2018年8月28日

腐肉でも喜ぶベネズエラ人と難民

停電のためベネズエラ人は腐った肉まで買う
Com a falta de energia, venezuelanos acabam comprando carne estragada
Por jornal nacional
23/08/2018 21h00 Atualizado 23/08/2018 21h00

アフリカや中東から難民が押し寄せるヨーロッパがもっぱらニュースとなっているが、世界の中で難民が問題となっているのは、欧州だけではない。
ここ南アメリカ大陸でも、難民問題はますます大きくなっている。
難民送り出し国はベネズエラ、受入国はブラジルを含む周辺国である。

ブラジルでベネズエラと国境を接するのはブラジル北部地方の、一般には辺境とみなされるロライマ Roraima 州と広大なアマゾナス州だけである。
ちなみにロライマ州は他に、南アメリカで唯一英連邦に所属して英語を公用語とするガイアナとも国境を接しているが、ブラジル側の隣州は広大なアマゾナス州とパラ州の二つである。
押し寄せるベネズエラ人難民で国境の町パカライマ Pacaraima や、そこから約200キロ南下した州都ボア・ビスタ Boa Vista は難民受け入れに追われている。

8月17日(金)国境の町パカライマで、ブラジル人商店主がベネズエラ人4人組強盗に襲われて怪我する。
8月18日(土)事件に怒ったパカライマ町民が町内のベネズエラ人キャンプを襲い、テントや所持品に火がつけられる。
8月20日(月)ロライマ州政府が連邦最高裁判所に、ベネズエラ人の移民受け入れを停止するよう請願するが、拒否される。

その後ロライマ州政府の請願に応えた連邦政府は、治安維持のため陸軍と衛生維持のため医療団を派遣して野戦病院のような施設を作り、ロライマ州に入ったベネズエラ人を他の州に移送する手はずも整えている。
ちょうどブラジルの中のロライマ州が、ヨーロッパの中のイタリアの立ち位置となっている。

初めに引用したテレビニュースの記事から書き出しておこう。

ベネズエラ第二の都市マラカイボ Maracaibo では、一日に5,6時間停電する。
そのため肉屋の冷蔵庫も冷たさを保てない。
肉屋は傷んだ肉に特売価格をつけて、「レモンと酢で洗えば大丈夫」といい加減で無責任な説明をして売りさばいている。
腹をこわす人が少なくないはずなのだが、それでも買っていく人がいるのは、市場に肉が不足しているからだ。
衛生管理をする役所も機能していないのだろう。

2018年の予想インフレ率は百万パーセントであり、ニコラス・マドゥロ政府はこのほど5桁デノミを実行して通貨呼称をボリヴァル・ソベラノ(bolívar soberano)として、同時に最低給料を3400%調整した。インフレ予想が一万倍なのに給料調整が35倍で、何の意味があるのかよくわからない。
本ブログの「ブラジル驚愕高金利は踏み倒すが勝ち」の数式を使って、一体どれくらいの期間を置いて給料35倍調整をすれば、年間インフレ百万パーセントに追いつけるのかを計算したら、一年に2.57サイクル、つまり4か月20日ごとに同率の調整が必要であることがわかった。

ボリヴァル・ソベラノを石油と連動する通貨と言っているのもわけがわからない。
そういえば、ベネズエラ政府が石油を裏付けとする仮想通貨を発行するような話もあって、ペトロという名前がついていたような気がする。
石油と兌換なのだろうか?
原油をもらっても仕方ないが、ガソリンなら役に立つ。
石油製品への補助金も見直して、世界で最も安いガソリン価格も調整された。

今日8月27日のニュースでは、ICチップの場所に金を嵌め込んだ?ような珍奇なカードを手にしたニコラス・マドゥロ大統領が、ベネズエラ国民は金を買えと、また不可解な発言をしていた。
もう何でもありのようである。

これまで230万人のベネズエラ人がすでに祖国を後にした。
その90%は周辺国へ移動した。
国連によるとブラジルは4月までに5万人を受け入れたが、全難民の2%にすぎない。
受入国ナンバー1はベネズエラの左隣にあるコロンビアで約87万人、第二位がコロンビアの向こうにあるペルーで35万4千人を超える。さらに離れたチリ(10万6千)とアルゼンチン(9万5千)がそれぞれ10万人ほどを受け入れた。

ブラジル人はパスポート無しで、ブラジル政府発行の身分証明書だけで南米大陸どこでも旅行できるのだが、大陸内の他の諸国も同様の権利を持っている。
しかし、きりのない難民に業を煮やしたエクアドルやペルーなどは、ベネズエラ人にパスポート携帯義務を課す動きが出てきていて、これには国連が反対している。
国連は反対するのだが、どうすれば良いと言うのだろうか?

