2018年5月31日

軍政復活や王政復古を願う人達

intervenção militar = 軍部介入
monarquia = 王政、君主制

トラック運転手ストライキ9日目の2018年5月29日になって、事態は好転に切り替わった。
先のトピックに書いたように、トラック運転手の労働者組合は、連邦政府と合意に達して、組合員には道路封鎖とピケを解いて労働に戻るように声明を出した。

5月28日になって連邦政府側がしきりとアピールしているのだが、組合執行部の決定に従わずに道路封鎖を続ける不服従集団の中に浸透している政治的分子の存在である。
政府と組合執行部の合意に満足せず、労働復帰を拒否している連中を煽っているのは、もはやトラック運転手でなく、反政府勢力であるというのだ。
それなら一体どんな政治的勢力なのだろうか。

ようやくストライキが解決したので喜んで労働に戻ろうとしたら、トラック運転手とは何の関係もないのにストライキ団に入り込んでいるおかしな連中に、ストを続けるように脅迫されたとインタビューに答えたトラック運転手が何人もいる。
ブロックから離脱しようと動かしたトラックに投石されてフロントガラスが割られたり、小競り合いでシャツを破られたりするトラック運転手もいる。
一体どこの誰がしているのかわからないが、ストライキを応援するように食事その他の差し入れが届けられる。

労働者のストライキと言ってまず想起されるのが、労働者党のような社会主義・共産主義を標榜する政党に率いられるものである。
しかし、ストライキの開始から現在に至るまで、左派運動につきものの赤旗や赤シャツは一切スト団の中には見られず、ストライキ名物の、貸切バスで送り込まれる土地なし・屋根なし運動の参加も見られない。
今回のストライキには左派は一切関与していないのである。

ストライキの収拾に失敗してストが長引き、国民生活への影響が過大になって一般国民の不満が爆発すれば現政権への批判は大きくなって、10月の選挙に打撃を与えることができるから、罷免されたジルマ・ルセフ前大統領や収監下のルラ元大統領の所属する前政権党である労働者党にとっては十分な動機があると考えられる。

しかし今回はそうではない。
29日のニュースを見て、労働へ戻らないトラック運転手の不満勢力に浸透している政治的分子とは何と、軍政復活を願う人達であるという。
本気で言っているのか、それとも一種の脅し程度の意味として使うのか不明だが、「即座に軍部介入を!」"Intervenção Militar Já!"と言ったスローガンを掲げた連中の映像が流れた。

ブラジルは1980年代前半まで軍政が続いていたので、その記憶を持つ人はかなり存在する。
反政府勢力を暗殺などの汚い方法で始末したことが今でも糾弾される軍政は、特にその後期には膨大な累積債務や増長するインフレに経済政策では苦慮していたが、治安面では少なくとも薬物や武器の密輸販売で勢力を競う組織的犯罪や殺人・強盗のような凶悪犯罪に、今日のように一般国民が悩まされることはなかった。

多少言論の弾圧や自由の抑制があったとしても、安全な日常生活を過ごすことができた時代を懐かしむ人がいてもおかしくない。
世界的風潮だろうが、軍政以降に生まれた世代も少数派排斥性向と結びついてこの方向に流れるものがいないわけではない。

ヘルペスのように、潜伏していたウイルスが身体の免疫力が弱ったときに症状が顕在化して苦しめるように、中道政権がつまずいて社会が不安になると左派だけでなく極右までが政権を揺さぶろうと蠢き出すことを今回のトラック運転手のストによって実感した。

現在までブラジルの王室(ポルトガル王室ブラガンサ家)の子孫が続いていて、その人達はもはや望みはしないだろうが、それでも王政復古を目指すモナルキスタのグループまで存在するのだから、軍政復活を目指す市民がいることも少しは頷ける。

2018年5月30日

ブラジルのトラック運転手という階級

血栓症重症のブラジル

caminhoneiro = トラック運転手

5月21日からブラジル社会の大麻痺状態の原因となったブラジルのトラック運転手とはどんな人達だろうか。
次の記事から見えるその実体は、強固な労働組合組織を形成する一枚岩の労働者の団体像とは、印象がかなり異なる。

Edição do dia 25/05/2018
25/05/2018 21h17 - Atualizado em 25/05/2018 21h17
Governo tem suspeita de locaute na greve dos caminhoneiros
http://g1.globo.com/jornal-nacional/noticia/2018/05/governo-tem-suspeita-de-locaute-na-greve-dos-caminhoneiros.html

