2万5千人は外国人だ。
グラフィックデザインを例にとると、UBA(ブエノスアイレス大学)で学ぶ場合に授業料はゼロ、一方サンパウロの私立大学の授業料は月額2500レアルにまで達する。
公立大学の授業料無料はブラジルもアルゼンチンも同じだが、入学試験の有る無しが違う。

あるブエノスアイレスの私立大学で医学を学ぶブラジル人は400人を数える。これから入学の新入生500人のうち30%はブラジル人だ。
食費・住居費・交通費は個人持ちだが、レアル高の為替がブラジル人の味方になる。
現在1レアルが2ペソ以上に相当する。
一番授業料の高い医学部で7年間学んでも合計14000レアルしかかからない。

入学は簡単で身分証明と高校課程終了証明を添えて申請するだけだ。
しかしどの学科にも必修の1年間の基礎課程の後、難しい進学試験がある。
ポルトガル語とスペイン語は非常に似ていると言われるが、ポルトニョールと呼ばれる国境付近で話されるような両言語まぜこぜでは学生はやっていけない。

ようやく卒業しても難関が待っている。
アルゼンチンの医学部卒業者がブラジルで医師として医療行為をするためには、ブラジルの学位有効化試験に通らなければならない。
アルゼンチンの法学部卒業者がブラジルで弁護士として働くためには、OAB(ブラジル弁護士会)の試験に合格しなければならない。
OABの試験はブラジルの法学部卒業者にも課せられるため、スペイン語でアルゼンチンの法律を学んでから、ブラジルの法律を学び直して試験を受けるメリットはないように思える。
(以上2011年7月20日 Globo Jornal Hojeの記事をもとにした)

と、この報道があった日にインターネットで見たのは、医者になるためにロシアの大学に行くという話。
記事になったのはクルスク(Kursk)州立医科大学で学ぶ17歳のブラジル女子学生のケースだ。

Aliança Russaという団体が、ロシアの大学を代表してブラジル国内で試験を行う。
選考を通って11月にロシアへ渡った17名のうち、今ロシアに残っているのは7名という。
授業は英語で行われるが、ロシア語も欠かせないらしく、11月から1月まではロシア語の授業だったという。
諦めたブラジル人にとっては、寒さと言語が大きな障害となるようだ。

カロリーネは高校卒業時のブラジルの公立医学部受験に落ち、私立に行く金はなく、予備校に行く気もないので、ロシア留学というかなりまれな道を選んだ。
ロシアの大学は外国からの留学生を奨学金付きで受け入れていて、(彼女の場合?)学費は年間5900レアルになる。
これはブラジルの私立医学部の2ヶ月の授業料に当たる。
さらに4人部屋の寮費を含む生活費が月700レアルかかる。
この月額1200レアルの勘定は、ブラジルの私立医学部で学ぶ場合よりずっと安くなるわけだ。

外国の大学で学び取得した学位をブラジルで生かしたい人は、学位を承認し法的有効化する手続き、つまりアルゼンチンの例であげた試験に合格することが必要だ。
これはアルゼンチンもロシアも同じだ。

ブラジル国内25の公立大学が協力して昨年行われた医師学位有効化試験法制化の先行試験は、32ヶ国で学んだ628名が挑んだが、合格者はたった2名だった。
どうも卒業後に最大難関があるようだ。
時々摘発される偽医者は、外国の医師資格をブラジルで有効化できない人が偽って病院で働いているのではなかろうか。

(以上2011年7月20日 http://ultimosegundo.ig.com.br/educacao/por+curso+de+medicina+brasileiros+vao+a+russia/n1597091493486.html から)

2011年7月17日

家政婦のお手伝いさん

ブラジルで家政婦は"empregada doméstica"という。男性だったら"empregado doméstico"となるのだが、これは聞いたことがない。

家政婦の給料の上昇(2002年から2011年まで9年間で+43.5%)が一般勤労者の給料上昇(同期間で+25%)より高いため、家政婦が別の家政婦を雇うことが増えている。
ブラジルの人口上昇に家政婦の供給が追いつかないのと、最低給料の上昇率がインフレ率を上回るように設定する所得引き上げ政策が、家政婦給料の高騰を招いている。