大金を払って陸を離れる前から半分沈んでいるような船にようやく乗せてもらい、地中海を決死の旅をするアフリカ難民と違って、ベネズエラからブラジルやコロンビアへの旅は陸路だから、トランクを引きながら子供を抱えたりしてとぼとぼやって来て、ブラジルに着く頃にはかなりぼろぼろになって到着する。
いや、金のない連中はもとからぼろぼろなのだろう。

ベネズエラでは予防注射が徹底していないらしいので、国境の町ではさっそく難民に防疫のため黄熱やはしかのワクチン予防注射を行っている。
マラリアも心配される。
薬品や医療が十分でないベネズエラの妊婦は、ブラジルにやって来て出産することを夢見るので、パカライマの産婦人科病棟の70%はベネズエラ人に占められベッド数定員オーバーとかも問題になっている。

コロンビアやペルーの報道を見ないと、これら同じスペイン語を話す国々でのベネズエラ人の難民の状況がどうなのかはわからないが、言葉が通じやすい点はともかく、他の状況は似たようなものではないか、いやコロンビアへはブラジルの18倍もの数のベネズエラ人が押しかけるのだから、もっと混乱しているものと思う。

ブラジル政府によると、ベネズエラ人は国連発表の5万人ではなく、2015年から現在まで既に6万人以上ブラジルに入っていて、難民認定を求めているという。

2018年8月13日

火星大接近記念惑星名三か国語対照

火星大接近は2018年7月31日であったので、それから2週間経つが、まだまだ火星は明るく大きく見えている。
並んで土星と木星、早い時間だと金星と共に見ることができる。

普通に肉眼で見ることのできない惑星の名前などは、普段の会話で使うことはほとんどない。
こういう機会なので太陽系の惑星名の一覧を、例によって3か国語対照にしてみた。

EnglishEspañolPortuguês
Solar SystemSistema solarSistema solar
SunSolSol
MercuryMercurioMercúrio
VenusVenusVênus/Vénus
EarthTierraTerra
MarsMarteMarte
JupiterJúpiterJúpiter
SaturnSaturnoSaturno
UranusUranoUrano
NeptuneNeptunoNetuno/Neptuno
PlutoPlutónPlutão

2006年に惑星から外された冥王星であるが、気の毒なので上には入れておいた。

ポルトガル語で二つ語形がある惑星名は、最初のがブラジルの、最後のがポルトガルの綴り方である。
ポルトガル語は金星と地球のみが女性名詞、残りは太陽も含めて全部男性名詞である。
母なる大地は特別だが、さすがにヴィーナスが男性名詞では都合が悪いのだろう。
冠詞なしで最初の字を大文字で始めるのが通例である。

スペイン語では大地つまり地球だけが女性名詞、太陽も全ての惑星も男性名詞で、ヴィーナスが男性だとおかしいのではないかと思うだろうが、そこのところをどう解決するのかというと、金星の意味では男性名詞、ヴィーナスの意味では女性名詞となっている。
スペイン語でも同様に、無冠詞の大文字始まりが使われるようだ。

組曲「惑星」"The Planets"といえば、イギリスの作曲家ホルストの代表的な作品である。
これは本物の天体の観察というより、占星術の知識をもとに作曲されたという。
作曲された時期(1914-16)に、冥王星は発見(1930)されていなかった。

有名な組曲に入れてもらえなかったし、76年経ってから惑星の仲間から外されるし、かわいそうな冥王星である。
しかし海王星と交差するいびつな軌道を持つし、地球の月より小さいし、惑星よりも小惑星に近い性質であるから、そういう運命でも仕方ないのだろう。