なお下の文章は記事のみでなく、他から持ってきた情報も含んでいる。

2015年のトラック運転手法(法律)は、労使間協約があれば一日12時間、週72時間の労働を認める。
しかし法律はいくつもの例外を設けて、車両が安全な場所や目的地に到着するまで労働時間を延長することが許される。

長時間の運転の眠気と疲労を追い払うために、日本では覚醒剤に指定されている、こちらの日常言葉でレビッチ(rebite)と称されるアンフェタミンの力を借りる運転手もいる。

トラック運転手の仕事は奴隷にもたとえられる。
年平均200日は自宅の外で過ごし、狭いトラック内のキャビンで強盗の脅威にびくびくしながら浅い眠りを取りながらの旅が続く。

街道沿いには食堂だけでなく、売春も行われているから、トラック運転手は性病の高リスクグループであるという不名誉な属性も持つ。

昔のトラックの装備は、運転手仲間で情報を共有するためにせいぜい無線が付いていたくらいだったが、現在はインターネット接続や、運転手が初めての配達先に迷うことなく到着するためのカーナビだけでなく、トラック盗難や強盗に備えて遠隔から位置確認が可能なGPSによる監視がされている。

サンパウロ大学が2月に発表した調査によるトラック運転手の横顔は、この職業が楽なものでないことを示している。
  • トラック運転手の58%は正式な被雇用者
  • トラック運転手の27%は自営者、つまり自分が所有するトラックを運転する
  • トラック運転手の15%はその他の形態の契約
ストライキの間は労働を中止しているから、当然自営者の場合収入はなくなるのだが、運送会社の従業員の給料体系はどうなっているのだろうか。
自営者と被雇用者の間に格差ができそうなものだが、そこを説明してくれる報道はない。
  • トラック運転手の43%は法定の週44時間以上労働する
  • トラック運転手の85%は1から3最低給料を稼ぐ
  • トラック輸送は国内輸送の60%以上を担う(2018年4月)
調査などのデータからみると、社会で大きな力を誇示しにくい、どちらかというと社会弱者と考えられる、ばらばらで団結力がなさそうなトラック運転手が、どのように組織化した実力行使を行い、一般市民の同感を得ているのはどうしてだろう。

まず、今回の全国規模のトラック運転手ストライキを組織したのは一体どこの団体だろうか。
報道によると、トラック運転手の労働者組合と考えられる2つの団体が、既にスト入り前から連邦政府に警告の書状を送っていた。
ブラジルトラック運転手協会(Associação Brasileira dos Caminhoneiros - ABCAM)と、全国自営運輸業連盟(CNTA - Confederação Nacional dos Transportadores Autônomos)である。
トラック運転手の労働組合はこれだけではなく、全国組織も地方組織もいろいろあってあって多数存在する。

そもそもなぜこのような抗議活動が始まったかと言うと、汚職スキャンダルに見舞われたペトロブラスが、その反省から最大株主の連邦政府から独立性を高めて、製品価格をドル為替と原油価格に連動して、ほぼ日単位で変動するように2016年から変更した価格決定方針が原因になっている。
そのため連邦政府が人気取りやインフレ率の操作のために、ペトロブラスの製品価格を人為的に抑制することや、会社の資産が不正な政治献金に流用されることが難しくなって、ペトロブラスは復配できるまで体力を取り戻してきた。
反対にペトロブラス製品であるガソリンや軽油の価格調整は、国際情勢緊張のため原油価格の上昇とレアル下落によってインフレ率を大幅に超えて、自動車所有者を苦しめる結果となった

だからストに参加したのはトラック運転手だけではない。
タクシーやUberや通学バンの運転手も、局地的一時的であったが賛同ストやデモを各地で行った。
ストに参加した職業運転手だけでなく、仕事で車を使う人も私用にしか使わない人も大部分が、燃料の価格と付加される税金を下げろというストの趣旨には賛同している。

