2021年4月30日

コロナワクチン第1回接種

ブラジルの新型コロナ感染症による1日あたり死亡数は、不名誉な世界第1位をしばらく続けている。
死亡数の過去7日の移動平均は、4月20日時点で約2,800人である。
4月前半には1日3千人を超える日があった。
4月27日になると、約2,340まで下がっていて、果てしない上昇は終わり、第2波の下降期へ入ったと判断して良いかもしれない。

そして4月21日のニュースによると、ブラジルで少なくとも第1回接種を受けた人の割合は、ようやく総人口の13%に届いたところである。
4月27日には約14%近くなっていたから、第1回接種の速度は、1週間で人口の1%のペースで進んできている。
しばしばワクチン供給が途絶えて、接種が中断されることも多く、50%上昇するのに50週間とは非常にもどかしい。

ブラジルの予防接種についての、各レベル行政府の役割分担はこうなっている。
連邦政府がワクチン原液輸入の交渉をして、 輸入された原液から国内の保健医療機関で調製された製品ワクチンは、各州に分配するため、それぞれの州都へ送られる。

州都にある州政府が州内各市への配布をするときには、まず各地方の中核都市へ送られ(ここまでは概ね空路)、近隣各市の担当者がそこまで自動車で取りに行く、といった形である。
国土が広い国で考えられる、ごく自然なやり方といえる。

そのワクチン流通の最終部である、ミナス・ジェライス州のわが町のワクチン接種システムについて書く。

まず市民である接種希望者は、市のサイトで登録をする。
識別の一意キーは、ブラジルの「マイナンバー」にあたるCPFが使われる。
つまり少なくとも現在は、わが町でワクチン接種を希望しない人は、ここで登録しなければ、決して呼ばれることはないと思われる。

もしも接種希望者が非常に少なくて、ワクチンが余るのに集団免疫ができない恐れがある、といった場合には、半強制的な招集が行われることになるのかもしれないが、今のところワクチン供給が遅く、コロナ流行は最盛に近い勢いのため、予防接種を望む人が大勢であるから、その心配はまずいらないだろう。

しばしばワクチン供給が途絶えて、接種が中断されることが多いため、市保健局は一週間先のワクチン受領の予想すらできない。
そのため、携帯電話のSMS(ショートメッセージサービス)によって、 ⽇時場所の指定を受け取ったのは接種前日の午後になってであった。

ワクチンの種類はおろか、時間も場所も選ぶことができない。
市内に3箇所ある接種会場の中で、セントロにある一番遠いところに割り当てられてしまった。
車で行って適当なところに駐車して、少し歩くことになる。
持参するよう指示されたものは、写真付き身分証明書と予防接種カードであった。

市保健局は密を避けるために、指定時刻よりずっと前に会場に行くなと念を押している。
5分前に着いた。

こうして書き出してみると、わが市のシステムは、下に書くような他の市と比較してかなりしっかりしたものと思われる。
日時場所を自分で指定できないのは少し不満だが、雑な指定のため待ち時間が多くなるのも嫌だ。

日時場所を自分で指定できるようにするとなると、システムは非常に複雑になるだろうし、米国や日本で行われるような街の医院や薬局でも受けられるようにすることは、ワクチンが余ったときに無駄になるし、データ集計も時間や漏れの心配が出てくるだろう。

会場入口でまず、係員が口頭で接種予約のない人をチェックして、会場に入れさせない。
会場は市のスポーツ施設の一つ、テニスクラブの体育館で、大スペースを2つに分けて、接種場と、急性の副反応に備えて、間隔を開けて椅子が並べられた接種後休憩場となっている。
アーチ型大天井だけで、壁がない部分が多く、換気は非常に良好だ。

コンピュータ端末のある登録チェック窓口が、3つ並んで通路に設置されている。
本人と写真付き身分証明書とシステムに記録された接種予約を正式に照合する。
行列は3人のみだった。

接種員がいる接種テーブルが12ほどある接種場への行列は待ちがなく、すぐに空いていたテーブルへ行くよう指示された。

各テーブルにはワクチンの入った保冷ボックス、接種済み登録入力用のパソコン、注射器やアルコール綿などが置いてあり、看護師が一人で担当している。

予防接種開始当初ときどき起きた「ワクチン空打ち事件」を防ぐためだろう、決められたプロトコル(手続き)がある。
  • 薬瓶を見せて、「あなたが受けるワクチンはxxxxで、nミリリットルです」と宣言する
  • 目の前で注射器に薬液を吸引して、「nミリリットルです」と復唱する
  • 注射する
  • ピストンが押されて空になった注射器を見せる

といったものである。

そして、テレビのニュースでみた接種風景と同じように、ほとんどの人が付添人か本人がスマホで接種場面の写真や動画を撮影している。
いちおう担当看護師さんに、写真や動画を撮ってよいか聞いたら、すぐに肯定したことからわかるように、プロトコルの一つになっている。

現在ブラジルで承認された上に流通している2種類のワクチンは、中国シノバック社の商品名「コロナヴァッキ」と、アストラゼネカであるが、1回め接種時にどちらが当たるかは指定された会場に行ってみないとわからない。
当日会場に着いて、ワクチンの種類を見て「これは打ちたくないから、今回はキャンセルしてもう一回予約する」というわがままを聞いてくれるかどうかは定かでないし、そのような人が今までいたかどうかも不明である。

この日この時間この会場では、アストラゼネカであった。

注射後、あたりを観察しながら休憩場の椅子に座って、しばらく休んでから帰路についた。

副反応であるが、当日翌日くらいに、腕を動かしたとき接種部分に軽い痛みを感じたくらいで、インフルエンザの予防注射と大差ないと思えた。
しかし同じワクチンで、 発熱したり体がだるくなったと訴えた知人もいた。
アストラゼネカとジョンソン&ジョンソンのワクチンに起きうるという血栓症は、接種後2週目に多発するというから、今その時期にあたっているが、宝くじの確率だろう。

接種翌日、市役所のサイトで照会したら、1回め接種済みとしっかり記録されていた。
アストラゼネカの2回め接種は4週間から12週間の間に行われるというから、2回めの日時場所指定が携帯電話のSMSに届くのをじっと待つことになる。

隣市の予防接種システムはもっと雑で、x月x日には、yyyy年生まれの氏名アルファベットAからLの人はA会場で、MからZの人はB会場で、といった具合である。

リオデジャネイロ都市圏のある市のシステムは極めて雑で、x月x日には65歳から67歳までの人ですから来てください、と広報するだけであったという。
それですら既に手持ちのワクチンが不足する人数を軽く超えている上に、住所確認が求められなかったため、近隣のよその町からも話を聞いた人が集まってしまい、密になりながら半日待ったのに、ワクチンがなくなったというので無駄足で帰っていった人も多く出た。

リオデジャネイロ都市圏には、治安に問題がある市が多いのだが、このような運営が滅茶苦茶な市に住んでいなくてよかったとは思う。