2018年8月8日

ブラジルの風車

(o) cata-vento = [水を汲み上げる]風車
辞書を見るとハイフン入りが正しい綴りである。

風車と言っても、「かざぐるま」ではなくて巨大な「ふうしゃ」である。
エネルギー関係で興味深い報道があった。
Vento pode ser segunda principal fonte de energia elétrica do país em 2019
風力は2019年ブラジルの主要電力源第2位となるだろう

10年前にブラジルで風力発電による電力の供給を受けた人口は2百万人であったが、今日この人口は6千7百万人に急激に増大した。
2022年にはこれは1億人に達すると記事では予想している。

ブラジルの地方別で風力発電の盛んな地方はもっぱら北東地方であったのだが、最近は南地方のような他の地方も発電量が増えている。
風力発電には風量・風向ともに安定した強風が必要であるが、ブラジルの特に海岸線には風車建設の適地が多い。

経済危機にかかわらずこの部門は2017年には110億レアルを動かし、2019年にはブラジルの電力源の第2位になると予測されている。
今日ブラジルで発電される電力総量の60%が水力、9%がサトウキビの絞りかすを主としたバイオマス、風力は8.5%、次いで天然ガス8%となっている。
電力源Fonte割合(%)
水力Hidráulica60.6
バイオマスBiomassa9.1
風力Eólica8.4
天然ガスGás Natural8.1
石油製品Derivados de Petróleo6.2
石炭Carvão2.3
その他Outras5.3
出所:国家電気エネルギー庁(ANEEL)、ブラジル風力エネルギー協会(ABEÉOLICA)

石油と天然ガスを主な生産品とする、ブラジル国策石油会社であるペトロブラス(Petrobras)までも、洋上風力発電の最初のパイロットプロジェクトを発表している。
リオ・グランデ・ド・ノルテ州グアマレ海岸(Costa de Guamaré)の沖合20キロにある原油プラットフォームから1キロ離れたところに風車タワーを建設して、発電された電力は海底ケーブルを介してプラットフォームを経由して陸地に送電される。
発電量は16,500家庭に供給可能な6メガワットである。

パイロットプロジェクトが成功すればよりこの発電法への投資が期待されている。
「このようなプロジェクトによって、ブラジル北東地方のセアラー、リオ・グランデ・ド・ノルテ両州海岸は、140ギガワットの潜在的発電能力を持っている。
これは現在のブラジルの総発電量に相当する。
だからブラジルは経済的に引き合う、実行可能なビジネスとなる地域を所有しているわけだ。」
ペトロブラスのエネルギー戦略ディレクターのネルソン・シルヴァ氏は語る。

風まかせといったら変わりやすいものの例えの一番たるものだが、発電量の変動や、鳥の衝突事故や、低周波振動の健康への影響のような、風車の弊害については、バラ色の未来ばかりのニュースは語ってくれない。
普及の途中でこういった問題も顕在化してくるのだろうか。

昔から風車の登場する小説はドン・キホーテ、風車のある風景はオランダであるが、今日世界で最も風車の重要性が高く注目されている場所はブラジルである。

2018年10月22日追加

ドイツで潰えたグリーン電力の夢
Power Shift
2018年10月19日(金)15時30分
ダニエラ・チェスロー

上に示したNewsweek日本版の記事からコピペしてあったドイツの電力源状況について、ブラジルと対比する意味でここに貼っておく。

「ドイツはいち早く固定価格買い取り制度を導入(17年に入札制度に移行)するなど、個人や企業による太陽光と風力発電事業をテコ入れしてきた。おかげで1990年には電力比率の3・6%にすぎなかった再生可能エネルギー(風力、太陽、水力、バイオガス)が、発電量の3割超を占めるようになった。」

まあ国土の広さと気候が違うから、比較してどうすべきだとかいう問題ではない。

でも記事にある送電網の充実は、全くブラジルにも当てはまる問題である。
水資源に恵まれ発電所がある場所と電力需要地帯は離れている上に、それらを結ぶ長大な送電網は世界有数の落雷地帯を通っていくため、発電所からの発送電に異常があった場合に、できるだけ短時間で他の発電所から供給を埋め合わせるような、技術的に複雑な問題を解決できるようなインテリジェントな送配電ネットワークがブラジルにも必要なのである。
今日ではまだ、ブラジル・パラグアイ国境のイタイプ発電所のような巨大発電所からの送電に異常が起きると、広域停電が数時間続くことが、数年に一回くらいの頻度で起きる。
記憶が不鮮明であるが、もしかしたら毎年1回位は起こっているかもしれない。