さらに問題を複雑にするのがトラック運転手の雇用者の立場である。
燃料価格が下がって、しかも上乗せされる税金が減税されたならば、一番得をするのは給料をもらう個々の運転手ではなく、利益の大部分を持っていく雇用主だろう。
だから、故意にか不作為にかに関わらず、運転手を焚き付けてストをしてもらえば労せず得するわけだ。
そこで連邦政府はブラジルでは禁止されているロックアウト、つまり運送会社の事業所や車庫を閉鎖して運転手に労働させない戦術をとった疑いを持って、日本の公正取引委員会に相当する経済防衛行政審議会(CADE - Conselho Administrativo de Defesa Econômica)が捜査に入っている。

2018年5月27日日曜日になって、軽油の価格を0.46レアル引き下げ、連邦政府はペトロブラスに差額を補填する、その他いろいろある詳しい内容については省略するが、実施事項を政令で定めることに、連邦政府とトラック運転手の多数の労働組合の間で合意に至って公式的にはストライキは終結した。
と言い切りたいのだが、実はそう簡単に全てのトラック運送が復帰するのではなく、時限立法であることに不安を持つ一部の勢力は中央執行部の決定に従わない、いわゆる山猫スト状態になっている。

ロックアウトから山猫ストまでいろいろな戦術が出ているのだが、闘争目的が労使で一致して大衆の支持も高いという珍しいできごとではある。

2018年5月26日

血栓症重症のブラジル

全国規模のトラック運転手のストライキは6日目になる。
トラック輸送が止まっているだけでなく、止まったトラックが各地で国道を封鎖している。
鉄道輸送の場面が非常に限定的であるブラジル社会の血管は道路に、血球はトラックに例えることができるだろうが、今週は血管に血球がこびりついてふさがった血栓症状態である。
始まりは2018年5月21日月曜日であった。
現時点で日常生活にどんな影響が出ているか?
  • ガソリンスタンドの行列がすごい
    と思っていたら売る燃料がなくなったので行列も消えた*
  • 市内バスの運行本数が半分に減った*
    リオデジャネイロ市のBRTは6年前の開通以来初めての全休、普通のバスは23%しか動かなかった
  • ケロシンが空港に配達されないため、航空便がキャンセルされる*
  • 卸売市場に商品が届かず*、スーパーで野菜・肉など生鮮食料品が品薄になる
  • プロパンガス店の売り物のガスが無くなった*
    ブラジルの家庭やレストランの厨房で使われるプロパンガスがなくなりそうになると、買いに行ったり配達を頼んだりするのだが、現物がない
  • 事業所や工場の原料供給が止まり、製品の発送もできず操業を停止する
  • 通学バスの燃料がないので学校が休校になる
  • ごみ収集が停止される
  • 酪農家で牛乳があふれるので泣く泣く捨てる一方、チーズ生産者は原料不足で生産できない
  • 飼料が不足したり製品を出荷できない養鶏農家が、鶏や卵をただで配る
  • 薬局や病院で薬品や資材が不足するので、うかつに病気にもかかれない
  • 病院などの非常電源の燃料が不足する
*印はわが町でも見たり聞いたりしたできごとである。

さてこうして並べていくと、人的物的な直接の傷害や破壊の被害はないものの、日本の震災後のような物不足の状況と非常に似ていることに気づく。

ただ不可避な自然災害ではなく、トラック輸送の麻痺という純粋に人為的な行為のみによって、わずか4、5日でこれだけの悪影響が矢継ぎ早にあらわになるブラジル社会の脆弱さが、何とも感覚的に理解し難いところがある。

日本人の災害時の助け合いや我慢強さのような特質や、普段から災害時に備えた公私共の予防や備蓄の十分さと比較してしまうからそう思える。

2018年5月13日

廃屋処理は腐海

【動画】廃墟の村を草がのみ込んだ、不思議な風景
中国・上海沖の小島、放置されたかつての漁村は今

2018.05.02

このリンクの映像を見たら、すぐに思い浮かんだ風景は、1年半前に見た日本のいくつかの場所のものだった。
当時日本に住んでいた息子に田舎の風景を見せたいと思って、友人と親戚を頼んで関東地方と東海地方の二つの県を訪ねた。

どこに行っても山の緑が一方や全方から迫ってくる田園の風景は懐かしかった。
しかし訪れた集落には、どこでも滅びの兆候が見られるのだ。

人が住まなくなってかなり時間がたって、蔦がはびこる古びた家がたくさんある。
軒が崩れて瓦が落ちて、草が生えている屋根がある。

昔は訪れる観光客で賑わっていた温泉旅館が門戸を閉めて年月が経ち、川沿いに並ぶ窓が軒並み壊れた大浴場や、水のない底を晒すプールが、寂しく昔の繁栄を思い出させる。
昔はいつ通りかかっても清閑としていた和風庭園を前庭に持つ旅館に、横付けする観光バスから降りてくる団体客は中国語を喋っていた。

