2020年5月18日

今「田舎でのんびり」できないアマゾン的理由

ブラジル・アマゾナス州は、最近はECサイトの名前のほうが有名になっているかもしれないアマゾン川の中流域である。
ここがブラジルで一番COVID-19が流行している州である。

報道によると、州内のCOVID-19の47%が州都マナウス以外で起きている。
この47%は多いのか少ないのか?
ブラジルの人口最大都市・最小都市ランキング2019年版を見ると、マナウス市の人口(ブラジル全国第7位)はアマゾナス州全体の53%であり、つまり州都以外は47%であるから、人口分布と全く一致している。
州都マナウス市でもアマゾナス州の地方都市でも、偏りを無視すれば単位人口当たりCOVID-19分布は一様であることがわかる。

そして、ブラジル全国の(ブラジルでは人口の大小に関わらずムニシピオmunicípioだが、日本感覚で大から小まで全部というニュアンスで)市町村の、人口10万人当たりCOVID-19死亡数のワースト20の中で、12がアマゾナス州の市町村なのである。
ちなみにブラジルワーストワンはタバチンガ Tabatinga-AM 68.3、2位はマナカプル Manacapuru-AM 57.5で、ワースト6は全部アマゾナス州の町であり、州都マナウスはワースト13位である。

このマナカプルの街路の様子が後に載せるビデオで紹介されているが、信じられないほど住民に緊張・恐怖感が感じられない。
病魔のことなどほとんど心配している様子が見られず、コロナ以前、もうこれは2019年で終わった「前コロナ時代」と別の時代に区分したくなるのだが、昔の日常風景がここでは今でも続いているようだ。

調べたらアマゾナス州の面積は1,571,000 km²とある。
日本全土の4倍以上である。
人口をそれで割った人口密度は2.64人/km²と、日本の346.9人/km²と比較すればその過疎さがわかる。

ウィルスは人から人への伝染によってしかうつらず、どうして広大なアマゾナス州の隅々、交通網から孤立しているような先住民集落までコロナウイルスが移動するのか、日本の常識からは全く想像できないだろう。

最近のニュースで見たが、感染経路は主にモグリの河川客船であると言われている。
ときどきアマゾン河面で船の遭難事故のニュースがあるが、まともに営業している客船が遭難することもあるけれど、もっと儲けようと乗客定員を大幅に超過して、乗客名簿と実数が食い違うような、悪徳な不法船業者の乗客すし詰め船であることが多い。

ルポルタージュ映像を見ると、不法合法に関わらず安い運賃で船室に入れない等級では(そもそも乗ったことがないので客室などあるのか、あったとしても甲板より快適なのか不明であるが)、乗客はハンモック持参で、覆い付き甲板に数多く立つ柱や梁にハンモックを結びつけて張って、隣のハンモックとの間隔は人がかろうじて通れるくらいしかないようである。
そうして何日もかかる河の遡行をするのだ。

隣の人との距離が小さくしかも何日も一緒に過ごすため、壁のないオープンスペースとはいえ、口を閉じておくことのできないブラジル人にとっては、「密」が2要因は重なっている環境だ。
そうして州都マナウスで感染した地方人は、同船の健康人を道連れにして船中で病気を増殖させてから、地方の町へ持ち込む。
まあやっていることは、外洋クルーズ船と同じではある。

孤立した先住民集落へどうして病気が達するかというと、不法金採鉱者や不法伐採業者による接触と言われているが、フナイ(Fundação Nacional do Índio - FUNAI 国立インジオ財団)の職員から感染する例もあると思う。
町に暮らす若いインジオが帰省したり、集落住民が大きな町へ買い出しに行くこともありそうではあるが、それだったら完全な孤立ではないか。

病人の分布は州都・地方で偏りを考慮しなければ同一であるのだが、困ったことに病院の分布はそうではない。
地方で入院が必要になる場合には、地方の中核病院がそれに当たるのであるが、よほど重症になってより集中治療が必要になる場合には、救急飛行機でマナウスへ空輸されることになる。
多分私的医療保険でないと利用できないと思う。
そのような「公共保険で面倒見るのは地方病院まで」ということはなくて、スス(SUS 保健単一システム)でも行っていると、後から報道を聞いてわかったが、それでも空路輸送にかかるのは、相当重症になってからであることに変わりはない。
マナウスへ着いたといっても安心はできず、州全体が医療崩壊を起こしているから、運良く集中治療病床や呼吸器の空きがないと治療を待たなければならない。
現在マナウスの墓地埋葬数(ペース)は、「前コロナ時代」の3倍に達しているという。

