2012年10月4日

ブラジル選挙戦略は数字替え歌熱唱

2012年10月7日は、4年に一度の地方選挙投票日だ。
選挙制度については、調べるほどに山ほど書くことが出てくるが、少しにしておこう。

ブラジルの選挙は、1996年から、投票機を使用するようになっている。
投票機は、urna eletrônica(電子投票箱)とよばれる。


写真はWikimedia Commons

投票機を見てわかるように、デジタルホンや通常の携帯電話と同じ配列の数字キーと、最下列左から白色の「白票」キー、橙色の「訂正」キー、少し大きめで緑色の「確認」キーが、入力インターフェイスの全てだ。
各キーには点字が刻まれて、視覚障害者でも他人の助けなしで投票できるようになっている。

出力インターフェイスはキーボードの左側の画面で、文字や画像が表示できる。
通常選挙では、候補者番号を入力すると、画面に候補者の氏名と顔写真が写り、確認キー打鍵をうながす。

日本の投票では、投票者は候補者名を枠の中に他人が判読できる字で書かなかればならない。
文盲率の極めて低い日本だからこのやり方は実行可能だ。

ブラジルは文盲率(Taxa de analfabetismo)が高い。
2000年時点で、15歳以上のブラジル人の13.6%が文盲だ。

どこかアフリカの国かインドだったか、すべての投票者の顔写真の入った画用紙大の巨大投票用紙をテレビニュースでみたことがある。
巨大な投票用紙の中から、投票したい候補者を見つけるのに時間がかかるし、印をつけてから折りたたんで投票箱へ入れるのも大変そうだ。

一方で、ブラジルで投票は権利でなく義務である。
投票ができない場合でも、投票不可申告(justificativa つまり申しわけ)を行わねばならない。
文盲であることは、投票しない・できない理由にならない。

ブラジルはurna eletrônicaを発明、採用した。
暗号化などプログラム自体は大きく変化しているだろうし、内部のハード改造も行われているだろうが、筐体とキーボード部分は一見して初期モデルと一緒だ。
電子投票になってから、開票作業が極めて迅速になり、大部分は当日に、遅くとも翌日に結果がわかるようになった。

今回のは地方選挙だから、市長(prefeito)、市議会議員(vereador)を選出する。
市長候補には、政党に2桁番号があてられている。
一つの政党から二人の市長候補が出るという事態は想定していない。
通常は党大会で統一候補を選ぶからだ。

たとえば、現在の連邦政府主力与党である労働者党(Partido dos Trabalhadores)は13、主力野党であるブラジル社会民主党(Partido da Social Democracia Brasileira)は45となっており、全国共通である。
政党固有番号はまた、今年の地方選挙と同様に4年ごとに、次回は2年後に行われる大統領・連邦上下院議員・州知事・州議会議員の選挙にも共通して使用される。

市議会議員には5桁番号があてられる。
上位2桁は政党を、下位3桁はその政党内の候補者番号を表す。

この数字割当では、ブラジル全国に99の政党が存在し、各党の候補者は各市ごと999人まで立てることができるわけだ。
13111と同じ番号でも、うちの市と隣の市とでは、別の候補者を意味する。

市議会議員の投票では、投票者は5桁の候補者番号を間違いなく打ち込まなければならない。
そのための戦術は、候補者が別の政党に移らないかぎり変えることのできない上位2桁はともかく、下位3桁をいかに覚えてもらうかである。

上位2桁とのつながりを考慮しながら、強いパスワードの反対を考えれば良いわけだ。

単純に考えても、
11111(同一番号)
12345(連続番号)
とかがあるし、
キーボード形状を考慮すると、
12321(キーボード右行左行、しかも回文)
14741とか25852(キーボード下降上昇、しかも回文)
などがある。

今日本の選挙運動に残っているのだろうか、昔は「候補者名連呼」があった。
現在のブラジルは「数字あて歌の連唱」である。

例を二つだけあげよう。
13913 treze nove treze 13-9-13
23999 vinte e tres nove nove nove 23-9-9-9

こいつらはうるさく頭の上を飛び回る。
そして投票当日、頭が真っ白になった投票者は、耳にこびりついた数字あて歌を歌いながら、選挙参謀の思惑通りに番号を打つのである、となるのだろうか?

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