昔は近くの漁村の小型漁船を作ったり修理していた小さな造船所のドックを囲む、錆びた鉄骨やクレーンの脇を歩く。
事務所の入り口には古びて字も読めなくなった紙が貼られて、どこからか水が漏っている音が聞こえている。
二階に上る鉄製の外階段は、上の数段が腐食して崩れ落ちていた。

当時日本に住んでいた息子が、多分お父さんも好きだと思うからと予約してくれた三鷹の森ジブリ美術館へ行った。
屋上にある疑似廃墟のロボット兵を持って行っても、ごく自然に溶け込みそうな中国の廃村風景である。

住む人がいなくなり相続人が不明になった住居や、破産してしまい、これからも決して誰も改装して復業しようとは考えない古い旅館などを解体するには、かなりの費用がかかる。
誰も費用を負担できないのなら、いっそのこと解体をあきらめて、リンク映像の中国の漁村のように植物が覆うのに任せてしまったら良いのでないか。
上海近辺より気候が寒くて植物の力が足りないというのなら、人為的に助けよう。

分解過程を加速したいのなら家屋全体をビニールハウスにして、熱帯のような条件を作ってやって緑化を加速しても良い。

最初にカビやキノコのような菌類に木材などを分解してもらってまず堆肥のようにしてから、緑色植物の出番にする二段階計画でも良い。

植物や菌類の品種改良で、コンクリートやプラスチックを分解できるようにすれば良い。
地上に留めておけば、海洋の微小プラスチック汚染は起きない。

コンクリートやプラスチックの分解能力が強化された菌類や植物が廃屋以外のものに害を与えないように、ある条件のもとで「引き金」が引かれると生存ができなくなるような遺伝子的メカニズムを備えていたら、環境に安全である。
やはり遺伝子操作に頼るのか?

分解したい建物に菌類や微生物や植物の種を蒔いてやってドームで覆い適当に加熱して数年で土に戻るような技術があったら、廃屋や廃村の処理はごく簡単になる。

なんか既視感のあるプランである。
ナウシカの世界の「腐海による環境浄化」そのものではないか?
ジブリは何でもお見通しだ。
ただジブリ映画の滅びは次に来る復活をほのめかしているが、現在の時点で想像しても、人口が復活して廃村が再生するような日本の将来は、今のところ見えてこない。

2018年5月3日

Rio Cardを使ったリオ大衆乗り物巡り

前回のブログに紹介したサイトを見ながら、オタクであろうとなかろうと乗り物ならなんでも好きだという人にぴったりの街巡りプランを思いついたので書こう。

あらかじめ注意しておくが私はリオ住民でないから、これら乗り物や通過する地区がこの時間帯に安全かどうかは確認できない。
ホテルのスタッフやリオ住民に情報をもらったり、Google Street Viewなどで街の様子を眺めて行くか行かないかを判断してもらいたい。

率直に言うと、どこを通っても、バスで行ってもタクシーで行っても、100%安全な場所はないと思うが、服装や所持品をふさわしいものにして、行動に気をつけて、心の準備をしていれば、事件に対処できる度合いが十分大きくなるだろう。

朝早いのは、ココター発プラサ・キンゼ行きのフェリー便の最終がこの時間だからである。
多分ゴベルナドール島住民の足と思われるこのフェリー路線は、朝3便、夕夜3便のみ、しかも土日は運休である。
当然当プランは平日のみ有効である。

プランの各交通機関の発着時刻はGoogle Mapsの機能を使って調べたが、サイト自体が断っているようにあくまで参考であるから、特にSuperViaは遅れることで有名らしいし、ここに書いた時間通りに進まない場合があることに注意してほしい。

出発・到着地点はセントラル・ド・ブラジルとしたが、もちろん自分のいる場所を考慮して変更しても良い。
このリオデジャネイロのターミナル駅は映画でしか見たことはないが、行き先を間違えないように、人が多いだろうからひったくりなどに十分注意してもらいたい。

