2017年7月31日

アファーマティブ・アクションの正しい方法

ブラジルのアファーマティブ・アクション
献血と肌の色の関係

アファーマティブ・アクション、積極的差別是正措置(po. ação afirmativa)は正式名称であるが、コタ・ハシアル(発音で表記-cota racial)と呼ぶほうが通りが良いようである。
直訳すると「人種割当」である。
例えば、人口比で黒人・褐色人(混血)・インディオ合計が30%である州では、選抜する定員の30%をこれらの人たち専用の割り当て分と定めて、これらの人たちだけが選抜対象となって、これらの人たちによって定員が充足されるというような選別方法である。

最近息子も通っている連邦大学の入試で、この選別が実施された。
国勢調査と同じく人種は自己宣告であり、自分が属していると信ずる人種が黒人であるならば、入試応募時に申告して割り当て分で入試を受けると宣言する。
割り当て枠内で合格点に達した場合、入試判定委員会の面接を受けなければ次へ進めない。
3人の面接官はこの分野(社会学・人類学)の専門家で構成される。
面接で尋ねられるのはただ一問だけ、「あなたはこれまで差別を受けたことがありますか?」であった。
答えの内容にかかわらず、面接官が全員一致で、「この人の人種申告に根拠がない」と判断すると、受験生は不合格となる。
どういうことか?

面接で何を確かめるのか知りたく、入試要項を見た。
判断はfenótipo、英語ならphenotype、表現型、つまり外見の特徴のみを判断材料とする。
その特徴とは、肌の色、髪の形状、顔貌であると明記してある。

ブラジルの国勢調査の人種項目は、全く個人の意志による自由な申告に基づいている。
一方、入試や公務員試験の人種割当応募では、人種申告が自由な申告に基づいているのであるが、判定委員会が存在して審査を行う。
この制度では、他人が見て判断する受験者の容貌によって人種が決定されるということである。

なぜ自由意志による申告に第三者の審査がかけられるのか、整合性がない、これでは文句を言い出す人がいるのではないかと思った。
第三者の審査がある理由は、自由申告だけで後に何の審査もない場合には、制度を悪用する者が出るからである。
平たくいうと、一般枠より受かりやすいだろうから、学費がかかる私立学校で学んだ白人であっても自分は混血だと嘘の申告をして、不当に合格しようとする行為である。

今回の入試でも、面接ではねられた不合格者が5名ほど検事局へ不服を申し立てた。
「うちの子は一見色が白く見えるけれど、申告したのにどうして混血と判断されないのか?」という不服である。

しかし当の検事局によると、前もって大学当局は入試の各過程について検事局と綿密な打ち合わせを行っており、連邦最高裁判所の判例に厳格に順法していて、もちろん合憲であると回答した。
同時に、入試要項に入試委員会による審査とその基準について明記してあることは、選別が有効になるために必須の条件である。