ブラジルに家政婦は600万人いるのだが、そのうちの100万人は金を払って他の人に家事を手伝ってもらっているという。
10年前にはあまりみられなかった現象だ。

テレビのドラマはしばしば上流家庭が舞台になるから、家政婦さんはドラマでよく見るのだが、人件費高騰のため最近の実世界では、専属家政婦として契約するのでなく、一日単位で派遣してもらい、例えば週に2日来てもらうと、時間あたり給料は増えることがあっても月間に支払う額は少なくなる。
この形態はdiaristaジアリスタと呼ばれる。
月雇いだったらmensalistaメンサリスタだ。
昔の家政婦さんのように炊事洗濯掃除アイロンかけから子どもの世話まで全てやってもらうのでなく、独身者なら炊事は外食、洗濯は洗濯機で、掃除だけは人に頼むけれど、独り者だから週1回掃除してもらえば良い、という場合もある。

当然だが、545レアル稼いでいる家政婦が他の人を雇って545レアル払うわけはないのだ。
例えば週6日フルタイムの正規雇用(ブラジルで正規雇用とは労働手帳に記載するということ)で家政婦の仕事をしている人が、自分の家の掃除をしてもらうために週2日半日ずつ不正規雇用(口頭での労働契約)のお手伝いさんに来てもらう、というようなケースなのだろう。

2011年7月15日

コパ・アメリカ2011と南米四天王

昨年2010年の南アフリカワールドカップで、ベスト8に4ヶ国も入って「南米大会か」と言われたが準決勝に一つも進めなかったブラジル・アルゼンチン・ウルグアイ・パラグアイの南米勢であったが、コパ・アメリカでも2試合目まで引き分けのみというスロースタートぶりだった。

ブラジル・アルゼンチン・ウルグアイはグループリーグ最終戦(第3戦)で一勝し、パラグアイは3戦引き分けだったが4チームは決勝トーナメントへ進んだ。
出場全12チームのうちの2つの招待国、メキシコとコスタリカはトーナメントへ進むことはできなかった。

コスタリカは当初招待されていた日本の代わりに出たのだが、日本が出ていたら面白かっただろう。
日本女子は決勝まで進んでいるが、男子もコパ・アメリカに出てトーナメントに進んだでいたら応援もさらに熱が入ったであろう。
震災とかJリーグの日程の都合とかあったようだが、無理しても出ておいたらよかったと思う。

さて、ドイツでの女子ワールドカップであるが、準々決勝で日本がドイツに勝った後、Globoスポーツニュースでは、大番狂わせで日本が優勝候補のドイツを破ってしまったからのブラジル・米国戦は事実上の決戦などと報道していた。
結果はPKでブラジルは敗退した。

女子決勝はブラジル南東時で7月17日15時45分、コパ・アメリカのブラジル・パラグアイ戦の15分前にキックオフとかぶっている。

2011年7月12日

レッドカードは消費者保護法違反?

リオ・デ・ジャネイロ市から北へ160キロ余り、ミナス・ジェライス州のジュイス・ジ・フォーラ(Juiz de Fora)は、人口約52万人の、州で4番目に大きな堂々たる中核都市である。
3万5千人収容のスタジアムがあり、Tupi Football Clubという1912年創立、2010年CBFランキング104位のクラブがある。
その市議会が物笑いの種になりそうな審議会を開いた。

ある市会議員が、フットボールの退場規定、つまりレッドカードに異議を唱えたのが審議会の発端だった。
観客がプロフットボールの試合を入場料を払って観戦するということは、両チームで22人のプレーヤーが行う試合を楽しむ権利があるということである。
よって、レッドカードでプレーヤーが退場して22人が21人になってしまったら、消費者(=観客)の正当な権利が損なわれる、というのが発案議員の言い分だ。