Rio Cardにはある条件を満たすと乗継割引があるのだが、その条件が今ひとつ明らかでないので、下に示す各々の運賃を合計した金額以上をあらかじめチャージしておいて、旅行中は読み取り機にタッチするだけで通過できるようにしておくと良いだろう。

  • 6:34 Central do Brasil駅12番ホーム―
    電車 [SuperVia Ramal Saracuruna支線-Gramacho行き途中7駅停車23分 15分毎 R$4.20]
    →6:57 SuperVia Olaria駅
    BRTオラリア駅まで徒歩2分位
  • 7:10 BRT Olaria駅―
    BRT [Transcarioca BRT42-Fundão行き途中4駅停車終点フンドン駅で乗り換えBRT30-Galeão Tom Jobim 2行き(Google MapsにはAlvorada行きと書いてあるのだが間違いだろう)途中駅無し終点 R$7.20]
    →7:44 BRT Galeão Tom Jobim 2駅
    空港で飛行機を見たいとか値段の高い朝食を取りたいとかいう人は、その分早出(はやで)しなければならない
  • 8:05 Galeão Tom Jobim 2バス停―
    路線バス [924番 Bananal行き途中23停留所停車52分 R$3.60]
    →8:57 Praia da Olariaバス停
    空港を含めて全経路がゴベルナドール島内にある
    マヌエル・バンデイラ公園を横切るとココター駅(港)
  • 9:20 Cocotá駅(港)―
    フェリー [CCR Barcas 航海55分 R$6.10]
    →10:15 Praça XV駅(港)
    これがプラサ・キンゼ行今日の最終便!
    海からのリオの眺めを楽しめるし、リオ・ニテロイ橋の下をくぐる、割安な観光船
  • VLT Praça XV駅―
    VLT [2号線/1号線 R$3.80]
    →(Central, CariocaまたはCinelândia駅)
    プラサ・キンゼに着いたら、すぐにVLTに乗らずにオリンピックのときに再開発された海岸の公園やセントロを散策しても、それから昼食にしてもよいし、メトロとの接続駅Carioca, CinelândiaまたはCentral駅でメトロに乗ってビーチ方面に行ってもホテルに戻っても、好きなように行動できる。
  • (Central, CariocaまたはCinelândia駅)―
    メトロ [1号線/2号線 R$4.30]
    →(行きたいメトロ駅)

本記事の表題が示すように、全ての交通機関はRio Cardにクレジットがあれば、改札機や読み取り機にタッチするだけで運賃支払ができるはずだ。
路線バスとVLTは車内に、その他はフェリーも含めて駅に改札機がある(と思う)。

BRTもVLTもオリンピックのために作られたから、観光客にも使われている。
メトロも問題はない。

電車はリオ市と近郊の都市を結ぶ路線だが、メトロと比較して客のガラが悪く、物売りなどが多く雑然としているそうだから注意。
スマホを出すのがためらわれる環境であることを予想して、下車駅までの途中の駅名を紙切れに書いておくと良いと思う。

めったにないことだが、車両故障などで電車が立ち往生すると、乗客は勝手に線路に降りて歩き出すが、日本風に考えて車両に残っていないで大勢に従うのが良いと思う。
腹を立てて凶暴化したけしからん連中が、電車を打ち壊したり放火したり馬鹿な騒ぎを起こすことがあるかもしれないが、どこにも良識があって親切な人はたくさんいるからそのような人を見つけて一緒に安全なところに避難するように心がけよう。

路線バスは住民の利用第一に運用されているので、旅行者には使いづらいとは思われる。
通過点で下車するのだが、どこで降りるかわからなくなる可能性が多い。
リオのバスはどうか知らないが、普段使う市内路線バスの経験から言うと、車内は路線図もアナウンスも何も案内が全くないし、そもそもバス停に名前などないので、いるならば車掌、いなかったら運転手に、「ココター駅からバルカに乗りたい」と言っておけば止まって教えてくれるから安心できる。
ワールドカップとオリンピックのおかげでどれだけリオが国際都市化したのか想像できないが、乗務員に英語が通じなくても、学生らしい若者や教養がありそうな乗客に話せば助けてくれるだろう。