寒さの及ばないアマゾンの田舎町で、野菜や果物を植えて小動物を飼い、野生フルーツやナッツを採集したり川で釣りをして暮らしたいと思っても、COVIDのようにおかしな病気に罹ったら大変であることを痛感する。

墓地の無数の墓穴を鳥瞰したシーンから始まる報道ビデオ(16 Mai 2020)を参考にした。

2020年5月7日

COVID-19ブラジルの危険な州と安全な州

ブラジルは十分に広いから、COVID-19の流行状況も場所によって大きな違いがある。
岩手県のように全く感染者が確認されない場所や、大都市のように感染拡大が避けられない場所がある点は、日本でも全く同じである。

日々増加していく数字なので、あくまでも2020年5月7日時点に過ぎず、これから将来の予測をすることは全く不可能である。
特に最近ブラジルは、商店閉店や自主的隔離(Fique em casa つまり Stay home)の緩みが著しく見られるので、1、2週間先の見込みは暗い。

COVID-19による10万人あたりブラジルの州ごと死亡数(2020/5/7)
地方人口COVID-19死亡数10万人あたり死亡数
(参考 スペイン全国)46,755,00017,26336.92
NAM アマゾナス4,144,59780619.45
NECE セアラ9,132,0789039.89
NEPE ペルナンブコ9,557,0718458.84
SERJ リオデジャネイロ17,264,9431,3948.07
NAP アマパ845,731617.21
SESP サンパウロ45,919,0493,2066.98
NPA パラ8,602,8654104.77
NEMA マラニョン7,075,1813054.31
(ブラジル全国)212,559,0009,1464.30
NAC アクレ881,935364.08
SEES エスピリトサント4,018,6501553.86
NEAL アラゴアス3,337,357982.94
NEPB パライバ4,018,1271012.51
NRR ロライマ605,761142.31
NERN リオグランデドノルテ3,506,853762.17
NRO ロンドニア1,777,225372.08
CWDF 連邦区3,015,268351.16
NEBA バイア14,873,0641651.11
NESE セルジペ2,298,696251.09
NEPI ピアウイ3,273,227351.07
SPR パラナ11,433,9571040.91
SSC サンタカタリナ7,164,788630.88
SRS リオグランデドスル11,377,239900.79
CWGO ゴイアス7,018,354440.63
NTO トカンチンス1,572,86690.57
SEMG ミナスジェライス21,168,7911060.50
(参考 日本全国)126,476,0005510.44
CWMT マットグロッソ3,484,466130.37
CWMS マットグロッソドスル2,778,986100.36

死亡数は全て2020年5月7日発表された、ブラジル保健省のページ、及びスペイン、日本の政府機関による
人口は2019年のIBGE(ブラジル地理統計院)のサイトから入手できるファイルより

2020年5月5日

ブラジルの人口最大都市・最小都市ランキング2019年版

最近のニュースは新型コロナウィルスについての記事がほとんどだが、ブラジルの州や大都市の人口を知りたくなる場合が多い。
そこで、ブラジル地理統計院のサイトからダウンロードできるファイルをもとに表を作成した。