FIFAの資格を持つ?審判が呼ばれて意見を求められたが、彼は現行ルールを支持した。
市議会議長はテレビのインタビューで、ルール改正はFIFAによって行われるものであり、市議会は決定権はないけれど審議をするだけだ、審議を行うのは自由である、というようなことを言っていた。

もっと他にやることはあるんじゃないの?と言いたくなる記事であった。

(Globo MGTV 2011年7月12日より)

ブラジルに新幹線はいらない?(その1)

2011年7月11日ニュースで、再三期限延長されたブラジルのリオデジャネイロ-サンパウロ-カンピーナスを結ぶ約500キロメートルの高速鉄道入札が、入札者ゼロで不調に終わったと報道された。

ブラジル政府が入札者に求める要件が、総工費340億レアルの建設は全部入札者持ちで、営業は運賃の上限キャップありという、入札企業にとってリスクの大きすぎるものらしく、第1回目入札でただ一社応札した韓国企業体も今回は降りてしまった。
民間企業体は、ブラジル政府の工費計算は過小で、実際は550億レアルに達するとみている。
韓国や中国が応札しないというのは、実際に採算面で厳しいものなのだろう。

過去のメモを見たら、ほぼ1年前の2010年7月13日に入札開始の記事があった。
ブラジル政府の求める運行条件は、リオデジャネイロ-サンパウロ間を1時間半で結び、運賃は200レアルに抑えるというものだ。
当時インターネットでは、飛行機と比較して200レアルは高すぎるという意見が多くみられた。
現在も鉄道不在で飛行機と長距離バスにより行われている両大都市を結ぶ交通は、別に高速鉄道などなくても構わないという空気を醸し出している。

ブラジル政府も強気を引っ込め、今回まで建設運営一体で入札をしたのを止め、建設と運営を分離して新しい入札を行うことにしたらしい。
しかし、Globoの報道班は、新方式の入札について企業コンソーシアムの一つに質問したところ、投資額に見合う収益が見込めない点は以前と変わっていないという返答を得た。

(Globo Jornal Nacional 2011年7月11日及び
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C9381959CE3E0E2E2978DE3E0E2E5E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2?n_cid=DSANY001
から)

ブラジルに新幹線はいらない?(その2)

2011年7月7日

公立小学校の9割が「さすまた」を常備

http://moneyzine.jp/article/detail/197503

U字型の金具に2~3メートルの柄がつき、距離を保ちながら相手をはさみ、動きを封じ込める道具「さすまた」。
こんなに普及しているのか。

**引用**
「新さすまた 御用1号(胴体捕捉用・2万6250円他)、御用2号(足捕捉用・2万円)/三和コンベア」。
スプリング鋼(バネ材)の使用で広がる開口部と、折り返し(抜け防止)加工が、不審者をはさみやすく、そしてがっちりと離さない。
さらに保管や持ち運びを考慮して、柄の部分は伸縮する。使用の際は、御用1号、2号の併用が効果的だという。
(略)
カラフルなさすまた「叉護杖(さごじょう・1万500円)/実川製作」。
**引用終わり**

「御用1号」、「御用2号」、「叉護杖」、商品名がそそる。

しかしこれ、普通の人に簡単に使えるものだろうか。
訓練が必要でないのか。
日本ではさすまた講習会などあるのだろうか。
私は時代劇捕物ファンでないので、扱えそうもない。

これはブラジルで使えるだろうか。
「御用1号」と「御用2号」を日本で買っても、飛行機に搭乗できるだろうか、米国に入国できるだろうか、ブラジルで通関できるだろうか。
"fork to hold invader"あるいは"garfo para imobilizar invasor"と言ったら分かってくれるだろうか。
不審者と見られて、反対にこちらが捕まってしまうかもしれない。

使う場面になったとき、「御用1号」で侵入者の胴体を押さえて、「御用2号」で足を押さえるのは良いが、ピストルを持った腕を押さえる「御用3号」がないと、かえって危なそうだ。
仮に、「御用1号」・「御用2号」・「御用3号」全部揃っていても、こちらが1人では一つしか使えない。
侵入者が2人いたらもう大変だ。

