2023年4月30日

マトリョーシカ・タイヤ

contrabando 中古品の密輸
descaminho 新品の密輸
正式の税関用語ではこんな区分があるようであるが、普通はコントラバンドといえばわかる。

先日かなり驚くニュースがあった。

連邦歳入庁は国境でタイヤ不法輸入を取り締まる
Receita Federal aperta o cerco contra a importação ilegal de pneus na fronteira
2023/4/27

隣国パラグアイからブラジルへ自動車のタイヤが密輸されている。
舞台はパラグアイの東端の都市、シウダー・デル・エステ(Ciudad del Este)とブラジル南部、パラナ州フォス・ド・イグアス(Foz do Iguaçu)の間を結ぶ「友情の橋」(Ponte da Amizade)の国境である。
2023年第1四半期にブラジルで摘発された密輸タイヤは3千5百、そのうちの40%がこの橋を通ってやってくる。
もちろん国境はパラナ川の真ん中、橋の上だが、こちら岸に税関があり、車の流れを注視している。
トラックは通関書類と積み荷の照合が行われる。
間違いがなかったら当然正式な輸入であり問題はないはずだ。

ブラジル連邦政府の税関を担う連邦歳入庁は、日々密輸との戦いに明け暮れる。
目利きの税関職員は、タイヤの入ったタイヤを見逃さない。
タイヤの中のタイヤ??
意味がわからない。

動画を見ていたら何のことかわかった。
文字通り走ってきて国境を渡る自動車の、走行しているタイヤの中に別のタイヤが入っているのだ。

マトリョーシカ風タイヤ入りタイヤを見つけた税関職員は車を止めて、スキャナーで検査する。
見つかると否応なしにタイヤを外して、パンク修理と同じ作業をする。
つまりブレス機やハンマーを使ってホイールからタイヤを外す。
そうすると外側のタイヤの中に別のタイヤが重なるようにして詰められている。
税関にはこの用途のために作られたクレーンがあり、走行タイヤに詰められたタイヤを引き出すことができる。

密輸車、ここでは車が密輸されるのではなくて、密輸を行う車という意味だが、その走行タイヤの中に、普通はタイヤ1つが詰められるという。
しかしニュースの事例では走行タイヤの中に折りたたまれたように、2つのタイヤが入っていた。
タイヤは新品のこともあれば、新古のこともあるようである。

ロシアのマトリョーシカ人形は、中に入る人形は当然外側より小さい。
タイヤの場合、厚みがあるし、ゴム製ではあるがどちらかというと硬いものだから、タイヤの中にどうやって同じ大きさのタイヤ(外側より小さいサイズなのかもしれないが、映像だけではわからない)を入れるのか。
当然折り曲げられて変形して無理やり詰められている。
なんか昔の中国の纏足のようである。

映像を見ていると、こんなに折り曲げられてタイヤの中のワイヤーが傷つくことはないのか気になったのだが、インタビューされた専門家が言うには当然そのようなことが起こるのであり、そんなタイヤを履いて走行すると、タイヤ壁に空気が入るせいで膨らんだり、バーストの原因になる。
疑問が証明された危険さである。

さてタイヤでなく、人形のマトリョーシカである。

傭兵組織ワグナーの囚人兵とか、シベリア辺地の貧民とかが一番小さく、一般市民、正規軍軍人とかが次、御用役人、オリガルヒ(олигархи)ときて、ラブロフ(Lavrov)外相のようなブーチン側近高官がそれらを飲み込み、一番大きい外側がプーチンであるようなマトリョーシカを作って発表した人はいないのだろうか?
時事雛人形があるくらいだから、目立ちたい木工職人は、そんな現代ロシア身分マトリョーシカ人形を作って売り出したら、多少は注目を集めるのではないか。

2023年4月25日

コロナ>結核>デング

最近新型コロナ感染症(以降簡単にコロナ)のニュースが減ってきているが、反対に急速に増えているのがデング熱である。

2週間前のことだったが、知人がデング熱(以下簡単にデング)にかかった。
農作業のために畑に来ているが、木陰で横になっていた。
聞いたら家族みんなデングだと言っていた。
それから1週間後畑へ行ったら、彼は回復してどこか歩き回っていたが、今度は彼の父親がデングで体がしんどいと、木陰で休んでいた。
体がだるい、寝ても起きてもしんどい、何も食べたくない、と言っている。

「命に関わる出血性の症状へ悪化するのを防ぐために、とにかく大量の水を飲め」ということを以前のブログ記事に書いた。
そのことを彼に言うと、食欲がないだけでなく、水を飲んでも石鹸の味がして飲む気にもならない、と答えた。

ブラジルではよく知られているように、この病気を媒介するのは Aedes (Stegomyia) aegypti といわれる、藪蚊に似たカである。
だからマスクをしていないデングの病人がそばにいて会話をしても全く心配はいらない。
第一デングの症状に咳やくしゃみはない。
ただ、吸血のために刺す虫がいそうな時と場所では、忌避剤を皮膚が露出する部分へ塗っていく。

最近結核のニュースもあった。
ブラジルで1日14人が結核で死亡、最近20年で最悪の数字
Tuberculose mata 14 pessoas por dia no Brasil, o maior número dos últimos 20 anos
04/04/2023 21h18

コロナが一段落したらこういった昔からの病気が目立つようになっているが、実際の数はどうなのかニュースの情報を集めてみた。
ブラジル国内での2023年1月から3月まで90日間の死亡数の比較である。

病気死亡数
デング熱139
結核1,260(1日14人)
新型コロナ感染症6,386(1日71人)