これで最後のメトロを含めて6種類の乗り物に乗って、空港で飛行機を見ることができたわけだ。
Rio Cardで乗ることのできるもう一つの乗り物であるバンがないだろう、という疑問を持つ人がいるかもしれないが、さすがにロシーニャやヴィジガルのバンを薦めることは避けた。
両方共有名なファヴェラ(スラム街)の名前である。

平日の午前中だから安全な時間帯だと思うが、十分気をつけながら楽しんでほしい。

2018年5月2日

リオデジャネイロ交通マップ

リオデジャネイロ大都市圏の交通マップに良いものがなかなか見つからない。
Wikipediaでみつけたこれがまあまあだろうか。

長所は地図が正確で位置関係がよく分かる、ポン・ジ・アスーカルのロープウェイとか、コルコヴァード登山鉄道とか、サンタ・テレザ路面電車のような普通観光客がよく使う交通機関だけでなく、新しい観光名物と言われる(行ってみたいのなら軽々しく信じて行かないで、前もって安全性を十分調べてもらいたい)アレマンのファヴェラ(スラム街)にかかるロープウェイなどマイナーなのが一緒にのっていることだ。

マイナー過ぎる、コンドミニアムの(私設の?)ケーブルカーのようなものまでのっているが、このような情報に需要があるのかわからない。

欠点はメトロやBRT、VLTの路線や運行系統の区別がわかりにくいことと、図面の日付が2018年1月でありながら、2016年のオリンピックに開通が間に合ったメトロ4号線が建設中となっていたりと、更新が追いついていないことだろう。
二つの路線が近接する駅で乗り換えが可能かどうかも地図からはよくわからない。

後日、なかなか良いのを見つけた。
メトロリオのサイト内にあった。
ただしBRTは運行系統の数が多いので、全部同じ色になっている。
VLTの2路線も同じ色で表されている。

  • BRT-急行停車駅・他の交通への乗換駅の情報あり-運賃R$3.60
  • メトロ・リオ-各駅案内リンクあり-運賃R$4.30
  • VLTカリオカ-他の路線、他の交通への乗換情報と観光地図あり-運賃R$3.80
  • SuperVia電車-他の路線、他の交通への乗換情報あり-運賃R$4.20
  • CCRフェリー-時刻表
の路線図を併用したら良いだろう。

いつも使っているよと言う人も多いだろうGoogle Mapsは、鉄道駅だけでなくバス停留所の情報(どこに何番の系統が止まるか)が地図上にマップされているので、これも非常に役立つだろう。

2018年5月1日

Rio Cardを使ってみる

息子がリオデジャネイロに旅行した。
正確に言うとリオデジャネイロ市とグアナバラ湾を挟んで向かい合うニテロイ市に用があったので、リオからどうやって向こう岸に渡ろうかと思案したのであった。

1か月以上前に計画的に購入していれば、レイト(leito=寝台)というフルリクライニングワイドシートのバスより少し高いくらいの値段で航空券が買えてリオまで行けたのだが、うかうかして値段が2倍も3倍にもなったので、結局バスで行った。

長距離バスはリオデジャネイロ市のノーヴォ・リオ・バスターミナル(Rodoviária Novo Rio)に到着する。
在リオデジャネイロ日本国総領事館発行の2017年11月「安全の手引き」を見ると、「長距離バスターミナル周辺は治安が劣悪」と書いてある。
到着予定は土曜日午前9時半、危ない時間帯ではない。
リオ・ニテロイ橋を通る都市間路線バスを使う方法と、オリンピック2016年リオ大会に合わせて建設されたVLTと、昔からある渡し船バルカ(barca)を乗り継ぐか、である。

「安全の手引き」によるとこれまた避けたいと評価されるが、いっぺん乗れば乗り換えのない路線バスで、延長13キロ、片道4車線の堂々たるリオ・ニテロイ橋でグアナバラ湾を渡るのもいいけれど(橋上で強盗事件は皆無ではないのだが)、リオの町に用はなくても、せっかく来たのだからVLTで再開発されたセントロを観ながら船着き場まで行きフェリーで行ったほうが観光らしくなる。

経路は次の通り
  • ロドヴィアリア(Rodoviária)-[VLT2号線 R$3.80]→プラサ・キンゼ(Praça XV-終点)
  • プラサ・キンゼ-[バルカ・アラリボイア線 R$6.10]→プラサ・アラリボイア(Praça Arariboia-ニテロイ市)