2年前の時点のブラジルの人口最大都市・最小都市ランキング2017年版と同様に作った。
今回のは2019年7月1日時点の推計値である。

ムニシピオ município とは、簡単に言うと日本の市町村レベルの地方自治体のことである。

ブラジルの人口の多いムニシピオ
都市推定人口備考
1SPSão Paulo12,252,023サンパウロ州都
2RJRio de Janeiro6,718,903リオデジャネイロ州都
3DFBrasília3,015,268連邦共和国首都
4BASalvador2,872,347バイア州都
5CEFortaleza2,669,342セアラ州都
6MGBelo Horizonte2,512,070ミナスジェライス州都
7AMManaus2,182,763アマゾナス州都
8PRCuritiba1,933,105パラナ州都
9PERecife1,645,727ペルナンブコ州都
10GOGoiânia1,516,113ゴイアス州都
11PABelém1,492,745パラ州都
12RSPorto Alegre1,483,771リオグランデドスル州都
13SPGuarulhos1,379,182サンパウロ大都市圏
14SPCampinas1,204,073サンパウロ州地方
15MASão Luís1,101,884マラニョン州都
16RJSão Gonçalo1,084,839リオデジャネイロ大都市圏
17ALMaceió1,018,948アラゴアス州都
18RJDuque de Caxias919,596リオデジャネイロ大都市圏
19MSCampo Grande895,982マトグロッソドスル州都
20RNNatal884,122リオグランデドノルテ州都
21PITeresina864,845ピアウイ州都
22SPSão Bernardo do Campo838,936サンパウロ大都市圏
23RJNova Iguaçu821,128リオデジャネイロ大都市圏
24PBJoão Pessoa809,015パライバ州都
25SPSão José dos Campos721,944サンパウロ州地方
26SPSanto André718,773サンパウロ大都市圏
27SPRibeirão Preto703,293サンパウロ州地方
28PEJaboatão dos Guararapes702,298レシフェ大都市圏
29SPOsasco698,418サンパウロ大都市圏
30MGUberlândia691,305ミナスジェライス州地方
注:ここで"地方"は、州都が属する大都市圏以外の場所を意味する

ブラジルの人口の少ないムニシピオ
都市推定人口
1MGSerra da Saudade781
2SPBorá837
3MTAraguainha935
4RSEngenho Velho1,034
5TOOliveira de Fátima1,112
6GOAnhanguera1,149
7RSUnião da Serra1,154
8MGCedro do Abaeté1,164
9SPUru1,165
10PIMiguel Leão1,246
11SCSantiago do Sul1,260
12SPNova Castilho1,267
13PRJardim Olinda1,331
14RSAndré da Rocha1,333
15GOCachoeira de Goiás1,351
16RSPorto Vera Cruz1,360
17RSCarlos Gomes1,377
18GOSão João da Paraúna1,381
19MGGrupiara1,388
20TOChapada de Areia1,406

次は州と地方ごとの統計である。

2019年7月1日現在ブラジル総人口及び地方と州ごとの人口推計値
地方・州州略号推定人口
Brasil 全ブラジル210,147,125
Região Norte 北地方18,430,980
Rondônia ロンドニアRO1,777,225
Acre アクレAC881,935
Amazonas アマゾナスAM4,144,597
Roraima ロライマRR605,761
Pará パラPA8,602,865
Amapá アマパAP845,731
Tocantins トカンチンスTO1,572,866
Região Nordeste 北東地方57,071,654
Maranhão マラニョンMA7,075,181
Piauí ピアウイPI3,273,227
Ceará セアラCE9,132,078
Rio Grande do Norte リオグランデドノルテRN3,506,853
Paraíba パライバPB4,018,127
Pernambuco ペルナンブコPE9,557,071
Alagoas アラゴアスAL3,337,357
Sergipe セルジペSE2,298,696
Bahia バイアBA14,873,064
Região Sudeste 南東地方88,371,433
Minas Gerais ミナスジェライスMG21,168,791
Espírito Santo エスピリトサントES4,018,650
Rio de Janeiro リオデジャネイロRJ17,264,943
São Paulo サンパウロSP45,919,049
Região Sul 南地方29,975,984
Paraná パラナPR11,433,957
Santa Catarina サンタカタリナSC7,164,788
Rio Grande do Sul リオグランデドスルRS11,377,239
Região Centro-Oeste 中西地方16,297,074
Mato Grosso do Sul マトグロッソドスルMS2,778,986
Mato Grosso マトグロッソMT3,484,466
Goiás ゴイアスGO7,018,354
Distrito Federal 連邦区DF3,015,268

2020年5月3日

日本もブラジルも9本針の効果か

前回の表をもう一度載せる。

スペインブラジル日本
死者初出日2020/3/132020/3/172020/2/14
10万人あたり死亡数33.952.780.33
死亡数15,1754,543351
人口(千人)46,755212,559126,476
人口密度(人/平方km)93.725.4346.9
65歳以上割合(%)20.09.628.4
3・4月平均気温(℃)11.5520.7511.30
3・4月合計雨量(mm)73240242