まだまだコロナの脅威のほうが大きいのである。

2023年4月24日

ルラ左翼人権政権のダブスタ

2023年1月、左派労働者党のルラ政権が発足してから4ヶ月目に入っている。
先々週中国を訪問したルラ大統領は、ウクライナとロシアの和平仲介について中国と同調した。

中国からアラブ首長国連邦訪問の後ブラジルに帰国して間を置かずに、ラブロフ・ロシア外相を大統領府で歓迎した。
ブラジル政府の対応は、米国高官の言葉を借りれば、「ロシアの言い分を繰り返すだけのオウム」だったと強く非難された。

ルラ大統領は「平和を望む国グループ」を作って、即座の停戦和平を仲介しようと提案する。
聞こえは良いが、現状を認めて現在の戦線を両国国境と確定せよということだろう。
ロシアの粘り得になってしまう。

さらに、戦争の原因はウクライナとロシアの両方にある、米国と欧州はウクライナへ兵器を送って戦争を長引かせている原因だ、というロシア・中国の見方に、ブラジル大統領は同調している。

左派政権の最初の仕事として、アマゾンジャングルにあるインディオ保護区へ侵入して、非合法な採掘を行い水銀などで環境を汚す不法金採掘者の取り締まりと、保護区からの駆逐をおこなっている。

インディオ保護区へ侵入して、ヤノマミ族の生活を脅かす無法金採掘者は、駆逐すべき悪であるのに、ウクライナの非戦闘員が暮らす街へミサイルや砲弾を撃ち込んだり、発電所を破壊してウクライナ市民の越冬生活を脅かすロシアは悪くないとする理由を、はっきり説明してもらいたいものだ。
侵略する国と侵略される国に等しく責任ありとみなすようなら、ブラジルは中国同様、和平仲裁する資格はない。

2023年4月23日

年金改革できない国フランス

フランスの年金改革についてニュースで説明していた。
簡単に記しておく。
以下ブラジルでなくフランスの話である。

将来20年でフランスの人口の三分の一が、60歳以上の老齢者となる。
現在のフランス国内総生産のうち、社会保障費が14%相当を占める。
フランスの年金改革の骨子は、2年かけて年金受給最低年齢を62歳から64歳へ引き上げることである。

マクロン大統領は、議会の議決を必要としない大統領令について定めた、フランス憲法49条を拠り所に年金改革を強行した。
これを覆すことのできる議会による大統領不信任は、改革反対派にとって成立のハードルが高く成立しなかった。

フランス司法はこの年金改革の内容について、正当で合憲であると判断した。
反対派は国民投票を要求するが却下される。
国民に不人気だが将来のために必要と思われるような本題に関しては、国民投票で決定する性質のものではないことは法律の専門家でなくてもわかるだろう。

マクロン大統領は正面突破を狙ったが、もっと(ずる)賢いやり方があったのではないかと思う。
例えばの話であるが、年金最低受給年齢を62歳から64歳へ上げる年金改革と、年金については今の制度に手を付けないが、そのままだと近いうちに国庫の底がつくから、付加価値税を今の10%から20%へ(数字は例え話で架空)引き上げる税制改革とどちらを選ぶか、といった、「究極の二択」を議会へ提案するのである。
連合王国でEUから出るか出ないかのブレグジットについての国民投票をおこなったように、年金改革と税率アップのどちらかを選ぶという設定なら、国民投票をすることも妥当になるだろう。

その結果現在は年金改革反対で全国民がまとまっているようにみえるが、高齢者層と若年層のあいだに分裂を引き起こすかもしれない。
どこの国にも二極化はあって、米国やブラジルの大統領選挙でみられるように、全員の同意は必要でなく、半分プラス1票があれば十分であるからだ。

最新のニュースではフランスの軍艦が台湾付近を航行したということで、フランスというかマクロン大統領は中国に寄ったと思えば米国寄りに戻ったりと、かなり外交バランスに気を使っていることが見える。

2023年4月14日

年金改革できた国ブラジル

ブラジルでは2019年の、ボルソナロ政権1年目に年金受給年齢の引き上げを含む社会保障改革が行われた。
フランスで現在騒ぎになっている、「たった」2年だけでなく、ブラジルのものは段階的に5年ほど引き上げる改革であった。
ボルソナロ政権の勢いがまだ強かった時期であって、上院下院とも通過して、左翼を含めて社会の大規模な抗議運動も起きなかった。

フランスのマクロン大統領が説明に使ったボードがニュース記事で映された。
興味深いので内容を写しておこう。

年金受給開始年齢(2022年1月時点)

年齢
アメリカ合衆国62年
フランス62年
スウェーデン62年
日本65年
ベルギー65年
カナダ65年
ドイツ65年10月
連合王国66年
スペイン66年4月
オランダ66年4月
イタリア67年

ブラジルでは2023年1月に、右派ボルソナロから左派ルラへと政権が交代した。
政権発足のかなり早い時期に、ルラ労働者党政権を構成する連立政党出身の労働・社会保障関連の大臣が「2019年の社会保障改革を廃止してもとに戻す」と発言したのだが、ルラ大統領は早速その発言を押し留めて、改革のちゃぶ台返しを否定した。

つまりそういうことだ。
金がなければ何もできない。
一旦改革の逆回りなどしたら、再試行は極めて難しくなるだろう。

ルラ労働者党政権は絶対言葉に出すことはできないが、前政権が面倒な仕事をやってくれたことに感謝しているはずである。
一時の選挙対策の人気取りのため改革の後戻りをしたところで、将来の大問題の元凶を作ったこの政党の信頼は、ひどく損なわれることになるだろう。
戦犯探しの挙げ句、ルラも3期もやったのを台無しにした馬鹿な大統領だったと、烙印を押される危険は冒したくないだろう。