VLTとは英語のLRV (Light Rail Vehicle)のポルトガル語(Veículo Leve sobre Trilhos)であり、そのままアルファベット読みしてヴェーエリテーと言われている。
オリンピックのためのリオ市セントロ再開発の目玉の一つである。

インターネットの情報により、あらかじめVLTの乗り方を「予習」していおいた。
Google Mapsでは乗り場の地点がわかるが、これ丸呑みも避けたいところである。
乗り場や乗り方がわからなくてウロウロするには危険な場所である。
この新しい乗り物は、十分な小銭を持って乗れば良いバスや、乗る前に駅で切符を買えば良い電車やメトロとは乗り方が少し異なる。
  • まずリオデジャネイロ大都市圏で有効なRioCardという「Suicaのリオ版」を入手する必要がある。
    車内での支払いはできない。
  • VLT乗車場の近くにある(らしい)カード発券・チャージ機(Máquina de autoatendimento)で、カード発券保証金(カードを返納すると返金される)R$3.00と当面の運賃クレジットを現金かデビットカードで購入する。
    今回はVLTのあとでリオ・ニテロイ間フェリーに乗るのでその分も含めて全部払える金額をチャージする。
  • 到着したVLTドアのボタンを押して開けて乗車する。
    寒冷地の電車みたいである。
    冷房の冷気を逃さないためだろう。
  • 乗客は自発的に車内のカード処理機にタッチして運賃支払を完了する。
ガイドを見て不思議に思ったのは、乗客が責任を持って自律的にカード有効化という部分である。
皆ごまかそうとせずに正直に行なうのだろうか?
ここはブラジルだよ?
旅から戻った息子に聞いたら疑問は解けた。
フィスカル(検札員)がたくさん乗っているというのだ。
そんなに一編成に何人も検札員が乗っていたら人件費はどうなるのだ?
まあいい。

さてRioCardである。
カードの右側に利用できる交通機関の図解、アイコンが6つあるのだが、これがよくわからない。
RioCardのサイトにあるビデオを見たら、昔のカードは交通機関が5つだった。
バス、電車、メトロ、フェリーと最後の一つが少し謎のバン(van)と説明してくれた。
バンはバン型車両である。
ブラジルでバン型乗用車と行ったら乗客15人乗りの車両を指し、これはコミュニティバスのことだと思う。
新しいカードにはこれにVLTが加わって6つになった。
上から
  1. バス/BRT
  2. メトロ(架線なし、レール、トンネル)- Metrô Rio
  3. 電車(架線あり、レール、オープン)- SuperVia - Trens Urbanos
  4. フェリー - CCR Barcas
  5. VLT(細身、レール、架線なし)- VLT Carioca
  6. バン(バックミラーが車体全体比でバスより大きいから)
であろう。

VLTと同じくリオ・オリンピックを利用して作られたBRT (Bus Rapid Transit)もあるが、これは専用の連節バスが専用レーンを走るもので、VLTと違ってレーンから外れた場所でも行けるバスであるから、普通のバスの仲間なのだろう。

カードの特徴は、ここには書かないがルールに従ってこれらの交通機関を乗り継ぎをする場合に割引運賃が適用されることがある。

それにしてもである。
日本だったらSuicaでもPasmoでもその他の地方のものでも交通系ICカードが一枚あれば国内大抵の場所で使えて、ついでに買い物までできるのだが、ブラジルでは都市ごとに分かれているのはどうにもならないのだろうか?

自己回答すれば、各都市の交通事業体は独立していて横の関係は全く無いので、きっと無理だろう。
わが町にもここ専用で他所では全く利用できないICカードがある。

サンパウロに行く用事があったときにはバスとメトロに何回も乗れる24h割引を利用するために、旅行前にインターネット登録をしてサンパウロのBilhete Único記名カードを作った。
こいつは役に立った。

ゴイアニアではインターネットにあまり情報がなくてカードを作らなかったので、乗り込んだ現金を受け取らない(!)バスが、現金受取りができる市内各地に散在するバスターミナルのどれかに着いて支払いを行うまで車内のカード処理機を通過できず、狭いスペースに押し込められた。

そして今回はリオデジャネイロである。
RioCardというのが手に入った。
割引をフルに利用するためには記名カードにする必要があるが、今回は無記名式カードである。

この分では10都市を訪問する人は10枚の交通カードを作らなければならないようだ。