死亡数はスペインブラジル日本のデータは2020/4/30発表のもの
人口関係3指標は2019年の国連ファイルより
気候関連2指標は、マドリード、サンパウロ、東京、Wikipediaより

スペインとポルトガルからなるイベリア半島の国々は、南アメリカの国々の旧宗主国である。
だから言語だけでなくその習慣も引き継いでいるのは当然である。
欧州全体的にそうであろうが、キスやハグや握手の習慣である。

スペインとブラジルは肉体接触的習慣の多くが共通しているのだが、コロナ感染拡大の速度は両国で全く異なる理由は何だろうか。
今回コロナ感染が広まるまでは、普通の人がマスクを使うことはまったくなかった。
それはスペインも同じである。
スペイン人の生活の詳細はわからないが、ブラジル人は清潔好きで、よく言われるフランス人とは全く異なり、1日1回以上はシャワーを浴びる。
だからといってよく手を洗う国民かというと、そうでもないと思う。

前回で人口密度や年齢構成や気温や降水量やら何らかの関係があるのかと思ったが、データを眺めるだけではよくわからない。

高齢者人口の割合がスペインより相対的に低いブラジルは、そのために死亡率が低いとは言えるだろう。
でもそれだけでは、10万人あたりコロナ死亡率が1桁単位で違う説明を十分にできたと言えない。

感染と死亡が急速に増大して全く他に取る方策がなくなったスペインは、イタリアや英国と同様に罰則を伴う厳しい隔離、いわゆるロックダウンを行うことになり、その苦労の結果、ようやく隔離緩和へ向かえるようになった。

感染と死亡が急速に増大せず、しかもかなり局地的なブラジルは、最初3月下旬には住民の自主隔離実行率が高かったものの、4月末にかけて家篭りがだんだんゆるんできていた。
日米欧ほど財政状態が強くない国は、いや強い国であっても生産が止まる隔離状態を続けたくない政府の意向が反映する。
スペインほど死亡数増加が急速ではないものの、全く死亡増加率低下、検査の拡大や病床空き率の改善が認められないのに、5月に入ったら隔離緩和に向かっている。
そのためこれから1週間、2週間先に、ブラジルのコロナ死亡数が爆発的に増加しないか非常に心配である。

北半球と南半球の違いをして、これから北半球は下火になり南半球は酷くなるような予想があるが、これはどうだろうか。
ブラジル北部地方のアマゾナス州の州都マナウス、ブラジル北東部地方のセアラ州のフォルタレザやペルナンブコ州のレシフェなどの、いずれも熱帯地方の都市で、5月2日現在いずれも死亡数500以上にまで感染が拡大しているから、高温多湿だけでは病気の減少は望めない。

しかし、ブラジルで人口が一番多いがコロナ患者も一番多い、南回帰線が通るサンパウロ市では、最寒月7月でも平均気温は15.8℃であるから、マドリードや東京の3・4月平均気温より温和である。
だから天候のせいでそれほど悪くなることはないだろう。
インフルエンザの予防注射により側面擁護する必要はあると思うし、実際それは今ブラジルで行われている。

そこでBCG説である。
日本のコロナ死亡率が低い理由を説明する一つの仮説である。

もう腕を見ても痕跡を見つけることはできないが、3×3=9つの点があったことは確実に記憶にある。
ブラジル育ちの妻に、「9本針のはんこ」の記憶があるか聞いたら、覚えていると言った。
息子の予防接種カードを見たら、0歳時にBCG接種の記録がある。
日本もブラジルもBCG接種国であることがわかった。

同じイベリア半島でも、ポルトガルは接種国であるが、スペインはそうではない。
BCG接種のコロナ抵抗力増強仮説では、それがポルトガルのコロナ死亡率がスペインより低い理由を説明しているという。

現在のところこの仮説は実証されていないし、ブラジルのマスコミでこの話を聞いたことは一度もない。
でも十分ありそうな気がしている。
だからといって、残っているかわからないBCG接種の残存効果に期待するわけにはいかない。

全世界の最新のコロナ状況がここ"COVID-19"で見られるのだが、これを一日中見て恐れ嘆くのもどうかと思う。