しかたがないので、わが家は、防犯システムと飼い犬とゴルフクラブからなる、現在の防犯体制を続けよう。

2011年7月6日

銀行手数料に注意

サンパウロのPROCON(消費者保護機関)が、銀行手数料の調査をした。
同機関の消費者向けアドバイスを書く。
  1. ATMからの現金引き出しは、30分以内に行った操作は全て一回と勘定する。
  2. 消費者の請求がないのに勝手にクレジットカードを送付することは禁止されている。でも送付されてきた場合、カードを使用せず銀行に連絡しキャンセルを依頼する。
  3. 銀行に口座を開く際に、同時にクレジットカードを作る義務はない。抱き合わせ販売は消費者保護法で禁止されている。
  4. クレジットカードの請求額は全額支払う。支払いの遅滞は罰金・利息・手数料などを徴収される。
  5. 銀行サービスの追加サービスパッケージの契約をする場合、既に銀行から無料で提供されているサービスを十分使用しているか確認する。
1.は初耳だ。だがこれは有益な情報だ。100レアル引出したいのだが、一部10レアル札で欲しい時に、まず90レアルおろし、次に10レアルおろす。これを2回とカウントされてしまうと、無料でATMから引き出しができる回数が1ヶ月4回という制限にすぐに引っかかってしまう。

2.と3.は禁止されているにもかかわらず今でも時々起こるようだ。銀行へ連絡する手間がかかり面倒だ。

4.は銀行の儲け口の一つだ。クレジットカードの請求書に、「分割払いしませんか」の勧誘が一緒に入っている。こういうのに騙されてはいけない。

5.は、中央銀行が基本サービスの内容を指定し、無料で提供するよう定めている。下に書いておく。

中央銀行が定める銀行の無料サービス群(一月当たり回数)

小切手発行数 10
窓口・ATM・代理店での引出し 4
窓口・ATM・代理店での最近30日の取引明細書 2
窓口・ATM・代理店での同銀行内の振替 2
最初のデビットカードの発行 無料
2枚目以降のデビットカードの発行 無料(紛失・盗難・破損など銀行に責任がない場合を除く)
インターネットによる照会 無料
小切手の決済 無料
前年に徴収された銀行手数料の使用明細 無料

2011年7月5日

あぶなくないフェジョアータ

インターネットラジオ・クラシックステーションOttavaで初めてこの曲を聞いた。
Heitor Valla-Lobos作の1分くらいの短いピアノ曲だ。

曲の名前が珍妙だ。
原題でも"Feijoada Sem Perigo"=「危険のないフェイジョアーダ」だ。
フェイジョアーダはうちで作ることもあるが、うちのフェイジョアーダは危なくないと思う。

「危ないフェイジョアーダ」はどんなものだろうか。
毒入りフェイジョアーダか。
薬物が入っているのか。
腐りかけていて食べると当たるのか。

曲を聞くと、夜更けの森林に迷い込んだような、幽玄な気持ちになる。
黒いんげん豆と豚の耳・足・肉・ソーセージなどを煮込んだ、見た目には真っ黒いしるこのような食べ物を初めて見た人は、こんな気分になるのだろうか。
「これ食べても大丈夫かしら?」

ヴィラ・ロボスはブラジル人だからフェイジョアーダを珍しがるはずはない。
ヴィラ・ロボスが外国人と一緒に食事をしたときに、怖気づく客を安心させるために「見た目は奇妙だが、危なくないよ、フェイジョアーダは」と言ったのだろうか。
そしてフェイジョアーダを初めて見た外国人の気持ちを曲にしたのだろうか。

謎だが、曲名の珍妙さではサティの足元にも及ばない。
ということで納得しておこう。

Telescópio = 出目金

テレビで地元の水族館を紹介していた。
telescópioと聞こえたので見たら、出目金だった。

telescópioとは望遠鏡のこと、葡日辞典を見てもこの訳は載っていない。
検索したら、"peixe telescópio", "kinguio telescópio", "olho de telescópio"とかいろいろな呼び方があるようだ。
なぜそう呼ぶかは説明するまでもない。

peixe = 魚
olho = 目
kinguio = 金魚(日本語からだろう)