2018年8月3日

半島だらけの日本、半島のないブラジル

(a) península = 半島
Ibérico, -ca イベリアの〔人〕;イベリア半島の

地図帳の日本地形図を開いて、半島を並べあげる。
  • 知床半島
  • 根室半島
  • 積丹半島
  • 渡島半島
  • 下北半島
  • 津軽半島
  • 男鹿半島
  • 牡鹿半島
  • 能登半島
  • 房総半島
  • 三浦半島
  • 伊豆半島
  • 紀伊半島
  • 国東半島
  • 大隅半島
  • 薩摩半島
男鹿半島と牡鹿半島は昔から混乱したものだった。

あまり半島と意識したことがないものある。
小さいか、形状が半島らしくないからである。
  • 知多半島
  • 渥美半島
  • 丹後半島
  • 島根半島
  • 佐多岬半島
長崎や佐賀の人に、このあたりはどうなっているのか聞きたいところである。
カリフラワーのような形状の、下にあげる細かい半島がくっついている場所自体が大きな半島ではないのか?
  • 東松浦半島
  • 北松浦半島
  • 西彼杵(にしそのぎ)半島
  • 長崎半島
  • 島原半島
ざっと日本地図を見てこれくらいの半島をあげることができた。

一方で、ブラジルの海岸線はどうか。
これまで探したことがなかったが、意識して探してみても見つからない。

詳しい地形図がないから見つからないだけかもしれないが、普段から天気予報その他で「半島」という単語を聞くことがないから、日常的にそう呼ばれる地名・地方名がブラジルには存在しないということだろう。
日本列島と比較すると海岸線が驚くほど単調なのである。
だからこそ、延々と見渡しても終りが見えないような雄大な砂浜があったりするのだ。
日本の砂浜が箱庭のように見えてしまう。
ゴンドワナ(Gondwana)大陸がアフリカ大陸と南アメリカ大陸とに割れたときの境界面だから、そんなに海岸線が複雑になりようがないのだろう。

結局半島と呼ぶ必要がある場所はどういった特徴があるのか。
例えばイタリアのようなところは、「半島地方」、「平野地方」とか「アルプス地方」と区別して呼ぶのかもしれない。
いろいろな市町村や国が中に含まれていて、しかも半島がくっつく大陸部と区別したい時にわざわざ「半島」と呼ぶのであろう。

ポルトガル語辞典を見ると、大文字から始めて特定する単語を付けずに単に"Península"というと、イベリア半島(=Península Ibérica)のことをさすようである。
スペインとポルトガルを他のヨーロッパと区別するときに使える。
イベリコ豚とか、イベロアメリカといった場合である。
スペインの航空会社はポルトガルから許可をもらったわけではないだろうが、勝手にイベリア航空と称しているのだろうか。

2018年8月2日

千葉市の中心の駅

今回はブラジルと全く関係のない話になる。

房総半島の地図を見ていた。

まず気になったのが、鉄道の内房線と外房線の境は一体どこなのか?
房総半島の一番先っぽのあたりの大きな駅が境目となっているのかと思ったら、そうではない。
安房鴨川駅はだいぶ外側にはみ出していると思う。

そして内房線と外房線を分ける房総半島の根元側は、千葉市中央区の蘇我駅である。
するともう一つの疑問が湧いた。

千葉市は千葉県の県庁所在地であるが、一番中心の駅と考えられるのはどれだろうか?
  • JR千葉駅-普通はこれが一番中央と県外の人は考えるだろう
  • JR蘇我駅-千葉県と言ったら房総半島、内房線と外房線の根元側と京葉線の終端(ターミナル)駅ならここ
  • JR本千葉駅-県庁の最寄りJR駅であるし、「本」当の「千葉」と言っている
  • JR千葉中央駅-名前が「中央」を主張している

千葉に住んでいる人は、何を下らないことを言っているのかと思うだろうが、行ったことのない場所のことを想像するのは楽しい。