2015年2月22日

サマータイムと幸福の条件

今日は2015年2月21日、2月第3土曜日である。
当然明日は2月22日、2月第4日曜日になる。
2008年9月8日政令第6558号(DECRETO Nº 6.558, DE 8 DE SETEMBRO DE 2008.)

を見ると、
ブラジルのサマータイムつまり夏時間の実施規則は、
  • 夏時間入り - 10月第3日曜日の零時
  • 夏時間明け - 翌年2月の第3日曜日の零時
  • 夏時間は通常時間より1時間進められる
  • 夏時間終了日曜日がカーニバルの日曜日と重なる場合は、夏時間終了は次の日曜日となる
と書いてある。

夏時間は春分の日の1か月後に始まり、秋分の日の1か月前に終了するので、だいたい夏至を真ん中に挟む4ヶ月継続するように作られているのだ。
2015年は上4番目のカーニバル日曜日条項が適用されるため、夏時間終了は2月第4日曜日になったのである。

というわけで今日土曜日はサマータイム最後の日なのだ。
夏がいくら暑くても、夜多少寝苦しくても、夏が去ってしまうのは寂しい。
夏が去る時に感傷的になる曲は、何といっても The Summer Knows をあげるが、Summer 68も捨てがたいと思うのだ。
きっと他にも私の知らない曲がいっぱいあるだろうから、それはどうでも良い。
異論は認める、ということだ。
-Michel Legrand faleceu em 26/01/2019. R.I.P.

サマータイムという曲は、ガーシュイン(George Gershwin)がオペラ、「ポーギーとベス(Porgy and Bess)」のために作った曲である。
1935年のことである。
作詞は DuBose Heyward となっている。
ビリー・ホリデイが歌ったものを最初に聞いたので、ブルースかジャズの曲だと思っていた。
その中にこんな文句がある。

Your daddy's rich
And your mamma's good lookin'
So hush little baby
Don't you cry

子守唄なので幼子に、「父さんは金持ちで母さんは美人だよ、だから泣くなよ」、と歌っている。
赤ん坊は道理がわからないから、適当な嘘でごまかしていると疑えなくもない。

半分ジャズと言ってもいいガーシュインだけではなく、クラシック・オペラの本場イタリアのドニゼッティ(Gaetano Donizetti)による曲でおんなじ文句を聞いたので、これを書いているのだ。
「ポーギーとベス」の約100年前のことだ。
ドニゼッティの歌劇「愛の妙薬」(1832初演)から「私は金持ち、あんたは美人」はこう歌う。

第2幕 二声のバルカローレ Act 2 Barcarolle for Two Voices
Io son ricco e tu sei bella / "I'm rich, and you are beautiful" - Dulcamara, Adina, Scene 1
ドゥルカマラはインチキ薬売りだったか。
アディナに歌う。

Io son ricco, e tu sei bella,
io ducati, e vezzi hai tu:
perché a me sarai rubella?
Nina mia! Che vuoi di più?

イタリア語はわからない。

私は金持ちあんたは美人
私はドゥカティ(金)持ち、あんたは愛嬌持ち
どうして私の望みに抗うの
可愛い娘よ、もっと何が欲しいの?

「愛の妙薬」も「ポーギーとベス」も舞台を見たことはない。
でも詞から伺えるのは、19世紀でも20世紀でも幸福の条件は同じ、男は富を持ち、女は美を持つことを求められる。
普遍で定型的な幸福は100年たっても1000年たっても変わらないのだろう。

救いといえそうなのは、「ポーギーとベス」のクララは美しいか醜いかわからないけれど、漁師ジェイクはものすごい金持ちではあるまいし、劇中嵐で遭難死してしまうし、「愛の妙薬」に至っては、口達者な詐欺師まがいのドゥルカマラが結婚式の余興でアディナに歌ったということなので、両方とも真実を反語的に語っていると思えばよいのだ。

男は適当に小金があって、女はそこそこ可愛ければ大部分の男と大部分の女は、十分な幸せを楽しめるはずだ。
それもなかったらどうするって?
上を見るときりはないが、試しに下を見てみればそんなに捨てたもんじゃない、と思えるような心が大切なんだよ。

今晩は1時間余分に寝られるという、ささやかな幸福を味わうとするか。

0 件のコメント:

コメントを投稿