2011年7月4日

日本並みに安くなるか?インターネット接続(その1)

インターネットは、仕事・娯楽だけでなく、ブラジル人の日常生活にも大きく関わっている。

例えば、個人の所得税申告は、昨年は紙のフォームに記入して提出できたのだが、今年4月の最新の申告は、インターネットあるいはフロッピーディスクのみしか受け付けないようになった。
また、多くの公立大学が入学試験に代用したり、政府の奨学金申請に必要な教育文化省の中等教育統一試験は、インターネットを通じてしか申請できない。

自宅にも職場にも友人宅にもインターネット接続がない人はどうするかというと、有料のLANハウス(ブラジル版インターネットカフェ)や、無料で使える公立学校のパソコンを使って、市民の基本的義務や権利を行使しているのだ。
テレビでも、「詳細はインターネットサイトで」というニュースが多くなっている。

連邦政府はインターネット接続を大衆家庭に普及拡大するプログラムを発表した。
政府案では接続料金は1Mbps月額R$35で、現行価格の約半分に当たる。
うちのインターネット接続は、ベストエフォート800kbps実効670kbpsに、R$79も払っているから、実現すれば半額以下になり大歓迎だ。

政府の目標は2014年までに70%の家庭にインターネットを普及することだ。
今日インターネット接続を所有する家庭は27%に留まっている。

接続会社は計画に適合したプランを準備するために90日の期限を要請した。
もう一つこのプログラムで重要なのは、現在ベストエフォートで良いというのでごまかされている通信速度を、実効速度で実現させることだ。
Agência Nacional de Telecomunicações(テレコミュニケーション管理庁)は今年10月末までに細則を決定するという。

政府は同時に、低所得家庭向けに月額R$10以下で、90分の通話が追加料金無しでできる固定電話プランを導入したいという。

これが実現したら街角のLANハウスがかなり閉店に追い込まれるのではないだろうか。

日本並みに安くなるか?インターネット接続(その2)

軽犯罪では捕まらない?

2011年7月4日より拘留法が一部改正され、拘留について変更がある。
ブラジルの犯罪と懲罰について参考になりそうなので書いておこう。


Crimes leves = 軽い犯罪 懲役4年まで


被疑者は保釈金を払い、逮捕されることなく判決を待つ権利を有す。また、判決があっても、社会奉仕などの代用懲罰、刑務所外囚役の道があるため、必ずしも刑務所で懲役するわけでない。

これまでは現行犯は必ず一度逮捕され、保釈については判事の裁決が必要だった。
これからはdelegado da polícia(民事警察署長)が現行犯逮捕調書作成後、保釈の決定をすることができる。
これまでに軽い犯罪で現在拘置されている被疑者は、今回の改正により、釈放される可能性が出ている。

次にあげるのは軽い犯罪ではないが、delegadoが保釈金額を決定して釈放することができる。
  • furto = 窃盗 暴力を使わず他人の財物を奪うこと
  • estorção = 恐喝
  • receptação de produtos roubados = 盗品故買
  • homicídio culposo = 過失致死 殺意なく殺人を犯した場合、例えば、不注意運転で人をはね殺した場合

crimes graves = 重大な犯罪 懲役4年以上


これまでは重大な犯罪の現行犯逮捕の場合、拘置されていた。
これからは判事が現行犯逮捕後48時間以内に保釈に関しての決定を行う。
勾留・釈放の二択でなく、保釈時に位置確認装置の装着、自宅監禁、旅行・出国禁止、被害者・証人からへの近接禁止命令等様々な条件をつけることができるようになった。

次のような犯罪はcrime hediondo凶悪犯罪となる。
凶悪犯罪には保釈がない。
  • tráfico de drogas = 薬物取引
  • latrocínio = 強盗殺人
  • sequestro = 誘拐
  • estupro = 強姦
  • tortura = 拷問
  • racismo = 人種差別
  • homicídio doloso = 計画的・他人を死に至らす危険を知りながらの殺人、例えば、飲酒運転、スピード違反、信号無視で人をひき殺した場合

次にあげる犯罪も重大な犯罪であるが、判事は保釈金額を定めて、釈放することができる。
  • corrupção = 汚職
  • roubo = 強盗 暴力を使って他人の財物を奪うこと
  • crime financeiro = 経済犯罪
  • furto qualificado = 暴力は使わないが計画的な窃盗

この改正については、法曹専門家の間でも意見が割れている。
庶民の治安への不安感を配慮して保釈が得られにくくなるという意見があれば、反対に、軽い犯罪で拘留されることはほとんど無くなるとする意見もある。

ブラジルは、特に軽い犯罪に対する刑罰が世界的に見ても甘いと、ある識者も述べている。
日本で犯罪を犯してから、無断でブラジルへ帰国した在日ブラジル人への代理処罰が甘過ぎるという、一般的日本人の意見を裏打ちしている。

一方で、今回の改正は勾留についてのみであり、軽い犯罪による拘置から出所の恩恵を受ける人も、重大な犯罪で保釈を得る人も、本来刑務所にいるべきではないのだから無処罰の氾濫には当たらない、刑罰確定前は慎重でなければならないのとの意見もある。

アメリカン・ドリームの終焉

アメリカン・ドリームといっても、ブラジルの、それも庶民の抱く夢の話である。

20年ほど前から続いていた、より良い生活を求め米国へ出稼ぎに行くブラジル庶民の国際移動が、現在全く逆向きになっている。
米国のあるブラジル系旅行代理店では、2011年のブラジル行き片道航空券の発券は昨年同期間と比較して+54%増加したという。
ブラジル人の引越しで、旅行代理店だけでなく、国際引越し業者は繁盛している。

金融危機以前にブラジルを立ち、米国で良い職につき、高給を得て、立派な家に住む夢をみたブラジル人も、2008年のリーマンに発する金融危機後の米国の低調な経済に嫌気がさして、現在はブラジルに戻り、渡米以前にしていた仕事や、身につけた新しい仕事で生きていこうとする動きが目立っている。

(2011年6月13日ニュースより)

2011年7月1日

「マイナンバー」が不良支払い者ブラックリストに載った

ある人(私自身ではない)が受け取った「不良支払い者ブラックリストへ登録する通知」を見た。
差出人はSerasa Experian、通常セラーザと呼ばれる消費者信用照会機関である。

通知ではまず、1990年9月11日の法律第8,078号による、とブラックリストへ名前を載せる法的根拠を述べ、個人登録番号(CPF)、氏名、債権者名、記載金額、本来の支払期日、取引形態、照会番号のデータが続く。

通知発行年月日を見ると、60日間支払いを滞ると通知が発行されることがわかる。
もちろん60日経過する前に、債権者(たいていは掛売りをした商店)は、債務者(商店から掛けで買った消費者)へ督促状を何通か送っているし、上にあげたデータはSerasa Experianに既に届いていて、支払いがなければ即座にブラックリスト登録できる準備ができているわけだ。
Serasa Experianは10日間債権者と債務者の解決(つまり支払いか再交渉)を待ち、両者から解決の通知がない場合、ブラックリストに不良支払い者として債務者の名前が登録されることになる。

ブラジルの(納税者)個人登録番号は、もともと徴税のために連邦税庁が個人に付ける11桁の番号であり、一人に一意である。
だから個人識別に便利なので、いろいろな場面で使われ、納税義務のない未成年でも入試の受験応募などに使われるようになってきている。
身分証明書、社会保険、雇用管理はそれぞれ別の番号が使われるので、現在日本で検討中の共通番号制とブラジルの(納税者)個人登録番号は異なる。

しかし、日本の「マイナンバー」とは、ひどい名前をつけたものだ。
私のマイナンバーは、マイ・マイナンバー、あなたのマイナンバーは、ユア・マイナンバー、なんだかよくわからなくて恥ずかしい呼び方だ。